夢幻航路   作:旭日提督

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第二話 進むべき道程

 敵艦からの攻撃を受けて急いでブリッジに上がったサナダは、たった今自船を攻撃した敵艦を見据える。

 

「どうやら敵は警備艇1隻みたいだ。生憎此処でくたばると発明ができないんでね・・・コーディ、主砲の用意を」

 

「もう発射可能だ。一発打ち上げるとしよう」

 

 サナダがコーディに戦闘準備を命ずるが、コーディは既に火器管制席に座り、主砲をヤッハバッハ警備艇に向け照準していた。

 

「よし、敵艦に突撃しつつ回避機動を取る。各部スラスター展開」

 

 サナダが舵を取り、彼の船は警備艇へ向け増速する。船体の上下に設けられた主砲が警備艇を照準し、即座に発砲して蒼いレーザーが放たれた。

 

 警備艇はレーザーを回避するために面舵を取り、最初に飛来した1発を躱す。しかしもう1発は艦首を直撃し、警備艇は武装を破壊された。

 

「敵艦の武装を破壊した。このまま止めを刺すぞ」

 

「イエッサー、これで終いだ」

 

 サナダは取り舵をとって警備艇の左舷後方に回り込む。サナダの意図を察したコーディは次第に見えてくる警備艇のメインノズルに向けて主砲を照準し、引き金を引く。

 

 レーザーは警備艇のメインノズルを貫き、警備艇が制御を失った所にさらに追撃のレーザーが着弾。哀れ警備艇は爆発四散した。

 

「ふぅ、なんとか片付いたか」

 

「そうだな。しかし今の接触で報告された可能性が高い。此所に留まるのは危険そうだぞ」

 

 コーディは警備艇が既に組織の上へ自分達の存在を報告していると推測し、サナダに移動を提案した。

 

「ああ、だが移動するとなると、向かえる場所は限られてくるな。食料は二人、いや三人分なら暫く持つが、そろそろ船の整備が必要だ。空間通商管理局の宇宙港が設置されていて、ヤッハバッハの目が届きにくい場所となると━━」

 

 サナダは様々な条件を吟味して次の行き先を考える。霊夢を回収する以前から長い航海を続けていたこのフネは暫ドック入りしていなかったので、そろそろ整備も必要だった。

 

「カミーノはどうだ?あそこなら最低限の工厰設備は整っていたと記憶している。それに、運が良ければ俺達の"遺品"が使えるかもしれないぞ」

 

 コーディは次の行き先に、カミーノという惑星を提案した。カミーノには空間通商管理局のドックはあるが、あまりにも辺境なのでヤッハバッハの警備隊は常駐していない星だ。そして、そこはかつてコーディが産み出された星でもあった。コーディが兵士として戦っていた時代からは大分経過しているが、コーディ自身がその時代の救助ポッドで生き延びたこともあり、もしかしたら何か使えるものが有るかも知れないと考えたからだ。

 

「成程。それは良さそうな星だ。次の目的地はそこにしよう」

 

 科学者であり、発明家でもあったサナダはコーディの提案を受け入れた。彼は、コーディが生きた時代の技術を是非とも研究したいと考えていたのだ。

 

「なら話は決まりだな。ハイパードライブをセットするぞ」

 

「うむ、任せた」

 

 コーディがサナダに代わって操舵席に座り、舵を握る。

 

 コーディがボタンを操作して舵を押すと、船の前方に銀色の光が走る蒼い空間が出現し、船はそこに飛び込んだ。

 

 このサナダの船も、実はコーディが産み出された頃と同時代の宇宙船で、サナダが状態が良かったデブリから復元したものだった。この船はCR-90というクラスに属する小型船で、船名を〈スターゲイザー〉という。基本的にこの世界の船はボイドゲートと呼ばれる一気に数百から2、3万光年ほどワープできる構造物を介してワープを行う。しかし、古代のものを修理したこの宇宙船は、単独でワープが可能だった。尤も、その距離はボイドゲートに及ばず、一度のワープでせいぜい1000光年程度が限界だったが。

 

「さて、私はハイパースペースから離脱するまで研究室に籠る。カミーノまでは、どれ位係りそうだ?」

 

 サナダの問いに、コーディが答える。

 

「カミーノまでは、凡そ1日といった所だな。自動操縦にセットしておくぞ。」

 

「よろしく頼む。」

 

 サナダは白衣を翻し、一足早くブリッジを後にした。

 コーディも操縦をオートに設定すると、ヘルメットを脱いでブリッジを後にした。

 

 二人が向かった先は、客人の待つ部屋だ。

 

 

 

 

 

 霊夢がいた部屋からコーディ達が出ていってから何度か揺れが続いたが、暫くするとそれも収まり、今は元通り静かな部屋となった。

 

「入るぞ、お嬢さん」

 

 扉が開き、コーディが部屋に入る。

 

「さっきのは、何?」

 

 霊夢が訝しげに訊く。

 

「ちょとしたトラブルだ。ヤッハバッハの警備隊に見付かったが、撃破した。今は追撃の心配はない」

 

 コーディが問題は解決したと話す。

 

「暫くは安全なのね」

 

「ああ、そうだ。ところでお嬢さん━━」

 

 コーディが話題を変え、霊夢と目を合わせる。

 

「これから、お嬢さんはどうするんだい?」

 

 

..........................................

 

 

 

 コーディは、私に根本的な問題を尋ねてきた。そう、これからどうやってこの世界で生きていくかという問題だ。しかし、勝手の分からないこの世界では、どう生きていくかなんて上手く考えられない。時々、脳裏に意味がよく分からない単語が閃くが・・・

 

「そうだな。勝手が分からないお嬢さんの為に説明するが、これから生きていく道としては、大きく分けて二つある。まず、精神病棟とブタ箱行きを覚悟してヤッハバッハの惑星に降りるか、それとも宇宙で航海者として生きるかだ」

 

 私は、コーディが始めた話に耳を傾けた。

 

 私が集中して聞いていると思ったのか、コーディはそのまま話を続けてくれる。

 

「惑星に降りれば、多少は安全かもしれない。だが、お嬢さんは聞くところヤッハバッハの市民ではないようだからな。ヤッハバッハの市民カードがなければ、宇宙港で捕まってブタ箱行きだ。それに、お嬢さんの話は連中からすれば到底信じられなさそうな内容だからな、運が悪ければブタ箱に加えて精神病棟行きだろう。まぁ、何かしらの方法で市民権を獲得出来れば、それなりに安定した生活ができるかもしれないがな」

 

 コーディは一呼吸置いて、次なる可能性を提案する。

 

「そして二つ目、宇宙航海者━━0Gドックになる道だ。ヤッハバッハは0Gドックを認めていないが、連中の勢力圏を抜けられたらあとは自由に宇宙を旅できる。全て自分が思うがままに生きられる訳だ。但し、それは全て自己責任だ。宇宙には海賊が跳梁跋扈している宙域も存在する。命の危険はピカ一だ。最悪命を落とすこともあるだろう」

 

 コーディが話し終わる。

 前者はどうやらブタ箱行きは確定なのだが、命の危険は低いらしい。だけど、ヤッハバッハとやらに従って生きていくのは自分の性に合わない。ブタ箱も当然嫌。そんな場所で生活なんてしていける訳無い。大体何の権限があって迷える哀れな美少女を裁こうというのだろうか。言っておくが、説教が五月蝿かったあの閻魔以外に裁かれる気など微塵もない。それは不当判決だからだ。

 

 後者は危険は高そうだが、何より宇宙を旅できるというのは魅力的に感じた。幻想郷ではただ見上げるだけだった星空を駆け回ることができる━━それだけでも魅力的だ。それに、「博麗の巫女」という役割を務め続けた前世とは違った生き方もしてみたい━━私の中にはそんな考えも浮かんできた。海賊?上等よ。そんな連中は身ぐるみ剥いで返り討ちにしてやるわ。折角二度目の生を得たみたいだし、楽しんで生きないとね。

 

この世界では私の力は通用しないとは思うけど、何がなんでも自由に生き抜いてやる━━

 

 

 

 

「そうね━━宇宙を旅できるってのは中々に魅力的じゃない」

 

「おお、そうかい。………いや、俺は今決めろって言ってるんじゃないぞ。じっくり考えてからでもいいんだからな」

 

 コーディはあくまで霊夢に道標を示そうと思っただけなのだが、霊夢は既に自分の生き方を決断していた。

 

 しかし霊夢からしてみれば、ブタ箱という可能性が示されただけで取れる道など半ば決まっていようなものだ。彼女は迷わず、その道に進むと断言する。

 

「私は安全でも縛られた生き方は勘弁ね。ましてやブタ箱なんて勘弁よ。んで、その0Gドックとやらはどうやったら成れるのかしら?」

 




艦船ステータス
*ヤッハバッハ旧型警備艇
耐久力600
装甲35
機動力16

ヤッハバッハが辺境で運用している100m級の警備艇。外見は緑色のレベッカ級で、ヤッハバッハの紋章が描かれている。艦首の連装砲が主兵装で、ミサイル類はヤッハバッハ艦としては珍しく搭載していない。

*スターゲイザー
耐久力580
装甲38
機動力30

サナダがCR-90コルベット(スターウォーズに登場する宇宙船)のデブリを修理した船。性能は部分的に落ちているが、ハイパードライブ(ワープ可能なエンジン)は使用可能。この時代の船に慣れているコーディーの助けを借りて運用されている。
サナダにとって船そのものが研究対象で、船内には簡素な研究室も設置されている。
全長150m


この世界線のコーディーはオーダー66に逆らっています。スターウォーズ本編とは違う設定なので明記しておきます。

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