あ、気づいてなかったですか?
今回はちゃんと竹林にした・・・はずです。
俺の投げた鉄球は吉良の軽い身のこなしによって避けられたが、狙いは後ろの柱に当てることだ。
柱に当たった鉄球は吉良に向かっていくはずだ。
「最も戦ったとしても、私は誰にも負けんがね」
柱はいきなり爆発し、そこから一気に発火する。
柱に跳ね返って、こいつに当たるはずの鉄球はその爆風によって火の海に飛んでいく。
「何があってここまでする!」
「君が戦うといったからだ」
植物のような心を持っているのか、こいつは火の海の中でもまるで何も起きていないかのように振る舞い、吉良の後ろに立つスタンド、キラークイーンに指示を出した。
「キラークイーン!第三の爆弾!」
そう言い、吉良は屋敷の敷地内から姿を消した。
「アイツ。最後に何か言ってたような・・・それよりも今はこの火を何とかしないと」
俺は火の海から鉄球を辛うじて拾うと、屋敷から出て、永琳らのところへむかう。
「あのスーツ姿の男はどうしました?」
「逃げられた。たぶん今は屋敷の外だ。それよりも、あの少女は」
「今のところ爆発する気配はないけど、もし彼の言うことが本当なら・・・」
永琳はそう言い、気を落とした。
「・・・そう言えば、どうして、てゐはあんなやつに追いかけられてたの?」
「帰る途中に話しかけられて、そのときアイツから色々と聞いたんだ。アイツの名前から色々と・・・。まるで」
次の瞬間、思ってもいないことが起きた。彼女は俺たちの目の前で内側から爆発した。
それを見て、俺はすぐに爆風に逆らい、彼女のところへ向かおうとしたが、煙の消えたときにはそれまで見ていた景色もろとも変わっていた。
屋敷の前だ。門が見え、月が見え、そしてその先に優曇華がいる。
何だこれは・・・時間でも遡ったのか?
俺は納得を優先した。どうしてこんなことが起きたのか。あの爆発は吉良のもの。だが、あの爆発に時間を遡る能力があるのか?
俺はそのまま屋敷へ向かわず、体を後ろへと方向を変え、長い階段を降りた。
「やつはこっちから来た。ならこの道を戻れば、やつに会うことができる。そして屋敷が火事にならずに済む」
俺は遡った時間が妹紅と別れた後だということを覚えていたため、まず妹紅に会い、この竹林から村までの生き方を教えてもらうことにした。
階段を降りてすぐの分かれ道を左へ進み、数分経つと金髪の男を見つけた。前にはウサミミの少女。間違いなく、吉良だ。
「フフフ、ここで会うとはな。運命に逆らうというのか・・・命を運んでくると書いて運命!よく言ったものだ」
俺は鉄球を取り出す。・・・そう言えばこの鉄球は火によって煤がついているはずだ。それに手の火傷した部分も回復している。・・・やはり吉良の言った『第三の爆弾』とは時間が遡る爆弾だ。
でも何が起爆剤に・・・。時限爆弾か?
「フフフ、悩んでいる顔だな。どうして元に戻っているのかってことか?バイツァ・ダストについて気になるのか?だが、君もまた死ぬ運命なんだ」
吉良は俺に手のひらが見えるように片手を前に出すと、片目を閉じる。
これは目標との距離を計るやり方!でも、なぜに今。そんなに俺とアイツの距離が知りたいのか?
「この世界に来たとき、キラークイーンの中に猫草がいるのを見た。なら空気弾が使える」
俺は鉄球の回転によって出た振動によって、何かがこちらに向かって飛んでくるのがすぐにわかった。これが空気弾か?
「点火!」
吉良がそう言った瞬間、俺の目の前でその空気弾は爆発した。
あの動作で俺との距離を計り、空気弾という爆弾をその距離まで飛ばす・・・なら、距離を計られなければいい。
俺は鉄球を両手に持つと、さらに振動で吉良の放った空気弾を察知させるために回転させた。
やつの放った爆弾は今爆発したのを合わせて、三つ!
「私の武器はこの空気弾だけではない!・・・いけ!シア・ハート・アタック!」
後ろに立つスタンドの左手の甲から飛んだ骸骨のついた戦車はこちらに向かって放たれる。
俺は馬に乗ると、前進し、吉良の横にいる少女の腕を掴み、そのまま馬に乗せる。
少女を乗せ、俺はそこから離れようとしたが、その戦車は俺の後を追いかけてきた。
「クソ!追尾弾か!」
戦車は強引にも俺を追いかける。竹を砕き、岩を砕き、俺の投げた鉄球をはじいた。
「あの威力、当たったら死ぬな」
「ちょっと、助けたのはありがたいけどいつまで、小脇に抱えているウサ!」
乗せたと言ったが、乗せたのではなく、こいつの言った通り、小脇に抱えている状態だ。
「俺の鞍の上には女神様が乗っている!他の女を乗せたら女神様が嫉妬する!」
「そんなの知らないウサ!早く乗せろウサ!」
少女の叫びは俺の心に通らない。
今は勝利の女神様の方が大事だ。
俺は屋敷の方へ戻り、門の先にいる優曇華を飛び越え、少女を屋敷へと下ろす。
「ちょっと、どちら様ですか!?勝手に入られたら」
「ここが火事になってもいいのか!?お前は!」
「は、はい!?」
どうやら彼女らに、遡る前に俺と会ったという記憶はないようだ。
俺はまた門から出ると、戦車を飛び越えて、また竹林へ入る。
「コッチヲ見ロー!」
「クソ!あいつまだ追ってくるのか!」
俺は吉良を横切る。吉良は不気味な笑いをしている。
「シア・ハート・アタックに弱点はない。標的は必ず仕留める・・・フフフ」
俺はとにかく来た道を戻っていた。・・・彼女に会えることを願って。
こっちの住人ならこれを止めることなんて。
俺はとにかく、先へ先へと進むと・・・願いは叶った。
「どうしたんだ?そんな早く馬を翔ばして」
勝利の女神様はまだ離れてなかったようだ。
「助けてくれ、妹紅!お前ならやつを倒すことができるはずだ!」
「やつって、あの飛んでくる不気味な虫か?」
次の瞬間、戦車は妹紅の前で燃えてしまった。
火を操るとか言ってたが、ここまでなのか・・・。
「コッチヲ・・・」
「まだ生きてるのか?タフな虫だな?一寸の虫にも五分の魂・・・か?」
燃えていく戦車を見ていると、片手に火のついた吉良が走ってきた。
「私のシア・ハート・アタックが燃えているのか!?」
次の瞬間、燃える戦車を妹紅は踏みつけた。
「ぐぁぁあぁあぁぁ!」
吉良の左手に足跡ようなものが浮き出る。恐らく、これも吉良のスタンドの一部で、痛みがもろにきているのだろう。
そして今ならやつは何もできない!
「俺の鉄球をくらえ!」
「キラークイーン!!」
吉良の後ろから現れたキラークイーンは鉄球を手のひらで止めようとするが、その回転によって、やつの手のひらにヒビが入った。
「ぐっ!回転が止まらない・・・だと」
「くらいな!鉄球の回転を!」
血だらけになった手のひらをみると、吉良はスタンドをしまい、竹林の中へ逃げ込んだ。
「この吉良吉影が切り抜けられなかった物事なんて一つもないんだ!どんなピンチも切り抜けてきた。必ず逃げ切って見せるぞ!」
「待てッ!」
「いや、追いかけなくていい。アイツは必ず、足を止める」
妹紅はそう言い、俺の足を止める。
「やつらは追いかけてこないようだ!」
次の瞬間、吉良はその先にあった落とし穴にはまり、抜け出せなくなってしまう。
「ぐぁぁぁぁあぁ!この吉良 吉影が!こんなところで!」
「ここらへんは兎によって掘られた落とし穴がたくさんある。気を付けて、進まないと足をすくわれるぞ」
「き、キラークイーン!こいつらを爆発させろ!」
「どうやら、終わりのようだな!」
次の瞬間、穴の奥から火柱が建つ。妹紅によるものだった。
「こんなところで負けるわけには!東方!東方 仗助を、この手で!」
「もうやめろ、吉良吉影。お前はもう負けたんだ」
最後の最後まで、あいつは俺たちと戦っていなかった。どこかの世界の東方 仗助と戦っていたのだろう。
「さて、帰るか・・・お前はどうするんだ?」
「永遠亭まで連れてってくれないか?ちょっと休みたいんだ」
☆
吉良吉影の姿はそこになく、夜の竹林から空に向かって、金色の光が昇っていった。
紅魔館に現れたDIOしかり、この吉良吉影しかり、どうやら違う世界のものがこの幻想郷で戦闘不能になると、金の光になって消えてしまうようだ。
もしかしたら帰っているのかもしれない。
面白い情報が撮れたわ。
「さて、新聞の記事にでもしようかな。見出しは『異世界の人間、ジャイロ。異変を二個も解決!』かな」
私はペンとメモ帳を胸ポケットにしまうと、竹林から飛び立った。
「ほう。この世界には空を飛ぶ人間がいるのか」
私はそのときはまだ知らなかった。新たな異変が近づいていることに・・・。