二度敗北した吉良 吉影が復活。
そしてお燐は吉良 吉影に襲われてしまう。
お燐の部屋。
俺のスタンドで治したが、脳にまで傷が達しているため、そこまで治すことはできなかった。
仗助のように元通りに治せるわけではない。それにあんな傷跡に回転した鉄球を当てるのは激痛が走るに決まっている。
「すみません。ご迷惑をかけてしまい」
「んなことないぜ。・・・あのとき言ったことは本当か?」
「はい、確かに男は吉良 吉影と言いました」
店主の言っていた『内側から爆発でもしたかのように』という部分と、お燐の言った犯人の姿からして、確かに吉良 吉影だ。
だが、なぜヤツが生きているんだ?しかも、この地底に。
今はそんなことを考えている暇はない。それよりもヤツを探すことが目的だ。(遺体のことも忘れてちゃいけない)
「ジャイロさん、さとりさまには犯人のことを話さないでください。さとりさまに心配かけたくないので」
それは正直不可能と言っても過言ではない。
さとりの能力はこの十何日間見ていてなんとなくわかった。ヤツの能力は『心を読む』というものだ。
昨日のさとりとの会話で確信を得た。
「わかった。それじゃ、お大事にな」
俺はそう言って部屋を出た。
お燐は最後まで俺が部屋から出ていく姿を見ていた。
「ジャイロさん、お燐は大丈夫スか?」
階段を下りると仗助が待っていた。
「まだ頭が痛いってよ。俺の能力がお前みたいに、高度で繊細ならな」
「確かに回転している鉄球をその部分に当てることが発動条件となると、なかなか躊躇するッスね」
さらに長時間当てないと、その傷が深い場合は完治することができない。お燐の傷みたいに奥までとなると、鉄球を傷口に長時間当てなければならない。そのため、昨日はとりあえず表面だけを治し、仗助にあとは治してもらうことにした。
「それにしても遅いッスね」
「何がだ?」
「朝の話聞いてなかったんスか?次の遺体の場所が見つかったって話ッスよ」
「あー、それか。ニョホホ、次の遺体は何だろうなァ」
「遅いから聞きに行くッスか?」
「そうすっか~。」
俺はまた二階に行き、さとりの書斎へと向かう。
仗助は書斎のドアをノックした。前に何もせずに入ったら怒られたらしい。少女に怒られる不良と考える面白い図だが。
「入っていいッスか?・・・返事がないッスね」
仗助は書斎のドアを開けた。
「入って来ないで・・・」
「す、すまん!」
仗助はその声を聞き、ドアを閉める。仗助はさとりが服を着替えている途中だと思い、閉めたのだろうが何かおかしい。
あの声からしてさとりは、
「さとり!大丈夫か!」
何者かに脅迫されている。
「ジャイロさん・・・」
そこには白に黒い斑点模様の服を着た黒髪の男がさとりの首にナイフを突き付けていた。ヤツの右肩に何か見たことのない生き物がいるのに俺は気づいた。
「そこから動くなよ、動いたらこの女の首を切る!武器があったら今すぐ捨てろ!」
「ッ!・・・ったくよ、捨てるぜ」
俺は鉄球に回転を加えて下に捨てた。
男はその回転する鉄球を見る。それが後にアンタの顔に向かって跳んでくるとも知らずに。
「その鉄球、なんで回転してんだ!」
「さとり!頭を少し引っ込めろ!」
男がナイフをこっちに向けた瞬間、鉄球は勢いよく男に向かって跳んでいく。
「な、何だ!」
男は顔面と右肩に鉄球をくらって後ろに倒れた。右肩にいた生き物は男の肩から逃げたため、鉄球は肩に直撃した。
さとりはすぐにそいつから離れる。
「鉄球が、跳ねた・・・どうなってんだよ。・・・ロッズ!あの帽子野郎に撃て!」
見たことのない生き物は、男の後ろから姿を現すと何かをこちらに向けて何発か発射した。
「クレイジー・ダイヤモンドッ!」
俺とさとりの前に現れた仗助のスタンドはその放ったものを拳で撃ち落とす。だが、その中の一つがスタンドの右肩に刺さった
「ぐあっ、・・・な、なんだ」
仗助は上に着ている学ランを脱ぎ、右肩をみた。皮膚が青くなり始めている。
「彼の肩にいたあの未確認生物が放つ物体は、体温を奪うことができる。確かそうだったはず」
「なぜそれを知っている!」
「私にあなたの考えは筒抜けですよ。ここに来た理由は私の命じゃなくて金ですよね?」
男はさとりに心を読まれ、少しだけ後退した。
だが、ヤツの肩に乗る生き物はまだこちらを見ていた。
「ジャイロさん、今です!彼は動揺しています!」
「ニョホ、わかったぜ!」
俺は跳ね返ってきた鉄球を拾うと、拾ったままの姿勢でヤツに目掛けて投げた。
「俺は・・・俺は、アポロ11号なんだァーーーッ!」
男は急に声を荒立てると右肩から右手首までその生き物を移動させ、鉄球を投げ終えた俺に向かって弾を撃ち込もうとする。
鉄球はヤツの頭部を砕くように直撃し、ヤツの放った弾は俺の右腕に刺さる。そしてヤツはその勢いで地霊殿の二階から落ちてしまった。
「これで一件落着かァ?」
俺は鉄球の回転を右手から右肩にかけて残していたためか、奥深く刺さらなかった弾が右腕からポロっと落ちる。
「頼む。俺を休ませてくれェ・・・」
俺の右腕を仗助のスタンドが触る。右腕に開いた傷痕は少しずつ治っていった。
次の日、俺は男と共に窓から出ていった鉄球を拾いに地霊殿の庭を探索していた。
お燐が庭の手入れをしているのもあってか、清潔感あるとても綺麗な庭園が広がっていた。
そんなことも気にせず、俺は庭をくまなく探す。茂みのなかから噴水の中まで。
それでも鉄球は見つからない。
「二階から落ちたくらいじゃ、まだ生きているのかァ?でも、身体に影響はあるはずだが・・・」
庭園を探すこと数十分、俺は庭園の隅にあるものを見つけた。
「これは!」
そこには頭部のみが爆発し、胴体だけが残ったこの前の男の死体が置いてあった。他にも、あらゆる死体が置いてある。
「見てしまったのかい?」
後ろから声をかけられる。
そこにいたのは荷車を押すお燐が立っていた。
「こ、これは・・・何?」
「何って、これは死体さ。あたいの本職は死体運び、いわゆる火車なのさ」
お燐は荷車を置くと、男の死体に近づいて腕を掴んで持ち上げた。
「この男の名前はリキエル。頭部は損傷が激しかったから仕方ないね。まぁ、アンタがこれまで見てきたみたいにこの男も後々、光に包まれた消えていくさ」
たまにお燐からする鉄が錆びたような臭いはこれだったのか。
「まぁ、仕事してるから邪魔しないでくれ。・・・あ、そうだ!鉄球なら、お空が拾ってくれたってさ」
「・・・わかった。」
お燐はリキエルの死体とその近くにあった男の死体を荷車に積むと、鼻唄と共に俺から離れていった。
そこには俺と死体の臭いが残っていた。
「これだよね?」
前々から飯時にお空と会うときがあった。
お空はここ最近、仕事のために地霊殿の地下に潜って、ほとんど会う機会がなかった。
「それにしても、その鉄球。なんか懐かしい感じがしたな~」
「懐かしい?」
「私ね、ちょっと前に他の世界から来たって人と遊んだことがあったんだよね。確か、ジョニィって名前だったかな?」
「ジョニィ!?」
俺は不意に出てきたその名前に、おもわずお空の両肩を両手で掴み、前後に擦った。
「ここにジョニィが来たのか!?」
「あー、やめてー!苦しい、苦しいって!」
俺はお空から手を離す。
「で、ジョニィはここに来たことがあるのか?」
「来たことあるよ。あの下半身が不自由な人だよね?あのときは確かー・・・あなた達みたいにさとり様のボディガードでだっけな?」
「どうやってジョニィはここから上に帰れたんだ?」
「えっと、さとり様が勇儀さんに頼んだんだっけな?」
「なるほど・・・あの鬼が鍵だったのか。ありがとうな、お礼にチーズの歌を教えてやるぜ」
「なにそれ?聞かせて、聞かせて!」
俺とお空が地下で歌っている間の人里。
「君が星熊 勇儀・・・だね?」
私の名前は吉良 吉影。君の杯をいただこうじゃあないか。
次の日、血だらけの勇儀が人里の隅で見つかった。