兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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穂乃果ちゃん!ほのかちゃん?ホノカチャン!

訳:今回は、感想でいただいたリクエストにお応えしました。内容がタイトルと合っていないかもしれませんが、おゆるしを。




兄妹喧嘩、風邪、お医者さんごっこ。

「「ありがとうございました~!」」

 

 品物を買ってくれたお客さんを2人で見送った。俺と妹の穂乃果は2人で店番をしている。

 

 "穂むら"

 

 うちの家族でやってる和菓子屋の名前。その店の子供である俺、穂乃果、雪穂の3人は地元じゃ"穂むらの看板っ子"とか言われてて、ちょっとした有名人らしい。古くからやってるこの店はそれなりに有名で、絶えず人が訪れる。

 それに、最近は客の傾向が変わってきており、なおのこと訪れる人が多くなってきている。その原因は明確で――――

 

「あっ!! 本当に穂乃果ちゃんがいる! いつも応援してます!! よろしければ握手してください!!」

「あ、ファンの方ですか!? いつもありがとうございます♪」

 

 穂乃果が発起人のスクールアイドルグループ"μ's"

 なにやら人気が出てきているらしく、今まではよく知る顔のお客さんばかりだったのに、最近では穂乃果を求めて来る若者が多くなってきているのだ。お母さんはお客さんが増えて喜んでいるのだが、兄としては妹が遠い存在になっていくような気がして、なんとも寂しい気持ちになってしまう。笑顔で応対する穂乃果も、アイドルとしての自覚があるのか、普段とはちょっと違う雰囲気でファンの人たちに笑顔を見せつけている。

 ……ちょっと、いやめっちゃ寂しい。

 

「ありがとうございました~♪ ……って、お兄ちゃん?どうかしたの?」

「……いや、何でもないよ。穂乃果の人気ってすごいんだな。」

「あはは~、ほんとにうれしいよ♪ 頑張ってる甲斐があるっ♪」

「そっか」

「ん~?」

 

 妹はアイドルとして必死に頑張っている。なのに、それを素直に応援してあげられてない自分がいる。最愛の妹が頑張っているというのなら、兄である俺が全力で応援してあげるってのが当たり前なのに、寂しさと――――ちょっとした嫉妬心がそれを邪魔する。

 

「さ、お客さん来るぞ、穂乃果。」

「あ、うん!」

「「いらっしゃいませ~♪」」

「あ! すげえ!! 穂乃果ちゃんじゃん! すげえ可愛いんだけど!!」

「えっ!? あ、あはは~、ちょっと照れちゃいます……」

 

 次に来たのは男子学生。どうやらこいつらも穂乃果のファンらしく、店に入るや否や、さっそくナンパを始めやがっている。ニヤニヤしやがって。

 ……穂乃果も、その程度で照れてんじゃねえよ。言われ慣れてるだろうが。

 

「お客様、何をお求めでしょうか?」

「あ……彼氏さん? アイドルなのに彼氏持ちなのかよ」

「は? 俺彼氏じゃなくて兄なんだけど? こいつに彼氏なんているわけないじゃん」

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!!」

「な、なんだよその態度。もういいや、今日は帰るわ。穂乃果ちゃん、次はお兄さんがいないときに来るよ~!」

「あ、はい! またのご来店をお待ちしております♪」

 

 やってしまった。

 あくまで"お客さま"として来ていたあいつらに、ずいぶんと失礼な態度を取ってしまった。それに、下手すりゃ穂乃果の評判を下げてしまうところだった……今回は良かったみたいだけど。でも、照れてる穂乃果を見て、少なからずイライラしてたのも間違いなかった。

 最愛の妹が、どこのガキかは知らんが訪れた男どもに取られるなんて考えただけで――――

 

「ちょっとお兄ちゃん!? さっきの対応はさすがにまずかったと思うよ!?」

「あ、あぁ、ごめんよ。お前の評判下げちまうところだった。」

「……どうしたの、お兄ちゃん。今日はいつもと違って変だよ?」

「気にしないでくれ」

「お兄ちゃん……」

 

 ごめんよ穂乃果、そんな顔を見るためにあんなことしたんじゃないんだけどな。でもこればっかりは、兄としての――――男としてのプライドが許さないんだ。

 なんて、そんなことを思っていても客は次々と訪れる。さっそく、次の客が訪れた。

 

「「いらっしゃいませ~♪」」

「どうも~。穂乃果ちゃんだ! 可愛いっ♪」

「あ、ありがとうございます!」

 

 次の客は、穂乃果と歳の近そうな女子高生だった。この客も、どうやら穂乃果目当ての――――

 

「あっ、あなたが穂乃果ちゃんのお兄さんですか……?」

「えっ? そ、そうですけど」

「わ~♪ うわさに聞いてたんですけど、ぜひお会いしたいと思ってたんです!!」

「えっ、俺に!?」

「はいっ! あのっ、よろしければ、ハグ……してもらえませんか?」

「は、ハグ!? お、俺なんかが!?」

「お願いしますっ!」

「わっわかりましたっ。じゃあ、失礼して――――」

 

 俺はその子が言う通りに抱きしめてみせた。

 

「きゃ~っ♪ ありがとうございますっ! これで学校で自慢できます……!」

「は、はぁ……」

「ありがとうございましたっ! あ、お饅頭3ついいですか!?」

「は、はい! ありがとうございます!」

 

 何故かその子は俺にハグを求めてきて、穂むまんを3つ買って帰っていった。な、何だったんだ。

 

「……お兄ちゃん」

「ん? どうした穂乃果?」

「鼻の下、のびてるよ」

「は? そんなわけないだろ」

「ふんっ!」

「えっ!? ちょっ、穂乃果!?」

 

 何故か急激に機嫌が悪くなった穂乃果。な、なんでだろうか。何かよくないことでもしたんだろうか……

 

「ほ、穂乃果! 何かしちゃったか? そうだったらごめんな?」

「…………」

「ほ、ほのかぁっ」

「……穂乃果なんかより、お兄ちゃんはあんな子の方が好みなんだ?」

「え?」

「あの子を抱きしめてた時とか、あの子がお兄ちゃん目当てで来たって知ったときのお兄ちゃん、すごく嬉しそうだったよ?お兄ちゃんの好みの女の子が分かったよ。」

「え!? いや違うって!!」

「違わないよ!! デレデレしちゃって! 穂むまんのお代もらうとき手が触れて、ニヤニヤしてたくせに!!」

 

 プチン。

 

 "デレデレしちゃって"

 

 この言葉に俺の何かが切れた。

 

「……は? お前もだろうが」

「何が!! お兄ちゃんがあの子とイチャイチャしてたんじゃん!!」

「ちげえだろうが! 男が来て可愛いって言われて、めっちゃ照れてたじゃんかよ! どうせお前もああいう男が好みなんだろ!? あーあーそうですよ! 俺はあんなんじゃないからなぁ!?」

「あれは違うもんっ! 確かに、お兄ちゃん以外の男の子に可愛いなんて言われる機会ほとんどないから嬉しかったっていうのは本当だけど、あの人は応援してくれてるってだけで、穂乃果はあの人自体に興味はないもん!!」

「とか言っちゃってさぁ! 本当はああいうのがいいんだろう!? はっきり言えよ!!」

「意味わかんないっ!! お兄ちゃんこそさっきみたいな女の子が好きだってはっきり言っちゃえばいいのにさ!? はっきりしないのは嫌いだよ!!」

 

 "嫌いだよ"

 

 これを聞いて、抑えていた俺の気持ちが表に出てしまった。

 

「ふざけんな! 俺はどんな女より穂乃果の方が好きだ――――あっ」

「……えっ?」

 

 声に出してしまったらもう、後戻りはできないんだよな。

 

「ほ、他の女の子よりも、穂乃果の方が可愛いって、魅力的だって思うよ?」

「…………」

 

 黙り込む穂乃果。

 あれ、待ってくれ。これって軽い告白みたいなことしちゃってる!? 実の妹に!? これこそ本当にやっちまったんじゃねえのか!? いくら優しい穂乃果といえど、これはさすがに引かれても仕方がない――――

 

「……穂乃果、お兄ちゃん以外の男の子には興味ないよ?」

「え?」

「ほ、ほら、音ノ木坂ってお兄ちゃん以外の男の子ってほとんどいないじゃん! だ、だから、お兄ちゃん以外の男の子をほとんど知らないから、お兄ちゃん以外に興味ある男の子なんていないな~……なんて」

「お、おう」

「う、うん。お兄ちゃんも、あの女の子よりその……穂乃果の方が良いの?」

「あ、当たり前だろ! ど、どんな子より妹の方が可愛いに決まってるさ」

「お兄ちゃん……うんっ! 穂乃果も、どんなお兄ちゃんよりお兄ちゃんが大好きだよっ♪」

「どんなお兄ちゃんよりって、穂乃果に何人かお兄ちゃんがいるのかよ」

「えっ? あっ! 違う、そうじゃなくて……あはは」

「ふふ、穂乃果、さっきはごめん。穂乃果がさ、俺の手の届かないところに行ってしまいそうで怖かったんだ。ほんと情けないよな、ごめん。」

「お兄ちゃん……うん、穂乃果もお兄ちゃんが穂乃果だけのお兄ちゃんじゃなくなっちゃう気がして、おかしくなっちゃったみたい。ごめんなさいっ!」

 

 なんだ。

 2人しておんなじこと思ってた、ただそれだけのことだったのか。なんか、嫉妬してしまったのが馬鹿みたいだな。

 

「お兄ちゃんっ!」

 

 俺を呼んで、急に抱き着いてくる穂乃果。

 

「穂乃果は、お兄ちゃんのだけの穂乃果だから心配しないでね!! だから、お兄ちゃんも、穂乃果だけの――――穂乃果と雪穂だけのお兄ちゃんでいてね♪」

 

 上目づかいでそんなことを言ってくる穂乃果は、やっぱりどんな女よりも可愛いと思うよ。

 

 

 

 

 

「「ありがとうございました~♪」」

「ふぅ、これで今日は終わりかな」

「ねえお兄ちゃん」

「ん? どうした雪穂?」

「さっきの客と私、どっちの方が魅力的だった?」

「ん~、そりゃあ雪穂かな。自慢の妹だし。」

「……お兄ちゃんはもうちょっと自分の魅力に気づいた方が良いかな」

「え? なんだって?」

「お兄ちゃんのば~か♪」

「なんで!?」

 

 

 

 

 雪穂は相変わらず、意味が分からないぜ。2人の妹と店番を任された、そんな一日だった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ううん……あれ?」

「あっ!! お兄ちゃんが起きた!! よかったぁっ!」

「うっ!? ちょ、穂乃果重いよっ」

「ご、ごめんお兄ちゃん!! 体調はどう?」

「あ? あぁ……頭痛い」

 

 店番が終わったあとで、いつの間にか気を失っていたらしい俺は、俺の部屋のベットの上で寝かされていた。横にはすごく心配そうな目でこちらを見ている我が妹、穂乃果がいる。いきなり抱き着かれたとき、いつもなら喜んで抱き着き返しただろうに今回は苦しくて仕方がなかった。相当体調が悪いみたいだ。さっきまで笑顔で接客していたのが嘘みたいだ。

 

「……ふふ、ふふふ♪」

「ど、どうしたんだ穂乃果?」

 

 急に不気味な笑い声をあげながら、これまた不気味な目でこちらを見てくる。お、なんだ? お兄ちゃんに何かいやらしいことでもするのかな?それなら受けて立つ――――

 

「どれどれ~♪」

「えっ?」

 

 こつん、穂乃果のおでこが俺のそれに触れ、軽く音を立てる。え、え、なんやねんこれ。惚れてまうやろ? 惚れてまうやろ?

 

 あ、シスコンじゃないです。

 

 目の前には可愛い我が妹が目を瞑り、穂乃果のおでこを俺のおでこにくっつけている。あと数センチ、あと数センチ穂乃果が顔を近づければ、キスさえできそうな――――

 

「うわっ、すごい熱だよお兄ちゃん!!」

「えっ? あ、あぁ、うん。自分でもわかるよ」

 

 驚いたように顔をあげてしまった穂乃果。あぁ、なんだろう。今日の穂乃果はすごく魅力的に見えてしまう。体が弱ってるからかな……

 

「お兄ちゃん! 今日は穂乃果がつきっきりで看病してあげるね!!」

「あれ? 穂乃果、明日は海未ちゃんたちと遊びに行くから早めに寝るんじゃ……」

「え!? ……きゅ、急に都合が悪くなったらしいから大丈夫だよ!」

「そ、そっか」

「というわけでお兄ちゃん! 今から穂乃果がお医者さんだよっ!」

「あ、あぁ」

 

 いつも以上にごり押し感満載の穂乃果だけど、なんか今日はすごく頼もしく見える。それに、なぜか今日は穂乃果の言うことに対してリアクションがうまく取れない。

 あぁ、これも身体が弱ってるからなんだろうな。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「じゃあ早速お医者さんっぽいことやるよ!」

「ぽいことってなんやねん」

 

 穂乃果が何やら、医者っぽいことをやるらしい。まぁどうせあれだろ? 何だかんだで薬無理矢理飲ますだけでしょ?知ってる。

 

「ん〜? ちょっと脈乱れてない?」

「!?」

 

 ところがどっこい、穂乃果は薬など持っておらず、俺の胸に耳を当てて脈音を聞き始めた。

 どくん……どくん……違う意味で乱れ始めた僕の脈の音を聞いて、穂乃果は少し心配そうな顔でこちらを見てきている……少し頬が赤くなってる気もするな。

 

「普通そういうのって聴診器使うんじゃないのか」

「だ、だって普通の家には聴診器なんてないじゃん!」

「いやまぁそうなんだけど。だったらやらなきゃよかったのに」

「でも胸の音聞くってお医者さんっぽいじゃん!」

「もうそういう事でいいよ」

 

 胸の音を聞くだけでお医者さんっぽいって思うのはどうかと思うぞ我が妹よ。しかも結構恥ずかしかったしな。

 ……穂乃果の胸の音は、どんな音なんだろう?

 

「穂乃果」

「え? どうしたのお兄ちゃん?」

「穂乃果の胸の音も、聞かせてくれないか?」

「……え?」

「あっ」

 

 思った時には既に口から出ていた。俺氏痛恨のミス。これじゃただのシスコンじゃないか! これも、体が弱ってるせい……え、違う?

 ともかくだ、これはまたいつものように変態扱いされてしまうではないか!また謝罪しなければならないなんて、体調が悪い人間がすることじゃないだろうけどこれくらいはしなければ!

 

「ご、ごめん穂乃果! つい口がすべっ「おいで?」……はい?」

 

 思わず聞き返す。今聞き間違いでなければ、穂乃果は――――

 

「おいで?」

「……おう」

 

 聞き間違えでないことを確認した俺は、言葉のままに穂乃果の胸に耳を当てる。ふんわりとした女の子らしい柔らかみに包まれ、仄かに香る穂乃果の香り。優しい穂乃果の腕に抱かれ、穂乃果の胸の音を聞く。

 

 ドクンドクン……ドクンドクン……

 

 下手すりゃ俺よりも速い脈音。でもその音が心地よくて、すごく安心していた。変態扱いされるかと思っていたが、悪くは思われてなかったみたいだ。

 

 それからも、穂乃果から至れり尽くせりの扱いを受けた。

 

「お兄ちゃんお腹空いてるでしょ? プリンだったら食べられるだろうから食べさせてあげるよ!」

「え? いやでもプリンっていつも嬉しそうに食べてるじゃん。悪いよそんなの」

「いいのいいの! 穂乃果がそうしたいんだからっ。はい、あーん♪」

「あ、あーん……あぁ、何とかプリンなら食べられそうだ。ありがとう、穂乃果。」

「えへへ♪ でもやっぱり食べたいから穂乃果も食べるっ! あむ……んん〜♪」

「お前そのスプーン、風邪ひいてる俺が今食べたやつだけど大丈夫?」

「ん? あっ!? ど、どうしようお兄ちゃんっ!?」

 

 アホの子だ……

 

 

 

「お兄ちゃん、あなたの風邪はただの風邪です。ですのでこの薬出しておきますね?」

「アホ丸出しだぞ穂乃果~。というかお医者さんごっこはまだ続いてたのね。そんなことより早く寝かせ「このお薬、今から飲んでくださいね?」あ、はい。……う~、クスリ苦手なんだよなぁ。なんでこんなの飲まなきゃいけないんだよ~」

「風邪ひいてるんだもんお兄ちゃん、仕方ないよ。さ、早く飲んで~!」

「くっ……んくっ……ほら、飲んだぞ」

「わぁ~♪ お兄ちゃん偉いね~♪いい子いい子♡」

「なっ、撫でんなよ……くっ」

「あはは、お顔真っ赤だねえ♪ 可愛いよお兄ちゃん♪」

「あああああっ!! 穂乃果に茶化されるなんて!?」

 

 そのあとも穂乃果は、つきっきりで俺の相手をしてくれていた。……病人に対しての絡み方ではなかったけどな。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「穂乃果~、眠くなってきたからすこし寝かせてくれ」

「あ、お兄ちゃん風邪ひいてたんだったね、忘れてたよ♪」

「おいっ! まぁ、いいよ。今日はありがとうな」

「えっ!? あ、う、うん。」

「わざわざ海未ちゃんたちの誘いも断ってくれてたんだろ? そこまでしてくれるなんて、本当に穂乃果は優しいな」

「ぅ、ばれちゃってたのか。だってお兄ちゃんが心配だったんだもん。」

「そうか。心配させてごめんな、穂乃果」

「うん。でも思ってたより平気そうでよかったよ!」

「それはお前のせいで無理やりテンションあげさせられただけなんだけどな!!!」

「えへへ。お兄ちゃん、眠いんでしょ? ごめんね、穂乃果がうるさいから眠れないんだよね」

「うるさいなんて思ってないさ。逆にその明るさにすごく助けられてるくらいだから。」

「……そっか。」

「おう。じゃ、ちょっと寝るわ。おやすみ」

「うん、おやすみお兄ちゃん。早く元気になってね!」

 

 意識を失ったのは夕方だったはずなのだが、今はもう夜も遅い時間になってしまっていた。こんな時間まで俺の看病をしてくれた穂乃果には感謝してもしきれない。

 やっぱり穂乃果は、俺の最愛の妹だ。

 

 あ、もちろん雪穂もな?

 

 二人の最愛の妹に恵まれて、俺は幸せ者だ。それを強く思いながら、俺は眠りについた。

 

 額に、温かな人のぬくもりを感じながら。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「ん……ぁ」

 

 

 目が覚めると、カーテンの下から明るい光が漏れだしているのに気が付いた。あ、もう朝なのか。頭痛も治まって、どうやら体調は良くなったようだ。しかしまぁ、寝汗をかいているらしく、身体がべた付いてしまっていた。

 着替えよう、そう思い、ベットから降りようとしたとき、気づいた。

 

「んん……むにゃむにゃ」

「穂乃果?」

 

 俺の顔があったところのすぐ横で、ベッドに腕枕をして、床に腰をついて寝ている穂乃果の姿があった。よく見ると、枕元には濡れたタオル、すぐ近くにある机の上には水が入っている小さめの桶が。

 もしかして穂乃果は、一晩中俺のそばにいて看病してくれていたのか? 風邪をひいて苦しんでいる俺の横で必死に看病してくれている健気な穂乃果の姿を思い浮かべるだけで、目頭に涙が浮かんできた。

 

「んん……ふぁ? あっ! お兄ちゃん起きたの!? 体調はどう――――ってどうして泣いてるの!? そんなにどこか痛いの!?」

「いやっ、違うっ。本当にありがとうな、穂乃果っ……グスッ」

「えぇっ!? 穂乃果が何かしたから泣いてるの!?う わぁぁっ、泣いちゃだめだよぉ」

 

 

 ただの風邪、されどただの風邪。風邪をひいただけなのに、1日中つきっきりで看病をしてくれた、俺の最愛の妹。こんなに良い娘が俺なんかの妹でいいのかと、深い罪悪感に襲われる。

 だけどこの娘は、まぎれもない俺の大切な妹なんだ。この娘が苦しむ時がもし来たら、その時は俺が助けるんだ。俺が助けなきゃいけないんだ。

 

 そう強く決意した、次の日の朝のこと。

 

 

 

 

「へっくちっ! ……あれれ~?」

 

 

 そんな最愛の妹に風邪をうつしてしまい俺が大騒ぎするのは、また別の話。

 

 

 




(・8・)<ホノカチャン!!

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毎回8時3分に投稿している作品ですが、バレンタイン記念をメインの方の小説とは別に投稿しようと考えております。
この小説とメインの小説の両方のバレンタイン記念回を同時投稿を予定しています。
それに伴い、バレンタイン回だけは8時3分投稿という形を守れないかと思いますが、ご了承ください。

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