夢幻航路   作:旭日提督

33 / 109
明けましておめでとうございます。本年初の投稿です。


第三一話 接触

 ~カルバライヤ・ジャンクション宙域、惑星シドウ~

 

 

 

 

 ゲートを抜けて早速現れたグアッシュ海賊団の小隊を蹂躙した私達は、そこから一番近い惑星シドウの宇宙港に錨を下ろした。艦隊の数がかなり増えたので、ドックの一区画を丸ごと借りる羽目になったけどね。入りきらない分は外で工作艦に横付けしてある。

 

「霊夢、補給品のリストだ。」

 

「ありがと、コーディ。助かるわ。」

 

 親切なことに、コーディがわざわざ補給品リストを届けてくれた。このリストには先の戦闘で使われた消耗品の他に、日用品や通常航海に必要な物資なども記載されている。基本的に最低限必要なものはタダで補給してくれるからそれらの物資は空間通商管理局に書類を提出すれば自動で補給してくれるのだが、追加装備や娯楽品の類はこちらで対価を支払わなければならない。艦載機なんかも基本オプションには含まれていないので、消耗したミサイルや推進剤の補充もこちらに含まれる。こういった補給品リストの提出も、宇宙港で艦長がやるべき仕事の一つだったりする。

 

「そんじゃあ私は管理局の方に行ってくるから、上陸準備の方は宜しくね。」

 

「イエッサー。」

 

 コーディはそう答えると素早く艦に戻っていく。元軍人なだけあって行動が素早いわね。

 

 今後の予定だが、まずは管理局にリストを提出して、それから地上の酒場で情報収集だ。私達はこのカルバライヤには来たばかりだから、安全な航海のためにも地元民からの情報収集は欠かせない。

 

「さーてと、そんじゃあさっさと片付けますか。」

 

 それに加えて、酒場なら遠慮なく酒が飲める。普段は艦長業務があるから飲みすぎて二日酔いなんてことはできないけど、惑星に停泊するときは大体1、2日は留まってるからそれなりの量を飲んでも大丈夫だ。最近はあまり惑星に寄港してなかっことだし、この仕事をさっさと済ませて久々に楽しむとしよう。

 

 

 

 

 

 ~惑星シドウ・0G酒場~

 

 

 

 

 宇宙港で一通り事務処理を終えた私達は地上の酒場に降り立った。まだ地上は昼間なのに酒場に繰り出す光景は一見ダメな連中の行動に見えるけど、これも0Gとして大切な業務の一つだ。ちなみにメンバーは私と霊沙にコーディ、フォックスの四人だ。元軍人の二人は弁えてくれるだろうけど、霊沙の奴が自重しなさそうで心配だわ・・・

 

 酒場の扉を開けると、今までは多少漏れている程度だった喧騒が一層聞こえてくるようになる。まぁ、酒場なんていつもこんな感じだし、特に気にすることはない。

 一通り酒場の中を見渡してみると、ちらほら見知った顔も見受けられる。先に上陸したクルー達が早速繰り出してきたらしい。

 

「それじゃあ、俺達は他の連中から情報を集める。」

 

「任せたわ。それと、霊沙の奴が羽目を外しすぎないように見張っといてね。」

 

「了解です。」

 

 フォックスは無機質に返事をするけど、霊沙はなにか言いたげな感じで私を見据えてくる。

 

「おい、それどういう意味だよ?」

 

「別に、言った通りの意味だけど?だいたいあんた、酒場に来たときはよく飲みすぎて他の人の世話になってるんだから、多少は気を付けなさいよね。」

 

「うるせぇ、こっちの勝手だろ。」

 

 霊沙はぷいっと顔を背けて拗ねたような表情を取る。――――酒好きなところまで、私に似せてるのかしら?

 

「おい、今はまだ昼間だ。多少は控えな、嬢ちゃん。」

 

「な、何だとてめぇ―――!」

 

 今度はコーディからも窘められて、霊沙の顔が茹で蛸みたいに赤くなった。

 

「大体な、こっちは唯でさえまともに憂晴らしできなかったんだぞ?多少は好きにさせろよ。」

 

「だが、飲みすぎは良くないな。嬢ちゃんみたいな子には体に毒だぞ?」

 

「ハハッ、その通りだ。観念しろ。」

 

「お、おまえら・・・っ、私を子供扱いするなーっ――――!」

 

 霊沙はそう言い残すと、元軍人二人に連行されていった。あの様子なら羽目を外しすぎる心配は無さそうね。まったく、唯でさえ頭痛が酷くなったっていうんだから、もう少し自分の体には気を使いなさいよね・・・

 

 私もあまり人のこと言えないけど。

 

 

 

 あいつが連行されていくのを見送った後、私はマスターに近いカウンターの席で適当な場所を見つけてそこに腰かけた。

 

「マスター、適当なの一つくれるかしら?」

 

「畏まりました。」

 

 しばらくすると、カウンターに薄いオレンジ色の酒が置かれた。私はそれを飲み干して、もう一度マスターに声を掛けた。

 

「そういえば、ここらの宙域ではグアッシュが有名みたいだけど、他に海賊は出たりするのかしら?」

 

「そうですねぇ~この辺りの海賊といったら、グアッシュの他にはサマラでしょうか。グアッシュは御存じかもしれませんが、エルメッツァのスカーバレルのように徒党を組んで荒らし回るタイプの海賊なんですが、サマラの方は一匹狼なんです。それでいて長年グアッシュと対立して一歩も引かないんだから、凄いですよねぇ。」

 

 どうも、この宙域にはグアッシュ以外にも名の知れた海賊が活動しているようだ。これは少し気になるわね。

 

「へぇ~、そのサマラってどんな奴なのかしら?」

 

「艦長、サマラを知らないのか?」

 

 私はそのサマラって奴が気になってマスターに聞いてみたのだが、それに答えたのはマスターではなくいつの間にか割り込んできたフォックスだった。

 

「あれ、フォックス?霊沙のことはどうしたのよ。」

 

「ああ、あいつならコーディが面倒を見ている。暫くは大丈夫だ。」

 

 フォックスが指した方向を見てみると、霊沙の奴がコーディに愚痴りながら酒を飲んでいる様子が見える。2人にからかわれたためか、なんだかぐったりしているみたいだ。

 

「それよりマスター、そのサマラってのは、もしかしてランカーにいるサマラ・ク・スィーのことか?」

 

「ええ、その通りです。『無慈悲な夜の女王』で知られている彼女です。なんでも彼女を見た船乗りの話だと、すごい美女だったそうですよ?一度踏まれてみたいもんですねぇ~。」

 

「ハハッ、残念だが、俺にはいまいち理解できねぇな。」

 

 マスターの返事に、フォックスは少し困惑気味だ。踏まれたいって何なのさ。私も理解しがたいわね。

 

「というかあんた、何処でそんな知識覚えてきたのよ?私でも知らなかったわよ?」

 

「ああ、こっちはこっちで色々調べものをしていた時に覚えたんだ。艦長も、ランカーぐらいは覚えてみたらどうだ?」

 

「はぁ・・・よくそんなの覚えられたわね。私は面識のない人間百人の名前なんて覚えられなかったわよ。」

 

 フォックスの言い方からすると彼はある程度ランカーの名前を覚えているらしいが、私にはあの横文字の羅列はさっぱりだ。せいぜい、一度襲われたヴァランタインの名前ぐらしいか覚えていない。

 

「そうかい。まぁ、無理して覚えることはないさ。アカデミーのテストでもないんだからな。じゃあ艦長、俺はあっちに戻ってるぞ。」

 

 一通りやり取りを終えたフォックスは元いた席に戻っていく。それよりも、彼がそんなことまで覚えていたなんてのは以外ね。元軍人だから、腕の立つ0Gの連中のことでも気になるのかしら。

 

 しかし、そのサマラって奴、単艦の癖にグアッシュとやり合ってるなんて、腕以外にも、フネも相当良いやつを使ってるんでしょうね。こっちと戦うとすれば、今までの連中のようにはいかないだろう。

 

「マスター、もう一杯頂けるかしら?」

 

 ここはまだ情報収集を続けるべきだろうと考えて、さらに追加で注文する。こういう酒場は基本的に、金を払わないと情報をくれないのだ。

 しばらくすると、今度は透き通った赤い色をした酒が振る舞われた。見た目はレミリアがよく飲んでいた得体の知れない飲み物に似ていたけど、味はただの合成酒だ。私にとってはジュースとあまり変わらないような安酒だが、さっきの酒よりは良い感じだ。

 

「そういえばお客さん、グアッシュについて妙な噂が立ってるのを御存じで?」

 

「・・・いや、知らないわね。」

 

 私達はここに来たばかりだから、グアッシュの名前は知っているけど噂とか、そこまではまだ聞いたことがない。さっきより一段階上の情報みたいだし、聞いてみる価値はありそうだ。

 

「そうですか。ここいらで幅を聞かせてるグアッシュの連中なんですがね・・・実は頭のグアッシュは一年ほど前に宙域保安局によって捕まってるんですよ。なのに連中はますます勢いづいて数を増やしている始末で・・・」

 

「へぇ、妙な話ね。ふつう頭領がいなくなれば、それだけ後釜の座を狙って内紛とか起こりそうなものでしょ?」

 

「やっぱりお客さんもそう思いますよね。でも実際、この辺りの海賊被害は右肩上がりなんですよ。お陰で交易レートは滅茶苦茶だし、危険手当も跳ね上がって貨物船の往来なんかも滞ってるんですよ。このままグアッシュを恐れて船乗りが減ってくれちゃあこっちも商売上がったりだ。ほんと、一体どうなってるんでしょうねぇ・・・」

 

 マスターは愚痴混じりに話しているが、内容からするとこの宙域の海運はかなりヤバい状況らしい。それに頭領が捕まってるのに数が増えているなんてのも不自然だ。ふつう海賊なんてのは自分勝手な連中だし、頭が抜ければ我こそはと次のリーダに名乗り出て分裂していきそうなものだけど、マスターの話し方からするとグアッシュの連中は未だに統率されていて、尚且つ勢力を拡大しているらしい。―――異変の匂いがするわね。

 まぁ、うちにとっては餌が増えるだけなんだけどね。グアッシュもぐもぐ。

 

 その後も酒とつまみを2、3品注文して適当に過ごした後、マスターに情報の礼を告げて店を後にした。霊沙のやつは終始元軍人コンビのペースに乗せられていたみたいで、酒場から出てきた時には疲れきった表情をしていた。

 

「艦長、何か良い情報は集まったか?」

 

「ええ。グアッシュのことなんだけどね、実は連中のトップはもう捕まってるらしいのよ。それなのに勢力を拡大しているみたい。」

 

「何だそりゃ?普通逆じゃないか?」

 

 霊沙の言うとおりなんだけども、地元の人が言うんだし、多分事実なんでしょうね。

 

「そうなんだけど・・・その訳までは流石に分からなかったわ。」

 

「ほう、それは興味深い話だな。実は捕まったトップは影武者で、本物はまだ捕まっていないとか、そんな理由だろうな。」

 

「確かに、それなら筋は通っている。」

 

「成程ね、コーディの言ったような事も考えられるわね。まぁ、この件はそこまで気にしなくても良いでしょ。私達もずっとここに留まる訳でもないんだし。」

 

 この宙域の海賊行為が深刻なのは事実だろうが、私達は別に異変解決屋でもなんでもないんだし、適当に惑星を見て回って、襲ってくる連中を返り討ちにするだけだ。エルメッツァの時みたいに依頼を受けてるわけでもないんだし、そこまで深く考える必要はないでしょう。

 

「そっか~。んで、この後はどうする?」

 

 霊沙は特に話の内容を気にしてない様子で、今後の予定のことを尋ねた。

 

「私はもう地上でやることもないし艦に戻ろうと思うけど、あんたらはどうする?」

 

「そうだな、俺も艦長と同行しよう。この惑星には特に見るべき点もないようだからな。」

 

「同感だ。俺も戻るぞ。」

 

 どうやらフォックスとコーディも艦に戻るらしい。それを聞いた霊沙は何処かつまらなさそうだな。

 

「な~んだ、全員帰っちまうのかよ。真面目なこった。私は適当にぶらぶらしてから戻るわ。じゃあな。」

 

 霊沙はそう言うと、交差点を曲がって市街地の方に足を進めていく。

 

「そう。なら出航までにはちゃんと戻りなさいよー!」

 

「解ってるよ。心配すんな。」

 

 霊沙は振り向かずにそのまま進んでいった。あいつのことだし、暴漢なんかは余裕で返り討ちにできそうだからそこは問題ないんだけど、どっかで酔い潰れてないか、少し心配だわ。

 

 

 

 

 

 

 

 ~〈開陽〉艦橋~

 

 

 

 

「ただいま~っ。」

 

「あ、お帰りなさい艦長。何か収穫はありましたか?」

 

「まぁ、それなりにね。」

 

 〈開陽〉に戻って艦橋に上がると早苗が出迎えてくれた。コーディとフォックスの二人はすっかり意気投合して射撃訓練所の方に向かっていったからそこで別れたわ。

 

「・・・艦橋の中も、随分とすっきりしてるわね。」

 

 艦に帰ってみると、ほとんどのクルーが惑星に休暇に出ているのですれ違う人の数は何時もよりずっと少なかったんだけど、艦橋もそれに劣らずがらんとしている。いつもオペレーター席に座っているミユさんとノエルさんも今は留守だ。大方地上に化粧品とかの買い出しに出ているんだろう。今艦橋にいるのは、私と早苗の他にはショーフクさんと、機械の点検をしているらしきにとりだけだ。

 

「そうですねぇ~。こころさんもオペレーターの二人に連れてかれましたし、ユウバリさんは機関室に籠ってますからね。」

 

 唯でさえ広い艦橋なので、これだけ人がいないと余計静かに感じるわね。

 

「あ、艦長。備品の点検の方はだいたい終わってるよ。」

 

 機械の点検を粗方終えたにとりは艦橋から出るみたいで、ついでに私のところに寄ってそれを報告してくれた。

 

「ありがとね。それより、あんたも地上には降りないの?」

 

「私かい?いや、私はこのまま艦に残ってるよ。他の整備班の連中も機械弄りが大好きな連中だからね。だいたい艦に残って何かやってるさ。私らにとっちゃ下手に地上に降りるよりも、そっちの方が面白いからね。」

 

「そう。楽しんでるようならそれでいいわ。」

 

「おう。じゃあ、私は他のところも見てくるよ。失礼したね。」

 

 にとりはそう言うと艦橋を後にした。多分、他の整備士連中も同じように過ごしているのだろう。にとりはマッドの一員だけど、ただの整備くらいでは魔改造とかは別にしないから彼女の整備は信頼している。ただ、整備班の格納庫では何が行われているか分からないんだけどね。訳のわからない新兵器とか作られたりしているかもしれない。というか絶対作ってるだろう。

 

「そうだ、ショーフクさん、ちょっと良いかしら?」

 

「ええ、別に構いませんよ。それで、用件は?」

 

 一つ用事を思い出してショーフクさんを呼び出す。今のうちに、今後の航路を決めておきましょう。

 

「これからの航路のことなんだけど、どこか寄ってみる価値がありそうな星はあった?」

 

「はい、まず隣のブラッサムとガゼオンにはモジュール設計社があるみたいですよ。それと惑星ジーバには艦載機設計社、ドゥボルクには小規模な艦船設計社がありますね。」

 

 ショーフクさんの話を受けて、端末から宙域図を表示してみる。

 さっきの話にあった惑星の位置を確認してみると、ブラッザムからは真っ直ぐガゼオンに伸びる航路が存在するが、隣のバハロスを経由してボイドゲート方面の小惑星帯を抜ければ艦載機設計社のあるジーバを目指すことができる。そこからもガゼオンに行くことは可能だ。少し遠回りになるが、ルートはこっちでも問題なさそうだ。

 それに、ガゼオンにはジェロウ・ガン研究所なる施設があるらしい。マッド共が発狂しそうな施設ね。ジェロウ・ガンといったら、確か小マゼランで一番有名な研究者だっけ?なんか酒場で流れてた番組で見た覚えがあるような、ないような・・・

 

「そうねぇ~、ショーフクさん、なら航路はこんな感じで良いかしら?」

 

 私はさっき頭のなかで組み立てた航路を端末の宙域図で改めて作成して、それをショーフクさんの端末に転送した。

 

「ふむ、成程・・・了解しました。今後の予定航路はこれで入力しておきます。」

 

「任せたわ。」

 

 予定航路をショーフクさんに渡して、それから艦長席に腰掛けた。

 

 そういえば改めて考えると、私も今は暇なのよね~。

 

「ねぇ早苗、なんか面白いことない?」

 

「え、面白いことですか?う~ん・・・・・・」

 

 早苗に聞いてみても、いい暇潰しの案は思い浮かばないみたいだ。これは大人しく神社で午睡にでも浸ってようかしら。

 

「あ、そうだ!それなら私が集めた艦船データのライブラリでもご覧になりますか?ネットワークから色々集めてみたんですよ!」

 

「え、あー、うん・・・ならちょっと見せてもらおっかな・・・。」

 

「そうですか!では早速こちらのダガロイ級というフネからですが―――――」

 

 どうやら早苗は手の空いている間に色々と艦船データを集めていたらしく、折角なのでそれを見せてもらったんだけど、元々艦のAIなだけあってそういうのに興味があったのか延々とメカに関する講釈を聞かされる羽目になったわ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからシドウでは特に何も起こらず、隣のブラッサムでモジュールを買い漁って、そのまま私達は艦載機設計社のある惑星ジーバを目指して艦隊を進めた。途中の航路では、ブラッサムに宙域保安局っていう宇宙警察みたいな組織の本部があるせいか、流石に海賊が出てくるようなことはなかった。ただ、バハロス軌道を通過した後にはちらほらとグアッシュの小隊を見かけるようになったし、これからは警戒体制を戻した方が良さそうだ。

 

「早苗、そろそろ小惑星帯に差し掛かることだし、各分艦隊を援護位置につかせやすいように少し集結させてくれるかしら。」

 

「了解しました。各分艦隊旗艦には間隔を狭めるように通達しておきます。」

 

 このまま進めば、ボイドゲート付近の小惑星帯に差し掛かる。そこで待ち伏せなんかされたら離れた位置にいる分艦隊では各個撃破の恐れがあるので、今までは索敵のために広げておいた艦隊をある程度密集させておくように指示しておいた。

 

「それとショーフクさん、小惑星帯に到達次第通常航行に移行して頂戴。」

 

「了解です。」

 

 小惑星帯に入った後は通常航行に移ることだし、索敵は艦載機隊に任せておこう。今のうちに前衛分艦隊のグネフヌイ(ゼラーナ)各艦の偵察機を用意させておいた方が良いかもしれない。

 

「艦長、進路上の小惑星帯方面より微弱なSOS信号をキャッチしました。如何なされますか?」

 

「SOS?少し気になるわね。遭難船かもしれないし、救助の準備をしておいた方が良いかしら。取り敢えず方角は予定航路と同じみたいだからそのまま進むわよ。」

 

 ミユさんからSOS信号の報告があったけど、もしかして他のフネが海賊に襲われたりでもしてるのかしら。なら一層警戒を強めるべきだろう。念には念を入れた方がいい。

 

「こころ、さっきのSOSのことだけど、もしかしたら海賊被害の可能性もあるからレーダーの感度を上げておいて頂戴。それとフォックスはいつでも火器管制システムを立ち上げられるように準備しておいて。」

 

「了解・・・。」

 

「イエッサー。」

 

 こころとフォックスには戦闘に備えて警戒を命じておく。

 

 その後は小惑星帯に到着するまでは何事もなかったが、まだ警戒を続けた方がいいだろう。小惑星帯に到達して通常航行に移ってからは、前衛のグネフヌイ級各艦からそれぞれ3機ずつ〈アーウィンⅠ〉空間偵察機を発進させておいた。

 

「艦長、SOS信号は左前方8度、上方5度の方角から発信されているようです。」

 

 信号の発信源に近づいたため、ミユさんからより詳細な方角の情報がもたらされる。

 

「なら、その方角に向かうわよ。ショーフクさんはさっきの報告通りの方角に艦を向かわせて。早苗、艦隊全体も同じ方角に向かわせるわよ。」

 

「了解です。取り舵8度、上げ舵5。」

 

「分かりました。それと偵察機隊もその方角に向かわせておきます。」

 

 早苗がコントロールユニットを介して偵察機に命令し、偵察機隊は艦隊に先行して報告にあった方角に散らばっていく。

 

 それから5分後、偵察機隊のうちの一機から報告がもたらされた。

 

「艦長、向かわせた偵察機隊から報告です。『我グアッシュ海賊団艦隊ヲ確認。陣形ニハ不明艦ヲ含ム。』です。」

 

「・・・・どうも勘が当たったみたいね。全艦戦闘配備よ!」

 

「了解!火器管制システムオープン、戦闘準備だ!」

 

「近距離用メインレーダー起動します。」

 

 私が号令をかけると戦闘配備を告げるベルが鳴り響き、一気に艦内は慌ただしくなる。

 しかし、SOS信号の方角にグアッシュか・・・。何処かのフネが襲われてるだけならいいけど、これが罠だったら厄介ね。

 

「霊夢さん、第三分艦隊より光学映像が届きました。拡大して表示します。」

 

 早苗が前衛の第三分艦隊から映像をキャッチしたらしく、それがメインパネルに表示された。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「あれは・・・戦闘中のようだな。」

 

 映像からは、グアッシュの艦隊が不明艦を攻撃している様子が見てとれる。所々に真新しい残骸が見受けられるので、かなりの間戦っているようだ。だが、数や損害の度合いからいって、グアッシュと戦っている方が明らかに劣勢に見える。放っておけば全滅まっしぐらだ。

 

「―――映像データの解析が終了しました。グアッシュ海賊団の勢力はバクゥ級7、タタワ級10。そのうちバクゥ級2、タタワ級1隻が交戦中の艦に取りついています。恐らく白兵戦に移行するものと思われます。」

 

「グアッシュと交戦している艦隊の陣容はドーゴ級戦艦のカスタム艦が1隻、バハロス級巡洋艦1隻です。バハロス級はIFFから宙域保安局の艦だと思われますが既に大破しており、撃沈も時間の問題です。救難信号はこちらのドーゴ級から発信されているようです。」

 

 ミユさんとノエルさんから映像に関する詳細な報告が寄せられる。どちらも赤い艦体色をしているが、グアッシュと応戦している方では色も微妙に違うし、状況から考えてあの戦艦がグアッシュに襲われていると見て間違いなさそうだ。ドーゴ級の方には海賊船が何隻か取り付いていて、もう白兵戦が始まっているのかもしれない。

 唯一色が肌色のバハロス級巡洋艦は宙域保安局の艦らしいが、既に艦首にあった特徴的な垂直な翼のような構造物は折れてなくなり、さらに艦の随所から火を吹いていて全艦火達磨の様子だし、まさに満身創痍といった感じだ。

 

 これは取るべき道は一つしかないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

【イメージBGM:不思議の幻想郷TODRより 「極限全力の百鬼夜行」】

 

 

 

 

 

「全艦突撃開始!目標は前方の海賊艦隊主力!」

 

「了解!エンジン出力全開です!」

 

「機関、全速!」

 

 命令を受けてユウバリさんがインフラトン・インヴァイダーの出力を全力まで上げ、ショーフクさんもエンジンスロットルを全開にして一気に〈開陽〉を加速させた。

 旗艦である〈開陽〉の動きを見て、他の艦も同様に一斉に加速して敵へ向かっていく。

 

「全艦隊集結!一気に敵主力を殲滅するわよ!」

 

「イエッサー。主砲発射用意だ!」

 

「本隊と敵艦隊との距離、あと19700。最大射程まであと1700です。」

 

「第三分艦隊各艦は射程に到達。砲撃を開始した模様です。第一、第二分艦隊はあと3分後に本隊と合流します。」

 

 まずは先行していた第三分艦隊が戦端を開いた。分艦隊各艦は襲われている戦艦との間に展開するグアッシュ海賊団主力に向けて、牽制も兼ねてレーザー砲による射撃を開始する。

 

「攻撃隊を送り込むわよ。艦載機隊の発進準備を急いで!」

 

「了解。艦載機隊各員は直ちに発進準備に取り掛かれ!」

 

 何といっても敵の数が多いし、ここは艦載機隊でさっさと潰した方が良さそうだ。あんまりもたもたしていると襲われている方の艦隊が全滅するかもしれない。

 

「あっ―――保安局のバハロス級のインフラトン反応消失・・・撃沈されました!」

 

 だが、どうやら保安局の方は間に合わなかったらしい。バハロス級は最後までレーザー砲で応戦していたが、敵の被弾を受け続けて限界を超えたらしく中央から真っ二つに折れて轟沈した。

 

「―――間に合わなかったのは仕方ないわ。今はもう一隻を逃がすことに集中するわよ。各艦は最大射程に到達次第牽制砲撃を開始、そこに艦載機隊を突っ込ませて戦艦に取り付いている連中を排除して。」

 

 状況が状況なだけに、今回は鹵獲とかに拘っている暇はない。海賊の無力化を最優先に行動するべきだ。

 

「了か・・・あっ、〈ヴェールヌイ〉の機関部に異状発生!安全システムが作動し緊急停止しました!」

 

「はあっ?こんな時に何なのよ!」

 

 突然、第三分艦隊を構成する駆逐艦の一隻が機関部に異状を来して緊急停止する。これから本格的に戦闘だっていう時に戦力が減るのは不味い事態だ。

 

「!?っ、〈ユイリン〉、〈秋霜〉、〈パーシヴァル〉にも異状発生・・・ああっ、第三分艦隊全艦の機関が緊急停止しましたッ!!」

 

「ちょっと・・・何よそれ!どうにかならないの?」

 

 一隻だけかと思ったら、第三分艦隊全艦の機関が停止してしまった。一体どうしたっていうのよ。あのマッド共が手掛けた艦隊がポンコツだとでも言うの!?

 

「霊夢!第三分艦隊は既に敵艦隊と交戦している。このままでは一方的に撃ち減らされるぞ!」

 

「分かってるわよ!早苗、第三分艦隊各艦にはミサイル攻撃で応戦するように伝えて!!それと直ちに原因究明に取り掛かるように!」

 

「は、はいッ!」

 

 いきなり緊急停止した第三分艦隊の各艦は、機関が停止してしまった為に艦隊運動を取ることができず、慣性に任せて漂流するだけだ。一応小型核パルスモーターの推進材は残っているだろうから停止させること自体は出来るかもしれないが、どのみち今の第三分艦隊はただの的同然だ。それにエンジンが停止した以上レーザーに供給するだけのエネルギーも確保できないので、応戦手段はミサイルなどの実弾に限られる。

 

 敵の動きを見てみると、此方が突然停止したのを良いことに勢いづいているようで、第三分艦隊に集中する火線が増している。回避機動を取れない以上それだけ弾が当たりやすくなっているためだろう。それに第三分艦隊の艦は機関停止でエネルギーが無くなったためにシールドやデフレクターも失われており、防御手段が装甲だけになってしまったため、海賊に撃沈される恐れも出てきた。

 

「兎に角、本隊の会敵を急ぐしかないわね。」

 

 〈開陽〉を含む本隊が急いで敵艦隊との距離を縮めている間にも、第三分艦隊は絶え間なく敵の砲撃に晒されている。此方もミサイルでなんとか手傷は追わせているが、あの分艦隊に配備されている艦には強力なミサイルはないため、せいぜい中破程度の損害しか与えられていない。対してこちらの被害は深刻で、既に〈早梅〉大破、〈ナッシュビル〉、〈秋霜〉、〈アナイティス〉、〈パーシヴァル〉中破の損害を負っている。巡洋艦はバイタルパートは抜かれていないみたいだが、駆逐艦がそろそろ危ない。

 

「艦長、間もなく射程距離に到達し・・・きゃぁつ!!」

 

「な、何だぁっ!」

 

 突然ドォンという音と共に強い衝撃がして、こころの報告が中断された。まさか小惑星帯にグアッシュの別動隊が潜んでいたとかじゃないでしょうね?

 

「何、まさか待ち伏せ!?」

 

「い、いえ・・・レーダーには新たな敵影はありません。」

 

「か、艦長・・・大変です!本艦のインフラトン・インヴァイダーの出力が急速に低下中!安全装置が作動、機関、緊急停止します!!」

 

 するとユウバリさんから焦燥の滲んだ声で報告が飛んできた。第三分艦隊のみならず〈開陽〉までやられるという事は、この宙域に何らかの異状があるのかもしれない。というか、〈開陽〉まで機関停止なんて、かなりヤバい状況なんだけど。

 

「不味いわね・・・ユウバリさんは直ぐに原因究明に取りかかって!」

 

「りょ、了解!」

 

 ユウバリさんは命令を受けると慌てて機関室に飛んでいく。これではまともな戦闘行動は出来そうにないが、グアッシュは見逃してはくれないだろう。それに、〈開陽〉のみならず、まだ正常な艦にもこの異状が波及するかもしれない。

 

「あっ・・・第一、第二分艦隊各艦と本隊の他の艦にも同様の異状発生!」

 

 ―――やはりそうきたかッ―――!

 

 私は頭をフル回転させて、なんとか対処法を考え出す。機関停止で主砲がまともに使えない以上、頼れるものは―――確か、まだあのミサイルが残っていた筈!

 

「やっぱりね・・・・フォックス!〈グラニート〉発射用意よ、急いで!」

 

「了解した!SSM-890〈グラニート〉発射用意、目標グアッシュ艦隊!」

 

「早苗、重巡2隻のミサイルも使うわよ。レーザーが当てにならない以上、敵を排除するにはこれしかないわ。」

 

「はいっ・・・〈ケーニヒスベルク〉、〈ピッツバーグ〉にグラニートミサイル発射命令を伝達します。」

 

 こっちが身動きできない以上、グアッシュをさっさと排除しないと危険だ。グラニートミサイルなら一撃でグアッシュの巡洋艦を粉砕できる。射程距離2,5光年を誇るこのキチガイミサイルならグアッシュ艦隊も逃れられないだろう。それだけあってこいつらはべらぼうに高いからあまり使いたくはなかったけど、今はそうも言ってられないわ。

 

「・・・はぁ―――これを考えると、ファズ・マティでこのミサイルを補充できたのは幸運だったわ。」

 

 グラニートミサイルはマリサ戦で使い果たしてから殆ど補充ができていなかったのだけど、ファズ・マティでスカーバレルから物資を根こそぎ略奪したお陰でやっと補充することができた。これがなかったら、今はもっと厳しい戦いを強いられていたことだろう。

 

「〈グラニート〉対艦弾道弾、発射準備完了だ!」

 

「よし、全艦、グラニートミサイル発射!!」

 

 〈開陽〉、〈ピッツバーグ〉、〈ケーニヒスベルク〉3隻の前甲板VLSが開口し、そこから〈グラニート〉対艦ミサイルが発射される。数は28発。グアッシュの前衛艦隊に合わせて1隻2発を割り当てた感じだ。

 

 巨大なミサイルは力強くノズルから火炎を噴射しながらグアッシュ前衛艦隊に向かっていく。グアッシュは何とかミサイルを回避しようと必死レーザーを向けたり艦の向きを変えているが、それよりも早くミサイルが着弾した。一応敵のレーザーの迎撃は受けていたが、射撃諸元の入力が間に合わなかったようで殆ど外れている。そのため撃墜された2発を除いた26発のグラニートミサイルは正確に敵艦に着弾し、その凶悪な破壊力を発揮した。唯でさえその大きさから軽巡洋艦クラスなら一撃で轟沈間違いなしなミサイルなのだが、グラニートミサイルは着弾後、敵艦内部に第二弾道を送り込んで起爆させる仕組みになっている。その威力はヤッハバッハのダルダベル級すら2発で戦闘不能にするほどで、そんなミサイルをもろに受けたグアッシュの海賊船が耐えられる筈もない。

 ミサイルが着弾したグアッシュ艦はクルーが逃げる暇も与えられず、内部からミサイルの炸裂によってズタズタに引き裂かれて轟沈し、終いには艦隊があった場所は一つの火球と成り果てた。

 

「うわっ、えげつなっ・・・」

 

「―――戦争は地獄だぜ。」

 

 そのあまりの威力にこっちのクルーも引き気味だ。これだけのミサイルで一度にこんな数を撃沈するのは初めてだし、仕方ないだろう。かくいう私も、マッドが作り上げたこのミサイルの凶悪さを改めて思い知らされたわ。

 

「・・・後は取り付いている連中の排除ね。ノエルさん、艦載機隊の発進準備は?」

 

 気を取り直して、残りの敵に意識を集中させる。確かまだあの戦艦には海賊船が取り付いていた筈だ。

 

「あの・・・それが・・・エネルギー供給が停止された影響でカタパルトが使用不能になってしまいまして・・・今は格納庫から直接機体を射出する方向で進めているのですが、予備電源では艦載機を移動させるクレーンに充分な動力を供給することができないため作業は難航しているようです。」

 

「―――それなら、ハイストリームブラスター用の機関を立ち上げてそこからエネルギーを供給させましょう。―――あっ・・・。」

 

 ノエルさんの報告を受けてハイストリームブラスター用の小型インフラトン・インヴァイダーを予備電源に使おうと思って通信スイッチに手を伸ばしたところで、そっちの機関も起動した途端に同じ不調が起きるかもしれないことに思い立った。主機があれだから、こっちももしかしたら同じように止まっちゃうかも・・・・まぁ、やるだけやってみる価値はあるでしょう。

 

「ユウバリさん、聞こえる?ハイストリームブラスター用の機関を使って艦内の電源を確保できないかしら?」

 

 《はい、聞こえます!そうでした!それなら艦内の機能なら一通り回復できそうです。その方向で一度やってみますね。》

 

 ユウバリさんも通信でこれを思い出したらしく、あっちの機関の起動に取り掛かってくれるみたいだ。

 

「艦長、どうやら敵艦隊は撤退を開始したようです。例の戦艦から離れていきます。」

 

「あれだけの破壊を見せつけられたんだ。誰でもそうするだろう。霊夢、どうする?」

 

 まぁ、普通そうするわよね。コーディの言うとおりだわ。艦載機隊には悪いけど、今回は出番なしだ。

 

「こんな状態じゃ追撃もできないし、今は諦めましょう。」

 

 うちの艦隊は全艦足が止まっているし、追撃したくてもできない状況だ。ここは仕方なく諦める他ない。今は艦の修理に集中するべきだろう。

 

「艦長、例の戦艦から通信が入っています。どうなされますか?」

 

「取り敢えず、メインパネルに繋いで頂戴。」

 

「了解しました。」

 

 ノエルさんが通信をメインパネルに接続すると、戦艦の艦長らしき人物の姿が映し出された。

 見た目はまだ若い女性といった感じで、緑を基調とした軍服調の艦長服を纏っている。髪は赤のストレートで、頭には艦長帽をのせている。

 先程までの戦闘のためか、軍服は所々破けていて、顔には煤がついていた。炎が燃え盛る音がバチバチと聞こえてくるので、艦橋で火災が発生しているのだろう。

 

「―――此方はスカーレット社警備部門所属、戦艦〈レーヴァテイン〉艦長のメイリンと申します。この度は助けて頂いて、どうも有難うございます・・・。」

 

 メイリンと名乗った女性は救援に対してお礼を述べた。負傷でもしているのか、その声はどこか苦しそうだ。

 

 それよりも彼女、紅魔館にいた居眠り門番にそっくりね・・・・名前の響きも同じみたいだし。

 

「スカーレット社か。確か、カルバライヤで活動する軍産複合体企業がそんな名前だったな。」

 

 隣でコーディが小声でそんなことを呟いた。どうやら向こうはそれなりに名が知れた大企業の人間らしい。

 

「私は0Gドックの霊夢よ。こっちはたまたま通り掛かっただけだし、礼には及ばないわ。それより、そっちはだいぶ被害を受けてるみたいだけど、何か支援した方が良いかしら?」

 

「そうですね・・・できれば医療関係者を少々、派遣して頂けないでしょうか?海賊との白兵戦でかなりやられてしまったもので・・・。」

 

「分かったわ。ああ、こっちはちょっと機関に異状があるから医者を乗せたシャトルの発進が遅れるかもしれないわ。」

 

「有難うございます・・・お手を煩わせてしまって申し訳ありません・・・。」

 

 あっちはあっちで色々困っているみたいだし、メイリンさんはああ言っているけど医者を送るくらいならそれだけの余裕はあるし、何より困った時はお互い様だ。ただ宇宙ではけっこう悪いやつもいたりするけど、あっちはそんな感じの連中には見えないし、特に問題はないだろう。

 

「そういえば・・・さっき機関に異状と仰りましたか?」

 

「ええ、そうだけど―――」

 

「それなら、この宙域に生息するケイ素生物のせいですね。グアッシュや保安局は対策しているから大丈夫なんですが、たまに余所からきた船がそれに引っ掛かって遭難したりするんです。」

 

「成程、ケイ素生物か・・・情報提供に感謝するわ。」

 

「いえ、助けて頂いたのは此方はですし、その程度ならお安い御用ですよ。」

 

 ともあれ、機関停止の原因が判明しただけでも収穫だ。後でユウバリさんには伝えておこう。

 

「あっ、そうだ・・・先程そちらはシャトルで送る、と言ってましたけど、もしかしたらシャトルもケイ素生物にやられてしまうかもしれないので、此方から接舷しても宜しいでしょうか?」

 

「ええ、別に構わないわ。一番でかいのが私の旗艦よ。」

 

「了解しました。では、そちらに伺いますね。」

 

「分かったわ。」

 

 そこで通信は終了した。初対面の艦を接舷させるのにはちょっと抵抗があるけど、もしなんかあったときは機動歩兵で何とかなるだろう。

 

「早苗、戦闘も終わったしこのまま漂流するのも不味いから、一度艦隊を静止させておいて。確か姿勢制御用の小型核パルスモーターなら推進材があれば使えた筈でしょ?」

 

「了解しました。各艦には現在位置で留まるように指示しておきます。」

 

 早苗が命令を伝達すると、艦隊各艦はその場に留まるために逆噴射ノズルを使用して艦の位置を固定させた。ただ完全に止まったわけではないからまだ慣性で動いているけど、少なくとも漂流しているうちに艦隊が分散してバラバラになるなんて事態は避けられるだろう。

 

 戦闘自体は終了したけど、まだまだ気は抜けない状況ね。

 

 




最近不思議の幻想郷に嵌まったりしたお陰で少し投稿が遅れました。今後についてですが、1月中はテスト等もあるので投稿ペースはだいぶ遅れそうです。2月に入れば元に戻ると思います。

今回は予告通り挿絵にあった戦艦を登場させました。めーりん以外の紅魔勢は今後のお楽しみです。〈レーヴァテイン〉の艦首はフランの羽根をイメージして改造してますが、フランがこの戦艦ですなんて事はないのでご安心下さい。〈レーヴァテイン〉はそのうちカラー版を上げておきます。
グラニートミサイルの元ネタはヤマト完結編のハイパー放射ミサイルです。あれを太く逞しくしたのが本作のグラニートミサイルになりますw

それと霊夢艦隊のトルーパー達ですが、普段は装甲服は着ていてもヘルメットはしていないことが多いです。保安隊の二人には新しい装甲服が支給されていますが、ファイブスはフェイズⅡのヘルメットを使い続けています。一方エコーの方は新しいヘルメットを使っています。新装甲服の挿絵も今後投稿する予定です。

本作の何処に興味がありますか

  • 戦闘
  • メカ
  • キャラ
  • 百合

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。