俺の妹はスクールアイドル
「お兄ちゃん!」
ドタドタと階段を降りながら、俺を呼んでいる。
「お兄ちゃん! 勉強手伝って!」
「や・だ」
この慌ただしさ満載の可愛い女の子が
「えぇっ!? もうっ、お兄ちゃんのいじわるっ!」
うちの妹、
「べーっだ! お兄ちゃんじゃなくったって雪穂がいるもん!」
「お前年下に勉強教わる気なのか? プライドとかないの?」
「妹だから関係ないもんっ! それに雪穂は優しいからきっと教えてくれるもんっ!」
「あ、そう」
「ふんだ! 雪穂のとこいってお兄ちゃんの悪口言い合うんだから! じゃあねっ」
「えっ!? あ、待てほのっ……行っちゃったか……」
拗ねて雪穂のところへ行ってしまった我が妹。
さっき穂乃果が言っていたもう一人の妹
だが、雪穂はそんなに甘くはない。
穂乃果の拗ねてるところは可愛らしかったが、生憎雪穂も暇じゃないし、実の姉に勉強を教えてあげるはずがない。だからきっと、もうすぐ俺のところにきて――――
「おにいちゃあああああああんっ!! 雪穂がいじめてくるよおおおおっ!!」
「あーあー。もう、姉の威厳まるでなしじゃないか」
またしてもドタドタと降りてきた穂乃果は、降りてくるなり俺の胸に飛び込んでは、恥じらいもなしにわんわん泣いてしまっていた。もう、これじゃ穂乃果と雪穂のどっちがお姉ちゃんか分かんないな。
「はいはい、よしよし。良い子良い子~」
「んっ……えへへ♪」
抱き着いてきた穂乃果の頭をなでてやると、気持ちよさそうな声をあげながらスリスリしてくる。まるで犬みたいだ。
「よしよし……」
「ん~っ♪ お兄ちゃぁんっ♪」
「あ~よしよし。可愛いね~穂乃果ちゃんは」
「っ!? か、可愛いって……その……うぅ」
"可愛い"
その単語を出した瞬間表情が変わり、赤くなってうつむいてしまった……唐突に顔が赤くなる? 穂乃果の身体がほんのり熱い気がする……そして急に言葉数が少なく―――ってまさか!? この展開は漫画で読んだことあるぞ!?
だとすればこれは……!!
「穂乃果っ!」
「えっ……?」
「お、お前さあ」
「お、お兄ちゃん……?」
「風邪ひいてるだろ!? いつからだ!? 顔が赤くなってるし身体も熱いし、風邪がはやりやすい時期だからなぁ……って穂乃果?」
「もうっ!!お兄ちゃんなんか嫌いっ!!」
お兄ちゃんなんかきらいっ……きらい……きらい……
「うわあああああああああああああああああああああああ!!!」
「お、お兄ちゃん!?」
この後何度も土下座をして許しを請いました。どうやら風邪ではなかったみたいです。
じゃあなんで赤くなってたんだろう?妹心、兄分からず。つらい。
「ところで穂乃果、なんで急に勉強教えてなんて言ってきたの?」
「あ、うん! それなんだけどね!?」
そういって俺の目の前に顔を近づけてはすごい気迫で俺を見つめる穂乃果。うん、こういうところも可愛いぞ、穂乃果……なんて言ったらまた嫌われるだろうし、やめとこ。
穂乃果は若干興奮気味に、話し出した
「穂乃果ね、音ノ木坂でスクールアイドルやってるじゃん? でね! アイドル活動をしてるわけだけど、次のテストに赤点が1つでもあったら活動できないんだって!! ひどいよね!? 穂乃果、数学なんて毎回赤点なのに!」
「へぇ~、そういうことがあったのね~。って――――」
「スクールアイドルダッタノォ!?」
「知らなかったの!? 同じ高校なのに!?」
我が妹はどうやらスクールアイドルだったみたいです。
「もうっ、お兄ちゃんったら妹のやってることくらいちゃんと知っててよねっ!?」
「ごめんなさい、次からはストーカーしてでも穂乃果のこと見てるから」
「えっ? あ、うんっ……お願いね?」
「えっ?」
この申し訳ない空気を壊そうとして気持ち悪い発言をしたというのに、穂乃果は怒ったりするどころかストーカーするようお願いしてきた。なぜだ。
やはり妹心、わからずや。
「あのね? お兄ちゃん。」
「え、あぁ、どうした?」
穂乃果らしからぬもじもじとした態度で何かを話したそうにしている穂乃果。嗚呼、素晴らしきかな妹よ……
あ、シスコンじゃありません。
「穂乃果、お兄ちゃんにお願いがあるの」
「ん? なんだ?」
「あのね――――」
「これからスクールアイドルとして活動していく穂乃果を、どうか見守っててくださいっ」
情けない、非常に情けない。妹がアイドルを始めたのを知らなかった。実の妹なのに、同じ高校に通っていてなお、その存在を知らなかったことが。
そして、最愛の妹に、そんな当たり前のことを言わせてしまったことが。
「ごめん穂乃果。」
「えっ?」
「これからは、お前のこと、しっかり見てやるから」
「お、お兄ちゃん……」
「穂乃果」
「お兄ちゃん……!」
「穂乃果……!」
お互に見つめあう二人。そして、二人が同時に動き出し、そして抱き合いながら――――
「おーいそこの二人~。家の中でイチャイチャしないでくんない?」
「あ゛?」
「ちょっ! イチャイチャなんてしてないよ雪穂ぉっ!」
良い雰囲気になったところをもう一人の妹、雪穂がぶち壊す。
「なんだよ雪穂、いいところだったのに」
「あらら、それは残念だったね、お兄ちゃん。」
「ちょっと二人ともっ、喧嘩はダメだよぉっ!!」
にらみ合っていたところを穂乃果に止められたのでやめました。妹の言うことは絶対、これ常識な。
「まぁ、お姉ちゃんがそういうなら仕方ないよね。じゃあ私は部屋に戻るよ」
「あ、うん!」
荒らすだけ荒らして帰っていきやがりました。ちくせう、せっかく穂乃果といい感じだったのに……
あ、シスコンじゃありません。
って、そんなのはどうでもよかったんだ。
「穂乃果」
「ん、どうしたのお兄ちゃん?」
「アイドル活動、頑張れよ。応援してるからさ。」
これだけはちゃんと言っておきたかったんだ。せっかく妹が始めようって言ってるんだ、兄として、応援しないわけにはいかない。
「うんっ!ありがとうっ♪」
そう言って笑う穂乃果は、何よりも輝いて見えた。その瞬間思う。あぁ、ほんとに――――
俺の妹は、スクールアイドルなんだ、と。
これは、スクールアイドルになった妹と、その兄のお話。
あ、もう一人いるんだけどね。
「そいえば、なんでスクールアイドルなんて始めたの?」
「廃校を阻止するためだよ!!」
「えっ!? 音ノ木坂って廃校シチャウノォ!?」
「えぇっ!? そんなことも知らないなんて、お兄ちゃん最低っ!」
「ごめんなさいいいいいいいいいいいっ」
(・8・)<ホノカチャン!!
こんなぐだぐだっぷり満載な感じでやっていきます。
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