幻想回転録   作:駿駕

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今回の話。
金の尽きたジャイロは射命丸 文からある情報を受けとる。そこには『報酬』の二文字が書かれていた。

正直、今回は四部のネタバレとなっているので、四部を見たことない方は戻った方がいいですよ。
まぁ、七部主人公の幻想入り小説を見ている方に、四部を見たことないって方はまずいないでしょうけど・・・ね。



爆弾魔を倒せ!

俺はまた金が無くなり、途方にくれていた。

 

報酬でもらった金は全て使いきり、一文無しの状況だった。どこかの記者は俺から情報を買うだけ買って、金を置いてかないしな。

「あやや。また会いましたね」

噂をしていれば、あの天狗か。

「なんだ?もう情報は無ぇよ」

「違いますよ。今日はむしろ情報を届けに来ました。お金のないジャイロさんにはとっておきの情報ですよ」

天狗は俺に一枚の紙を渡す。

「紅魔館に現れる爆弾魔を終え・・・?これのどこが、俺にとっておきの情報だってェ?」

「ここ読んでくださいよ」

天狗はその紙の下から三行目を指差してなぞる。

「何々?爆弾魔を捕まえた方には報酬として、それなりの金額を払いましょう。・・・だと!」

「はい。あの館のことですから、報酬はたんまりと貰えますよ!例えるなら、一週間三食うなぎでもおつりが来ますよ」

「それは飽きるが・・・しかし、これはやらなきゃな。サンキュ、文。取材料はチャラにしてやるよ」

「あやや。それは嬉しいですね(はなから払う気はありませんがね)」

「よし、それじゃあ行くぞ!」

俺は馬に飛び乗ると、すぐに紅魔館の方へ向かった。

図書館に行くことがあるため、道は聞かなくとも覚えている。

「あ、待ってくださいよ~」

 

数十分後、俺と文は紅魔館にたどり着いた。

門の前に愛馬を止め、重たい扉を開けて中に入る。

門番はいつも通り、門の横で壁に寄りかかって寝ているため、一回一回何か許可を取らなくて済むのだ。

そして、文は俺が扉を開けている間、上から門を越えて入り、俺が入るのを待っていた。

「そういえば、ここの主人の書斎や部屋に入ったことはないな。図書館や倉庫には入ったことがあるが」

「逆に倉庫の方があり得ないです。まずはこの依頼についての話を聞きましょう」

この館内はとにかく迷路のような空間が延々と続いていると言っても過言ではないくらい広い。

ここに勤めているメイドはこの空間を知りつくし、迷うことはないらしいが、普通の人間はまず入るとすぐに迷ってしまうだろう。

そして文の情報によると、この館内のく空間の何ヵ所かはおかしいことになっているようだ。同じところを何度も歩いていたり、ある扉に入ると、その向かいの扉から出るという現象が起きているというのも聞いている。

「とりあえず、咲夜さんを呼びましょう。・・・あ!ここに吸血鬼姉妹の秘蔵写真集が」

「買ったッ!」

それは一瞬の出来事だった。さっきまで誰もいなかったはずの目の前の空間にいきなり、メイドが現れたのだ。俺はこの女を知っていた。DIOにこの館を襲われたとき、ケガを負っていた女で、青に白い星が書かれた鉄球を貰ったのを覚えている。

女は『騙された』というような顔をすると、ため息をついた。

「なんだ、カラス天狗と・・・確か、ジャイロさんでしたよね?」

「あぁ、この紙を見てここに来た。」

俺は文が丸めて握っていた依頼の紙を元に戻し、咲夜に見せた。

「・・・確かにこれはお嬢様の字だわ。でも、ここ最近、人里や妖怪達にこんな紙を配るように言われたかしら」

「あやや。爆弾魔の前に、差出人不明の手紙ですか」

「手紙?お前の家の届いたのか?その紙は」

「詳しく言うと、受け取ったって感じですね。いつも通り、配達人が来て、何も言わずに渡して帰ったんですよ」

「・・・その配達人も怪しいな」

「とりあえず、お嬢様に聞いてみるわ。少し待ってて」

 

数分後、咲夜が帰ってきた。

彼女の能力は時を操る能力のため、移動は全て時の止まった時間で行う。そのため、瞬間移動のように俺たちには見えるのだ。

「おまたせ。この手紙、お嬢様は出していないみたいよ。でもここ最近、紅魔館に爆弾魔が現れるのは本当のことだわ。この前も館の一部を爆発させられたしね。まぁ、パチュリー様とその使用人が直してくれたから良かったけど」

使用人というのは、この前の東洋人、東方 仗助のことだ。そしてその能力は違う世界にいた頃のものに近づきつつあるという。

「ニョホ。面白くなってきたじゃねぇか~」

「・・・よく笑ってられる余裕があるわね。まぁ、報酬は出すって言ってたわ。美鈴と一緒に、門番でもしてれば出てくるでしょう」

咲夜は見下したような顔をすると、また姿を消してしまった。あの顔、ムカッ腹が立つぜェ~。

何て言うか、マウンティムを初めて見たときのような感情だ。

「それにしても、咲夜さん。何か急いでましたよね。何て言うか、私たちを相手にしていないみたいな」

「そうか~?俺には俺たちを嘲笑ってるようにしか見えなかったね。見下してるというかな~」

「まぁ、報酬は報酬ですよ!ジャイロさん、報酬は私の方が少し多めでいいですよね?ほら、情報料として」

「お前、それなら貰ってない分の取材料を要求するぜ!」

俺たちはそんなことを話ながら外へ出た。

「へぇ~。爆弾魔か・・・私のおもちゃになってくれるかな?その人なら」

そのときは、まだ誰かに見られているとしか思ってなかったが、そいつのせいで、地獄を見るハメになるとは思ってもいなかった。まさか、そいつがあの男と組むとは・・・。

 

門から外へ出ると、そこで門番をしている(寝ている)女が起きていた。

「話は聞いてますよ。爆弾魔をこらしめるってことですよね?もちろん協力します!」

女の名前は・・・確か咲夜が美鈴とか言ってたな。

それよりも、

「お前、額にナイフ刺さってんぞ」

「あ、抜くの忘れてました。これは咲夜さん流の私の起こし方なんですよ。肩を叩いても起きないからって」

「そうなのか。まぁ、よろしくな、美鈴」

「よろしくお願いします、ジャイロさん」

俺は握手を交わす・・・が、その握力の強さに思わず、「痛タタタッ!」

と声をあげてしまった。

「あ、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

この服装からして、中国拳法を習得しているのか?

「手加減が苦手でして・・・」

「あやや。大丈夫ですか」

「指が折れるかと思ったぜ~」

 

門の前は一本の道が湖の方まで続いており、その道の脇には木が生い茂っている。

だいたいここにやってくる者はここを通らなければならない。

「お、今日はジャイロも門番やってんのか?」

例外として空を飛んでくるやつもいるが。

「あ、魔理沙さん!」

「今日も図書館に用だぜ~」

だいたいはこの門をくぐる。

爆発が起こっているのは館の敷地内のため、ここをくぐらないとならない。

人間の跳躍力じゃ、この壁を飛び越すことはできない。

「ん?おい、美鈴。爆弾魔ってのが妖怪という可能性はあるのか?または、妖精や魔女」

「それはあるんじゃないですか?さすがに人間って決まったわけでもないですし」

「じゃあ、なぜ俺たちは人間と断定して考えていたんだ?文、もう一度あの紙を見せてくれ!」

俺は文から紙を貰うと、その文をじっくりと読んだ。

そのなかには俺たちの判断を鈍らせる文が書かれていた。

 

『その人間は昼夜問わず、屋敷を爆発させる』

 

「・・・これが、答えか?」

「これをどっちと取るかが分かれ目ですね~。人間と書くことで他の種族がやっているということを隠すと考えるか」

「確実に人間がやっていると教えているのか、だな」

「?・・・もうわかりませんね、私には」

美鈴は俺たちの話に着いてこれそうにない。

もしも、この館の主人、レミリアが書いたとすれば、この文がどちらとしてとればいいのかがわかる。

「そもそも、人間に爆弾を作る技術なんてあるんですか?」

「俺は知っている。それに戦ったこともある。だが、そいつはもう死んだはずだ。俺はやつが死ぬ瞬間をこの目で見たからな」

俺はそう言い、自分の右目を指差す。

そして次の瞬間、

 

ドグォォォンッ!

 

爆発音が敷地内で轟いた。

「な、何だと!」

俺たちはその爆音を聞いてすぐに中へ入った。

玄関からは黒い煙が上り、火を吹くように、熱気が俺たちを包み込んだ。

「今までのと・・・威力が違う」

その煙の中から、人影が一瞬見えた。それはまさしく、

「吉良・・・吉影」

吉良そのものだった。

「ちょっと!ジャイロさんッ!」

俺は美鈴に止められたが、立ち止まってはいられなかった。

俺は煙を鉄球で起こした風で払うと、玄関から見える階段の先を見上げた。

そこには、あのとき見たスタンドと、あのとき見た男が立っていた。

「ククク・・・。やはり来たか、正義感の強い、そして、悪運の強い男だなぁ。ジャイロ」

「ニョホ。お前はまた、俺に殺されにきたのかァ?吉良 吉影」

余裕の笑いを見せると、鉄球を両手に握った。

「今度こそ、君を始末させてもらう!」

「返り討ちにしてやるぜ!」

 

「待ちなッ!」

 

聞いたことのある男の声が、燃えさかる玄関に響いた。

「君もまた、私の邪魔をするのか?・・・東方 仗助!」

クシで頭を整えながら、現れた仗助はスタンドで火のついた壁を近い場所から殴っていく。

その能力は今もなお成長し、火のついた壁までも、完全に修復できるようになっていた。

「俺がいる限りは、お前の好き勝手にはさせねぇ!」

仗助は階段の下に置かれた石像を踏み台にすると、吉良吉影に飛びかかった。


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