図書館にいたジャイロと仗助は、壁にできた裂け目に吸い込まれ、ある場所へととばされてしまう。
そこは幻想郷のある場所だった。
新しい仲間
ここは・・・いったい・・・
目が覚めると、空は真っ黒になっていた。
だが、熱というものがある。なぜか、ほっこりとした太陽光のような熱が・・・。
「そんなことはどうでもいい!ここはどこだ!」
周りは泥や土といった盛られた地面が広がり、あのときに巻き込まれた本や、本棚の破片がそこらへんに散らばっていた。
そのなかに仗助を見つけ、俺は頬を叩いた。
「おい、起きろ。」
「こ、康一・・・由佳子とは縁を切った方がいいんじゃあないか?」
・・・寝言だ。誰だ、その二人は。
「おい!起きろ!」
「な、何すか!ジャイロさん!ここは!」
「気づいたか・・・変な場所に送り込まれてよォ~。ここはいったいどこなんだ?辺りは土やら、泥やら・・・」
「ここ・・・畑じゃないっすか?ほら、あそこに白菜っぽいのがあるっすよ」
「白菜?・・・何だそりゃ。俺は食ったことねぇな」
そんなことを話ながらもここが畑と知り、静かにそこを出た。
あの本棚は置いていくしかないがな。とりあえず、仗助に治させるか?
「おい!そこの人間!」
女の声が聞こえる。
だが、その方向には桶が一つ置かれているだけで、誰もいない。
「ここ、ここだ!」
その桶はクルッとひっくり返ると、そこから少女が現れた。
白い服に上の方で緑の髪を二つ縛りした少女は、桶から体半分を飛び出し、こちらを指差した。
「その畑!私のなんだけど!その本とかどうしてくれるの!」
「こ、これには事情が」
「洞窟の外の畑に来てみたら・・・何でこんなこと!」
「う、どうすれば・・・」
「仗助、こいつには何を言っても無駄だ」
俺はわかっている。こちらの妖怪が人を食らうことを。
仗助はあの大図書館に現れ、外の世界をあまり見なかったせいか、この世界の妖怪の力を知らないはずだ。
「怒った妖怪には、これがてっとり早いぜェ」
俺は鉄球を出す。
仗助もそれを見て、拳を握った。
「な、何よ・・・何よ!殴るの!?」
「いやー、話が聞けないならよォ。これが一番てっとり早いからなァ」
「うぐぐ、なめられたものね・・・なら、こっちも妖怪として戦おうかしら・・・私の名前はキスメ!井戸の妖怪よ!」
「井戸の妖怪!こ、怖いっすね・・・」
仗助はそれを聞いて少しだけ後ろに下がる。
「こんな可愛らしい妖怪なら、まだマシだぜェ。仗助よォ、山とかにはそれはそれはグロ妖怪とか、怖い妖怪とかいたぜ。こんな野菜を食う妖怪なんか弱いに決まってるぜェ」
「言ってくれるじゃないか!なら、見せてやるよ!私の能力をね!」
桶と共に飛び上がったキスメは、桶のそこから青い炎を俺らに向かって放った。
「これが私の能力、鬼火よ!焼き肉になるがいいわ!」
「火!仗助ッ!これを殴れーーッ!」
俺は密かに拾っていた本棚の破片一つを、仗助に投げ渡す。これを殴れば・・・
「なるほど!クレイジーダイヤモンド!」
その破片は畑に散らばっている破片を引き付け、本棚という名の盾になった。
そして、こちらに飛んできた火の玉は本棚に当たり、爆発した。
「この本棚は普通のものとは違う。普通なら本と本は背中合わせで置かれる」
「だが、この本棚はその間に頑丈な木の板で境がある!考えたっすね、ジャイロさん!」
「それはよォ~、俺がアホとでも言ってんのかァ?」
とか何とか言いながらも、俺たちはハイタッチする。
ジョニィほどではないが、仗助とは息が合う。
「ぐぬぬ・・・、私の火を・・・なら!その本棚ごと燃やしてくれるわ!」
「それは無理な話だな!なぜなら、俺の鉄球はお前の桶に到達している」
この本棚は良くできている。なぜなら、俺の鉄球が通るくらいの穴があるからだ。なぜだかわからないが、本棚には器用なほどくっきりと穴が作られていた。
そこからは、奥に見えるキスメや、その先の空までも見えていた。
そしてその穴は砲台でいう砲口として使えた。
「な、なんだってーー!」
キスメの入っている桶は鉄球の当たった部分から、すこしずつだが壊れていった。
そして、中にいたキスメはそのバラバラになった破片と共に地面に落ちた。
「あとは仗助頼むぜェ~。殴るなり、蹴るなり好きにしろ」
「そーっすね。じゃあ・・・」
「ひぃぃッ!」
仗助はスタンドを出すと、桶の破片を殴る。すると桶の破片は治り、元の状態に戻った。
「これでいいのかァ?お前は」
「まぁ、一つだけやることがありますけどね」
仗助は前に出ると、腰を抜かして怖がるキスメの白装束を掴み、仗助の目線まで持ち上げた。
「ここがどこだかわかるか?具体的じゃなくていい、本当にだいたいの範囲でな。もしも、教えなかったら、この桶はまたバラバラになるかもな~」
「こ、ここは・・・ここは!」
「地底よ」
キスメとは違う声が俺たちの後ろに現れる。
その声はとにかく冷静で、冷酷だった。
「ここは今まであなたたちがいた世界の下に存在する世界」
「誰だ、お前は」
キスメくらいの身長をした、いやそれより少しだけ大きい少女。ピンク髪に左胸の辺りにある目が特徴的な女だった。
「私は古明地 さとり。ジャイロ・ツェペリさんと東方 仗助さんですね?お待ちしてました。」
「こいつ!何で俺たちの名前を!」
「慌てるな、仗助。今はその拳をぶつけるより、彼女から情報を得ることが先だ」
俺は仗助の前に腕を出して止める。
古明地・・・どこかで聞いたことがあるが、どこで聞いたか思い出せない。
「さとりって言ったな。どうして、俺たちの名前を知っているんだ?それとここはいったいどこなんだ?地底と言ったが」
「私はあなたたちの名前だけでなく、他のことも知っています。例えば・・・仗助さんのスタンドはクレイジーダイヤモンドという、破壊した物やエネルギーを修復させる力を持ち、ジャイロさんのスタンドは鉄球の回転ですよね?」
「・・・確かにあってる。だが、それだけではなァ?これまでの敵から情報を集めているなら」
「仗助さん、あなたのその頭、ダサいですねぇ。まるでハンバーグみたいですよ」
さとりはクスッと笑いながら、そんなことを言う。
ま、まさか・・・
「テメェ・・・今、俺の頭のこと何て言ったァ!」
やっぱりだ!こいつは、俺たちのことを知っている。仗助が頭を貶されるとキレることも!
「仗助!攻撃するな!」
キレた仗助は言うことを聞かない。
仗助の拳は我慢できずにさとりにむかって放たれた。
クレイジーダイヤモンドも重なって放たれた拳は早さと力、どちらを見ても通常以上の物が出ていた。
だが、さとりはそれを紙一重で避けた!
「二人には、この地底であるものを探してもらいます。ジャイロさんには、縁があるものですかね」
「縁?・・・まさか!」
「そう、遺体です。邪悪なる遺体を探してもらいます!」
☆
そして時は遡って、場所は白玉楼近くに移る。
「ッ!・・・やってしまった。」
ジョニィは頭を抱える。それもそのはずだ。
彼は殺人を犯してしまったからだ。
これまでレースの中で何人もの大統領の刺客達を倒してきたが、今回はそれと違う。
この屋敷、白玉楼の主人である西行寺 幽々子の執事であるプッチを殺してしまった。周りの人間であり、幽霊でもある幽々子や妖夢、永遠亭から薬の販売に来ていた優曇華も見ていた。
彼女達から情報が発信された場合、すぐに幻想郷内に回りそうだ。
ジョニィは草の茂みの中に自分の身と、愛馬のスロー・ダンサーを隠した。
「まただ。またあのときの、僕の内に潜む『黒い何か』が発現した・・・でも、まさかこんなところで使ってしまうとは・・・」
ジョニィの背後から、ガサッガサッと足音がやってくる。
ジョニィはそれに気づいたのか、背後に爪を向けた。
「な、何者だッ!撃つぞッ!」
「待て、僕は悪者じゃあないです」
胸の辺りがガバッと開いた服を身にまとい、額上部に筒が三つ並んだような髪型をした金髪の男が立っていた。
「お、お前は誰だ!」
「そんなに慌てないでくださいよ。僕はあなたの仲間です・・・
僕の名はジョルノ・ジョバーナ。あなたと同じ目的を持つ者です。