「唐突だけど、比企谷八幡くん。次の日曜日、私と遊園地に行かない?」
「……っ!!」
……のっけから意味がわからない。
状況を整理しよう。
目の前で俺にマスケット銃を向けている女。何故そんな物騒なもんを持っているのかは置いといて、確か千斗いすずとか言ったはずだ。
少し前にうちのクラスに転入してきた。顔もスタイルも良いからトップカーストの仲間入りするかと思ったがどうも人付き合いが苦手なようで未だぼっちだ。
で、何で俺を(銃を突きつけながら)遊園地とやらに誘うんだ。状況整理しても何もわからん。
ぼっち繋がりで俺を誘って来たのか?……それは無いな。うん。
では何故俺を誘ったのか。
ひょっとして実は友達が出来ていて教室のドアの影からこっそり撮っているのか?罰ゲームか何かか?
その可能性が最も高い。
ならば俺の言う事は決まっている。
「悪いけどそれは無理d……」
俺がそう言いかけた次の瞬間
バァン!!
千斗の銃が火を吹いた。
「ひぃっ!!」
おい。おいおいおい。冗談だろ。
この女撃ってきやがった。ていうか考え過ぎて銃の事をすっかり忘れていた。
全身から血の気が引いた。手とかすげー震えてる。こんなの小学校で謝罪コールされて以来だ。
そこまでして俺を貶めたいのか。
既に考えてて命の危機を忘れるとかいう事からして充分堕ちてそうだが。いや、そんなことするまでもなく俺の評価は地に堕ちてるけどさ。
千斗が撃ったままの体制で尋ねてくる。
「返答を」
「はぁ……」
次はない。そう感じた俺はため息と共にしぶしぶ首肯した。
「はぁ……」
あいつのせいで遅れちまった。また雪ノ下に何か言われそうだ。
本日何度目かのため息を吐きつつ、これから起こるであろう事を想像しながら廊下を早歩きする。
千斗いすずは何故、何の為に俺を誘ったのか。
いくら考えても思いつかない。まあ日曜日、本人に尋ねればいいか。
そう結論付けたところで、ちょうど部室に着く。
「……うーす」
「あら、こんにちは遅刻谷くん。」
「ヒッキーおそーい」
部室に入ると部長の雪ノ下と部員の由比ヶ浜がそれぞれ読書と携帯を止めて声を掛けてくる。
「悪い。ちょっと面倒なのに絡まれてな」
「あなたが謝るなんて……。天変地異の前触れかしら……」
「人が謝ったくらいで天変地異とか言うな。俺はちゃんと謝れる人間だぞ。なんなら土下座も靴なめも余裕なまである」
「あはは……。いつも通りだ……」
「はぁ……」
由比ヶ浜は苦笑いし、雪ノ下はこめかみに手を当ててため息をついている。
どうでもいいけど君はそのポーズほんと好きよね。
「それで?」
席に着き、鞄から本を取り出した所で雪ノ下が尋ねてきた。
「え?」
何の事かわからないので、反射的に聞き返す。
「その面倒なの、の事よ。」
「あたしもちょっと気になるかなー……なんて」
よく見れば彼女達の目には心配の色が浮かんでいる……多分。これで勘違いだったらすげー恥ずかしい。
またつまらぬ黒歴史を作ってしまった……。なんもかっこよくねぇなこれ。
「いや、俺の大事な日曜日が潰れただけだ。そんな気にせんでいい」
「そう……ならいいのだけれど」
「むー……なんか納得いかないけど……」
どうにも信用がない。まぁやってきた事を思えば当然かもしれんが。
「いいんだよ」
そう言ってから、はい、もうこの話終わりっ!解散!!ってな感じで本を読み出すと2人も諦めたようで、読書と携帯いじりを再開した。
まぁ今回は奉仕部としてではなく俺の個人的な用事だから2人に迷惑をかける事は無いだろう。
……多分。
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