幻想回転録   作:駿駕

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第二話です。

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ジャイロvs.魔理沙

あれから何時間、馬を走らせているのか、俺にもわからない。ただ時間は刻々と過ぎていた。

「おい、遠くねぇか。紅魔館って場所はよぉ!」

思わず、叫んでしまう、大人気ない俺。

「最短ルートは地図ねぇからわからねぇし!道行く人に声かけて、どこか聞いても有るのか無いのか定まらねぇしよ!あの巫女、ウソつきやがったな!」

俺はヴァルキリーを休憩させるために、降りて近くのベンチ(?)に座った。

少し空を見ていると、上を白黒の服を着た金髪の魔女が箒にまたがって飛んでいるのがわかった。あいつなら空から見渡せるだろうし、その場所を知ってるだろう・・・

「おーい、そこの魔女ーっ!」

「何だ?あの馬乗りは?」

魔女は俺の声が聞こえたのか、フワフワと下降して、俺の目線で止まった。

「どーした?道にでも迷ったか?」

「そうだ、紅魔館とはどこにある?霊夢って巫女に言われて、神社を出たはいいけどよ」

「霊夢か。あいつから聞かなかったのか?」

「西にあるとしか」

「私も行こうとしてたところだ、一緒に行くか?」

「マジすか?!それは賛成だ!」

俺はその言葉に目を丸くすると、両手人差し指を魔女に向けた。

「私の名前は霧雨 魔理沙だぜ。よろしく!」

「俺の名はジャイロ・ツェペリ。よろしくな!」

俺たちは何を思ったのか握手を交わした。女の手というのにこいつの手のひらは固く、握力も相当あるみたいだ。

 

「ところで、お前は魔女なんだよな。何か魔法使えるのか?」

「使えるぜ。色々とな」

「なるほど。じゃあ、食べ物出せるか?さっきから腹が減ってよぉ!」

「食べ物か。やったことないな・・・」

※ちなみにこの世界の魔理沙は、光や熱だけでなく、あらゆる魔法が使えるが、食べ物や生き物を召喚するような魔法はできない。よって今のジャイロの願いは叶わないのだ!

魔理沙は俺の頼みに後頭部を掻く。

どうやらその魔法はできないようだ。

「すまないな、難しいこと言ってよ」

少し歩くと、リンゴの成る木を俺たちは見つけた。

「じゃあよ、お前がどれだけすごい魔法使いなのか知りたいから、あのリンゴを傷一つつけず取れるか?もちろんこの場から、魔法のみで」

「そんなの朝飯前だぜ!」

果物ってのは繊細だ。少しでも傷がついてはそこからどんどん腐っていってしまう。そのため、農家は優しく手で一個ずつ摘み取る。もしも、この魔女が使う魔法がおおざっぱな物だったら、リンゴは傷ついて真下に落ちるだろう。

そんなこと考えていたら、魔理沙はもうすでにリンゴを取っていた。

「ほら、どうだ。傷一つついてないだろ?」

そして、そんなこと言いながら、俺に投げ渡した。

リンゴはまるで、コーティングでもされたかのように傷一つ、焦げたようなあとも無かった。

「どうやって・・・こいつを」

「見てなかったのか?」

次の瞬間、魔理沙は手のひらに光を帯びた何かを作るとそれをブーメランのように木に向かって投げる。

すると、それはうまくリンゴの木の枝部分を切断し、真下に落ちる。

そこまでは予想に近いが、問題はそこからだった。俺は目を精一杯開いてそれをじっくりと見た。

リンゴは下に落ちた瞬間、消えて魔理沙の手に落ちたのだ。そこまでの道が見当たらないトンネルのような、そんな感じだった。

「どうだ?これでも、魔法を信じないか?」

魔理沙はもう一つ、リンゴを投げ渡す。

「・・・すまない、魔法のすごさは十分わかった」

「そうかい?じゃあ、私の分はジャイロが取ってくれ!もちろん、条件は私と同じだ!」

俺はそれを聞き、リンゴをかじりながら木のリンゴを見た。

「マジか・・・(このリンゴ、うまいな。ジョニィに食わせたいくらいだ)」

「アンタがどんな力を使うのか知らないが、見してもらいたいぜ」

俺はリンゴを飲み込むと、もう一方のリンゴを上に投げる。

「じゃあ、少しルール変更だ。軽くはしねぇぜ。」

そしてリンゴを投げると、魔理沙にそのリンゴを向けた。

「このリンゴを使って、あの木になるリンゴを三個以上、取ってやる。ただし、それだけの条件をつけるんだ、傷ついても文句言うなよ。食えるくらいには残してやる」

「お、おい!それじゃあ・・・」

「もし、失敗したら何でもしてやるぜ。これから行くお屋敷に喧嘩売りにいってもよ!それほどの覚悟がある!」

「おもしろいこと言うね。何を根拠に言ってるのかわからないけどな」

魔理沙はフワフワと浮く箒に、まるでベンチにでも座るかのように座ると、少しだけ、ほんの少しだけ、上に浮いた。

俺は躊躇なく、持っていたリンゴを投げた。

※銃口から放たれた銃弾のように、ジャイロの手から投げられたリンゴは地面と水平に垂直の回転を作りながら、リンゴの成る木の太い枝を狙って飛んでいく。銃弾は回転がかかることによって、人間や物をえぐり、貫き、それに致命傷を負わせることができる。ジャイロはそれを狙ったのだ!

「いけ!俺の回転エネルギー!」

リンゴは太い枝に当たると、その枝の繊維を砕き、そこから折り曲げた。

「なんだってぇー!」

もちろん、投げたリンゴはもう食うことはできねぇが、その分、大量のリンゴは手に入った。数十個はあるだろう。

「お前、今何したんだぜ!」

「・・・お前の考える"魔法"とは一味も二味も違うものだぜ」

回転エネルギーは木の幹まで達していたのか、その枝からヒビが入り込んでいき、幹にもヒビが入ったのが、肉眼でわかった。

魔理沙はそれを見て、ジャイロをただ者ではないと思った。それとともに、どこか好意を抱いた。

「気に入ったぜ。お前、いや、ジャイロについてくぜ。どこでも言ってみな」

「いや、まだ場所がわからねぇっての」

俺はリンゴを一つ拾うと、指先で回してみせた。

 

少し歩くと、大きな湖の見えるところへ出た。そしてその先に大きな館があるのも、持っていたオペラグラスによって見ることができた。

「あれがコーマカンか?」

「紅魔館だぜ」

「でかいな。ちょっと待っててくれ、こいつをどこかに縛ってくる」

俺はヴァルキリーに「ここで待ってろ」と言うと、木に手綱を縛った。

「よし、できた。それで・・・あそこまでだが。道はあるか?」

「飛んでいった方が早いぜ」

「でも、俺とお前を乗せるなんて無理だろ?」

「ギリ行けることもない」

「おぉ!じゃあ」

「ただ、重量オーバーで落ちても保証できないからな」

俺たちは魔理沙の箒にまたがるとミシミシと音をたてながら宙に浮いた。

「おぉ!?行けるんじゃねぇか?」

だが、俺の興奮をかき消すかのように魔理沙はいきなり叫んだ。

「やばいぜ!このままだと・・・」

「このままだと?」

「折れて湖に墜落する・・・」

「嘘だろ?」

「もうスピードを出して・・・あ」

時すでに遅し。箒は折れ、俺たちは湖に落ちてしまった。

 

「むこうで何か音がしたわね。何があったか、咲夜見てきて」

「わかりました」

一人のメイド、十六夜 咲夜が静かに階段をおりるとき、階段下では何か物音が聞こえた。

「誰?」

咲夜は一階へおりると、ナイフを取り出した。

「君は私に恐怖するか?」

そこには金髪の男が立っていた。彼もまた手にナイフを持っていた。

 

「俺の名はディオだ」

 


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