兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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穂乃果ちゃん!ほのかちゃん?ホノカチャン!


μ'sの人たち

「ただいま~!」

「お~、おかえ――――っ!?」

「「「「「「「「お邪魔します!!」」」」」」」」

「えっ……あ、はい。どうぞ。」

 

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ。俺は確かに、我が妹である穂乃果の声を聞いて上から降りてきたはず。

 し、しかし、今俺の目の前には――――

 

「あなたがお兄さまですか。誰かさんとは違ってすごく真面目そうですね。」

「ちょっと! お兄ちゃんと穂乃果のこと見比べたでしょ海未ちゃん!?」

「まぁまぁ穂乃果ちゃん……海未ちゃんもわざと言ったわけじゃないから……」

 

 なんてこったい、穂乃果の後ろには8人もの美少女が並んでいるではないか!

 うちの妹ながら、穂乃果はかなりの美人だと思っていたからさすがにこのレベルは音ノ木坂にはいないと思っていたのに、なんてこったい。全員が全員レベルが高すぎる……ってあれ?

 

「あれ? 絢瀬と東條と矢澤もいるじゃん。なんで……?」

「今さら気づいたのかしら?」

「うちら、目立つと思うんやけどなぁ。なぁにこっち?」

「ちょっ! 胸のあたり見るんじゃないわよこの鬼っ!」

 

 なぜか同級生3人の姿も。これはかなり驚いた。矢澤はともかく、絢瀬は生徒会長を、東條は副会長を務めているのは知ってる。

 一体、どうやって穂乃果と仲良くなったんだ?

 

「お兄ちゃん!」

 

 いろいろ考えていると、穂乃果が俺を呼んできた。

 

「お兄ちゃんにμ'sのみんなの紹介をしようと思って、みんなに来てもらったの!!」

 

「マジかよ」

 

 ……こいつらが穂乃果の言ってたスクールアイドルってマジかよ。

 

 

 

 "μ's"

 

 うちの妹高坂穂乃果は、廃校寸前のこの音ノ木坂学園で廃校を阻止するためにスクールアイドルを始めた。そして、そのスクールアイドル名がμ's(みゅーず)、らしい。この前穂乃果に怒られたから、ポスターで名前だけは確認してた。

 μ's……詳しくは知らないけど、もし穂乃果たちのグループ名がギリシャ神話の"MUSE"からきてるんなら、確か9人の女神たちのことだったかな。だとしたらそのままじゃないか。9人の女神たち、μ's。うん、納得だ。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「じゃあこの9人が、この前穂乃果が言ってたスクールアイドルのグループメンバーってこと?」

「うんっ!」

 

 店番を雪穂に任せて、俺らは穂乃果の部屋でお話をしていた……雪穂には、あとでプリンをあげよう。穂乃果もそうだけど、洋菓子好きだからな。ごめんよ雪穂。

 

「お兄さまの話は常々伺っております。初めまして、園田海未と申します。以後お見知りおきを。」

「穂乃果ちゃん、いつも休み時間にお兄さんの話ばっかりしてるので、どんな人か気になってたんです! 私、南ことりっていいます♪」

「あぁ、あなたたちが穂乃果の幼馴染の……」

 

 園田海未(そのだうみ)と名乗った少女は、すごく真面目な性格なのだろう、きっちりとした言葉遣いで凛としていて、ザ・日本人、この言葉が似合う少女……いや、女性なようだ。

 一方、南ことり(みなみことり)と名乗った少女はとにかく声が特徴的。何このふあふあぼいす。溶けそう。こっちはザ・女の子って感じだな。

 

 実はこの2人、穂乃果の古い幼馴染らしいのだが、俺は今初めて見た。いや、すれ違ったことくらいはあるのかもしれないが、こうやって話すのは初めてだ。穂乃果は基本、昔から俺にべったりだったから何をするにも俺と一緒だったのだが、そんな穂乃果が「友達と遊ぶ!」と言ったらこの子たち2人のことだった。話だけは、穂乃果から聞いてたからな。

 穂乃果はかなりの美少女だと思うが、この2人も負けてないくらいに可愛い。

 

「初めまして! 凛は星空凛、よろしくお願いしますにゃ!」

「わ、私は、小泉花陽って言います。その、初めまして……っ」

「西木野真姫、1年。」

 

 星空凛(ほしぞらりん)ちゃん。何故か穂乃果の面影があるしゃべり方と明るさ。髪の色もあってか、髪型さえ変えれば穂乃果とうり二つなのではと思ってしまう。あと語尾の"にゃ"ってやつ、めっちゃ可愛いんだけど。ペットにしたい。

 人見知りしてそうな女の子、小泉花陽(こいずみはなよ)ちゃん。こっちと目を合わせずに、ただ手混ぜをしながら恥ずかしそうに挨拶をしてくるが、申し訳ないことに後半部分が聞き取れなかった。この子がアイドルを……?

 そしてその花陽ちゃんよりもひどいのが西木野真姫(にしきのまき)と名乗った少女。情報が1年生であることくらいしかなくてコメントしづらい。だがかなりの美少女らしく、そっぽを向いて話すその姿はなかなか似合っていた。

 

「あなたと直接話すのって初めてかしら? 私は絢瀬絵里、生徒会長を務めてるわ。」

「君が光穂くんやね? 音ノ木坂唯一の男子高生って聞いてて期待してたんけど、まさか穂乃果ちゃんのお兄ちゃんやったなんてなぁ。あ、うちは東條希っていうんや! よろしゅうな♪」

「にっこにっこn「あ、それはいいわ。」なんでよ!! 一応紹介くらいさせなさいよ!!」

「いや、お前のその寒いギャグはやめれくれ?」

「な、なんですってえええ!?」

 

 絢瀬絵里(あやせえり)。集会の時とかによく見てるけど、やっぱりこいつは美人だな。噂によればクォーターらしい、その証拠にこのきれいな金髪。これを知らない音ノ木坂生徒はいないだろう。女子人気も高いらしい。

 その絢瀬を支えているのが、絢瀬の隣に座っている東條希(とうじょうのぞみ)。胸がいい感じに強調されているそのスタイルは、絢瀬に引けをとらない素晴らしいもの。全音ノ木坂男子生徒は興奮するに違いない。あ、男子生徒俺だけだったわ。

 そして、矢澤にこ(やざわにこ)。クラスでは割と話す方の女子、いや芸人。それ故にさっきの芸も見慣れている……申し訳ないが、その幼児スタイルでは他の2人どころか他のメンバーにも劣ってるぜおい。でもルックスでは負けていない、素直にそう思う。

 

 どうやら、これが音ノ木坂スクールアイドル、μ'sらしい。自己紹介をしてもらっただけなのに、どうしてここまで個性が分かるものなのか。それだけ、色物ぞろいのグループってことだろう。

 というか、なんで矢澤がいるのにこのことを教えてくれなかったんだ?

 

「おい矢澤、なんで俺にこのこと教えてくれなかったんだよ」

「はぁ!? あんたがいつもみたいに軽く流すから聞き逃したんじゃないの!? にこはちゃんと説明したわよ!!」

「あ、さいですか」

「にこはどこでもいじられ役なのね♪」

「にこ先輩らしいにゃ」

「ちょっっと! 絵里も凛も言い過ぎよ!!」

「矢澤、お前グループ内でもそんなんなのかよ。まぁ、なんだ……頑張れよ?」

「その言い方はなに!? ああもうっ!!」

 

 どうやら矢澤の扱いは全国共通のようだ。安心したぜ。

 

 そのあとも俺らは、みんなが帰るまでずっとこんな感じで団欒を楽しんだ。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 みんなが帰って行ったあと、穂乃果に呼ばれ、再び穂乃果の部屋に来た。

 

「ねえお兄ちゃん。どうしてみんなとあんなに楽しそうに話してたの?」

「ん? あぁ、あいつらみんな話しやすかったからな! 花陽ちゃんや真姫ちゃんも結構しゃべってたし、絢瀬があんな人だと思ってなかったし、お前の幼馴染も――――」

「お兄ちゃんの馬鹿っ!」

「ええっ!?」

 

 いきなり最愛の妹からの罵倒を食らいました。あれ、何かおかしいことがあったかな……

 

「お兄ちゃんすぐそうやって他の女の子と仲良くなっちゃうよね! いいなあお兄ちゃんは!! ハーレムのなかにいるようなものだったもんね!!! ニヤニヤしちゃって、気持ち悪いよお兄ちゃん!!!」

「あ、あぁ……」

 

 罵倒の連続。穂乃果の口からまさかここまでの言葉が出てくるなんて。ちょ、ちょっとだけ気持ちよかった――――って何言ってるんだ俺は。言われてばかりだとさすがに悲しいから、一応言い返す。

 

「穂乃果、あれでも俺緊張してたんだぞ!!」

「どこが!! みんなとイチャイチャして、穂乃果のことなんて蚊帳の外だったくせに!!」

「そんなことねえよ!」

「そんなことあるもん!!!」

「ねえよ!」

「あるもんっ!!」

「ねえよっって言ってんだろ!!!」

「あ、ある……もん」

「……穂乃果?」

 

 大きな声を出して俺のことを怒ってきたかと思えば、言い合いの最中で急に声が小さくなってく穂乃果。

 

「お、おい、ほの――――っ!?」

 

 穂乃果の様子を窺うために、うつむいた穂乃果の顔を覗き込むと、そこに見えたのは滅多に見ない、最愛の妹の涙だった。どんなときも、強くて明るい妹のこんな姿を、こんな言い合いの中で見ることになってしまった。

 

「穂乃果!? ごめんっ! いいすぎ、た……?」

「お兄ちゃん……っ」

 

 急に抱き着いてきた穂乃果は、涙を自分で拭いながらも、なおうつむいたまま抱き着いている。そして顔をあげた穂乃果が、頬を軽く染め、若干の涙目かつ上目遣いで、こう言ってきた。

 

 

「お兄ちゃん……穂乃果のこと"だけ"見ててよぉ。穂乃果、みんなと仲良く話してるお兄ちゃん見るのは嫌だよぉっ」

 

 

 ぴゃあああああああああああああああああああああああ!? 妹!!! 我が妹よ!!! それは反則や!! あかんて!!

 

「穂乃果!!!」

「っ!」

「それ、絶対に俺以外の男にやるんじゃねえぞ!! わかったか!?」

「う、うんっ。ていうか、穂乃果にはお兄ちゃんしか男の子知らないから……あはは」

「ぐはっ!!」

「お兄ちゃん!?」

 

 あ、あぶねえ……昇天寸前だったぜ。あぶねえあぶねえ。どうやら我が妹は男を落とすテクニックを素でやってしまうようだ。これは俺が一生守らねば。こんなの男がやられたら即落ちですわ。

 

「絶対に、他の男にはするんじゃねえぞ。」

「うん……て! お兄ちゃんもっ! 他の女の子と仲良く話すのやめた方がいいよ!? 穂乃果だって真姫ちゃんとか花陽ちゃんと仲良くなるのに時間かかったのに!! 1日でどうにかしちゃうお兄ちゃんはダメなのっ!!」

「え!? 穂乃果が苦戦したの!?」

 

「あ、うん。あはは……じゃなくて!! お兄ちゃんは女の子の心つかむの上手いんだから、仲良くお話しするのはダメっ! 分かった!?」

 

 どうやら、俺は対女子とのトークスキルには長けてるみたいだ。よかったよかった……じゃないわ。

 

「あ、あぁ、わかったよ。でも一切話すなって言うのは無理だぜ? それはさすがに話しかけてくれた側が可哀想だからさ……」

 

 さすがに話無しで学校生活を送るっていうのは無理だからな。

 

「……じゃあ、μ'sのメンバーだけは、穂乃果が見てるときはいいよ? でもそれ以外はダメっ!! お兄ちゃんのこと好きになられたら困るもんっ!」

「え、困るの?穂乃果が?」

「あっ! そ、それは、その……ほら! お兄ちゃんは穂乃果と雪穂だけのお兄ちゃんだから!! 他のお兄ちゃんになったらダメなんだよっ!」

「??? あぁ、わかったよ。穂乃果がそういうならそうするさ。」

 

 正直なんのこっちゃ分からなかったけど、穂乃果の言うことだ、守っとかないと嫌われそうだ。穂乃果に嫌われるのが、何よりも嫌だからな。

 

「えへへ、お兄ちゃん……♪」

「おっと……甘えん坊だな穂乃果は」

「えへへ♡」

 

 俺が穂乃果の無理やりな言葉に納得したと思ったら、俺にくっついてきて、スリスリしてきた。これは穂乃果からの『なでなでしてくださいアピール』のようだ。

 その証拠として。

 

「お兄ちゃぁん、んんっ。おや……すみ……」

「お、おい穂乃果!?」

 

 ほれこの通り、気持ちよくなって眠ってしまうんだからな。

 

 え、っていうかこれどうしよう。

 

 無防備にも俺に抱き着いた状態で、若干着崩れした服装の穂乃果。我が妹ながら、これにはさすがに少しだけドキドキしてしまうのが、俺である。穂乃果の柔らかそうな頬、ぷにぷにしたい。したい。でもしたら起きてしまうかもしれない。

 ぷにぷにしたい。

 したら起きてしまう。

 でもぷにぷにしたい。

 

 苦渋の決断の末、俺は――――

 

 

 

 

 

「ん、お兄ちゃん……?」

「あ、あぁ。起きたか穂乃果。」

「んん~! 寝ちゃってたんだ、穂乃果。」

「まあ疲れてるだろうさ。たまにはこういうのもいいしな。」

「?? こういうのって?」

「あぁいや! なんでもないよ!?」

 

 俺は何とかぷにぷにしたい欲求を抑えつけ、ただただ可愛い我が妹の寝顔を拝んでいた。よく耐えたぞ、俺。

 

「お兄ちゃん、穂乃果が寝てる間ずっと見ててくれたの??」

「あ? いや、漫画読ませてもらいながら、まぁ、ずっとこの部屋にはいたけどな。」

「そっか。えへへ♪」

 

 なぜか嬉しそうに微笑む穂乃果。普通気持ち悪がられるって周りからは聞いてるんだけどな。ま、それが穂乃果の可愛いところでもあるしな!

 

「お兄ちゃん……」

 

 穂乃果がこちらを見つめ、何かを言いたげにしている。なんだ?

 

「さっきのこと、ごめんなさい。穂乃果、お兄ちゃんが楽しそうにしてるの見ててすごく胸が痛くなっちゃったの。だからつい……ごめんなさいっ!」

「穂乃果……」

 

 なんだ、そんなことだったのか。

 

「いいよ、そんなの。俺の方こそ、ごめんな?」

「お兄ちゃん……うんっ! じゃあ仲直りだね!はいっ!」

「あはは、それもちゃんとやるのね? わかった――――」

 

 そうやって、昔からやっている仲直りの印、"ゆびきり"。昔から喧嘩して、仲直りするときは必ずこれをする。雪穂もおんなじだ。

 

「これからも、穂乃果のことよろしくね、お兄ちゃん!」

「あぁ、俺の方こそよろしくな、穂乃果!」

 

 一波乱あったけど、いつも通りの2人に戻れた俺らは、そのあとも穂乃果の部屋でずっとお話をしていた。やっぱり、兄妹は仲がいいのが一番だな!!!

 

 

 ところで、なんで穂乃果は俺が他のメンバーと話してただけで胸が痛くなったんだ? 病気か?? やべえよ!! それは早く病院に――――え、違うの?

 

 

「お兄ちゃん、これ」

「なんだゆき……うわああああああああああああああああああああああ!? なんでこれをお前が!?」

「お兄ちゃんがお姉ちゃんの寝顔ガン見してたのをこっそり写したんだよね~。あんなに騒いでたのに急に静まり返ったらそりゃ気になるでしょ。」

「ゆ、雪穂様……お願いですその写真を消去してくd「嫌だ」そんなああああああああああああああああ!!」

 

 その後その写真を穂乃果に見られました。でも穂乃果は怒ることなく、恥ずかしそうに俺の方をチラチラと見てきました。むしろ嬉しそうな表情にも見えた穂乃果に土下座をすると、なぜかもっと恥ずかしがられました。なぜでしょうか。

 妹の心は全く読めません。誰か助けてください。

 

 

 




(・8・)<ホノカチャン!!




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