兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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穂乃果ちゃん!ほのかちゃん?ホノカチャン!



にこにー(笑)と妹

「「お邪魔しまーす」」

「よく来たわね。さ、あがってちょうだい」

「うんっ♪」

「あ、あぁ」

 

 女子友達の家にお邪魔するっていうのは、実は人生初。相手が矢澤とはいえ、実はちょっと緊張してたりするのである。

 

 

 

 

 にこにー(笑)と妹

 

 

 

 

「あれ? 今日にこちゃんの妹ちゃんたちはいないの?」

「ええ。今日はマ――――お母さんと一緒にお出かけしてるわ」

「マ?? マってなんだい矢澤さん?? んん???」

「うっ……うっさい! いちいち聞き返すなっ!」

「にこちゃん、お母さんのことママって呼んでるんだね♪」

「だあああああっ!! 分かってるなら言うなぁっ!!」

 

 緊張してると言ったな、あれ嘘だわ。来て早々、穂乃果と一緒になって矢澤をいじるくらいには緊張してないわ。

 

「にこちゃん照れてる~♪ 可愛いねぇ、可愛いねぇ♪」

「ほのかあああああ!!」

「何言ってんだ、穂乃果の方が可愛いぞ」

「えっ! あ……ぅぅ」

「あら~穂乃果ちゃんったら照れちゃって! 可愛いわねぇ、可愛いわねえ!」

「もうっにこちゃん! 真似しないでよぉ!」

「でも穂乃果は可愛いから仕方ないよなぁ」

「そうよ、穂乃果は可愛いのよ。でもぉ♪ この天才美少女にこにーの方がぁ♪ スーパー可愛いにこ♪」

「ふっ、ふふっ、黙れ天才美少女にこにー」

「その含み笑いは何よ!?」

 

 矢澤をいじっていたはずがいつの間にか穂乃果をいじっており、そしてまた矢澤をいじるというこのなんとも言えないやり取りである。まぁでも、会話の内容はさておいて、この2人は世間からすればかなりの美少女。その2人を同時にいじることができる男なんておそらく俺以外にはいないのではないだろうか。なんだか幸せだ。

 

「でもまぁ、矢澤も何だかんだ世間からするとかなりの美少女だよな」

「えっ」

「まぁなんだ、いつもは適当な扱いしかしてないかもしれないけど、ちゃんと女子として見てるんだからな?」

「…………」

「優しいし、人のこと良く見てるし、立派なお姉ちゃんだよな」

「はぅぅ……」

「いつも穂乃果の面倒見てくれてありがとうな、素直に感謝してるわ」

「もうやめてぇっ! あんたにそんな風に素直に感謝されるとなんか身体か痒くて仕方ないのっ!!」

「あれれ~? 矢澤さん、もしかして照れてらっしゃいますぅ~?」

「はっ! ち、違うわよ!」

「あら~にこちゃん照れちゃって~♪ 可愛いね「あんたのそれはもう聞き飽きたわ!」」

 

 褒めたふりしていじる、これもまた一興。穂乃果も楽しそうにしているから、楽しんでくれてるのだろう。矢澤本人が楽しんでるかは知らんが。

 

「あれ? そういえばなんでにこちゃん家に来たんだったっけ?」

「あれ? なんだっけな……」

「あんたらがにこの料理食べたいって言ったから呼んだんでしょうが!!!」

「「あっ! そうだった!!」」

「ったく、この馬鹿兄妹は」

「「にこちゃん(矢澤)には言われたくないよ!」」

「ほんっとあんたら仲いいわね!!!」

 

 そうそう、俺ら今日矢澤に手作り料理食べさせてもらうんだったわ。忘れてた。にしても、だ。

 

「穂乃果と仲がいい? そんなの当たり前じゃん」

「そうだよにこちゃん! お兄ちゃんと穂乃果が仲がいいのはみんな知ってるよ!」

「なー穂乃果~♪」

「ね~お兄ちゃん♪」

「あぁ、自覚なしか」

「「え?」」

「……はぁ。料理作るから、そこのテーブルに好きに座ってなさい」

 

 なんか矢澤がすさまじく呆れていたが、なんだったのだろうか。気にしても仕方がないので、とりあえず俺らは矢澤の言われた通り、テーブルの椅子に座る。

 

「って!! なんで同じ椅子に2人で座ってんのよ!!」

「「え?」」

「2人して『え? 兄妹で同じ椅子に座るのって当り前だよね?』みたいな顔すんな!!」

「ふむ」

「やっぱりにこちゃんっておバカさんだよね……」

「いや~いやいやいやいや! どう考えてもあんたらの方よ! なんで向かい合って1つの椅子に座ってんのよ! どう考えてもあんたらの方が馬鹿じゃない!!」

 

 好きにテーブルに座れ、と言われたので好きに座っただけなんだけど……なんて言ったらまたいろいろ言われるからやめておこう。

 

「あんたら2人には呆れたわ。元から普通じゃないとは思ってたけど、まさかここまでとはね」

「黙れシスコンアイドルにこにー」

「それ確実に馬鹿にしてるじゃない! というかあんたにだけはシスコンって言われたくないわこのシスコン兄貴!!」

「いや~シスコンアイドル様にはさすがにかないませんわ~」

「もうそれただの悪口じゃない!?」

「本当のこと言っただけじゃんか。あ、矢澤の場合はシスコンな上にブラコンか。俺より重症じゃん」

「っ!? いやちがっ、確かに妹と弟がいるけどその言い方は違うわ!」

「嘘つけ。この前『うちの妹たちが可愛いのよね~♪』とか言ってたじゃねえか。シス/ブラコンアイドルとか結構新しいから絶対人気出ると思うけど?」

「あーもうっうるさいっ!! あんた私以上のシスコンじゃないっ! あんたの方が人気出るんじゃないかしら!? "シスコン兄アイドル"なんて肩書で!! 羨ましいわねえ!」

「ねえ二人とも?」

「ん?」

「どうしたのよ、穂乃果?」

「うん、あのね?」

 

 

「シスコンとかブラコンって、どういう意味?」

 

 

「「穂乃果は知らなくていいんだ(のよ)!!」」

「えぇ!? ずるいよぉ2人だけの秘密なんて~!」

「ダメだ! 穂乃果にだけはこれは教えられないんだ、わかってくれ穂乃果!」

「穂乃果だけは……穂乃果だけは純粋でいてほしいの!!」

「むー。でも2人きりの秘密なんて……穂乃果だけ蚊帳の外なんてやだよぉ」

 

 穂乃果が言葉の意味を知りたがっている。しかし、決して知られてはいけない。穂乃果はμ'sの中で数少ない生粋の純粋キャラ(のはず)。そんな穂乃果に"シスコン"や"ブラコン"などと言った『薄汚れた心を持った人間が持つ称号』を純粋キャラである穂乃果に吹き込んでしまったら最後、μ'sは薄汚れたグループになってしまう。

 決して、そのようなことがあってはならない。幸い、矢澤もそれを望んではいないようだ。ならここは矢澤と手をうち、穂乃果が知ってしまうことを阻止しなければ。

 穂乃果が目の前にいるため、俺は矢澤にアイコンタクトで会話をすることにした。

 

(矢澤、わかってんだろうな?)

(分かってるわ。穂乃果が知ってしまったらμ'sはまずいわ。)

(そうだな。薄汚れたやつらの塊になってしまうからな)

(あんたあとで覚えときなさいよ)

 

「もう二人ともっ!! なんで見つめあってるのっ穂乃果も混ぜてよおっ!」

「なっ!?」

「だ、誰がこんなクソアイドルなんかと見つめあうかよ!!」

「あんたついに普通に悪口言い出したわね!?」

「あ、ごめんつい」

「『あ、思わず言っちゃった』みたいなノリで悪口言わないでよ!? そろそろいくらにこでも泣くわよ!?」

「だーかーらー! 2人きりでお話しないでってばぁっ」

 

 どうやら矢澤と俺は息が合うらしい。特に案を出したわけでもないのに、"別の話題で話を逸らす"という手段で協力できている。ま、普通に俺が一方的に矢澤を罵ってるだけなんだけどな。

 

「はぁ。なんか疲れちゃったから、そろそろ料理してくるわ」

「あ、うん! 頑張ってねにこちゃん!!」

「穂乃果は俺とお話してような~」

「えへへ~♪ うんっ!」

 

 矢澤が、疲れたというていで強引にこの話を終わらせてくれたおかげで、穂乃果も機嫌を戻し、さっきまでのことを忘れてしまったようだ。助かった。

 

 

 矢澤が料理を作ってくれている間、俺たちは向かい合ったままお話をしていたのだが。

 

「お兄ちゃん」

「ん?」

 

 あの質問が、ついに再び来てしまった。

 

「シスコンって何?」

 

 質問されることはなんとなくわかってたんだ。

 

「あ~、それな」

 

 穂乃果と話してる間に、どう答えようかと考えてて良かった。

 

「シスコンっていうのはな?」

 

 あれこれ考えていたのだが結局、この答え方しかないらしい。

 

「俺が、妹である穂乃果や雪穂のことが大好きだってことだよ」

「えっ――――あ、うん……えへへ」

 

 下手に嘘つくのも嫌だし、とはいえ汚れてほしくもない。とすれば、語弊を生まない程度に素直に答えるのが一番いいよな。穂乃果も、そうとうご満悦のようだし。

 

「え、じゃあにこちゃんも穂乃果や雪穂のことが大好きだってこと?」

 

 ……素直に言いすぎて説明が足らなかったようだけど。

 

「シスコンっていうのは、要は妹が好きだ、ってことだ。だから矢澤の場合は、こころちゃん、ここあちゃんが好きだってことだな。ちなみに弟が好きなのをブラコンって言って、矢澤の場合はこたろうくんも好きだから、シスコンでかつブラコンってわけだ」

「んー? なんだかよくわからないけど、お兄ちゃんは穂乃果のことが好き、ってことで、いいのかな?」

「あぁ、それでいいよ」

「えへへ♪ 穂乃果も好きっ」

「ふふ、ありがとう」

「できた料理が焦げちゃうくらいにアツアツねあんたらは!!!」

「あ、にこちゃんお料理できたの!? やった~! 早く食べよっ♪」

「おい料理人。皿と箸がないぞ、早く用意しろよ」

「あんた絶対に復讐してやるわ」

 

 出来た料理をテーブルに並べていく矢澤。しかしながらいいタイミングだった。あれ以上もし聞かれていたら、おそらく俺は穂乃果を汚してしまっていただろう。そこらへんは矢澤に感謝だな。

 シスコンやブラコンの説明で、あえて"兄"と"姉"という単語を出さずに説明したのは、それをもし理解してしまうと本格的に穂乃果が汚れてしまうからである。

 たかが"ブラコン"や"シスコン"程度の説明でなぜそこまで、と思われるかもしれないが、こういうところから意識していないと、"いつの間にか汚れてました、てへ☆"ということになりかねないからだ。

 って、俺は誰に説明しているんだろうな。

 

 

「にこちゃん!! このスープすごくおいしいよ!」

「この炒め物も普通のとは違った美味しさがあるな……お前本当に矢澤なのか?」

「ふふん♪ 伊達に妹たちに振舞ってるわけじゃないってわけよ!」

「にこちゃん今度お料理教えてよ~! 穂乃果もこんな美味しいの作ってみたい!」

「ええいいわよ。任せなさい♪」

 

 矢澤が料理できる系アイドルだってことは知ってたが、まさかここまでのクオリティだとは思っていなかった……正直意外だ。

 

「ここまで美味しい料理作れるんだったら将来絶対結婚できるよな。ほんとすげえわ」

「えっ? け、結婚ってそんな……」

「ほんとほんと! にこちゃんのお料理食べた男の子は絶対にこちゃんに惚れちゃうよね!」

「ちょっ、穂乃果っ……そういうのほんと照れるからやめてよ……」

「正直俺も惚れたわ」

「えっ!? い、いきなりの告白は困るにこ~……なんちゃって」

「お兄ちゃんは穂乃果だけのお兄ちゃんだもん」

「もちろんだよ穂乃果。俺は穂乃果だけのものだからな」

「ん……えへへ♪」

「ちょっと!? あんたにこに惚れたって言ったばっかでしょうが!? なんですぐに浮気してんのよ!?」

「え? あぁ、確かに惚れたよ――――料理に。」

「ぬぁんでよぉ!?」

 

 矢澤の作ってくれた料理を味わいながら、そんな冗談を交わしあう。なんだかこうしてると、"本当の家族"って感じがして心が温かくなってくる。

 こういうのを、幸せっていうのかな。

 

 そのあとも3人でわいわいしながら、楽しい一時を過ごしたのだった。

 

 

 

 

 グループ名"μ's"のグループ内チャットにて

 

 ほのかだよっ:今日聞いたんだけど、にこちゃんとお兄ちゃんってね? シスコンらしいよ!

 ことり:わぁ♪ 穂乃果ちゃん、ついにシスコンって言葉覚えたんだね♪

 Rin:うわぁ……なんだか引いたにゃ。

 のぞみん:ついににこっちと光穂くんは穂乃果ちゃんに白状したんやね……!

 まっきー:さすがはμ'sの変人代表と穂乃果の兄ね。

 園田海未:明日にこには説教しておきましょう。

 かよ:こ、これはっ! 新しいアイドルの形が生まれましたっ!! さすがはにこちゃんっ!

 Ellie:まぁ妹って可愛いものよね。気持ちは痛いほどわかるわ!

 にこにー:あいつ絶対許さない。

 

 この会話が行われた次の日、俺と矢澤は海未ちゃんに縄で縛られ、東條にいじられ、真姫ちゃんに罵られ、凛ちゃんに引かれたのであった。

 なお、ことりちゃんにはニコニと見つめられ、花陽ちゃんには新しいアイドルの形について熱く語られ、絢瀬に関しては激しく同情されました。

 やっぱりこのグループっておかしいよな。

 

 

 




にこちゃん回です
にこちゃん大好きです、作中では散々な扱いしてますけどねw
にこちゃんにご飯を作ってもらって、穂乃果ちゃんと3人で一緒に食べたい

そんな欲望からこんな話が生まれたのですが、残念なことに料理食べる描写がすっごく短くなってしまいました。おかしいなぁ・・・

珍しいことに、雪穂ちゃんが一切出てきていないこと、気づかれましたかね?


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