夢幻航路   作:旭日提督

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皆様お待ちかね、レッツパーリィのお時間です。海賊狩りたーのしー!


第三九話 ザクロウ強襲

 ~惑星ブラッサム、宙域保安局~

 

 

「ううむ・・・まさかザクロウがそこまでグアッシュに牛耳られていたとは・・・」

 

 ユーリ君達が捕らえた海賊幹部を保安局に引き渡し、事の顛末を聞かされたシーバット宙佐が唸る。まさか自分達の同志が海賊に与しているなど、想像を越えた事態なのだろう。

 今回の会合もいつもの面子だが、ザクロウが敵の手にある以上、ここにもグアッシュの間諜が潜んでいるかもしれないので機密保持のためにはこれで構わない。シーバットさんの方も敵に作戦は漏らしたくないだろうし。

 

「メイリンさん、恐らく奪還対象も・・・」

 

「ええ、解っています。お嬢様方もザクロウに送られたと見て間違いなさそうですね。ですが、やることは変わりません」

 

「了解。まあ、殴り込む先が変わっただけだしね。そっちが是というなら私はそうするわ」

 

 ブクレシュティを経て入手した情報をメイリンさんに伝えたところ、彼女はすぐにザクロウに乗り込むと言ってきた。海賊が捕らえた捕虜がザクロウに送られていると判明した以上、奪還対象も同様にザクロウに送られているのだろう。ならばわざわざくもの巣をつつく必要はない。

 だけど今すぐザクロウに乗り込むわけにはいかないので、保安局と協調するようには言っておいた。あっちも一緒にザクロウに乗り込むみたいだし、あの防衛システムを突破するのにも数は多い方がいい。

 

「はい。よろしくお願いしますね」

 

 メイリンさんとの打ち合わせもこんなところだ。あとは保安局に合わせて此方も出撃するだけだが・・・

 

「宙佐、今すぐザクロウを強襲しましょう。バリオ達だけじゃない、もしも例の人物があそこに送られていたら・・・」

 

「うむ、法務局の許可を待っている場合ではないか。止むを得ん、第3、第9管域の保安隊、及び惑星強襲隊を呼集―――準備ができ次第、出港する!」

 

 ウィンネルさんとシーバットさんの話を聞く限り、恐らく保安局の方もすぐに動き出すようだ。なら、此方も早めに準備を整えるとしよう。

 

「ではユーリ君、霊夢さん。準備のほどを頼みたい」

 

「分かっています。こっちもトスカさんがザクロウにいますから」

 

「了解よ。そっちに合わせて出るわ」

 

「・・・すまないな」

 

 シーバットさんはやはり民間人を巻き込んだことに責任を感じているのか、今一度頭を下げる。まあ、こっちはこっちで勝手に首を突っ込んだだけだし、受けた依頼の手前引っ込むわけにはいかないのよね。

 

「別に気にしなくていいわ。私達は私達でやるべき事を成すだけよ」

 

 依頼というものは信頼が何より重要だ。いくらアウトローの0Gといえど、受けた依頼から逃げ出すなんて訳にはいかないし、シーバットさんが何と言おうとザクロウを攻め滅ぼすのは規定事項だ。という訳で、こっちは好きに暴れさせてもらうわ。

 

「君達には、本当に申し訳ない―――それと、ザクロウには防衛用の装甲空母が配置されている。そちらへの対策もしておいてくれ」

 

 シーバットさんの話ではザクロウ防衛艦隊には装甲空母とかいう代物が配置されているらしい。というかそれ、いつぞやに早苗が話していた欠陥空母のことよね。なら別に対策するほどでもない。本当の機動部隊とはかくあるべきと教育してやるだけで充分だ。

 

 

 という訳で、保安局で会合を終えた私達は各々の乗艦へと戻り、出港準備を進めた。8時間後には保安局も準備を終えたとのことで、私達とユーリ君、それにメイリンさんの艦隊は保安局艦隊と共にザクロウに向けて発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~カルバライヤ・ジャンクション宙域、監獄惑星ザクロウ付近~

 

 

【イメージBGM:提督の決断Ⅳより「昼間砲雷撃戦BGM」】

 

 

 保安局艦隊と合流して進撃する私達の目の前に、監獄惑星を満遍なく取り囲む衛星群の姿が現れる。

 短期間のうちに、またお目にかかりましたオールト・インターセプト・システム。監獄惑星ザクロウを外界と隔てる防衛システムだ。前回は遠目に見るだけだったが、今回はあれを突破しなければならない。さて、どうしてやろうか。

 

 《霊夢君、強硬突破するぞ》

 

「そう来ないとね。了解よ」

 

 シーバット宙佐が通信で突破の合図を送る。その後、左右に展開していた保安局艦隊から幾つものロケットがオールト・インターセプト・システムに向かって撃ち出された。話によるとあれは艦船のインフラトン反応に近いエネルギーを放出するデコイらしい。成程、あれを囮にして迎撃の火線を分散させるという訳か。

 

 オールト・インターセプト・システムには許可、即ちシステムを通過することを許された認証コードがない艦船を自動で迎撃する機能があり、それは身内の保安局艦船であろうと例外ではない。そしてその迎撃は探知システムがインフラトン反応などの高エネルギー体を感知して、それを頼りに搭載されたレーダーによって侵入者の正確な位置情報を捕捉し砲台にその情報が転送されることで、そこに目掛けて正確無慈悲なレーザーシャワーが降り注ぐという訳だ。一隻か数隻では忽ち蜂の巣にされてしまうだろう。

 しかし、一度に侵入した相手が多ければ多いほど、一つの反応に向かって撃てるレーザーの数は減る。先程撃ち出されたデコイはその反応をさらに水増しするので、本命の艦隊に到達できるレーザーの量は本来のそれとは比較にならないほど少ない。だが、それでも保安局艦隊にとって脅威であることには変わりはないだろう。

 

「早苗、私達も行くわよ。全艦、壁面陣形!」

 

「了解です、全艦壁面陣形!!」

 

 デコイを射出した保安局艦隊は、そのままの勢いでシステムの放つレーザーの雨へと飛び込んでいく。

 それでは、私達もあそこに飛び込むとしよう。私は艦隊に壁面陣形への隊列変更を命じ、早苗がそれを伝達すると、各艦はスラスターを吹かせて素早く所定の位置へと移動する。

 私がさっき命じた壁面陣形は、各艦を一枚の壁となるように配置するもので、縦に単横陣を積み重ねたような形をした陣形だ。あのオールト・インターセプト・システムは迎撃対象を見つければすぐにそこへとレーザーを集中してくるが、艦隊自体が一枚の壁となってぶつかることでその火線を分散させ、一艦あたりの被害を減らそうという算段だ。

 

「続いて此方も欺瞞用デコイとECMによる妨害を開始。システムを無力化しなさい」

 

「了解。デコイ射出します」

 

「電子妨害開始。敵、探知システムの無力化を試みます」

 

 保安局艦隊に続いて此方もデコイを射出して的を増やし、さらにオールト・インターセプト・システムのレーダーを無力化するための妨害措置を開始して照準を狂わせる。熱反応は隠しようがないが、照準用レーダーならば多少は妨害できる筈だ。

 

「進路そのまま。我々も間もなくあの中に突入する」

 

「こりゃ燃えてきたな。久々の地獄だぜ」

 

 舵を握るショーフクさんの手に迷いはない。〈開陽〉はそのまま、オールト・インターセプト・システムの影響圏内へと突入する。

 〈開陽〉に殺到する無数のレーザーを見たためか、フォックスがそんな言葉を漏らした。

 

「全艦、APFSの出力を最大にして。一気に突っ切るわよ!」

 

「了解ですっ!シールド出力最大!」

 

 機関長のユウバリさんが、APFシールドの出力を最大まで上げるべくレバーを全開にする。

 

 APF(アンチエナジー・プロアクティブ・フォース)シールドは強力なフォースシールドによって艦体を包み込んで敵のレーザービームの到達を防止するシステムだ。さらに複数の周波数に対応するためにフィールドを重複するようレイヤーを展開することで、多岐にわたるビーム固有の周波数に干渉してその出力を減衰させる。シールドの出力は艦船のインフラトン・インヴァイダーに依存するので、大出力機関を搭載する〈開陽〉のAPFシールドはそう簡単に破れるものではない。

 何度かレーザーの直撃を受けて〈開陽〉の艦体が揺れるが、オールト・インターセプト・システムの個々の迎撃レーザーは出力が低いのかその全てがシールドに弾かれる。あのシステムの本懐は一度に複数の火線を集中してくることにあるので、一門一門のレーザーはそこまで脅威ではないらしい。レーザーの出力自体も小マゼランの駆逐艦レベルだし、これなら突破は何とかなりそうだ。

 

「シールド表面に命中弾複数。シールド出力5%低下します」

 

「巡洋艦と駆逐艦には一部のレーザーが装甲板表面にまで到達しています。装甲外板の放熱を開始」

 

 しかし、〈開陽〉は図体がでかいだけに受けるレーザーの量も多い。殺到するレーザーの雨は、痛くはないが痒い程度の出力減衰をシールドに引き起こさせていた。

 加えて機関出力で劣る軽巡洋艦や駆逐艦にはシールドを通り越えて艦体に命中するレーザーもあり、バイタルは抜かないにしても装甲板の加熱を引き起こして強度を低下させる。それに対応するために、各艦はプログラムに従って装甲板の放熱措置を開始した。

 

 一方、先行したカルバライヤ宙域保安局の艦隊に目を向けてみると、3~5隻程度の梯団になって突入した彼等は此方よりシールド出力が低いせいか、より多くのレーザーに艦体表面を焼かれている。しかし、カルバライヤ自慢の特殊鉱物で作られたディゴマ装甲で身を固めた彼女達はそれをものともせずに進んでいく。これなら、あっちの心配も無用だろう。

 

「艦長、間もなくシステムの迎撃範囲を抜けます」

 

「そのまま気を抜かないで、敵艦隊の襲来に供えて」

 

「了解!」

 

 保安局と私達の艦隊はレーザーの雨の中を掻い潜り、遂に突破に成功する。此方の損害はいずれも小破未満だが、カルバライヤ保安局側の艦船には中破状態の艦がちらほら見える。ただ、沈没がないのは嬉しいことだ。

 そしてユーリ君の艦隊は幸運にも受けたレーザーの量が少なかったのか、カルバライヤ製ほど頑丈ではないエルメッツァの艦船を主体としていながらも損害は少ない。メイリンさんの〈レーヴァテイン〉も無事だ。頑丈なカルバライヤ製戦艦なだけあって損傷らしい損傷は見られない。

 

 何れも作戦続行には支障なさそうなので、シーバットさんの進撃の号令に合わせて私達もザクロウを一直線に目指す。

 

 

【イメージBGM:提督の決断Ⅳより「海空戦BGM」】

 

 

「艦長、ザクロウ方面より大艦隊発進。3つの小艦隊に別れつつ進撃してきます」

 

 丁度そのとき、レーダーを監視していたこころから報告が入った。

 

「艦種識別・・・・敵艦隊は装甲空母を中心とした機動部隊と判明。全体でダガロイ級装甲空母7、バクゥ級巡洋艦13、タタワ級駆逐艦20!」

 

「随分と打ち上げてきたわね。私達は一番規模のでかい敵を相手にするわよ。全艦戦闘配備!各分艦隊ごとに輪形陣を組め!本隊はこのまま砲雷撃戦の用意!」

 

「了解です!各艦に陣形変更を命令」

 

「第一戦速に移行、前進します」

 

「ブクレシュティは分艦隊後方で本隊と合流するように」

 

 《了解したわ。布陣は旗艦の前で良いわね》

 

 敵艦隊発見の報せを受け、私は隷下の艦隊に向けて即座に戦闘配備を命じる。そして戦闘に向けて陣形を組み直し、第一から第三分艦隊が本隊の前方に展開してそれぞれ輪形陣を組む。〈開陽〉を含めた本隊は空母〈ラングレー〉を後方に置いてブクレシュティの小艦隊と合流して前進し、〈ラングレー〉の周囲を3隻のノヴィーク(改造ガラーナ)級駆逐艦が固める。そして最後尾には工作艦を置き、それを軽巡2隻と駆逐艦3隻が護衛する。いつもの戦闘陣形とあまり変わらない形だ。艦が少ないので輪形陣は平面的になるが、前方に展開する分艦隊3隊の配置を上下にずらすことで迎撃網をより精密にする。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 此方に向かう装甲空母の数は4隻、その護衛にバクゥ級巡洋艦7隻とタタワ級駆逐艦12隻が随伴している。成程、相手も私達が誰なのか分かっているようだ。此方に一番戦力を差し向けるということは私達が一番の脅威だと理解している証だろう。だけど、その程度じゃあ不足だと知りなさい。

 

 というか、あの護衛艦共グアッシュの艦じゃない。いよいよ連中とつるんでる事を隠さなくなったわね。それだけあちらさんが追い詰められてるって証か。

 

「艦載機隊の発進を急いで」

 

「了解!全艦載機、発進せよ!集合次第敵艦隊への攻撃に向かえ!」

 

《アルファルド1了解っ!一番槍だ!》

 

《グリフィス1了解!》

 

《グリフィス2了解しました、発進します!》

 

《ガルーダ1、出るぞ》

 

 航空管制を担当するノエルさんが艦載機隊に命じると、威勢のいい返事と共に〈開陽〉のカタパルトから続々と機体が射出されていく。いつものことながら、霊沙のやつは我先にと突撃していく。

 あいつ以外の艦載機隊は〈開陽〉の前方で一旦集合して編隊を形成し、それから敵艦隊目掛けて進撃する。

 

「〈ラングレー〉、〈高天原〉艦載機隊も同様に発進。第一次攻撃隊が向かいます」

 

 〈開陽〉の後方では、艦隊最大の搭載能力を持つ空母〈ラングレー〉が4段ある飛行甲板のうち、最上甲板とその下の飛行甲板に艦載機を並べ、4基のカタパルトで攻撃隊を送り出していく。その機体は全てが無人戦闘機〈AIF-9V スーパーゴースト〉だ。

 前方に位置する〈高天原〉からは〈Su-37C〉〈T-65B〉戦闘機が発進する。

 

 そのスーパーゴースト隊も一旦艦の前で集合すると、5機ずつの梯団に別れて進撃を開始する。

 

「第一次攻撃隊92機、全機発進しました」

 

 早苗が淡々と報告する。此方が送り出した攻撃隊の内訳は、〈開陽〉艦載機隊の可変戦闘機〈YF-19 エクスカリバー〉が4機、〈YF-21 シュトゥルムフォーゲルⅡ〉が霊沙の一機に加えて無人仕様が3級、ステルス戦闘攻撃機である〈F/A-17S〉が12機、戦闘機は〈Su-37C〉12機の合計32機に加えてサナダさんが開発した警戒管制機〈RF-17〉が4機発進し、その背に積んだレーダーで攻撃隊をサポートする。

 〈ラングレー〉艦載機隊からは〈AIF-9V スーパーゴースト〉が20機、〈高天原〉艦載機隊の〈Su-37C〉と〈T-65B〉がそれぞれ20機ずつだ。その殆どが戦闘機であり、対艦攻撃力はそれほど高くはない。そして直掩機として、第一第二分艦隊のノヴィーク級からスーパーゴーストが5機ずつ、計20機が滞空する。

 

 攻撃隊の到着まで少し時間があるので他の艦隊に目を遣ると、保安局艦隊は次に規模の大きい装甲空母2隻を中心とした艦隊を相手取るようだ。あちらは空母がいないためか、巡洋艦と駆逐艦が肉薄せんと加速している。その少し後方では、〈レーヴァテイン〉がエネルギーを溜めている。恐らくあの長距離砲で保安局を援護するつもりなのだろう。

 

 そしてユーリ君の艦隊に向かうのは装甲空母1隻と、護衛にバクゥ級とタタワ級が2隻ずつついた艦隊だ。ユーリ君のサウザーン級巡洋艦と相手のダガロイ級装甲空母からそれぞれ艦載機が発進し、まさに空中戦を挑むといったところだ。

 

 さて、此方の戦況に目を戻してみると、相手のダガロイ級4隻から100機近い艦載機が吐き出されて此方に向かってくる。

 ダガロイ級装甲空母はカルバライヤが現在配備している唯一の空母で、全長680m程度の重巡洋艦サイズの艦だ。ただ、肝心の艦載機搭載数が20機程度とかなり低く、24機の艦載機を搭載できるバゥズ級重巡洋艦にすら見劣りする搭載能力だ。そのくせ火力はバゥズ以上にあり、装甲も戦艦並に堅牢という空母なのか戦艦なのか訳の分からない艦艇なのだ。早苗が空母としては欠陥と烙印を押したのにも頷ける。いっそのこと航空戦艦とでも名乗ればいいのに。

 しかし、100機という数はダガロイ4隻分を上回る数だ。あそこのダガロイ級は格納庫を拡張しているのかもしれない。だが、艦載機の数が同数になったところでも此方の勝ちは譲らない。

 

 相手のダガロイ4隻が吐き出した艦載機の内訳は戦闘機のビトンが40機、攻撃機のクーベルが60機といったところだ。独自の艦載機を持たないカルバライヤはエルメッツァの艦載機をライセンス生産しているのだが、その性能はうちのマッド共が仕上げたキチガイじみた機体とは比べるまでもない。それに同数で挑むというのだから、結果は火を見るよりも明らかだろう。

 

 先ずは射程の差を生かして此方のSu-37Cと有人戦闘機隊が対空ミサイルを一斉射、AWACSとして機能する〈RF-17〉のレーダーに捕捉された敵の位置情報が攻撃隊各機に正確に転送されるので、その精度は高い。最初の一撃を回避しようと敵は編隊を崩し、回避行動に入る。しかし発射したミサイルは1機につき2発、それが40機分あるので80発のミサイルが敵編隊に襲いかかる。当然全て避けきれる訳でもなく、20機ほどの敵機が宇宙の藻屑と化した。一方、数が減った敵のビトン隊も態勢を立て直すと対空ミサイルでの迎撃に移らんとする。しかし、そこに最大速度で飛び込んだ無人戦闘機〈スーパーゴースト〉の群に撹乱され、ミサイルを発射できたのは僅かに留まる。

 スーパーゴーストの群は無人機ならではの慣性を無視した想定外のハイマニューバで敵編隊に迫り、その背に搭載したレーザーポットを以て着実に敵を減らしていく。そこに霊沙やバーガー達の乗る可変戦闘機隊が突撃し、短距離ミサイルとパルスレーザーが飛び交う死のダンスが開催される。

 

《ひゃっはー、一機撃墜!》

 

《くそっ、負けてられるか!グリフィス1、FOX2!》

 

《隊長っ、競争なんて後にして下さいよ...っと、此方も一機撃墜!》

 

 無線からは航空隊の面々が漏らす声が聞こえてくる。彼等が派手にやっているお陰で、敵攻撃隊の数は瞬く間に減っていった。まさに鎧袖一触というやつだ。性能差もさることながら、やはり適切に脅威認定を下す管制機の存在も大きい。さらに、敵は戦闘機が約40機なのに対して此方は全てが戦闘機だ。敵のビトンが押さえられなかった分はそのまま攻撃隊のクーベルを引き裂く。

 遮蔽物がない宇宙という空間の特性上、戦力集中の原則がもろに適用され、敵編隊は数を減らせば減らすほど加速度的にその速度は増していく。

 

 敵編隊を葬った第一次攻撃隊はそのままの勢いで敵艦隊に取りつき、対艦ミサイルと機銃掃射で敵艦の戦闘能力を奪っていく。ついでに耐えきれなくなったタタワ級2隻が轟沈した。

 

《いよっし、一隻撃沈だ!》

 

《クソッ、先を越されたか!》

 

《二人ともそこまでだ。そろそろ帰艦するぞ》

 

《チッ、仕方ねぇな》

 

 タリズマンに窘められた霊沙とバーガーは大人しく帰路についたみたいだ。さて、第一次攻撃隊によるお膳立てはここまで。次が本命だ。

 空母〈ラングレー〉の甲板には第一次攻撃隊が発進した後、別の機体が並べられていた。

 

 見慣れたいつもの〈AIF-9V スーパーゴースト〉が10機ほどあるが、あれはただの護衛機。第二次攻撃隊の主力を担うのは別の機体群だ。

 一方は鋭いラインの機首を持ち、その横にはインテーク状に張り出したランチャーが装備されている。翼は逆ガルウィングで半固定の脚が折れ目に付けられており、斜めに装備された2枚の尾翼の下には双発のエンジンがある。

 もう一方の機体は丸いずんぐりとした機首を持ち、その後ろには2つのキャノピーと旋回銃座が装備されている。主翼は高翼配置の逆ガル翼だが、主脚は引き込み式だ。垂直尾翼はあるが、水平尾翼はない無尾翼機だ。機体自体も前者に比べて1、5倍以上はある大型機で、その迫力も違う。

 前者の機体が〈空間艦上爆撃機 DMB-87 スヌーカ〉、後者が〈空間艦上雷撃機 FWG-97 ドルシーラ〉。また性懲りもなくサナダさん達が作っていやがったこの機体達が、第二次攻撃隊の真打だ。

 

「〈ラングレー〉より第二次攻撃隊、発進!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 その機体群は第一次攻撃隊が帰路についたところで甲板を滑り出し、カタパルトで射出される。集合して編隊を組んだそれらの機体は、遮るものがいない敵艦隊への道を悠然と進んでいく。

 

 これらの機体群は何れも対艦攻撃力が高いが、その分機動力が低い。ビトン程度でもある程度は撃墜されてしまうだろう。だが、第一次攻撃隊に戦闘機を集中させることで敵機動部隊の戦闘機を封殺し、無傷の攻撃機は第二次攻撃隊に集中させることで攻撃機の犠牲を押さえる。これが私達が立てた対機動部隊用の戦術だ。まさか敵が艦載機を全部吐き出すとは思わなかったけど、お陰で上手くいきそうだ。

 

「第二次攻撃隊52機、敵艦隊へ向かいます」

 

 第二次攻撃隊の内訳は護衛のスーパーゴーストが12機にスヌーカとドルシーラが20機ずつ。その凶刃は間もなく降り下ろされる。

 

 敵を射程に捉えたドルシーラ隊は、搭載された簡易自立AIが適当な位置にいる敵艦を捕捉して、そこへ機首に抱えた魚雷を撃ち込む。機首を丸ごと使って搭載された大直径魚雷の威力はそこら辺の対艦ミサイルの比ではなく、僅か2発で真っ先に狙われたタタワ級駆逐艦が蒼い火球と成り果てた。

 続いてパルスレーザーの射程外の高度を飛行していたスヌーカ爆撃機隊が敵艦隊上空に差し掛かると、敵に残された僅かな対空弾幕をものともせずに急激な角度で敵艦に迫り、翼下に搭載した爆弾とミサイルの雨をバクゥ級とダガロイ級に叩きつけ、残された武装とブリッジを破壊する。そして重たい荷物を下ろして身軽になったスヌーカ達は先程の戦闘機隊と同じように敵艦の周りを飛び回り、機首のロケットランチャーと翼内機銃で生き残ったタタワ級を穴だらけにしていく。

 そして止めに残りのドルシーラ隊がダガロイ級に殺到し、両舷2発ずつ、合計4発の宇宙魚雷を食らわせる。流石の装甲空母といえど大直径の宇宙魚雷を受けては只では済まず、4隻のダガロイ級はインフラトンの火球と成り果てるか、真っ二つに折れて轟沈した。

 

「第二次攻撃隊、戦果絶大!此より帰艦します」

 

 役目を終えた機体達は身を翻し、母艦へと帰艦する。

 

「よし、続いて残敵掃討に移るわよ。〈開陽〉と〈ピッツバーグ〉〈ケーニヒスベルク〉を艦隊より分離して」

 

「了解です」

 

 後は生き残った護衛艦に対して、戦艦と重巡洋艦による砲撃戦が展開される。

 

「射撃諸元入力完了、発射角調整、撃てっ!」

 

 フォックスが引き金を引くと、〈開陽〉の三連装主砲3基から青白いレーザービームが放たれ、寸分の互いなく敵のバクゥ級とタタワ級に命中する。続いて〈ピッツバーグ〉〈ケーニヒスベルク〉の2隻からも生き残りの艦にレーザーが向けられ、抵抗手段を奪われた敵艦隊は一隻残らず殲滅された。

 

「敵全てのインフラトン反応拡散、全滅です!」

 

 珍しく勢いのいいこころの声が響く。これで、此方に向かってきた敵の艦隊は殲滅した。だが、他はどうだろうか。

 私は他の戦線に目を移してみたが、どちらも味方が有利に進めているようだ。

 カルバライヤ保安局は空母こそないものの、肝心の上陸部隊が乗る強襲揚陸艦を護りつつ、統率が取れていない装甲空母とグアッシュ艦を各個撃破していく。装甲空母が放った艦載機はメイリンさんの〈レーヴァテイン〉から発進した戦闘機隊によって押し止められているので、艦隊の空は安全だ。本来ドーゴ級戦艦は艦首に超遠距離射撃砲を持っているのだが、〈レーヴァテイン〉はそれを撤去して艦載機カタパルトを設置しているようだ。さらに、装甲空母の艦載機を相手取る片手間に例の長距離砲で護衛艦を着実に沈めている辺り、実に抜かりない。

 

 一方のユーリ君達はというと、いつのまにか何気に戦闘を終わらせていたりする。最初の航空戦を制した後は、いつもの要領で敵の外堀から沈めて、最後に装甲空母を撃沈していた。あれは単純に敵艦隊との実力差だろう。若い彼ではあるが、幸運の要素があれども今まで海賊相手に死線を潜り抜けてきた実力は伊達ではないといった所か。

 

《・・・全員、無事かね?》

 

 そこで、戦闘を終えたシーバットさんから通信が届く。

 

《此よりザクロウに進撃する。上陸戦の準備をしてくれ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~監獄惑星ザクロウ上空~

 

 

【イメージBGM:World of Warshipsより「Forlorn Outpost」】

 

 

 ザクロウからの迎撃艦隊を下した私達は、そのまま目的地である監獄惑星へと艦隊を進めた。見えてきたのは、岩石に覆われた、砂色と僅かな緑が見える不毛な惑星だ。あれが、例の監獄惑星ザクロウだろう。

 

 上陸戦の先鋒を務めるのはカルバライヤ宙域保安局だ。彼等が持ち出してきた500m級巡洋艦サイズの、艦首を挟むように切り離し型HLV4基を備えたグルカ級強襲揚陸艦3隻がザクロウの低軌道上に侵入すると、HLVを保護するカバーを開いて、軌道エレベーターの基部に向けてそれを射出する。

 撃ち出されたHLVは大気圏との摩擦で赤く輝きながら惑星へと降下し、一定の高度に達すると減速を始める。

 

「私達も負けてられないわね。早苗、準備はできてる?」

 

「はい!準備万端ですっ!」

 

 私の問いに早苗は威勢よく答える。此処からは、ファズ・マティ戦の焼き直しみたいなものだ。

 

「艦隊の指揮権をブクレシュティに移譲、本艦は此より、監獄惑星ザクロウへの強襲上陸作戦に入る!」

 

 保安局艦隊に続いて〈開陽〉と〈サクラメント〉の両艦が降下し、大気圏内に突入する。その間、私を含めた上陸部隊は強襲艇に乗り込み、出撃の時を待つ。

 

《射出高度に到達、全機発進して下さい》

 

 ノエルさんのガイド音声が響くと、ガクンという衝撃と共に強襲艇が〈開陽〉を離れ、地上を目指す。

 機外には、惑星特有の青空が広がっていた。

 

《地上までの案内役は、俺達に任せな!》

 

 その横を、バーガー達を始めとした航空隊が往く。彼等は上陸部隊に先行して惑星に降り立ち、敵の戦闘機と対空砲台を排除する。

 

 強襲艇はしばらく飛行を続けながら高度を落とし、航空隊が切り開いた道を進んでいく。そして目的地に到着したところで、腹に詰め込んだ兵員と戦闘車両を下ろしていく。

 私達が降下したのは、軌道エレベーター基部からそれなりに距離のある監獄施設だ。

 

「なっ、何だあいつら!」

 

「こんなの聞いてねぇぞ!」

 

 施設の方でバリケードを作っていた局員達が愚痴を溢す。よく見ると、連中の中には海賊も混ざっているみたいだ。

 

 ―――ははぁ~ん、成程ね・・・

 

 監獄ぐるみでグアッシュと通じていたというのは、嘘ではないらしい。悪事に手を染めた監獄職員達は、潜入していたグアッシュの団員と共に戦う気のようだ。

 これなら、遠慮はいらないだろう。

 

「総員、兵装をパラライザーモードに!蹂躙しなさい!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 私達はM61重戦車を先頭に立て、敵のレーザーを弾きながら前進する。その車体後方には保安隊員達が乗り込む。所謂タンクデサントというやつだ。戦車の砲撃でバリケード前に盛大な土煙を立てさせるとそこへ、関節に干渉しないよう配置されたアーマーと黒い防弾インナーを着込んだフル装備の保安隊員が雪崩れ込み、パラライザーモードのブラスターで敵を次々と気絶させていく。

 

「クソッ、撤退、撤退ぃ~っ!」

 

 状況は不利だと悟ったのか、敵の一人が退却を呼び掛けて施設内に逃げ込もうとする。

 

「うふふっ、させませんよ・・・・!」

 

 彼等の行く先に一機の強襲艇が腹を向けて着地し、降下用の扉が開く。

 排熱の蒸気と共に現れたのは、背後に機動歩兵達を従え、赤い光刀を滾らせた早苗の姿だ。勿論、大尋問官サナエちゃんである。

 

「な、なんだぁ?女か―――」

 

 逃げ出した男の一人が侮るような声を出したが、その次の瞬間には、彼は宙を舞っていた。

 早苗は光刀を振るい、非殺傷の制圧モードで彼を吹き飛ばし、宙を舞わせたのだ。

 

 ドサッ、と舞った男が地面に落ちたときには、彼の意識は沈黙させられていた。

 

「さぁ、次はどなたですか~?」

 

 早苗は挑発するような目で逃げ出した敵を見据え、光刀をかざす。彼女の瞳はいつの間にか、何時もの緑色から琥珀色へと変わっていた。

 

「私、うずうずしちゃいます―――――海賊退治って、楽しい―――!!」

 

「「「ひっ、ひぃぃぃあぁぁぁっ!!」」」

 

 早苗はそう告げて、舌舐めずりをして見せる。傍目から見れば、私ですら惹き込まれそうなほど蠱惑的な表情。

 だが、敵にとってそれは獲物を前にした捕食者の表情でしかなく、恐怖を決壊させた悪人共は我先にと争うように逃げていく。

 

「・・・逃がしませんって、言いましたよね?」

 

 しかし、それを許す早苗ではない。

 彼女は人ならざる義体の潜在能力をふんだんに引き出し、跳躍する。逃げる集団の前に降り立った彼女はナノマシン制御で左肘から下を変形させ、巨大なガトリングガンを形成する。その重量を支えるために、右手に持つ光刀は一旦収納されて空いた右手で左手のそれを掴んだ。

 

「一応パラライザーモードですけど、痛いですから我慢して下さいね♪」

 

 早苗は一転して可愛くウィンクしてみると、ガトリングガンが回りだし、意識を刈り取る制圧用レーザーが絶え間なく逃げる集団に降り注ぐ。

 傍目からみればかなりヤバい光景だが、スコープで覗けば敵のバイタル自体は無事だと表示されているし、言い付け通り非殺傷で制圧しているようだ。なら、一応安心しても良いのかな?

 

「――――ふぅ、悪は滅びました。善行を積むのは心地が良いです」

 

 逃げた集団が全て地面とキスを交わしたのを確認すると、早苗はガトリングを止めて元の腕に戻す。

 

「なぁ」

 

「俺達、来た意味あったか?」

 

 私の後ろで、茫然と単騎無双を眺めていたエコーとファイブスが呟いた。

 

 ―――悪人退治は確かに善行でしょうけど、一見すればあんたの方が悪人に見えるわよ・・・

 

 そんな私の心の呟きなどまるで聞こえないとばかりに、早苗はいつもの笑顔で駆け寄ってくる。

 

「制圧完了しましたっ!ささ、奥へ急ぎましょう!」

 

「あー、はいはい、分かったわ。エコー、何人かここに残してそいつら縛っておきなさい。起きるとまた面倒だし」

 

「イエッサー!」

 

 早苗が施設内へ進めと催促してくるが、先ずは制圧したグアッシュ団員共を無力感しておくのが先だ。エコーが何人かに命じて倒れている男共を拘束ロープで縛り終えたあと、私達は施設内へと侵入する。

 

《―――艦長、聞こえますか?》

 

「ミユさん?何かしら」

 

 移動を開始したところで、私の下に艦に残ったミユさんから通信が届いた。

 

《保安局の軌道降下部隊が苦戦しています。此方に援軍を求めていますが―――》

 

「そう。ならブクレシュティに言っておきなさい。それで解決するわ」

 

《――了解しました》

 

 ミユさんは私の意図を察したのか、それ以上は何も言わない。

 しかし、保安局が苦戦するなんて、あそこの敵戦力はかなりのものらしい。私達が収監施設前を強襲したのもそこからの援軍を阻止するためなのだが、これでは逆に此方が包囲される恐れがある。何とかして、風穴開けさせないと不味そうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~強襲巡洋艦〈ブクレシュティ〉~

 

 

 保安局のグルカ級に合わせるようなコースで、それは監獄惑星ザクロウへの降下を続ける。

 青と藤色の艦体に黄色のラインが引かれたそれ―――強襲巡洋艦〈ブクレシュティ〉は、一定の高度に達すると、惑星の自転に合わせるように速度を調節し始めた。

 

 自らの位置を調節し終えた彼女は、その下部にある3基のシャッターを解放した。

 

《HLV降下シーケンス、最終段階ニ移行―――》

 

 無機質な機械音声が響く。

 艦橋に一人座る金髪の少女―――ブクレシュティは、紅茶のカップを静かに置いて、僅かに口角を吊り上げた。

 

《ヘルジャンパー、スタンバイ。ODST投下準備完了》

 

 その報告を待っていたかと言わんばかりに、彼女は目を見開く。

 

「HLV、投下。"地獄"を創りなさい」

 

《了解。HLV投下シマス。一番カラ三番マデ射出》

 

 彼女は台詞と共に指を弾き、にやりと嗤う。

 

 これから地上で繰り広げられるであろう蹂躙に心を踊らせながら、彼女は自身の半身たる〈ブクレシュティ〉を軌道から離脱させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~監獄惑星ザクロウ~

 

 

 

「おいっ、あれを見ろ!」

 

 軌道エレベーター付近で戦っていた監獄職員の一人が、空を見上げて叫ぶ。

 

「いいから前に集中しろ・・・って、まさか保安局の増援か!?」

 

 別の男が彼を窘めようと声を掛けるが、彼が指した先を見上げて事態を悟る。

 

 彼等の頭上には、赤い炎の尾を引きながら超高速でザクロウに迫る3つの物体があった。紛れもなく、HLVである。

 しかも、そのHLVは通常行われるであろう減速を殆ど行わず、それ自体が質量弾と化して彼等の背後にあった物資集積所付近に着弾し、盛大に衝撃と土煙を巻き起こした。

 

「ゲホッ、ゲホッ・・・ぅう・・・大丈夫か?」

 

「ああ、何とか・・・」

 

 土煙が晴れるより先に、男達は同僚の無事を確かめる。

 

「こっちもだ――――お、おいっ、あれは何だ!?」

 

 だが、それが降下した時点で、既に彼等の運命は決定されたも同然だった。

 

 一人の男が土煙の中に影を確認したのと、影がパラライザーモードによる無慈悲な制圧射撃を開始したのはほぼ同時だった。

 

「ぐわっ・・・」

 

「ぎゃぁっ―――」

 

「ぐっ・・・」

 

 訳も解らぬまま、保安局と対峙していた彼等は意識を刈り取られていく。

 土煙の中から現れたのは、高さ2mはあろうかという、両手にガトリングレーザー、背に迫撃砲を備えた鉄鎧の集団だ。これこそ、〈ブクレシュティ〉から投下された軌道降下用に改装を施された機動歩兵、ODSTの集団だった―――

 

「な、何・・・だと・・・・」

 

 最後に立っていた男も、周りに倒れる仲間と同じようにレーザーの雨に晒されてその意識を失った。彼が次に目が覚めたのは、冷たい牢の中だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長、ODST隊が保安局と合同で軌道エレベーターを占拠したようです。保安局主力と例の少年が地上に向かいます」

 

「分かったわ。ここで一旦、陣地を整えましょう」

 

「了解です。隊長!艦長より陣地構築命令です!」

 

「おお、そうか。よし野郎共、陣地構築だ!急げ!」

 

「「「イエッサー!!」」」

 

 エコーが号令を掛けると、保安隊員達は歩を止め、携帯型簡易司令部を組み立て、塹壕を掘り始める。

 

 私達はザクロウに降り立った後、強襲艇によるCAS(近接航空支援)と重戦車の装甲を盾に海賊に与する監獄職員共を蹂躙しながらここまで進撃してきた。勿論、シーバットさんからは無実の職員もいるだろうから兵装はパラライザーモードでと念を押されているので、無闇な殺生は行っていない。

 ちなみに航空支援は主に粘着爆弾で行われたので、私達が通った後には粘着物質に身を絡められて身動きできない連中が大量に放置されている。私達だけで監視するには手に余る数だし、逮捕は後続の保安局に一任だ。

 

 監獄施設に突入してしばらく経つが、監獄とはいっても労働場所となる鉱山や監視施設など幾つもの施設からなっている。囚人の収監施設までの距離もまだまだだ。そこで、あちらさんが軌道エレベーターを制圧したとのことなので、この場所を拠点として保安局本体との合流を図ることにした。私達だけ突出しても、戦術的に不味いからね。

 

「霊夢さん、これがシーバットさんから渡された監獄施設の地図になります」

 

 完成した簡易司令部の机に早苗が地図を広げる。勿論紙ではなくホログラムだ。

 

「此所は西棟と東棟の丁度中間地点か・・・確か西棟が女性囚人の収監施設だったな。奪還対象とトスカさんってのは、恐らくそこだろう。」

 

「ならバリオさんは東棟かしら。でも、確かこの先には管理棟があったわね・・・敵の親玉がいるならそこでしょう」

 

 私とエコーは今後の方針について議論を交わす。私達が持ち込んだ戦力はそれほど多くはない。機動歩兵も保安隊も個々の実力は強力だが、なにぶん数が少ない故に複数に分かれて行動するというのにはやはり不安が伴う。私が単騎無双すれば済むかもしれない話だけど、スカーバレルの一件で心配を掛けた手前、単独行動は憚られる。

「やっぱり一度保安局との合流を待ちましょう。それから各施設に人員を派遣して―――「敵襲―――っ!」」

 

「な、何ッ!」

 

「艦長、敵機です!早く避難を!」

 

 そこに、双眼鏡と法螺貝を持った椛が大声で叫びながら入ってくる。

 彼女は元々モフジだったのだが、マッド共のせいで人化した半獣だ。なので装甲服もそれに合わせた特注のものになっている。それに、モフジは目の良い動物らしく、その性質は椛にも受け継がれており、彼女は常人よりも遥かに視力が優れているらしい。人呼んで「千里眼の椛」と仲間内で言われているそうだ。こんなところまで、知り合いの名前を貰った白狼天狗に似てるのね―――――っと、こんな場合じゃないわね。

 

「ゲパルトを前に出して。それと航空隊に援護要請を!」

 

「了解ですっ!」

 

 早苗は素早く〈開陽〉のコントロールユニットに接続して待機していた戦闘機を差し向けさせる。敵機は殆ど航空隊の事前掃討で排除していた筈だけど、まだ生き残りがいたみたいだ。

 保安隊員達も2門のレーザー機銃と管制レーダーがついた対空戦車ゲパルトに乗り込んで敵機の迎撃を試みる。

 

 此方に接近してきた敵の航空機は3機、だがそのうち2機が急行してきたSu-37一機によって撃墜され、残る一機もゲパルトの対空射撃によって撃退された。

 何とかさっきの空襲は凌げたようだ。

 

「ふぅ、撃退できたみたいね・・・」

 

「はい。あっ、霊夢さん、保安局から連絡です。あと40分ほどで此方に合流できるみたいですよ」

 

「それは朗報ね。それまではこの拠点を維持するわよ」

 

「「「了解!」」」

 

 襲撃を撃退した後は、いよいよ本丸に攻め込むために保安局とユーリ君達の合流を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから50分ほどが経ち、漸く合流したユーリ君達と保安局の部隊と共に東西の収監施設へ進撃した私達なのだが、結論から言うと外れだった。東棟にはやはりバリオさんが閉じ込められていたみたいなのだが、西棟にはトスカさんに、奪還対象の姿も無かったのだ。メイリンさんを連れて確認してもらったから、たぶん間違いはないと思う。これで、残る敵の拠点は管理棟だけどなった。

 そしてバリオさんの話では、ここの所長は海賊とつるんでいたらしい。そいつは管理棟に閉じ籠っているらしいから、早く管理棟に着いて加勢しておこう。

 

《――――うそ・・・ライじゃないの!》

 

 そこに、意図していなかった人物の会話が流れ込む。

 

《ねぇ、ライ、ライなのね!》

 

《ん、―――ああ、リアか。久しぶり》

 

 声からすると、女の人はうちで雇ったリアさんみたいだけど・・・もしかして、相手の男って前話していた恋人さんなのかしら?発見の報を受けて飛んできたとか?

 というかこの映像、何なのさ。

 

《っ!久しぶりじゃないでしょ!何そのフツーの挨拶!ライ、なんであんたこんなところに居るのよ!》

 

 リアさんは大声で相手を責め立てているみたいだが、あれが恋人だとしたら、いきなり居なくなった上にあの返事じゃあ・・・堪忍袋の緒も切れるわよね。

 

《家に男が来て・・・好きなだけインターセプト・システムの研究をさせてやるって言うから―――》

 

《それでノコノコここまで来たってわけ!アンタ、ここがどこだが解っているの!!》

 

《う~ん、そういえばどこなんだろう・・・よく分からないけど、男の言うとおり良い場所だよ。すごく設備が充実しているし、幾ら機材を使っても怒られないし》

 

《・・・っ、この研究ヲタク!いきなり居なくなるから私、すごく心配したのよ!!連絡くらいくれたって良いでしょ!?なんで急にいなくなったりするのよ!》

 

《あ・・・・あ、ああ~、解ったぞ、つまりきみは、僕が黙っていなくなるから怒っているんだね?》

 

 通信越しでも分かるが、リアさんの彼氏って人、すごく駄目な人みたい。こんなのと付き合ってるなんて・・・ほんと物好きねぇ。

 

《だからさっきからそう言っているだろうがああぁぁぁ!?》

 

《お嬢さん、落ちつい―――グギャアッ》

 

《ふごっ》

 

 直後、映像を映していた端末越しに男二人の悲鳴が響き渡る。片方は当然ながらリアさんの彼氏さんからはだが、もう片方は止めに入ったエコーの声だ。こんな茶番に付き合わされる辺り、彼も運がないみたい。

 

「―――痴話喧嘩は以上です!」

 

「―――早苗、覗きは良くないわ」

 

 ところで、あの映像を表示した下手人は早苗だったようだ一体何の目的があってあんなものを映したのやら・・・

 

「・・・兎に角、先を急ぐわよ」

 

「えぇ~、面白くないんですか~?」

 

「何処が」

 

 後ろでなんか言っている早苗を無視して、私は管理棟へ進む。

 人の痴話喧嘩なんて見ていて楽しいものじゃないしね。ある意味愉快かもしれないけど・・・

 

 

 

 

 

「後は、この管理棟だけね」

 

「ああ、さっさと済ませちまおうぜ」

 

「お嬢様・・・」

 

 さて、いよいよ親玉のいる管理棟の前に着いたわけだが、そこにはここを守ろうとして一歩も引かなかった監獄職員達が気絶させられていて山積みになっている。本来はカルバライヤ保安局が突入していたのだが、早苗が乱入して単騎無双という訳だ。保安局が見てる手前色々不味いかもしれないけど、今は攻略が先だ。

 

 私とファイブスは管理棟の前に立って入り口を抉じ開けるところだが(エコーは分隊を率いて東棟攻略に向かっている)、メイリンさんは弱々しく呟く。さっきの西棟で奪還対象がいなかったからだろうか。

 

「・・・それじゃあ、行くわよ」

 

 私が腰のスークリフ・ブレードを抜いて扉を一刀両断する。そこに待ち構えたであろう敵の攻撃を受け流すために、事前に「夢想天生」を発動しておく。此方はパラライザーモードの縛りはあるが、弾幕ごっこと違ってこれは命懸けの戦いなのだ。前回のような轍は踏まない。

 

 だが、想定していた火線は一条たりとも降ってこない。

 

「あ・・・れ?」

 

 てっきり扉を切り裂いた途端レーザーの雨がお出迎えかと思ったのだが、予想に反して管理棟の中は静寂に包まれていた。

 

「敵がいませんね・・・」

 

 早苗もそれを不審がって、通路を覗き込む。私が入っても迎撃の気配すらない辺り、入り口にいないだけという訳でもないらしい。

 

「・・・ブービートラップの類いも見つからないな」

 

 ファイブスは赤外線スコープなんかを使って罠を警戒しているが、それもないらしい。そうなると、逆に怪しさだけが増していく。

 

「今は所長室に行きましょう。親玉を捕らえるのが先よ」

 

「了解っ」

 

 私は早苗、メイリンさんにユーリ君達とエコー以下保安隊を連れて、屋内図の案内を頼りに所長室へ真っ先に乗り込む。

 しかし、紫色の気味が悪い所長室は意に反してもぬけの殻だった。

 

「あれ、誰もいないぞ?」

 

 開口一番、疑問を口に出したのは、ユーリ君の仲間であるトーロ君だ。

 

「なら他を当たろう。みんな―――「待って」」

 

 それを見たイネス君が所長室を去ろうとするが、私はそれに待ったをかける。

 

「霊夢さん?」

 

 私の制止の意図が理解できないのか、イネス君は首を傾げた。

 

 ―――まぁ、あんた達はそこで見ていなさい・・・

 

 私は再び腰の刀を抜き、部屋の一角に立つ。そして目の前の壁を切り裂いた。

 

「―――当たり」

 

「か、隠し通路ですか!?」

 

 目前には、人一人が通れる程度の細い隠し通路が続いている。中は暗く湿っていて、時々水滴が垂れたりしている。不気味で気持ち悪い通路だ。

 

「たぶん、所長が逃げ込んだ先に通じているんでしょう。行くわよ」

 

「えー、こんな気味悪いところにか?」

 

「ほら、ぐずぐずしない!」

 

 トーロ君は嫌がってるみたいだけど、それをティータさんだっけ?が押す。こういうところ、彼は苦手なのかもしれない。

 

「とにかく入ろう。この先にトスカさんが居るのかも」

 

「そうですね。お嬢様のことも心配ですし、先を急ぎます」

 

 ユーリ君とメイリンさんは焦りがあるのか、我先にと通路を進んでいく。

 

「―――それじゃあ早苗、行くわよ。ファイブスもついてきなさい」

 

「了解ですっ」

 

「イエッサー」

 

 私も早苗とファイブスを従えて、隠し通路の中へと身を沈めた。

 

 

 

 

 隠し通路は一本道で、右へ左へと蛇行しながら奥へと続いていく。途中で脇道とかも無かったし、私の勘もそれがあるとは告げていなかったので、私達はそのまま奥へと進んだ。

 途中で罠なども警戒したのだが、その類いは一切無かった。所長が使ってから、仕掛ける時間もなかったのかもしれない。

 ややあって、薄暗く広い場所に出た。ここが終点だろうか。

 

「ユーリ見て、あそこに誰か座っている人がいる!」

 

「まさか、トスカさんか!?」

 

「お嬢様っ!?」

 

 そこでティータさんが何かを見つけたようで、その言葉にユーリ君とメイリンさんが反応する。周りが薄暗いので、人影の詳細が分からないあたり可能性を引き立ててしまうのだろう。

 

「トスカさん!トスカさん!!トスカさ―――」

 

「お嬢様っ!サクヤっ――――」

 

 しかし、早苗がライトで照らしてみると、件の人影はどれとも違うものだった。

 

「うわあああっ!」

 

「ひゃっ―――!」

 

「きゃあああっ!」

 

 順に、ユーリ君、メイリンさん、チェルシーさんの悲鳴だ。一番年上であろうメイリンさんが一番落ち着いているのは流石といえよう。私?あの程度で悲鳴なんて出さないわよ。

 目の前の人影は、乾燥してミイラ化した男の死体だった。

 

「きゃーっ!」

 

 ・・・・・・

 

 少し遅れて、早苗がわざとらしい悲鳴を浮かべて私に抱きついてくる。しかも、私の右腕をぎゅーっと抱き締めて双丘を押し当ててくるんだけど。少し苦しいわ。なに?自慢したいの?ぶっ飛ばすわよ?

 

 あんた、ほんとは怖くないでしょ?何がしたいのよ・・・

 

「―――早苗、離れて」

 

「えーっ?霊夢さんは怯える乙女に一人になれと言うんですか!?」

 

「・・・本当は怯えてなんていないでしょ。ほら、さっさと離れなさい」

 

「―――ちぇっ」

 

 早苗は不覚とばかりに舌打ちすると、大人しく私の腕から離れる。これで私の腕も、双丘の圧迫から解放された。

 

 ―――ほんと、何がしたかったのよ・・・

 

「おい、何だよこりゃ!?」

 

「・・・ミイラ化しているな。死後半年以上は経過してそうだ」

 

 トーロ君も驚いているみたいだが、ファイブスは冷静に死体を観察する。こういうところで、彼の軍人としての冷静さが感じられる。

 

「・・・グアッシュの成れの果てさ」

 

 そこに、くぐもった女の人の声が響く。

 空間の奥から現れたのは、トスカさんともう一人、大物そうな女の人だ。

 

「ここに閉じ込められて、飢え死にしたんだ」

 

「名の通った海賊にしては、哀れな死に様だがな」

 

「トスカさんっ!サマラさん―――」

 

 ユーリ君が二人の名を呼ぶ。成程、もう片方が噂の大海賊、サマラ・クー・スィーか。確かに感じる気配は只者ではなさそうだ。それに、頬に傷が入っていながらも損なわれない冷徹な美貌は、確かに無慈悲な夜の女王と恐れられるのに相応しい―――ちょっと憧れちゃうかも。

 

 私がサマラを観察してそんなことを考えていると、さらに奥からもう一人、人影が現れる。

 

「あら・・・そこに居るのは・・・」

 

「その声―――サクヤっ!」

 

 突然、メイリンさんが人影に駆け寄って抱き締める。

 その人影は女の人の姿で、短く切られた銀髪に、ここ最近で傷ついたのか汚れているが端正な顔立ちをしている。着ているメイド服は所々破けているが、それは他の二人も同じだ。

 

「トスカさん・・・良かった、無事で」

 

「サクヤ―――心配しましたよ、私・・・」

 

 ユーリ君とメイリンさんは、相手に抱きついたまま離れない。余程彼女達のことが心配だったでしょうね。

 

「そんな顔するんじゃないよ。ちょっと閉じ込められてただけさ。通路の先からあんたの声が聞こえてきてびっくりしたよ・・・」

 

 トスカさんはいつもの口調でユーリ君に語りかけるが、その声はいつもと比べて湿っている。やはり、心配してくれたのは嬉しいのだろう。

 

「メイリン・・・一人で頑張っていたのね。御免なさい、心配かけてしまったみたい」

 

「いえ・・・そんなことはありませんよ・・・貴女が生きていただけで―――」

 

 一方のメイリンさんと多分その友人のサクヤさん?の周りもしんみりした空気が漂っている。やっぱりあの人、あのメイドに似てるわね。いつかは冗談じみた予想でもしてみたのだけれど、まさか当たるなんて思いもしなかったわ。これはいよいよ、件の奪還対象のご令嬢があの吸血鬼姉妹に似てる連中ってのも真実味を帯びてきたわね。

 ちょっとトスカさん達の話を小耳に挟んでみると、彼女達とサクヤは別々に脱獄して、所長の隠し通路を見つけたはいいけど、気付かれて閉じ込められてしまったみたい。となると助けが来なければあのグアッシュの成れの果てだというミイラと同じ運命ということか。ああ恐ろしや。

 

「・・・という事は、やはり所長はグアッシュとつるんでいたのですか」

 

「いや違う。奴がグアッシュなのだ」

 

 向こうではイネス君が質問するが、それにサマラさんが答える。

 

 ―――今、ちょっと聞き捨てならない台詞が聞こえた気がするんだけど。

 

 監獄の所長がグアッシュ?なによその冗談。

 

「どういうことだ」

 

「収監したグアッシュを殺して成り代わった所長がここから手下達に指示を与えて資金を渡していたって訳さ」

 

 後ろに控えていたファイブスがそれを聞いてみると、トスカさんがそれに答える。さっきあれを"グアッシュの成れの果て"といったのはそういう意味なのか・・・しかし、とんだ悪人もいたものね。海賊に与するだけでなく頭目と入れ替わるなんて、肝が座っているのやら、その所長ってのも大した悪人みたいだ。顔ぐらいは拝んでやろう。こんな面倒な依頼の原因を作りやがった元凶なんだし、ぶっ飛ばすのは確定事項だ。

 

「そうか・・・頭がこの安全地帯にいるんだから、手下をいくら叩いても意味がないって筈だ。よし、ユーリ君、今すぐこれをシーバット宙佐に伝えよう」

 

「はいっ!イネス、トーロ、行くぞ!」

 

「よしっ、了解だ」

 

「―――さっき入った連絡によると、宙佐達は西館を攻めているらしい。目を覚ました連中が最後の拠り所にしているみたいだ。」

 

 そう言ってユーリ君達は、ちゃっかりついてきていたバリオさんと共に隠し通路を戻っていく。

 

「・・・それで、お嬢様方は?」

 

「―――残念だけど、間に合わなかったみたい。私がコンピュータに侵入した時には、もう連れ去られた後だったわ。多分くもの巣にもいないでしょう」

 

「そう、ですか・・・」

 

 再びメイリンさん達の方に耳を向けてみると、先程の喜びとは一転して、メイリンさんは肩を落とす。サクヤさんも申し訳なさそうな表情だ。だとすると―――

 

「・・・霊夢さん、残念ながら、此処に奪還対象は既に居ないみたいです―――」

 

 やはりそうか。会話の内容からだいたい分かってしまったけど、そうなるのね。奪還対象は此処にはいなかったみたいだ。

 

「そのようね。なら、探し出せばいいんでしょ?」

 

「え――?」

 

 メイリンさんは私の返事が意外だと言わんばかりに目を見開いているが、それに構わず私は言葉を続ける。

 

「だって私、彼女達を見つけないと報酬貰えないんでしょ?だったら、二人とも(・・・・)見つけた暁には2割増しで頼むわ。こっちはいい加減赤字になりそうなんだし、交渉の程、期待してるわよ?」

 

「れ、霊夢さんっ―――!有難うございますっ!」

 

「ちょっと、いきなり抱きつかないでったら!」

 

「ああっ、霊夢さんに抱きつくなんて、許せません!成敗です!」

 

「クスッ、メイリンったら―――」

 

 私の解答を聞いたメイリンさんがいきなり抱きついてくる。そんなに契約続行が嬉しかったのだろうか。それより、そこのサクヤっての、早く助けなさいよ。あんたの友人でしょ?これ。

 早苗からの視線も痛いし・・・早く離れてくれないかしら?呪い殺されそうだわ。

 

 

 本来の依頼達成は成らなかったザクロウ攻略戦だが、攻略自体は成功したみたいだ。ユーリ君とメイリンさんも探し人を見つけられたみたいだし(メイリンさんは二人残ってるけど)、戦果は上々、と言ったところかしらね。

 

 ―――ああ、依頼が面倒臭いわぁ~

 

 だが、今後も依頼継続となると、やはり戦力の消耗は続くだろう。2人を見つけたときにはガッポリ出して貰うんだから―――




2万字越え・・・切れの良い所で終わろうとしたらKONOZAMAです・・・言うまでもなく、過去最長であります。今後はこれ以上延びることはないでしょう。

今回はレッツパーリィ第一回目ということで、ザクロウ強襲編です。中盤の機動部隊戦ではガ○ラスから2種類の航空機が参戦しました。丁度三段空母(ブラビレイ改造)を保有している霊夢艦隊なので、艦載機も合わせてみました。何気に雷撃機の魚雷懸架システムが大好物です。後継機の方が二連三段空母で魚雷の再装填を行っているシーンが萌えますね。

早苗さんは原作では瞳が黄色だったり緑だったり青だったりしますが、ここの早苗さんは通常は緑、さでずむ振り撒くS苗さん状態のときは黄色になります。特に意味はありません。

最後に咲夜さんならぬサクヤさんに登場して頂きました。まあここまで来たら分かっていらっしゃったとは思いますが。ちなみに咲夜さんみたいな能力は持っていませんが、インプラント化してるのでマク○スFのグ○イスさんみたいなこと出来たりします。なので脱獄もそんな感じに、といったところですね。

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