ジャイロは紅魔館の図書館で、魔理沙、アリス、パチュリーとお茶会をしていた。
そこに虹村 形兆が現れ、図書館をスタンドで埋め尽くす。そしてジャイロと、パチュリーの下で働いていた東方 仗助を脅すが、ジャイロの鉄球により、形兆は再起不能となった。
そして今回はその後の話・・・
魔女三人がお茶会を終え、俺は東方と話を終えた。
これといって、行くところがないため魔理沙考案のアリス宅でのお茶会に行くことになった。
理由はパチュリーに情報を渡した古明地姉妹について、聞きたいこともある。
どうやら、その二人は俺たちのことをまるで監視でもしてたかのように知っているらしい。
そして、パチュリーもその情報を聞いているのか、俺たちのことをよく知っていた。
東方もアリスの家に行きたいと言ったが、パチュリーが許可しないため、我慢していた。やはり、あの身体でも心は高校生そのものなんだろう・・・。好奇心というか何というか・・・
魔理沙、アリスは箒に乗ると「先に行ってるぜ」と言い、北の方向へ飛んでいってしまう。
「おい、おい!俺は道を知らないぞ!」
「北の方向へ進めば小さな家が一つあるのぜ!」
俺は愛馬を撫でると、北の方向へ向かう。
もう夜中ということもあってか、森の中は不気味で何というか・・・何かでそうな
「驚けーッ!」
「うぉッ!?」
俺はいきなり現れた水色の何かにおもわず驚いて馬から落ちてしまう・・・が、すぐに馬の足を使い、スルッと下に下りた。
「やっと、驚いてもらえたぁ」
上から下までほぼ全てが水色の少女は、傘と踊っている。
「危ねぇじゃねぇか!走ってる馬の前に出たら危ないって教わらなかったか?」
「ご、ごめんなさい!」
少女は深く腰を曲げると、すぐに傘を持って、森の奥へ走っていった。
「・・・何だったんだ?少し遅れていたら、おもいっきり落馬していたかもな」
俺は砂を払うと馬に乗り、アリスの家を目指した。
それで続きだが、アリスの家に行けば、おそらく夕飯も貰えるだろう。
それが目的である。
この状況下、食事をするのが先決だろう。
「いらっしゃい、ジャイロさん」
「遅かったじゃん。何やってたんだぜ?」
ようやく、アリスの家に着く。
扉を開けたとき、アリスや魔理沙よりも先に目に入ってきたのは、なぜか椅子に座って足をぶらつかせている水色の少女だった。
「な、何でお前がここにいんだよ!」
「!」
「もしかして、友達?」
俺は椅子に座ると、一気に後ろへふんぞり返る。
「んなわけねぇよ!俺はこいつに殺されかけてんだ。こいつに驚かされてよ!もう少しで落馬するところだったんだぜ!」
「良かったじゃないか、小傘!やっと驚かせることができたじゃないか!」
魔理沙はなぜかそこの少女を撫でる。
俺はその理解しがたい行為に説明を求める。
「彼女は多々良 小傘っていう化け傘の妖怪で、人を驚かせないとお腹が空いちゃうのよ」
「何だそりゃ・・・。てことは今さっきので腹一杯と?」
小傘は首を振る。
落馬するほどでも、そんな貯まらないもんなのか。
「小傘は毎日、人里に行くがいつも驚かせることができないんだ。最初は驚いていた人たちも最近はな」
「そんな格好だから驚かすこともできないんだろ?もっと狂気染みた格好の方がいいとおもうが」
「・・・やっぱりそうだよな」
魔理沙は俺の案に頷く。
「そうね。やっぱり可愛すぎるのがいけないのよ」
アリスはキッチンから俺の分のティーカップを持ってくると、小傘の頭を撫でる。
「この前なんて不審者に誘拐されかけたもんね」
「そ、それは・・・」
「夜、頭の長い銀髪の上半身ほぼ裸の男に話しかけられてね。連れてかれそうになったのよ。妖怪なのに、人に負けるなんて」
それはブーメランじゃないのか?とか思ったが、言うのはやめた。
昼間の侵入者の件、まだ忘れたわけではない。
「それは私たちも同じだぜ。昼間、人間に負けかけたじゃないか」
「・・・」
俺が言わなくても、魔理沙が言った。
小傘はそんな中、注がれた紅茶を飲むしかなかった。
「じゃ、そろそろ俺は帰るわ」
「帰る場所も無いのにか?」
魔理沙は正直者だ。それゆえに人を傷つける。
確かに帰る場所はないが、こうしている間にもジョニィは俺を探すために、危険な場所に足を踏み入れているのではないか・・・。そんなことを思うと、こんなところで呑気に紅茶をすすっている時間などない。
俺はアリスの家から出て馬に乗る。
「あの、ジャイロさん」
後ろから小傘の声がする。
彼女もまた、アリスの家から出たようだ。
二人から「まだいてもいい」とか言われながらも、外に出た。
俺に何か用がある。そう考えたが・・・
「俺のケツに話しかけてもよ~。ケツは話を聞かないぜ~。俺自身に声をかけないとよ」
「ぐぬぬ・・・」
俺は馬を止め、振り向いた。
「アンタは人間に甘く見られてるんだ。もっと、妖怪なら妖怪として誇りを持て。恐怖だけが、驚かすということではないんじゃあないか?」
俺はジョニィという弟子のような人間がいたから、こんな立場で話せるのだろう。
彼を一人の友と思いながらも、一人の弟子として考えている。黄金の回転を教えている弟子として。
「じゃあ、どうしたら・・・私にはそんなことできない」
「できない、か。できるわけがないと4回言ったなら、教えてあげなくもないな」
俺は小傘にそう言い、静かにその場を去った。
今の彼女に必要なのは、自分自身の力で正解を導き出すことだ。それに・・・
ここに驚いた人間がいるんだ。必ずできる・・・はずだ。
「ジョニィとは違う・・・よな?」
俺は森の中で野宿をすることにした。
ここ最近、ふかふかの布団に寝たりすることが多かったため、この感じが懐かしかった。
俺は集めた木の枝や木葉に火をつけると、ずっとその火を見ていた。
「ジョニィ・・・」
あいつとはぐれてからもう数週間は経っている。レースも終わっているんじゃないか。
きっと、レースの方ではここにある遺体を・・・あれ?
遺体がない・・・。
「まさか・・・遺体を無くしたのか」
俺は辺りを探す。だが、見つからない。
確かアリスの家から出たときはあった。ここに来るまでに落としたか?
辺りは暗く、この火のみが頼りだ。
俺は鉄球を木の表面に当て、回転によって木の皮を巻き取る。
ちょっとした松明のような物を作ると、それを握って遠くまで歩くことにした。
ここに来るまでの道なら、馬の足跡によって確認できる。雨が降らない限りは・・・
さっきからどこかで雷の轟く音が聞こえる。
一雨来そうだ。
「一度、アリスの家に戻った方がいいかもしれない」
この世界に来て初めての雨が降る。
そう考え、俺は馬を呼ぶ。
返事をするかのように、颯爽とやってきたヴァルキリーは俺の前で止まる。
「さすが、俺の愛馬だ」
馬に乗ってすぐに雨が降りだす。
火は消え、一気に暗黒の世界へと変化した。
ここまで来る途中、一ヶ所危ない場所があったのは覚えている。
どうやってそれを見つければいいのか。
だが、ここで怯えていても進まない。
俺は来た道を戻るように走り始めた。雷鳴は少しずつ近くなり、今にもここに落ちてきそうだった。
走り始めてから数分後、馬は何かに足をとられた。
「しまった!」
俺は馬から投げ出され、木に腰を強打する。
馬もまた、その一瞬で転んでしまう。
「大丈夫か!?」
俺は馬を起こす。運良く、馬の転がった部分に草むらがあったため、馬にケガはなかったが、俺は腰に違和感を持った。
「木にぶつかったときに、どこか骨をやっちまったか?」
俺は鉄球をその部分に当てる。ちょっとした痛み止め程度にしかならないが、あるとないとでは違うだろう。
俺は木に寄りかかると、空を仰ぎ見る。
「誰か・・・助けてくれ」
俺は視点を変える。ほとんど聞こえないが、一瞬足音が聞こえた。
俺はその方向をジッと見る。
「大丈夫ですかー?」
あの一つ目の傘・・・小傘か。
「お前に助けられるとはな・・・」
「どうしたんですか!?血が流れてますよ!」
俺は小傘の肩を借りて立ち上がる。
腰に力が入らない・・・やはり鉄球を当ててもダメか。
「アリスさんなら、何とか魔法で治療できるかもしれません!いきましょう!」
小傘が前を向き、歩き始めた次の瞬間、目の前に二人の人影が現れた。
「ちょっと待ちな。兄貴!こいつは確か、お尋ね者のジャイロじゃないですか!?」
「よくやったぞ、ペッシ。どうやら、俺たちが殺るまでもないらしいな」
男たちは雷によって照らされることでしか、顔を見ることはできないが、言葉からして、これまでに戦ってきた奴等と同じ部類のようだ。
「さぁ、兄貴!ブッ殺しちゃいましょうぜッ!」