ジョニィは地霊殿のボディーガードをすることになった。
そして、ジョニィは最初に情報を集めることにした。
地霊殿の外。
とりあえず、僕は古明地 さとりについての情報を集めることにした。どう考えても彼女は怪しすぎる。
心を読むことができるようだが、ちょっとしたボケでジャイロに言ったことを知っているなんて。どう考えてもおかしい。記憶を見ることまでは無理だろう。
僕は入り口付近に車イスを置くと、スローダンサーを呼び、馬に乗った。
「とりあえず人里にでも行ってみるか。そこなら情報の一つや二つはあるはずだ」
僕は馬を走らせた。・・・屋敷の窓からその姿を彼女が見ていることも知らずに。
「さとり様ですか?そうね・・・ペットに優しいとか聞いたわ。名前はお燐とお空だとか」
人里に入ってすぐのところにある茶屋の前にいる女性に彼女について聞いてみた。
お燐は書斎に入ってきた猫耳の少女だろう。
「お空、というのは」
「確か鳥の名前だったかしら。お燐はよく町に来てるのを見るけど、お空は噂でしか聞いたことないわね」
「情報、ありがとう。この世界のお金があれば、何か頼んでいたが」
「その言い方・・・。もしかして、あなたも外の世界から来た人ね?」
「あなたもということは僕以外にも外の世界からきた人間がいるのか?名前を知っていたら教えてもらいたい」
「確か・・・ジャイロさんだったっけな」
「!」
僕は詳しく彼女に聞く。
ジャイロはどこにいる、今ジャイロはどんな状況なのか・・・僕はさとりがどんなやつなのか思いながらも、とにかくジャイロが心配だった。
「ジャイロさんは確か・・・地上で異変と戦ってると思うわ。この前の新聞に出ていたし」
「その新聞を見せてくれないか?」
彼女は店の奥に行くと、何枚か新聞を持ってきた。
新聞の見出しにはジャイロが写っていた。
「生きているのか、ジャイロは」
「その新聞、よかったらあげましょうか?」
「ありがとう。あとでこの世界のお金が入ったら必ずお礼しにくるよ」
そう言うと、僕はその店から消えた。
「・・・とりあえず、あの偽の新聞は渡しましたよ。さとり様」
「ご苦労様。さすがこの里一の茶屋ね、その店員もまた優秀。ジョニィさんの考え的にここに来ることはわかっていたわ」
茶屋の奥から現れたのは、今さっきまで地霊殿にいたはずのさとりだった。
最初から彼女とこの茶屋は繋がっていたらしい。
「やっぱり人間の心を読むのは楽しいわ。特に彼のような純粋に生きる人間の心は・・・ね」
「本当に策士ですね。ここでジャイロさんの情報を知らせることで、彼に希望を見せて、ボディーガードとしての仕事をさせる・・・ということですか?」
「えぇ。また、柱の男が来るかもしれないしね」
「柱の・・・何ですか?」
「いや、あなたには関係ないわね」
さとりは団子とお茶の分の金を机の上に置くと、茶屋から出た。
「それとあなた、私の妹を見なかった?」
「見てませんが。」
「そう・・・今日はありがとうね。また来るわ」
さとりは店員に背中を見せると、ジョニィの行った方向へ歩いていった。
店員はそれを見送ると、皿と湯のみを片付ける。
「ねぇ、ここにお姉ちゃん来たよね?」
「!・・・あなたは」
人里を少し離れた場所にある静かな森のなか。
ジョニィは考えていた。
さとりのこれといった情報はなく、今わかっているのは、二匹のペットがいること、妹がいること、読書家だということ、それくらいだ。
そしてあのあと、ジャイロの話を全く聞かない。
ジャイロのことを知っていたのはどうやら、あの看板娘くらいなのだろうか。
ジョニィが馬に乗っていると、見たことのない男が話しかけてきた。
「そこの旅のもの」
杖をつき、目を閉じている。そして、服装が他の人間と違うものだった。
赤と黒のボーダー柄のベストに白のタンクトップ。その上に暑そうなマントを羽織り、頭には白いねじり巻いたバンダナをしている。
どうみても怪しい。
「俺の名はンドゥール。地霊殿にようがあるのだが、場所を知っているか?」
「・・・」
普通なら教えるが、今はボディーガードを頼まれている。さすがにこんなにも怪しければ、理由を聞くのが普通だろう。
「どうしてそこに?」
「?・・・そこの主人に用があってな」
「一つ引っ掛かる部分があるんだ。旅のものという部分。もしも、旅のものなら地霊殿の場所を知らないという確率がある。むしろ、そっちの方が高い。なら、どうして旅のものにそれを聞く?」
ンドゥールは唇を噛むと、僕から少し離れる。
「なるほど。面白いことを言うな・・・そういえば、理由を聞きたがっていたな。それはそこの主人を倒すためだ!」
ンドゥールは杖を地面に向かって突く。すると、杖の地面に当たった部分から、水でできた手のようなものが、僕に向かって飛んできた。
「タスクッ!」
爪弾は僕の指先から、水の手を相殺するように飛んでいく。だが、水の手はそれを弾くと、僕の腕の横を飛んでいった。
「うぐっ!」
右腕に切り裂かれたような痕が残る。
どうやら、あの手にはそれほどの威力があるらしい。
「お前の動きは手に取るようにわかる!目が不自由だが、耳で相手の場所から、その心情までわかるぞ!今の攻撃で身体を傾けたな?」
僕は体勢を維持できずに落馬する。
地面に草が生えていたから反発材になって助かった。
あの手がスタンドか。まさか、ジャイロもこんなやつと戦っているのか?
「今、落馬して茂みに落ちたようだな!だが、その程度じゃ身を守ることはできない!」
ゲブ神の水の手はその鋭い爪で草むらを切り裂いて、僕の目の前へ現れた。
この手を倒すことは不可能に近い。今は本体を狙わないと!
「今、こちらにその『タスク』とやらを向けたな?音の感じ、銃弾のようなものを飛ばすスタンドみたいだな」
水の手は僕の前でUターンすると、ンドゥールの前で盾を作った。
ンドゥールは座り、耳に杖を当てている。
「そんな盾、突き破ってやる!タスク!」
「チュミミミーンッ!」
タスクは進化し、ACT.2になり、爪弾は強化される!
「その鳴き声がタスクか」
水の手は盾を作りながらも、僕の方へ飛んできた。
爪弾は水の手をつ貫くと、盾をも貫いてンドゥールの耳を貫いた。
「ぐぉっ!」
さっきまで杖を耳に当てることで、僕の足音や、タスクの振動音を聞いていた。
こいつの武器はスタンドと『耳』だ!
「今ので耳が!」
「タスク!」
次の爪弾はンドゥールの杖を弾き飛ばす。
「やったぞ!」
杖のなくなったンドゥールは弾き飛ばされた勢いで、後ろに倒れ、あわてて杖を探し始めた。
「もう終わりだ、ンドゥール!」
「あぁ、終わりみたいだな」
次の瞬間、水の手はンドゥールの頭を貫いた。
「何をしているんだ!なぜ、自身を殺す!」
「死ぬのは怖くない。しかしあの人に見捨てられ、殺されるのは嫌だ。」
「何を言ってるんだ・・・」
「悪には、悪の救世主が、必要、なんだ・・・フフフ」
ンドゥールは金色の光になって消えてしまった。
あのときみたいに・・・。
「おい、アンタ。こんなところで何してんだ?」
そこに調度通りかかったのは勇儀だった。
勇儀はどこかへ行ってきたのか、少し大きな紙袋を抱えていた。
「おい!右腕のそんな大きい傷!早く、帰って消毒しないと」
「勇儀。この里で一番偉いのは誰だ?」
「んー。たぶんさとりじゃないか?」
そのとき、確信した。
さとりが全てを握っていると・・・