ジョニィは輝夜の知っている情報を吐かせるために、レースでの勝負を申し込むが、輝夜の能力の前で為す統べなく負けてしまう。
そして二回戦目。輝夜が持ち込んだ対決はジョニィの全く知らない世界『テレビゲーム』だった。
しかし、これではジョニィに勝機がないと考えた輝夜は助っ人の参加を許可する。
僕は人里をただ途方にくれながら、馬に乗っていた。
馬が行き先を決め、僕はただ乗っているだけだった。
勝負に勝つためには、あの四角い箱のことに詳しい人間を探さなければならない。だが、ここらにそれを得意とした人間がいるのだろうか・・・
とりあえず、他とは違う格好をした人間を探さなければならない。例えば、ネックレスや指輪といった高価なものを付けていたり、派手な洋服を着ていたり。とにかく、他とは違う人間だ。
そして数分後、ようやく他とは変わった人間を見つけた。
「あの、すまない」
「・・・あ、僕かい?僕に何かようかね?」
渋い緑色の服を着て、髪をピンク色に染めている。そして、耳にはさくらんぼのようなピアスをつけていた。
こんな昼間から、川沿いの椅子に腰掛け、本を読んでいるんだ。他の人間とは違う何かを持っているに違いない。
「君は、これくらいの白い箱のことをしっているかい?」
「?・・・何だい、それは」
「えっと、確か・・・思い出した、ゲームとか言ってたな」
「ゲーム・・・白い箱・・・そしてその形。もしかして、Wilのことを言っているのか!?」
「うぃ、ウィー?何?」
「あぁ。僕が気になっていたゲームだ!ここに来て、噂になっていて、どんなものかと思って、ある女に見してもらったんだ!君も見してもらったのかい?」
「あ、あぁ。それで、今度遊ぶことになって、助っ人を探しているんだ」
男はさっきまで読んでいた本を椅子に置くと、僕の手をガッシリ掴んだ。
「頼む!その役、僕にくれ!いや、ください!」
「・・・わかった!」
彼は飢えていた。とても気高く・・・。彼なら勝てるかもしれない!
「えっと、名前は」
「僕は花京院 典明。君は?」
「僕はジョニィ・ジョースター」
「!・・・ジョースターだと!?それじゃあ、君はジョセフ・ジョースターを知っているのか!?」
「すまない、全然聞いたことのないな名前だ」
「そうか・・・まぁ、Wilができるんだろ?それなら、着いていくよ」
彼の話によると、彼もまた俺たちと同じ、迷い込んだ者の一人のようだ。
彼はここに来る前、DIOという男と戦っている最中に、いつの間にかここに来ていたと言っていた。
「君もこの世界に迷い込んだのか?」
「あぁ。僕はジャイロを探しにここに来たんだ」
「ジャイロ?球種か何かか?」
「いや、ただの仲間だ」
花京院の表情は暗くなり、
「仲間か・・・。僕にも仲間がいた。同じ目標を持った仲間がね」
と言う。もしかして、仲間が死んでしまったとか、そういったことか?
聞いちゃいけないことを聞いてしまったか?
「そうか・・・で、話は変わるが、ゲームは得意なのか?」
「Wilはやったことないが、ゲームは得意な方だ。分野問わずね」
確かに、この人は本当のことを言ってそうだ。
だが、一つ、さっきから気になっている点がある。
何かに後をつけられているような気がする。
全てを監視され、こっそりとついてきている気がするのだ。
「どうしたのかね?さっきから、後ろばかり気にして。まさか何かが見えるのか?」
「い、いや。たぶん気のせいだ」
僕はタスクを馬の足の影に忍ばせると、後ろを見てもらった。
一瞬だが、緑色の何かが地面を這うようにこちらに近づいているのがわかった。緑色に光る何か・・・それは宝石のエメラルドにも似たようなものだった。
「何だ・・・何が・・・」
「もしかして・・・君は僕のスタンドが見えるのか?」
「!・・・今なんて」
その緑色の何かは後ろの屋台の影からスッと現れると、彼の方へ飛んでいき、彼の横に並ぶように立った。
「僕のスタンド、ハイエロファント・グリーンが見えているのか!?ということは、君もスタンド使いか!」
僕はタスクを呼び、左手の平に乗せた。
「これが僕のスタンド、タスクだ」
「ふっ・・・僕たちは何か、ひかれ合う何かがあるみたいだ。どうやら、敵と思っていたが違うみたいだ」
彼は僕に敵意を抱いていたのか。
そのスタンドがどういった能力を持っているのか。とても興味があったが、それを聞くのはやめた。
さらに敵意を抱かせるかもしれないからだ。
永遠亭の階段下で・・・
「ここが、あの人の自宅か・・・ずいぶん豪華な屋敷に住んでいるのですね」
「言っておくが、その女は憎たらしい気持ち悪い能力を持ったヤツだぞ。あまり、好意を持つのはどうかと思うくらいだ」
「ゲーム好きに悪い者はいない。もっとも、ルールを守ってやる者に限るがね」
だが、そんなことを言いながらも、花京院は少し奇妙に思ったのか、影からスタンドを出し、屋敷の敷地内に潜入させた。
「久しぶりだな。この感じ・・・」
その後、聞き取れなかったが、何かボソッと言ったのが僕にはわかった。
「何か言ったか?」
「いや、何でもない。それよりも、早くWilがやりたいな」
敷地内に入ると、すぐに庭園の真ん中にテーブルと椅子。そして、その上にゲームがあるのがわかった。四角い箱と平べったい板。
「おぉ!この感じ!これはまさしく、新型のものだ!」
「ジョニィ!彼が私の相手かしら?」
いつもの服とは違う、胴着のような服を着た輝夜が屋敷の奥から姿を現す。頭には赤いハチマキを巻いていた。
「・・・その格好は・・・ストバトのリュウだね?」
「あら、それなりにわかる人が来たのね。そうじゃないと楽しくないけどね!」
「?・・・何だ、そのストバトってのは」
花京院はため息をつく。
「ストバトってのは、言わば、対戦型格闘ゲームだ。この箱の中で、僕らが選んだキャラが戦うんだ。僕はこれが出てから毎日、ゲームセンターに入り浸って、知らない人と戦ってたね!」
一気にあの静かだった花京院は闘志を現した。
輝夜もそれに同調し、ハチマキを締める。
「さぁ!花京院 典明!戦おうじゃないか!」
「お互い、楽しいバトルをしよう!」
二人は拳を合わせる。そして、その平べったい板を持った。それには先端に球体がついた棒と、凸が何個かあり、二人の両手の指はそれに密着すると動かし始めた。
「僕は得意としていたガイルを使うとしよう。そういえば、僕の仲間にもこんなやつがいたな・・・」
「へぇ~。友達にガイルがいるなんて、面白いこと言うわね」
「まぁ、ガイルとは違い、剣術を得意とする男だったがね」
二人は笑うが、全く何を言っているのか僕には理解できなかった。
「私は今の服装通り、リュウを使うわ。愛用キャラでもあるしね。・・・それで、対戦相手を彼に呼んでもらったのは、ただただ強い相手が欲しかったの。私と対等に戦えるくらいの強い相手がね」
「・・・残念ながら、その願いは叶わないらしい」
「どうして?」
「なぜなら、このコントローラーは僕の手にフィットしている。そして・・・僕の方が強いからだ」
「面白いこと言ってくれるじゃない、そうでなくちゃ、相手にならないわ!」
キャラが決まり、二人の選んだキャラが一つの画面に映る。
一人は輝夜と同じ服装をした男。そしてもう一人は金髪に緑色の服を着た男。
「さぁ、本気でかかってきなさい!」
「君こそ・・・本気でかかってこい!」
僕はこの二人を前に完全に居場所が無くなった。
だが、僕にもやることはある。それは、彼を、花京院を応援することだ。
「花京院!勝てーッ!アンタなら勝てる!」
「外野は僕の方についているようだ」
「うるさいわね。こっちにだって外野がいるわ!ねぇ、優曇華!てゐ!」
「・・・えっと、悪いと思うのですが」
「いつもボコボコにやられてるから、これだけは敵ウサ!」
「アンタたち・・・まぁ、いいわ。外野は外野よ」
画面に『Fight!』という文字が大きく映り、それと共に、このステージの周りに置かれていた花火が発射された。
このとき、僕は思ってもいなかった。
本当にこの人たちは最強なのだということを・・・
花京院 典明
生粋のゲームヲタク。
あらゆるゲームを攻略し、熟知している。
特に格ゲーとレースゲームを得意とし、中学時代、毎日のようにゲーセンに入り浸っては、高校生や大人相手に勝負を挑み、何度も勝っていた。
さぁ、花京院は輝夜を倒すことができるのか・・・