俺の名はジャイロ・ツェペリ
ニョホ!ニョホホホ~!
俺の名はジャイロ・ツェペリ。本名をユリウス・カエサル・ツェペリっていう。
今日は調子がいい、絶好調だ。まるで俺の愛馬、ヴァルキリーに翼が生えて、ゴールまで飛んでいっちまいそうだ!
「どうした?ジャイロ」
馬に乗って横に現れたのはジョニィ・ジョースター。
下半身不随で足が不自由だが強い男だ。少しマイナスなところがあったりするが、頼れる仲間だ。
「今日は絶好調でよ!一位取れそうだぜ!」
「そうか、お互い頑張ろう!」
「おう!」
レースが始まる。周りにたくさんの騎手が集まってきた。
「始まるな、頑張ろう、スローダンサー」
ジョニィの愛馬、スローダンサーはジョニィの言葉に返事をするかのように鳴いた。
まぁ優勝は俺だけどなー。ニョホホ♪
レースが始まっても、俺の絶好調は続いていた後続とはどんどん差が離れ、レースは俺の独壇場だった。
ジョニィだけは何とかついてきていた。
「ジャイロ、少し飛ばしすぎじゃないか?馬も限界が来るんじゃ・・・」
「ニョホ!今日は調子いい!俺もヴァルキリーもな!先に行ってるぜ!」
「おい!ジャイロ!待ってくれ、ジャイロ!」
ジョニィの声も遠くなり、気がつくと他の馬の足音は完全に消えてしまった。
ニョホホホ~♪
この前作ったチーズの歌を口ずさみながら、森の奥に入ると、完全に音が消えたため、少し休憩をすることにした。ジョニィも気になるしな。
辺りを見回すと、前の方が明るいことがわかった。
さっきまでの荒野の熱気もなく、まるで別世界にいるかのようだった。
「何だ、これは・・・」
森を出た先には、広大な草原が広がっていた。その下にはどこか古い町があるのも見えるではないか。
俺はヴァルキリーを連れてくると、草原の真ん中で休ませた。
「空気が気持ちいいな。ジョニィもついてくればこんな気持ちいい場所で優雅に休憩できたのによぉ」
俺が少し目を閉じて、心地いい風を浴びていると、女の子の無邪気な声が聞こえてきた。
「何だ?」
俺は起き上がり、ヴァルキリーにまたがると、辺りを見回した。
「何だ、ありゃ!」
北の方角から、二人の女の子が飛んできた。
「おい!そこのお嬢ちゃん!」
呼び掛けると、一人の女の子が降りてきた。
その女の子は水色の髪をし、頭には青いリボンをつけ、その色に似たような青いワンピースを着ていた。
「何だ?お前?どこから来た?」
「俺の名はジャイロ。ジャイロ・ツェペリだ」
「ツェペリ?すごい名前」
少女は鼻で笑うと、腰に手を当てる。
「あたいの名はチルノ!幻想郷最強のチルノよ!」
「チルノか。で、そのゲンソーキョーとは何だ?」
「この世界の名前だよ」
「名前ね・・・はぁ?」
俺は地図を開く。地図にはそんな名前は載っていない。
「何それ?」
「地図だよ、ここ周辺の。ちょっと探してくれないか、そのゲンソーキョーっやつを」
二人で地図を探すが、どこにもそんなものは見つからない。それにチルノは「こんなの見たこと無い」とか「初めてこんな名前聞いた」とか、変なことばかり言いやがる。
「あまりふざけたこと言ってるとよぉ?」
ついに俺はチルノの胸ぐら掴んで持ち上げた。
「やめて!」
するとそんな声が天から聞こえ、飛んでいたもう一人の少女が俺に飛び蹴りを食らわす。
「痛ぇな、てめぇ!何しやがる!」
俺は鉄球を出す。さすがに少し痛い目会わせなきゃいけないようだ。あまり少女を泣かせるとかいう趣味はないんだが・・・
「それ以上、チルノちゃんをいじめるのはやめて!」
「そんなこと知らねーな!食らえ!」
俺は二人に向かって回転エネルギーを凝縮させた鉄球を投げる。
次の瞬間、
ガキン!
何か鉄のようなものに当たる音がその草原に響き渡った。俺の目の前には投げたはずの鉄球が埋まっていた。
「何してるの、こんなところで」
そこには紅白色の服を着た女が立っていた。昔見た日本の巫女っていうのに姿が似ていた。
「おうおう、誰だ?お前?」
俺は鉄球を拾うと、その巫女を見る。
払い棒ってやつか?そんな棒を握る手とは違う方の手のひらを棒で叩くと、巫女の目の前に俺の鉄球を撃ち落としたと思われる紅白の陰陽玉(?)が現れた。
「私は博麗 霊夢。あなたは?」
「俺はジャイロだ、ところでその博麗さんが何のようだ?」
「そっちこそ。どうやってこの幻想郷に入ったのかしら」
女のわりには怖い目をしやがる。
ジョニィが言ってた「飢える」とはこういうことなのか・・・そんな目だった。
「女のわりには根性あるじゃねぇか」
「そっちこそ、ただの人間のわりには良い目してるじゃない」
「とりあえず、鉄球を食らって、家にでも帰りな!」
俺はいつも通り、体を貫通するくらいの威力の鉄球を投げる。
一瞬の出来事だった。俺の鉄球は霊夢から、大量に放たれた光の槍のような、小さな針のようなものによって形を消し、その無数の弾は俺の体に刺さった。
「何だ・・・こいつ・・・」
俺はそこから先のことを覚えていない。どうやら気絶してしまったらしい。
・・・どこだ、ここは。
日本の畳ってもの、それに見たこと無い和風建築。
「気がついたようね」
俺の横には俺を気絶させた犯人、霊夢が座っていた。
「大変だったわ。馬は暴れるし、あなたは重いし」
俺はそれを聞き、すぐに布団を飛び出して、屋外に出る。
「よかった・・・」
ヴァルキリーは草を食っていた。
見た感じ、外傷はない。
「あと、あのとき投げた鉄球は修復不可能ね。もう、諦めなさい」
「まだまだたくさんある。一個くらい大丈夫だ」
俺は鉄球を三つ取りだし、ジャグリングをして見せた。
まだあの攻撃を受けた感覚は身に残り、ジャグリングをする手はしびれていた。
「でも、あんな技は初めて見たぜ。どうやったんだ?」
「この世界の人や妖怪は普通出せるわ」
「あの飛んでた少女らもか?」
「えぇ。私たちはこれを弾幕と呼んでいるわ」
「弾幕・・・かっこいいじゃねぇか」
「そんなこと初めて聞いたわ。私たちのこの能力が普通常識程度に思っていたからかしらね」
「この世界の常識か・・・」
俺は鉄球を二つしまうと、一個を地面に向けて投げる。
すると横回転をかけた鉄球は小さな竜巻を作りあげた。
そしてそれのせいか、霊夢のスカートは風によってめくり上げられた。
「きゃっ!何するの!」
「悪い、悪い。ちょっと考え事しててよ」
鉄球を拾い上げると、目の前には怒った霊夢の顔が表れた。そして一発、頬にビンタをくらった。
「で、俺はどこにいけばいいんだ?どうすればここから出られるんだ?」
「何で来たのか理由がわからない状態じゃ、帰すことは無理だし、どこに帰せばいいのかもわからないわ・・・」
「この世界に俺のことを知ってるやつはいないのか?」
「・・・」
霊夢は黙り込んでしまう。
考え事をしているのか、あてを探しているのか知らないが、俺は答えを待つことにした。
「・・・いないかな。この世界に入るということはあなたがただ単に迷い混んできたか、誰かに呼ばれてきたかってことだけど・・・どっちだと思う?」
「そりゃ呼ばれて入れたならいいけどよ、人気者というか何というか・・・」
確か俺は普通に森に入っていった。そこでこの場所を見つけた。
霊夢の言う、迷い混んだという説が普通だろう。
「まぁ色々と歩っていれば出れるかもしれないわ。私も仕事があるし、あまりあなたに構ってられないわ」
「お、おい!俺はどうすればいいんだよ!」
「そうね・・・とりあえず西に行ったところにある紅魔館にでも行ってみれば?馬があればすぐよ」
「そうか。わかったぜ」
俺はヴァルキリーに乗ると、霊夢に手を振って別れを告げた。