幻想回転録   作:駿駕

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あらすじ
第四の爆弾を得た吉良 吉影は爆発するゾンビで地底を襲う。
だが、仗助の犠牲と勇儀の力によって吉良は倒れる。
そしてゾンビは一斉に爆発し始めた。


ジャイロ、ジョニィを救い出せ
新しい場所で


「な、なんだ!?」

 

地霊殿の周りで不可解な爆発が起き始めた。

まさか、地霊殿の近くにいたゾンビが一気に爆発しているのか!?

爆発の影響で、大地震のような揺れが地霊殿を揺らす。

「きゃあッ!」

さとりはその揺れで転んでしまう。

「危ない!」

揺れによって落ちてきた蝋燭が、さとりに襲いかかる。

さとりの肌に垂れた蝋燭の蝋は、俺のオリジンで治すことができた。

「あ、ありがとう・・・ございます。」

「・・・嫌な予感がするぜ」

俺はこの揺れに興じて、何かがこっちに向かってきているような気がした。

「・・・そこだッ!」

俺は何かの気配を察知して、鉄球を投げた。

空中で鉄球は何かに跳ね返る。

そこにはここに来るときに見た空間の裂け目があった。

「ぐ、さとり!逃げろ!」

「でも、ジャイロさんは・・・」

「俺は大丈夫だ。・・・今度は平和になった地霊殿に遊びに来るぜ、俺の愛馬と共にな」

「ジャイロさん・・・」

俺はそのまま空間の裂け目に飲み込まれてしまう。そのときわかったのは、裂け目にリボンのようなものが付いていたこと。そしてその中に、誰か人がいたということだ。

「ぐ、うわぁぁぁぁぁッ!」

 

 

ここは・・・いったい・・・

目の前に映った景色は、赤みのかかった紫色のような壁に無数の目が開き、こちらを見ているという、なんとも肝を冷やすような空間だった。

「今回の異変も解決おめでとう・・・ジャイロ・ツェペリさん・・・」

「誰だ、テメェはよぉ。そしてここはどこだ!」

俺は鉄球を手のひらで回す。

女はその手に傘を握り、こちらを見て少し微笑んでいる。余裕じみた表情をしている部分、相当の実力者のようだ。

「私は八雲 紫。あなたの相棒、ジョニィをこちらの世界に送った妖怪と考えていいわ」

「ジョニィを知ってるのか?・・・まぁ、今はそんな情報どうでもいいがな」

「まぁ、今は霊夢のところで地上がどうなっているのかを見てもらった方が早いかもね」

「うぉッ!?危ねぇ!」

俺は足元にできた空間の裂け目から逃げる。

だが、二段構えの罠によって、俺は逃げることができずに、そのまま空間に入ってしまった。

「畜生ォォォォッ!」

「ふふっ、楽しみにしてるわ。ジャイロ・ツェペリ。」

 

 

「ッ!痛ててて・・・ここは!」

落ちた場所はとある屋敷の庭園の池で、俺の横を錦鯉が泳いでいった。

オレンジ色の瓦葺きが特徴的な建物は、中国の霊廟のような雰囲気が出ていた。

「太子様!侵入者ですぞ!」

俺に気づいてきたのか、二人の女が池の前に立っていた。

一人はこちらを見て、両手に皿を構え、もう一人は動じることなく、目を閉じて立っていた。

「落ち着いてください、布都。まだ、彼が私たちに危害を与える人間と確定したわけではありません」

太子様と呼ばれたクリーム色の髪の毛が斜め上に逆立った女の方は、もう一人の女を布都と呼び、肩を掴む。

「太子様がそういうのなら・・・」

布都は構えるのをやめ、こちらに歩いてきた。

「お主、名前をなんと言うのじゃ?」

「俺はジャイロ・ツェペリだ。異変を解決しにここに来た。」

とでも言っておけばなんとかなるだろう。

「で、お前の名前はなんだ?」

「我か?我は物部 布都じゃ。そして・・・」

布都はその場から跳んで太子と呼ばれる女の横に立つと、どこからか持ってきた桜吹雪を太子の周りに撒き散らした。

「この方が、この神霊廟の創設者の豊聡耳 神子、太子様じゃ!」

「布都、やめなさい。先程、あなたは異変を解決しに来た、と言いましたね?あれは何かの冗談ですか?」

「・・・なぜ?」

「なぜ、というのは私や布都といった、私の決めた方しかこの世界には入れないですから。あなたは確か、紫さんの結界で入ってきたんですよね?」

「あぁ、そうだが」

「あなたが初めてなんですよ。幻想郷の住人以外で、この世界に入ってきたのは」

「だから、異変が起きないと・・・」

俺はこれまでたくさんの侵入者を見てきた。全員、神出鬼没、どこから出てくるのかわからない。

もしかしたら、すぐ近くに潜んでいるという可能性もないわけではない。

「とりあえず、体を乾かしてみてはどうでしょうか?風邪を引いてしまいますよ」

「さすが太子、心が寛大で」

「沸かせるのはあなたですけどね、布都」

「そ、そんな~~~」

 

風呂に入っている間、身体中の傷をオリジンで治していた。たまに傷に染みるため激痛がはしる。

「ったくよ、地下にいる間はずっと戦いだったからな」

傷を治している間、ずっと仗助の顔が思い浮かぶ。

「クソッ!」

俺は壁をおもいっきり拳で叩く。

「ど、どうかなされたか!」

外で布都が驚くのがわかった。・・・というより、なんで布都がいるんだよォ・・・。

「おい、俺はァ別に文句は言わねぇけどよォ・・・なんで外にいるんだ」

「それは太子様にお主を見てろと言われたからじゃ。今は風呂に浸からせておるが、危険だと思った以上、いつでも殺す準備はできておるのじゃぞ」

「わかった、わかった。俺は悪モンじゃあねぇぜ、むしろ、異変を何個も解決したヒーローだぜ」

「異変と?・・・じゃがお主の格好的に、どうも怪しいんじゃ」

「まぁ、警戒するのは仕方ねぇよ。俺はこっちにきて色んなヤツに会ったことで、警戒ってのは無くなったからなァ。」

「なるほど・・・慣れというもんじゃな」

「慣れか・・・」

あの世界にいる間、俺は色んなヤツに攻撃され、命を失いかけるときもあったが、今はこうやって生きている。女神に好かれてるのか、死神から逃げてるのか。

「おい、布都。太子様が呼んでるぞ」

「何!わかった、すぐに行こう!それじゃ、屠自古頼むぞ」

「頼むぞって・・・」

見張り番が布都から屠自古という女に変わる。

屠自古はため息をつくと脱衣室から出ていく。まぁ、いつ出るかわからないのに、脱衣室で見張っているというのとおかしいことだろう。

 

俺は用意されたこっちの世界の服に着替えると、脱衣室から出た。そこには緑色の服を着た女が待っていた。

「アンタが侵入者か」

「侵入者呼ばわりか・・・まぁ、良いけどよォ。俺はジャイロ・ツェペリだ。」

「アタシは蘇我 屠自古。よろしく」

屠自古は俺の手を握ると、何か電気を流す。俺はその電気で少しだけ目を覚ました。

「なんだ、電気か?」

「アタシの能力だ。それなりに鍛えているのか?」

「これでも何千キロもの道なき道を馬で駆け抜けるレースに参加しているからな」

「すごいやつなんだな。とりあえず、腹が空いただろう。飯が用意できている、食べていくといい」

屠自古は歩き・・・出し・・・え?

「お、おい!お前、足が」

屠自古の足はなく、根野菜のような足が伸びていた。

「あ、言ってなかったな。アタシは亡霊だ。だから足はない・・・そんなに珍しいのか?」

「何でもアリだったんだよな、ここは・・・」

 

広間に出た俺は用意された席に座る。

まだ料理はなく、大きなテーブルにその上を拭く布巾と箸だけが置かれていた。

「少しだけ待っていてください。すぐに運ばせるので」

「俺も手伝うぜ、早く喰いたいからよォ」

「いえ、あなたはあくまでも客人です。客人に運ばせるなんてことできませんので」

「そうか、なら待ってるか」

少し経つと、布都と屠自古が一皿ずつ料理を持ってきた。

魚を焼いたものにご飯とおひたし、そして味噌汁か。

「すまんな、ご馳走じゃなくて」

布都が笑いながら、料理を運んできた。

「いや、むしろ食えるだけありがてぇよ」

「夕飯はもっと良いものにするからな。こんなもんじゃないぞ、太子様いいですよね?」

「布都が食べたいだけでしょう?別に構わないですが」

「布都は人一倍食うからな、だから最近体重が増えて」

「屠自古言うなーーーッ!」

「布都に構わず、さぁ食べてください」

「おう、それじゃ、いただきます」

俺が箸を持って手を合わせたとき、広間にもう二人部屋に入ってきた。

「ごめんなさい、少し時間がかかっちゃいまして」

「遅かったですね。もう準備はできてますよ」

一人は水色のワンピースに青い髪と上から下まで寒色で統一された女。そしてもう一人は両腕両足をピンと伸ばし、ピョンピョン跳ねながら広間に入ってきた。

「おや、そこの殿方は?」

「言ってなかったですね。異世界のジャイロさんです」

「あら、異世界からですか。私は霍 青娥といいます。で、こちらはキョンシーの」

「芳香だぞー!」

「よ、よろしく。」

思ってたよりもハイテンションなキョンシーに驚く。

キョンシーという物の存在は昔読んだ中国の小説に書いてあったが、まさか本当にいるとは思わなかった。確か仙術で操る死体のことだっけな、うろ覚えのためあまり覚えてないが・・・。

「キョンシーってことはやっぱり関節とか曲がらないのか?」

俺は興味本位で芳香の肘を触ろうとする。

「さーわーるーなー!」

と言って拒否された。

「食事前に死体に触ろうとするとは・・・ジャイロさん、死にますよ」

「すまない、少し考えが甘かった。ごめんな、芳香」

「ぷいっ。」

完全に嫌われてしまった・・・。向かい側で布都が笑いを堪えているのが見てわかる。

「・・・みんな揃いましたし、さぁさぁ、冷めないうちにいただきましょう」

 

「「いただきます!」」

 

「ここは?」

僕はいつの間にかベッドの上に寝ていた。ここ数日間くらいの記憶がない。

近くにスローダンサーの姿はなく、身体中に激痛が走っていた。

「な、これはッ!」

「目が覚めたみたいですね。ジョニィさん」

「アンタはいったい!」

 

「私は霍 青娥。あなたは今日から私のコレクションの一つ。よろしくね」

 


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