暗殺チームの中で誰か好きですか?と聞かれたとき、誰を選ぶのか・・・
難しい選択ですね・・・。
答えはこの話に出てきて、ジャイロ達と戦います!
落雷と共に足を踏み出したペッシと呼ばれた男はどこからか取り出した釣りざおを振りかざす。
「待てッ!ペッシ!」
兄貴とペッシから呼ばれるもう一人の男はペッシの右腕を掴み、釣りざおを止める。
「前にも言ったよなぁ~、ペッシ~~~。『ブッ殺す』という言葉は弱者が使う言葉だ。俺たちは使っちゃあいけないんだぜ。俺たちの世界にそんな言葉はない」
男は銃を取り出すと、俺たちに銃口を向ける。
「『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!そのとき既に行動は終わってるんだッ!」
男は銃を俺に向かって撃ち込む。
「危ない!」
次の瞬間、小傘は俺を押していた。
そして俺と小傘の間を貫いた銃弾は木に刺さる。
「ッ!・・・外したか。だが、そっちの男が動けないんじゃあ、次は当たるな。スタンドを使わなくても勝てるとは・・・とんだ期待外れだ!」
銃の音が聞こえたと思うと、暗闇を割いてすぐにこちらまでやってくる。
明るければ、鉄球で弾くこともできなくはない。それに鉄球の回転が使えれば、皮膚を硬化させ、弾くことも可能だ。だが、手も今さっきの打撃でやっているみたいだ。
「兄貴ッ!何かこっちに来てませんか?」
「何?」
今度はペッシが兄貴を止める。
確かに光輝く何かを持った二つの人影がこちらに向かっているのがわかった。
きっと、魔理沙とアリスだろう。
「ここに来てから、俺たちの度肝を抜くような女に会った・・・まさかアイツじゃないよな?」
このさっきから強い言葉を使う男がここまで言うのだから、会ったやつは相当強いやつだったんだろう。
「あの紅白の女・・・またアイツっすか!?逃げましょうよ、兄貴ッ!プロシュート兄貴ってば!」
プロシュートというのか?・・・あの男は。
男たちも暗闇の先にいるのが、女というのしかわからないのだろう。
恐らく、あの二人だと思うが、男たちはあの紅白の巫女と予想している。
「て、撤退だ。逃げるぞ!ペッシ!」
「待ってくださいよッ!兄貴~ッ!」
こちらに来た二人の女。それは俺の予想通り、魔理沙とアリスだった。だが、二人の目的は俺たちじゃない。向こうに落ちた落雷のようだ。
「二人とも大丈夫?」
「私は大丈夫ですけど、ジャイロさんが・・・」
「力が入らねぇんだ。腰と右手首をやってる・・・。あの筋肉質の風使い以来だ、こんな痛み食らったのは・・・」
アリスは俺の言葉を聞くと、魔理沙と共に俺を持ち上げる。
「早く帰って、魔法の準備をしましょう!重傷みたい」
「わかった。ジャイロには助けてもらったから、今度は私たちが助けないとな」
「すまない・・・」
二人で俺を運んでいると、そこに紅白の巫女もやってきた。名前は・・・
「おう、霊夢。どうしたんだぜ?」
「どうしたもこうしたもないわ。ここらへんに怪しい二人組が現れたらしいじゃない」
「その二人ならあっちに行きました」
小傘がそう伝える。確か、この巫女は妖怪退治のプロと聞いたが・・・。
「霊夢。そいつは俺を助けてくれたんだ・・・退治しないでくれ」
「・・・しないわよ。彼女は悪い妖怪じゃないもの。まぁ悪い妖怪になったら、容赦なく退治するけどね」
「そうだぜ、ジャイロ。小傘は悪い妖怪じゃないのぜ」
霊夢はニッコリと笑い、男二人組の逃げた方へ飛んでいった。
俺は安心し、心を休めようとした次の瞬間、
刃物が刺さるような音が耳元で聞こえる。
「なん・・・だぜ」
魔理沙の腕から飛び出したカミソリの刃のようなものはもう片方の腕に突き刺さった。
傷からは血が吹き出し、その痛みで俺から手を離す。
「うおッ!?」
俺はそのまま背中を強打する。
「魔理沙、どうしたの!?」
「いきなり・・・腕から・・・」
魔理沙は手で傷を押さえる。
「アイツらは所詮、弱者だった」
そいつはいきなり闇のなかから現れた。
白黒反転した眼は人に恐怖を与え、目の前で血を流す魔理沙を見下す。
「俺の名はリゾット。彼らと同じ暗殺チームの隊長だ。お前を殺すという依頼は、俺のもとにもやってきた。今は人数の少ないチームだが、俺一人でもお前を殺すことは可能だ」
「魔理沙ッ!」
アリスが近寄ろうとするが、魔理沙は「来るな」と言い、アリスを止めた。
「良い判断だ、魔理沙」
リゾットは魔理沙から出てきたカミソリの刃を持つと、俺らに見せた。
そこには小さなスタンドがくっついていた。
「今、彼女の体内にはこいつがたくさん入り込んでいる。能力は教えんが、それだけは教えておこう。もしも、近づいたなら・・・わかるよな?」
以前、周囲の鉄分を操るやつと戦った。こいつもそれと同じか、それに似た能力を使うのだろう。
そしてカミソリにベッタリと付いた血液。あのカミソリは魔理沙の血管から出てきたようだ。そこから推測するに、彼の能力は鉄分をある形に変化する能力・・・なのか?
もしも、それなら魔理沙が危ない。
「おい、お前らの狙いは俺だろう?俺を殺すことが目的のはずだ。なぜ、魔理沙を攻撃する?」
「単なる人質だ。お前が死ぬか、こいつが死ぬか・・・その選択を突き付けるためのな!」
リゾットは魔理沙の首もとにどこからか出したメスの刃を向けた。
「お前・・・鉄分を操る能力だろ?」
魔理沙もリゾットの能力がわかったようだ。
「・・・当たりだ、魔理沙。だが、我がメタリカの正体を知ったところでもう遅いんだぞ。すでにお前は出来上がってるんだからな。今もお前の口の中ではハサミが生成されている」
それを聞くと、魔理沙は唾を吐くかのように口の中のものを出す。そこには小さなハサミがあった。
「さぁ、ジャイロ!お前はこの女の命と、自分の命、どっちをかける!」
厄介なやつだ・・・。
あれ?そう言えば、小傘はどこにいったんだ?
「驚けーッ!」
そう思った次の瞬間、小傘はやつの顔の真ん前まで近づいていた。
どうやら、木に登り、上の木の枝から落ちてきたらしい。
そして、小傘のくり出した蹴りはリゾットの顔面に直撃する。
「ぐ、ぐわぁあああッ!」
リゾットはそのまま、後ろの木に叩きつけられた。
「やったな、小傘。また驚かすことができたじゃないか!」
「これがジャイロさんの言っていたこと・・・ですか?」
「ん~、ちょっと違うな」
「おいッ!」
さっきまで捕まっていた魔理沙はリゾットの飛んでいった方を見て、指を差す。
そこにグッタリしていたリゾットの姿は無かった。
「さっきまであそこにいたよなッ!どこいったんだぜ!」
「そこの水色の女ッ!」
突然、暗闇から現れたリゾットは小傘の腕を掴む。
アイツは自身を透明にすることもできるのか!
・・・感心している場合じゃない。小傘が危ない!
「ジャイロなんか、もうどうでもいい!お前の中にメタリカを詰め込んで、体内から殺してやるッ!」
俺は鉄球を手首のみで投げた。
もちろん、回転はかけているが、いつもより回転は少ない。
だが、
「ぐぁッ!これは・・・」
「鉄球は回転をかけなくても武器になる・・・ぜ」
鉄球は見事手に当たり、小傘の腕を離した。
そして、
「えいッ!」
小傘は思いっきり、傘を振った。
化け傘はリゾットの顔を直撃し、リゾットは静かに倒れた。
「ま、まさか・・・こんな女にやられるとは・・・まだ、俺は・・・戦える・・・」
「もう・・・やめてください。あなたは病気を患っていますよね?」
「どうして・・・それを・・・」
「あなたから力が見えないんです。もしも、あなたの力が本当なら、魔理沙さんだけでなく、私やジャイロさんにもメタリカを浸入させることができましたよね?」
リゾットはメタリカを魔理沙から引き出すと、自らの体に入れようとするが、メタリカはそこに来るまでに立ち止まって消滅してしまう。
「彼女は・・・弱っていた。ここに来る前に、何か悪いもんでも・・・食べたのだろうな。微少の毒を持ったキノコとか・・・な。見事な・・・推理だ。」
リゾットは小傘の顔を見ると、
「最後に・・・顔を見せてくれ・・・逆光で良く見えない」
空は雷雲が消え、まぶしいほどにきれいな月が四人を照らしていた。
そして少しすると、二つの悲鳴が森の中で響いた。
『さすが霊夢!不審者二人組を再起不能!』
次の日の朝の新聞の見出しはこう書かれていたが、その端に小傘のことも少し書かれていたそうだ。