今回ちょっとだけ作風を変えてみました。
割と本気で兄妹してます。
穂乃果ちゃんって最低で最高に可愛いじゃないですか。
それをこう、客観的に見たときに、その可愛さが引き立ちますよね。
穂乃果ちゃあああああああああああって叫びたくなりますよね。
あ、穂乃果ちゃんマジ天使です。
『キャー!! 絵里せんぱ~いっ!!』
『ことりちゃーん!! 可愛いよーっ!』
『凛ちゃんこっち向いて~っ!!』
『やっぱμ'sかっこいいよね~!』
『だよね~っ!』
「……うん。やっぱすげえわ」
ちょっとしたことがきっかけで招待されたμ'sのライブ、他の観客の声に飲まれながら、俺はステージのみんなを見ていた。
『お兄ちゃん!μ'sのライブあるから絶対来てねっ!』
そう言われて渡されたチケット、そこには"関係者特別席"の文字が。たぶん、穂乃果の兄であるという特権を生かしてくれたのだが、他のファンに申し訳なく思ってしまった俺はそれを断った。
その結果、俺のもとに来たチケットはアリーナの最前列……アリーナ、なんて言っても、会場はここ音ノ木坂の講堂。ほぼ関係者席と言ってもいいくらいにはライブを見るには最高の席だった。
今回は"校内限定ライブ"かつ"平日開催"、当然雪穂達はいない。それにも関わらず満席であるあたり、μ'sの人気の高さが伺える。
そんなμ'sのライブを、俺は最前列で見ることができている。
「みなさーん、こんにちわー!! μ'sです!!」
『うわあああああああああああああああああああ!!』
「私たち頑張って踊るから、みんなもついてきてね~!!」
『きゃああああああああああああああああっ!!!』
「すげえ歓声だな」
リーダーである穂乃果が挨拶するたび、客席からは大歓声。いつもほんわかしていて甘えん坊で、いつもだらだらしてる穂乃果とは全く違う姿に、俺は少しだけ寂しさを覚える。
あぁ、穂乃果はスクールアイドルなんだな、って。
でも、寂しさなんかよりよっぽど強く思う、かっこいい、って。
あぁ――――俺には到底手が届かないな、なんて。
妹のはずなんだけど、普段見られないそのかっこよさ、そしてアイドルとしての穂乃果を見るたびに感じるこの寂しさに、何も言えなくなる……これだからライブには行きたくないんだ。
「じゃあ早速ですが、次の曲やっちゃいます!」
穂乃果のコールに、ステージのみんなはその曲のポジションにつき、構える。
「それでは聞いてください――――"COLORFUL VOICE"!!」
曲が始まると――――ステージ上のみんなが歌い、踊りだす。歌詞のフレーズには何かしらの"色"が含まれる。
そう、この曲はμ'sメンバー各々の"色紹介"のような曲。
穂乃果であるならば、オレンジ。海未ちゃんであるならば、青。ことりちゃんであるならば、白といった具合に、各々のイメージカラーを歌詞に入れていて、聞いてて楽しくなる曲……穂乃果、本当に夏の日差し並みに明るい笑顔だよな。
そんなことを思っていた矢先
「ねっ!」
「っ!!」
ねっのタイミングで穂乃果と目が合ったかと思えば、俺に向けて笑顔からのウィンクをかましてきた……ったく、惚れるじゃねえかよ。
あんなに可愛く決めたウィンク食らったら、普通の男じゃまず落ちない男はいない。見慣れてるはずの俺ですら、これだからな。
今ではあんなにきれいに決まるようになったウィンクも、初めからできてたわけじゃない。
初めなんて片目閉じただけでプルプルしだすレベルでできなくて、俺が指導するレベルだった。『あーんお兄ちゃんみたいにできないよぉ』なんて、甘えてきていた時期が懐かしいとさえ思える。むしろ俺の方がアイドルに向いてるんじゃね? なんて戯言を言っては穂乃果を怒らせたこともあった。
けど、今ではあんなに可愛いアイドルをやるまでに成長した。
その過程を知ってるからこそ寂しくて、でも、それ以上に可愛く見えて。
「うおおおおおおおおお穂乃果あああああああああああ!!!」
柄にもなく叫んでしまっていた。当然女子が大半を占めるこの講堂で、男の声はひどく目立つのは分かっていたけれど、そんなのお構いなしだった。
「!!」
気づいた穂乃果が、自パートを歌い終えてすぐ、こちらに目いっぱい手を振ってくれた。ライブ中だぞ!? って突っ込めばよかったのに、その時の俺はその時の穂乃果の様子が嬉しくて。
目いっぱい、全力で手を振り返した。
「次が、最後の曲となります! ご来場くださったみなさま、ありがとうございました!」
穂乃果が、次の曲がラストの曲であることを告げると、会場から少しばかりの涙をすする音が。少しばかりの涙が、俺の目にも浮かんできた。
しかし穂乃果は、それを気にもしない様子で"笑顔"で話し出す。
「今日のライブは終わっても、私たちの活動はまだまだこれからです! みなさんが……誰か1人でも見てくれている人がいるのなら、私たちμ'sは輝き続けます! だから――――」
「輝き続けるμ'sを、これからも追いかけてください!!」
そのセリフと同時に、曲が流れだす。確かこの曲は――――
愛してるばんざーい、そうだ、これだ。
「明日もよろしくね」
穂乃果が、そう囁いた気がして。今の俺には染みる歌詞に思わず涙が、あふれ出た。
終わりの挨拶とともに幕が下りていくのは見えていたのだが、その挨拶も、曲の終わりも耳に入らないまま、幕が、閉じきってしまった。
「うっ……グスッ、うぅっ」
完全に泣き崩れてしまった俺はその場に座りこんで――――――――
「――――、お兄ちゃん」
しまう寸前で、前も涙で見えない、自分の泣き声で音も聞こえない状況で、確かに聞こえた"お兄ちゃん"と呼ぶ、その聞きなれた声と身体の温かさに支えられながら、涙でぬれた目を、何も言われずに、声の主から隠されながら。
その声の主にどこかへ連れていかれてしまった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あっ、穂乃果! あなたは一体どこへ――――光穂さん!?」
「……その声、海未ちゃんか?」
"聞きなれた声の主"に、涙でぬれた目を隠されたままだったから声しか分からなかったものの、その声の雰囲気と"穂乃果"と呼ぶときの力がこもった声で正体が分かった。
「な、なぜ目を隠されているんですか?」
「ちょっと目がかゆくなった」
「……は?」
海未ちゃんは"一体こいつはなにを言ってるんだ"と言わんばかりの口調で話すが、"聞きなれた声の主"はそれでも目を隠すのをやめない。
俺は、泣き顔を見られるのが嫌いだ。
それを知ってくれている"聞きなれた声の主"は、目を隠したままでいてくれている……本当に気遣いができる優しい子だと思うよ。
「お兄ちゃん、後ろ向いて?」
「……あぁ」
答えると、目を隠したままで身体を後ろ側に向けさせてくれた。
「手、外すからね?」
「……おう」
ゆっくりと俺の顔から温かな手が離され、まぶしい光が目に入り込む。わずかに濡れている目元を、横にいる"声の主"がハンカチで優しく拭いてくれる。
「ありがとう、"穂乃果"」
「……えへへっ」
いつも活発で、どちらかというとボーイッシュな印象を受ける彼女から、男心を分かったうえでやってくれるその気配りの細かさ。そして――――
「おはようっ、お兄ちゃんっ!」
眩しいくらいの、この笑顔。これだから目が離せない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「みんな、ライブお疲れさま。最高だったよ」
涙を何とか抑えた俺は、まだ伝えていないかった労いの言葉を贈る。するとみんなは、柔らかな笑顔でこちらを見てきた。
「ふふっ、ふふふっ! 光穂くぅ~ん♡ にこにーはぁ、光穂君のこと、みぃ~んな、知ってるにこっ♡」
「は?いや何を知って「光穂くん泣いてたにこ~♡」うわああああああああ!?」
いやちょっとまて。何でバレてるんだ?
「ねえ光穂くん、まさかバレてなかったとでも思ってるのかしら?」
「光穂っち~、うちらやって光穂くんのこと見てたんやで~??」
「なっ!?」
「いや、あれで隠そうって思うのが無理でしょ」
「にこちゃん並みに面白かったにゃ」
「ちょ、ちょっと凛ちゃんっ」
「でも泣いてる光穂さん、ちょっとだけ穂乃果ちゃんに似てたよね~♪」
「ええ、さすがは兄妹だなと思いました」
「お前ら真面目にライブしろよ!!!」
必死に穂乃果が隠してくれてたのにバレてたんだが。バレてるのは穂乃果にだけだと思ってたのにみんなにバレてたんだが!しかもいろいろと馬鹿にされてるんだが!!
……嘘だろ?
感動して涙が止まらなかったのもつかの間、次は冷や汗が流れ出してきた。
ふと我が妹の方を見る。
「あ、あはは……ごめんお兄ちゃん、バレちゃってた」
「……ふふっ」
下をペロッと出しながら、申し訳なさそうに謝ってくる穂乃果。小馬鹿にしてきたみんなを怒ろうかと思ったけど、ま、穂乃果の可愛さに免じて、許してやろうかな。
「やっぱりぃ♡ にこにーのあまりの可愛さにぃ♡ 泣いちゃったのかなぁ??」
「お前だけは許さない」
「ぬぁんでよ!?」
矢澤、許すまじ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「今日はライブに来てくれてありがとう、お兄ちゃん!」
「あぁ。最高に可愛かったぞ」
「えへへ~♪ あ、ウィンクしたの気づいてくれたよね!? どうどう!? 穂乃果のウィンク、決まってたでしょ!」
そう言いながら、また俺に可愛らしくウィンクを決めてくる穂乃果。
ばっちり決まってたぞ、さすがはアイドルだな!
そう、褒めてあげたかったんだけど、それを言ってしまうと、もう穂乃果は"完成したアイドル"と言ってしまってるようなものだ、なんていう風に思っちゃって、つい俺は――――
「まだまだだ。あんなんじゃ他のメンバーに負けちゃうぞ?」
心にもないことを言ってしまった。
ごめんな、穂乃果――――
「うん、そうだよね! だってみんな可愛いもんっ!」
「えっ」
予想外の言葉に面食らう俺。
「だってみんな、それぞれが個性豊かで可愛いし、女子力高いし、みんな本物のアイドルみたいなんだもんっ!」
「あ、あぁ、確かに可愛いけどさ」
「でも! 穂乃果だって一応アイドルなんだもんっ! 同じグループだけど負けられないよね!」
そうだ、これが穂乃果だった。どこまでも前向きで、明るくて
「あ、でも……」
そして――――
「お兄ちゃんが好きでいてくれるなら、それだけでいいかなぁ……なんてねっ♪」
どこまでも俺を惚れさせる、この可愛さ。
「さ、帰ろっ、お兄ちゃん♪」
これだから
橙色に魅入られ。
穂乃果ちゃんの可愛さって限りないですよね。
可能性の塊です。やばいです。
なんで私、穂乃果ちゃんのお兄ちゃんじゃないんだろう・・・
人生って世知辛いですよね。