夢幻航路   作:旭日提督

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今回は少し短めです。

ダウグルフの武装がレーザーL×2だったら使い勝手良かったんじゃないかと思います。ヤッハバッハの艦はCミサイルが邪魔で使いにくいです。Mミサイルに換えたい。グランヘイムとかのLL武装も使いにくいですよね。
砲艦としての火力と外見の良さではアッドゥーラのゴーダ・ザフトラ級が一番だと思います。でもこっちは内装が・・・


第五話

 〈高天原〉艦内 第一艦橋

 

  ワープに突入した〈高天原〉は、青白い超空間を進んでいく。空間内では時折白い光が迸り、消えていく。

  〈高天原〉の属するヴェネター級は、左右に2つの艦橋を持つという他に類を見ない特徴を有しており、第一艦橋は右側の艦橋に当たる。霊夢達は、そこで今後の方針について話し合っていた。

「惑星ラサスの次に向かうべき宙域だが、ヤッハバッハから逃れる為にはこの銀河を抜けなければならない。ラサスを通過した後はボイドゲートの存在するアナトリア宙域へ向かい、一気にヤッハバッハ勢力圏を抜けるのはどうだ?」

 最初に発言したのはコーディだ。彼は星図の該当箇所を指差しながら提案する。

「いや、アナトリアは確かに辺境だが、相応の防備戦力が配備されていた筈だ。私の記憶が正しければ、ダウグルフ級2隻とダルダベル級とブランジ級からなる宙雷戦隊が最低1個駐留している。戦力としては少ないが、今の我々には厳しい相手だ。」

 サナダは自身の記憶を頼りに、敵戦力を分析してコーディの案の問題点を指摘した。

「私はラサスから銀河外縁方向へ約1000光年離れたコーバス星系へワープし、そこからイベリオ星系を経由してA31球状星団内のガリシア宙域に向かい、この宙域外縁のボイドゲートからさんかく座銀河とIC1613間の銀河間空間へ抜けるルートを提案しよう。」

 サナダは星図を指しながら、コーディとは別のルートを提案する。

「コーディのと比べたら随分遠回りね。で、サナダの案だと通過する星系には何があるのかしら?」

 霊夢がサナダに尋ねる。彼女は個々の星系や宙域に関する知識を持っていないので、航路の計画はサナダ達に任せていた。

「コーバス星系は何もないと表現できるほど寂れた星系だが、2つの岩石惑星と巨大ガス惑星と氷惑星が1つずつ、それと無数の準惑星と小惑星が存在する。次のイベリオ星系は岩石惑星が3つに増え内一つは居住惑星だが他はコーバス星系と大して変わらない。居住惑星の人口は5億人ほどだな。どちらの星系も、ヤッハバッハの戦力は常駐していない。あまり関係ないが、イベリオ星系にはデットゲートが存在するな。」

 サナダの指が指す先が、銀河から外縁の球状星団へと移る。ちなみにデットゲートとは、機能を停止した、つまり艦船をワープさせることが出来ないボイドゲートのことである。これらは主に遺跡として扱われている。

「この星団にあるガリシア宙域には5つの星系が存在し、内2つはそれぞれ1個の居住惑星を含む。駐留戦力はダルダベル級を中心とした小規模な警備艦隊だ。ボイドゲートは、宙域の奥に存在する赤色巨星を抜けた先にある。」

 サナダは宙域の様子を詳しく解説する。

「リスクを避けるなら遠回りした方が良いって事か。」

 コーディがサナダの案に対する意見を述べる。

「それともう一つ提案だが、イベリオ星系で人員を募集してみるのはどうだろうか?この星系はヤッハバッハの航宙禁止法の影響で発展が遅れたままだ。現状に不満を持っている輩は多いだろう。」

 サナダはルートの提案に加えて乗組員の募集も提案する。

「確かに現状の人数だと心許ないからね。人員の募集には賛成だわ。けど、宇宙港にヤッハバッハの警察とか居たりしないの?」

 霊夢は人員募集には賛成するが、ヤッハバッハとの衝突を懸念した。

「その心配はない。警備艦隊が駐留しない宙域では宇宙港に警備隊は駐留していない。せいぜい地上に治安維持用の警察がいる位だ。それと、人員の募集は酒場に行けば良いだろう。運が良ければ話の分かる同業者を捕まえられるかもしれん。」

「分かったわ。取り敢えず酒場に向かえば良いのね。航海案もサナダので行こうと思うんだけど、良いかしら?」

 霊夢はサナダの案を了承し、同意を求めた。

「ああ、それで構わないだろう。」

 コーディもサナダの案を了承し、今後の航路が決定した。

「なら決まりね。」

 霊夢は手元の携帯端末から早苗を呼び出す。

 《はい、お話は聞かせて貰いました。今後の航路に関する航海スケジュールを作成しておきますね。》

 早苗は星図を元に詳細な航路やワープの時間や距離に関する計画を作成する作業に入った。

「任せたわ、早苗。それじゃ、ワープアウトするまで解散ね。」

  議題が終了したのを確認すると、霊夢は解散の号令を掛けた。コーディは艦橋に残り、サナダは〈高天原〉に移された自分の研究室へと戻っていった。

 

 

 

  会議が終わると、私は自然ドームへと向かった。この自然ドームには幻想郷らしい風景が再現されているが、まだ実際に見たわけではない。なので、ここの光景を見るのは楽しみだったりする。

  自然ドームの前まで来た私は、扉を開いて中へ足を踏み入れる。

「眩しっ―――」

 ドーム内に入ると人工太陽の光に照らされ、眩しさに一瞬怯んだが、慣れてきたので目を開いてみる。

 

――それは、紛れもなく幻想郷の景色だった――

 

  入口の周辺には古典的な民家が数軒と畑があり、まるで人里の外れに来たみたいに感じた。そして奥の山には木々が鬱蒼と繁る深い森が広がり、開けた頂上には鳥居の先端が僅かに見える。そして、ドームの壁と天井には山岳と空の立体映像が投影されておりここが閉鎖空間だと感じさせないほどの出来だった。

 私は以前の感覚で飛んで神社に行こうとしたが、ここがドーム内であることを思い出して飛ぶのは不味いと考えて歩いて神社に行くことにした。

「にしても、中々良く出来てるわね。」

 私は周囲の景色を眺めながら歩いていく。人や妖怪の気配は流石に感じないが、空を見ると蜻蛉が飛んでいたり、鳥の囀りが聞こえてくる。小川に架かる橋の横には垂れ柳の大木が生えているのが見えた。ここが艦内であることすら忘れてしまいそうだ。暫く歩くと森の中に入った。森の木々は注文通り椎や樫、桜といった見慣れた木々が陽光を遮るほど繁り、ここでも鳥の囀りが聞こえてくる。今にもルーミア辺りが出てきそうだ。だが、ここまで似ていて妖怪の気配一つ無いとなると、逆に寂しく感じられた。

「へぇ、こんな所に脇道なんてあったのね。」

  私は神社へ続く参道の脇から通じる小路を見つけて、そこへ入っていく。生い茂る熊笹を掻き分けて暫く進むと、そこには澄んだ池があった。池の隅には苔が繁茂した倒木が横たわっており、私はそこに体育座りで腰かけて池を眺めた。池の中央には私が腰掛けたものより大きな倒木が橋のように架かっていて、この池の周りだけ涼しげな空気が漂っている。池の中を覗くと石と砂でできた底まで見通すことができ、岩魚や山女といった魚が泳いでいるのが見えた。池の深いところでは錦鯉のような鮮やかで大きな魚が泳いでいる。

 冷たそうな水が気持ち良さそうだなと思って、私は靴と足袋を脱いで足首から先を水の中に入れてみた。

 ―――気持ちいい━――

私は童心に返ったように、足を動かして水を蹴って遊んでみた。驚いた山女がびくっと身を翻して逃げていく。

  ふと周りの木々を見上げてみると、一匹の川蝉の姿が見えた。しばらくその川蝉を観察していると、川蝉はふと思い出したように枝から飛び立って池へと急降下していく。水中で何かを捕まえると、再び元いた枝に戻ってくる。その嘴には、池で捕らえた小魚が咥えられていた。川蝉は小魚を丸呑みにすると、また枝に停まったままじっとしている。

「ほんと、御丁寧に再現されてるわね。」

今まで見てきた景色は、幻想郷のそれと見間違うほど精巧に作られていた。特にこの池の回りにある苔の生え具合や針葉樹の大木から垂れるサルオガセなんかを見ると、この森が数百年前からここにあったように思えてくる。これが数日で人工的に作られた自然だと、誰が思えるだろうか。

「さて、そろそろ行こうかしら。」

  私は神社へ向かおうと思って、足を水から引き上げて手持ちのハンカチで水を拭き、足袋と靴を履き直して座っていた倒木から飛び降りた。そして来たときと同じように熊笹を掻き分けて参道へと戻る。

 参道を暫く進むと、杉や唐松、樅などの針葉樹が生えた一角にたどり着いた。サナダはよくこんな狭いドームの中にここまで多彩な植生を再現したなと感心する。

「えっ、何あれ?」

針葉樹林の地面を眺めてみると、羊歯が繁茂してる中で離れていても分かるほど大きな茶色い物体が目についた。気になった私は近づいて物体を確認してみる。

「これ、キノコじゃん。」

物体の正体はキノコだった。それもかなり大きい。大きさは30センチほどあると思う。引っこ抜いて裏返してみると、普通のキノコのようなひだではなく、びっしりと管孔が敷き詰められていた。

「これはイグチね。」

キノコのことは魔理沙に散々聴かされたから少しは分かる。イグチは昔は毒菌がないと言われたほどだが、それを魔理沙に話すと怒って色々な毒イグチのことを熱く語られたのを思い出した。

 魔理沙の話を思い出しながら、イグチの様子を詳しく観察してみる。

――傘は茶色で管孔は黄色。柄は平坦でこっちも黄色ね。ヤマドリタケとはちょっと違うわね――

イグチの外見を詳しく確認すると、次は管孔をそこら辺の枝を拾って傷つけてみた。

ちなみにヤマドリタケとは、、針葉樹林に生える美味な食用イグチだ。

「うわっ、青くなった。これドクヤマドリじゃない。これ生やすならヤマドリタケにしなさいよね。」

手に取ったキノコはドクヤマドリだった。名前の通り毒キノコである。魔理沙曰く、イグチの中で3番目位に毒性が強いやつらしい。ひょっとしたらヤマドリタケかも、と期待しただけあってこの結果はがっかりだ。私は毒キノコなんて生やしたサナダに一人文句を言いながら参道に戻る。ちなみに、毒の強いイグチ上位2種はバライロなんとかと黒くてでかいイグチだったのは覚えているが、名前が長すぎてしかも幻想郷では目にすることはない珍しい個体だったので詳しく覚えてない。

 

  針葉樹林を抜けると、ようやく神社の階段が見えてきた。階段の周りには椎や樫のほかに、花が咲いている山桜や垂れ桜が生えている。

 ――これは桜を肴に一人酒かなぁ~――

私はそんなことを考えながら階段を登り、鳥居をくぐる。鳥居には「高天原神社」と書かれていた。一応この艦の艦内神社という扱いなので、どんなに似せても「博麗神社」には出来ないのだ。

 鳥居を抜けた先には拝殿が見える。拝殿の形は私が詳細に注文したのでほぼ博麗神社そのままだ。私は境内に踏み入って拝殿の賽銭箱を確認した。当然だが賽銭は入っていない。

――やっぱり入っていないか。期待はしていなかったけど――

賽銭箱を確認するのは昔からの癖だ。賽銭がないと分かっていても、つい確認してしまう。

 私は拝殿を抜けて、奥の本殿の縁側に腰を下ろした。本殿は居住や宴会スペースも兼ねていたので、それなりに大きな建物だ。

縁側から、自然ドーム全体を一望してみる。内壁に投影された空は夕暮れに差し掛かり、うっすらと赤みを帯び始めていた。時間経過まで再現されているようで、改めてこの世界の技術力に感心する。内壁には地上の映像も投影されていて、やはりここがドームだとは感じられないほど精巧な作りになっていた。今にも魔理沙が箒に乗って飛んできて、萃香が酒盛りを始めそうなほど懐かしい景色だ。自分が幻想郷で死んだのはつい先日の筈なのに、幻想郷での思い出が遠い昔のように感じられる。

「しかし、こんな大きな船にたった3人ってのも、なんだか寂しいわね。」

願わくばこれから先に訪れる星系で乗組員を確保したい所だ。船の運航もさることながら、なにより人がいないと寂しい。ここに来てから、私はコーディとサナダ以外の人間には会っていないのだ。

《あら、私を忘れてもらっては困りますよ、艦長。》

ポケットに入れていた携帯端末から声が響く、艦の制御AIである早苗の声だ。

「そういえばあんたも居たんだったわね。けどあんたは人の形してないでしょ?」

声を掛けてくれるのは嬉しいが、如何せん声だけなので、話し相手としては少し違和感を感じるのだ。

《うう~~そんなことを言わないで下さいよー。サナダさんがいつか人形の体をを作ってくれる筈ですから!それよりも、今まで空気を読んで黙っていたんですから、ちょっとは付き合って下さい!》

――サナダが早苗の体を?そんなことを私聞いてないんだけど。それよりも、やっぱりこの子妙に人間臭いAIね、違和感は残るけど、話相手としては退屈しなさそうね――

「分かったわ。今夜は一人酒って言ったけど、訂正。二人で酒盛りよ。」

 私は早苗にそういったけど立ち上がると、障子を開けて本殿の中に入る。サナダの話では設置した冷蔵庫に酒を入れてあるというので冷蔵庫を探す。

「あったあった。これね。」

冷蔵庫を開いて、酒が入った一升瓶を取り出す。そのあとは瓶を持ったまま台所に向かって、食器棚から漆塗りの杯を2つ調達する。そのまま縁側に戻ると、再び腰掛けて杯に酒を注ぎ、片方の杯は私の左隣に、もう片方は右隣に置いた携帯端末の前に置いた。

《あの、艦長?私飲めませんよ?》

早苗が不思議そうな声で訊いてくる。

「いいのよ。二人で酒盛りって言ったんだから、気分だけでも味わっておきなさい。サナダが作ってくれる体とやらが完成したら、そのときに飲ませてあげるわ。」

《あ、ありがとうございます、艦長!》

 早苗は嬉しそうに礼を言う。

――そういえば、向こうの早苗は下戸だったけど、こっちの早苗は大丈夫かしら――

 私は幻想郷の早苗が酒が飲めなかったことを思い出して、そんな心配をしてみる。

《それじゃあ艦長、貴女の昔話、是非聞かせてほしいです!》

早苗は私に過去の話をせがんでくる。今まで空気を読んで黙っていたと言っていたから、余程気になっているのだろう。

「分かったわ。そうね、何から話そうかしら―――」

 私は早苗に話す内容を考える。昔いた亀の話か、それとも紅い霧の異変から話すか、はたまた彼女とよく似た現人神の少女の話か―――

 

 

 

 ―――私達は、夜桜を肴にしながら、一晩二人だけの酒盛りの時を過ごした―――

 

 

 

 

 

 




今回は無限航路要素が薄めです。自然ドームの描写には気合いを入れてみました。幻想郷の自然らしさが感じて頂けたなら幸いです。なお途中で霊夢がドクヤマドリを同定するシーンがありますが、ここの霊夢は魔理沙のお陰でキノコには詳しいです。幻想郷では暇な時には時々魔理沙とキノコ狩りしていました。椎茸とか松茸とか狙います。ホンシメジとかウラベニとかのクサウラと間違えやすいのは狙いません。ツキヨタケと間違える?そんなトーシローなことはしませんよ。霊夢ちゃんは絶対に分かるキノコしか取らないいい子です。

あとは文中にあったサルオガセという植物ですが、これは針葉樹から垂れるコケみたいなものです。原生林らしさが出そうなので描写してみました。

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