夢幻航路   作:旭日提督

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最近始めたBLEACHの二次小説のお気に入り数があっという間にこの「夢幻航路」を抜いて、BLEACHというコンテンツの人気さを実感すると共に、やはり無限航路はマイナーな作品だと思い知らされます。個人的には無限航路は神ゲーといっても差し支えないのですが・・・今更流行るなんてことは無いんでしょうね。
続編とまでは言わなくても、ハードを移して作り直したりとかはしてくれないんでしょうか。PS4でリメイクして頂いて、特に艦船の改造周りに手を加えてほしいですね。


第二二話 決戦に備えて

 〜エルメッツァ中央・惑星ネロ周辺宙域〜

 

 

 

 

 

【イメージBGM:無限航路より「戦闘空域」】

 

 

 

 

 

「前方にスカーバレル小艦隊確認!」

《データベースに艦種を照合中―――――出ました、CG(ミサイル巡洋艦)ゲル・ドーネ級1、CLオル・ドーネ/A級2、DDガラーナ/A級3、ゼラーナ/A級3!》

 

「かなりの数だな・・・・連中、俺達を嗅ぎ付けたのか?」

 

 私達はエルメッツァ軍人のオムスとかいう奴から依頼を受けて、彼の協力者の0Gドックに会いに行く途中なのだが、ツィーズロンド周辺を離れるとすぐにこんな調子で海賊共がわんさか襲いかかってきた。今日でもう5度目だわ。しかも、今回の艦隊はなかなか大きな規模らしい。さらに、初見のスカーバレルのミサイル巡洋艦、ゲル・ドーネ級が編成に含まれている。この艦はミサイルを主兵装とする艦だ。実体弾はAPFシールドでは防げないため、中々脅威だったりする。

 

「全艦にデフレクター出力を高めるように言っておいて。あと、ジャミングは最大出力でお願い。」

 

《了解しました!》

 

 デフレクターは、APFシールドと違って質量物を防ぐことができる。なので、こうしたミサイル艦に対してはデフレクターの装備で対策するのが有効なのだ。後は、スペースデブリとかから艦を守ってくれるから中々便利な装備だ。

 

「フォックス、まずは前衛の駆逐艦を叩き潰すわよ、本艦の主砲は敵艦隊中央のガラーナ級とゼラーナ級を狙って!」

 

「了解だ、主砲、射撃緒元入力開始!」

 

「〈ケーニヒスベルク〉は右舷側のゼラーナ級、〈ピッツバーグ〉は左舷側のガラーナ級に照準!」

 

《了解しました、指示伝達。〈ケーニヒスベルク〉はゼラーナβ、γに照準、〈ピッツバーグ〉はガラーナα、βを狙え!》

 

 此方は射程の優位を生かして、スカーバレルの水雷戦隊を射程距離外からアウトレンジする。

 〈開陽〉と重巡2隻の3連装砲塔が各々指定されたスカーバレル駆逐艦を指向し、一斉に青いレーザー光が放たれる。

 それを察知したスカーバレル艦隊は回避機動を始めるが、フォックスが狙った中央の2隻には吸い込まれるようにレーザーが命中し、弩級戦艦クラスの主砲には耐えきれずにこの2隻はたちまち爆沈する。右舷側のゼラーナ級は、1隻撃沈したが、もう1隻は中破状態で残存している。一方、左舷側のガラーナ級は練度が高かったのか、1隻は全弾回避して無傷、もう1隻も少し擦っただけで小破だ。

 

「敵3隻のインフラトン反応消失、敵残存艦は6隻です。」

 

「間髪入れないで、残った駆逐艦を叩くわよ!」

 

 スカーバレルの駆逐艦は回避機動を取りながら此方に肉薄している。このままでは、射程に捉えられてしまうだろう。その前に、こいつらを叩き潰す。

 

「了解だ!前部主砲、敵残存駆逐艦に照準!」

 

 〈開陽〉の主砲は各砲塔が独立して目標を指向し、レーザーを放つ。

 各砲塔から放たれたレーザーはそれぞれ別のスカーバレル駆逐艦に向かって飛翔する。うち一発はガラーナ級に直撃し、そのガラーナ級はインフラトンの火球となって果てたが、残りのガラーナ級とゼラーナ級は此方の砲撃を回避して、ゼラーナ級は艦載機を射出した。

 

「敵ゼラーナ級より小型のエネルギー反応多数!艦載機と思われます!」

 

「ガルーダ1、グリフィス1、アルファルド1に告ぐ、敵艦載機隊を確認した。直ちにこれを迎撃せよ。」

 

 レーダー員のこころが敵機接近を告げると、ノエルさんが直ぐに格納庫に通信を送り、発進を命じる。

 命令を受けた艦載機隊は直ちに発艦に入り、3機の可変戦闘機がカタパルトから射出された。

 

「敵オル・ドーネ級のエネルギー反応増大!砲撃来ます!」

 

 今度はミユさんから報告が入る。

 スカーバレルのオル・ドーネ級巡洋艦は両舷の大口径主砲から、此方めがけてレーザー攻撃を敢行する。

 

「回避機動を取るぞ。TACマニューバパターン入力。」

 

 ミユさんの報告を受けたショーフクさんが舵を切って、〈開陽〉はその巨体を揺らし、進行方向を変えていく。

 

「敵弾、回避成功!わが方に損害なし!」

 

 此方は回避機動に成功し、敵のレーザー光は虚しく〈開陽〉の脇を通り過ぎていった。

 

《無人攻撃隊、発進準備完了しました!》

 

「よし、無人機隊発進!敵巡洋艦を叩き潰しなさい!」

 

 早苗から無人機隊の発進準備完了の報告を受けて、発進を許可する。

 無人攻撃機〈F/A-17〉の群れはカタパルトから飛び出すと、一直線にスカーバレルの巡洋艦を目指した。

 

 

 

《こちらアルファルド1、交戦するぞ!》

 

 先程発進したアルファルド1―――霊沙の〈YF-21〉はゼラーナ級から発進した〈LF-F-033 ビトン〉艦載戦闘機の群と激突する。

 

《よし―――捉えた!FOX2!!》

 

 霊沙の〈YF-21〉は翼下の空対空ミサイルを放ち、スカーバレルの〈ビトン〉艦載機隊を牽制する。敵編隊から放たれたミサイルはフレアを用いて、急激な機動で躱していく。

 

《アルファルド1、突出し過ぎだ。》

 

《へっ、黙ってろガルーダ1!》

 

 敵編隊に突っ込んだ〈YF-21〉は、すれ違い様に敵の〈ビトン〉1機をガンポットで撃墜すると、急反転して人形形態に変形し、マイクロミサイルの群を放つ。

 いきなり後方から攻撃されたスカーバレル艦載機隊は混乱し、マイクロミサイルに囚われて2機が落とされた。

 

《よっし、撃墜!》

 

 霊沙は機隊の中でガッツポーズを取ると、機隊を再びファイターに変形させ、前方のゼラーナ級に肉薄していく。

 

《まったく、無茶な奴だぜ。》

 

《ああ、だが、これで残り6機だ。ガルーダ1、お前は右の3機をやれ、俺は左を貰う。》

 

《了解だ。》

 

 直後、2人の駆る2機の〈YF-19〉はそれぞれ左右に分かれ、グリフィス1―――バーガーは左側の、ガルーダ1―――タリズマンは右のスカーバレル艦載機隊と交戦した。

 

 

 

 

 

《よし、敵艦捕捉―――へっ、そんな下手くそな砲撃、当たるかよ!》

 

 霊沙の〈YF-21〉は、ゼラーナ級の対空射撃を躱しながら、兵装に向かってマイクロミサイルを放つ。

 ゼラーナ級の貧相な対空火器ではミサイルを迎撃しきることはできず、左舷側の単装砲2基にミサイルが着弾し、武装を破壊する。

 

《じゃあな、海賊!》

 

 〈YF-21〉はゼラーナ級に取り付くと、戦闘機から手足が出た形態―――ガウォーク形態に変形し、艦橋にガンポットの照準を定め、発砲する。

 艦橋を破壊され、指揮系統を失ったゼラーナ級は沈黙し、霊沙はゼラーナ級の残った右舷側の単装砲を破壊すると、機隊をファイター形態に変形させて未だ艦隊に接近するガラーナ級へと飛び立った。

 霊沙がゼラーナ級に止めを刺さなかったのは、単純に機体にそこまでの火力が無かったのと、艦体が残っていた方がスクラップとして高く売れるからだ。霊沙は何度かスカーバレルと戦闘を繰り返すうちに、これらの事を覚えていた。

 

《さてと―――悪いが艦隊に近寄らせる訳にはいかないんでね―――!》

 

 ガラーナ級の後方から接近した〈YF-21〉は、ガラーナ級の艦橋にマイクロミサイルを照準し、一気に残弾を発射した。後方からの攻撃にはガラーナ級の主砲は対応できず、僅かなパルスレーザーが火を吹くが、それも無駄となり、ガラーナ級の艦橋はマイクロミサイルの洗礼を受けて火達磨になり、そのトサカ状のレーダーマストが崩れ落ちた。

 艦橋を破壊した霊沙の〈YF-21〉は、燃える艦橋を飛び越してガウォーク形態になると、ガラーナ級の2基の連装主砲にガンポットの銃口を向けて発射する。上からの攻撃で、ガラーナ級の主砲も破壊され、艦橋と同じように炎に包まれた。

 

《これで最後だ!》

 

 霊沙は機隊をガラーナ級の艦首へと向けると、そこにあった2門のレーザー砲口も連装主砲と同じようにガンポットで破壊し、ファイター形態となって飛び立った。

 

《こちらアルファルド1、敵駆逐艦を沈黙させた。》

 

《了解した。直ちに帰投せよ。》

 

 霊沙は命令通り、機隊を〈開陽〉に向けて帰投する。途中、スカーバレル艦載機隊を片付けた2機の〈YF-19〉と合流した。

 

《ようアルファルド1、上々な戦果だ。》

 

《グリフィス1、そっちも片付けるの早いな、相変わらず。》

 

《ハッ、これでも飛行時間はお前なんかと比べ物にならないんだ。当然だ。》

 

 合流した霊沙とバーガーは、軽口を叩きながら〈開陽〉に帰投する。

 

《アルファルド1、グリフィス1、帰るまで気を抜くな。》

 

《ああ、分かってるよ。》

 

《了解だ。》

 

 タリズマンは、そんな2人に通信で釘を差す。

 

《こちら〈開陽〉。指示に従い、着艦に入ってください。》

 

 ある程度〈開陽〉に近づくと、オペレーターのノエルから着艦指示が入る。3機は指示に従って減速し、トラクタービームに牽引されて格納庫に着艦した。

 

 

 

 

 

「敵駆逐艦沈黙、攻撃隊、敵巡洋艦に突入します。」

 

 〈開陽〉のメインモニターには、スカーバレルのオル・ドーネ級巡洋艦とゲル・ドーネ級ミサイル巡洋艦に突入する〈F/A-17〉戦闘攻撃機の姿が映し出されている。

 此方の攻撃隊は、それぞれ5機ずつの編隊に分かれて、3隻のスカーバレル巡洋艦に殺到した。

 オル・ドーネ級は必死に対空砲火を放つが、元々パルスレーザーの数が少なかったのに加えて、霊沙の空戦機動をトレースさせた無人攻撃機隊にはそれはただの花火程度でしかなく、攻撃隊は主に武装を狙って次々と対艦ミサイルを放った。ミサイルはオル・ドーネ級の大口径主砲を直撃し、2隻のオル・ドーネ級の艦首は無惨な形へと姿を変える。一方のゲル・ドーネ級はさらに悲惨で、下手に実弾を搭載していたために、ミサイルコンテナにめり込んだ対艦ミサイルが爆発すると、それが格納されていたミサイルにも誘爆して、同艦は一瞬で轟沈し、インフラトンの青い火球と成り果てた。

 

《敵CGの撃沈確認。残存艦は、此方に降伏の意思を表示しています。》

 

「残りの艦には機動歩兵を押し付けて制圧後、曳航するわ。工作艦はスクラップの回収に取り掛かって。」

 

 戦闘が終了し、いつものように戦利品の回収に取りかかる。

ああ、艦載機隊に霊沙のデータをトレースさせていたのは、それが敵の弾幕を躱すのに使えるからよ。あれは腐っても元が私なんだし、"弾幕ごっこ"は腐るほど経験しているみたいだから、艦船のスカスカな対空射撃程度じゃあれを墜とすことは無理なのよ。だから攻撃隊の機動には霊沙のデータを使っている訳。今のうちはヴァランタインに減らされた艦載機がまだ回復しきっていないから、攻撃隊の損害が減って助かるわ。

 

「艦長、進路に変更は?」

 

「無しよ。このままネロに向かいましょう。」

 

 スカーバレルを撃破した私達は、作業を終えると、そのまま惑星ネロへと進路を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 〜エルメッツァ中央・惑星ネロ宇宙港〜

 

 

 

 

 

 

 惑星ネロに入港し、私達は撃破した海賊から得た戦利品を売り捌き、5000Gほどの資金を得た。生き残りの海賊共は全員治安当局に引き渡した。途中何人かが仲間にしてくれと泣きついてきたが、いくら人手不足の私達でも基本的にああいうガラの悪いゴロツキはノーサンキューなので、容赦なくサツに引き渡す。まぁ、せいぜいブタ箱で頑張ることね。

 

 そんな感じで入港作業を一通り終えた後、コーディ他数名は地上の酒場に繰り出す。勿論、飲んだくれでも何でもなく情報収集の為だ。いつもは私が引率なのだが、こっちは他に用事があるので、今日は副長ポジションのコーディに酒場を任せてある。

 それで、私は用事を済ませる為に造船ドックへと向かった。

 

 

 

 〜惑星ネロ宇宙港・造船ドック〜

 

 

【イメージBGM:無限航路より「軍隊のテーマ」】

 

 

 

 

 宇宙港の造船ドックに向かった私だが、どうやら先にサナダさんとにとりが到着していたようで、二人ともドックの様子を眺めていた。

 

「遅れたわ、悪いわね。」

 

「いや、私は構わんよ。早速だが、こいつを見てくれ。」

 

 取り敢えず二人に近づくと、サナダさんは一枚のデータプレートを差し出した。

 それを受けとると、データプレートが起動して、ホログラムで艦船の設計図が表示された。

 

「これって、サウザーン級?」

 

「ああ、艦長が前、ツィーズロンドであの中佐から報酬として受け取っただろ?あの設計図を改良してみたんだ。」

 

「いや~、価格そのままで性能を上げろって、けっこう無理言ってくれたな、サナダは。」

 

 どうやら、あの後科学班に渡したサウザーン級の設計図を、サナダさんとにとりの2人で改良していたらしい。というか、よくこんな短期間でものに出来たわね。

 

「我々整備班が横流しされたジャンク品を一通り解析してみたんだが、やっぱりここらの艦船の性能はうちの艦に比べて格段に劣っていたみたいだからな。だがこいつは最低限使えるようにはしてある。感謝しな、艦長。」

 

 にとりが自慢げに話すところを見ると、それなりにはこの改造サウザーン級の性能には自信があるみたいだ。ならその性能とやらを確認してやろうと思い、表示された要目に目を通してみる。

 

 

 

 CL 改サウザーン級 軽巡洋艦

 

 耐久:2820(1620)

 装甲:53(35)

 機動力:45(30)

 対空補正:41(30)

 対艦補正:48(30)

 巡航速度:148(132)

 戦闘速度:160(145)

 索敵距離:23700(16000)

 

 

 

 

 ホログラムに表示された設計図の横に、この艦の要目が表示される。基本的に艦船設計図は、このように空間通商管理局によって設計図の持つ性能が数値化されて、一通り表示されるようになっている。航海者にとっては、この数値化された性能は艦船購入の基準の一つとなっている。ちなみに括弧内の数値は、設計図本来の数値だ。普通はこちらだけ表示されているのだが、底上げされた数値も表示されているという事は、この二人は設計段階でモジュールも組み込んでいたという事だろう。

 

 ―――そうね・・・サウザーン級の元の耐久値が確か830だったから、耐久は設計図でも2倍近く・・・・・建造費は、本体が18000Gかぁ―――武装含めて29000Gね。うちの貯金だと、ギリギリ2隻ってところね。無理すれば、ガワだけならもう1隻いけるけど、それだと艦隊運営に支障が出るわ。

 

「ああ、そういえば、建造費を押さえるためにモジュールを設計そのものに組み込んであるから、拡張性はほぼ皆無だな。」

 

「建造費が元のサウザーンよりだいぶ上がってるけど、そこは大目に見てくれよ、これでモジュールが後付けなら26000Gはいくんだからな!」

 

 ―――なるほど、そのままの仕様だと8000Gほど余計にかかる訳か・・・サウザーン級の長所だった拡張性を殺すのは惜しいが、経費節約を考えるとこっちの方が都合が良さそうね。どうせ無人運用するんだし、まぁ良いでしょう。

 うちのマッド共も、そういうとこは考えてくれたみたいだ。これで下手に性能追及に走られると困ったものなのだが、これは助かるわ。少しサナダさんを見直したかも。

 

「艦長、マッドたる者、自身の欲望に正直なだけでなく、ニーズに応えられるものの中で、いかに欲望を満たすかが肝心なのだよ。」

 

「下手に性能高くして、作れなかったら困るからな。」

 

「そう、その姿勢は私としては有難いわね。」

 

 即戦力になりそうな艦を作ってくれた礼を言おうとしたら、なんかにとりが"ああ、拡散ハイストリームブラスターでも付けたかったなぁ~"とか呟いていた。サナダさんは"馬鹿、あれは巡洋艦なんかに付ける代物ではない"と反論していて、やはり常識人だったかと期待した矢先に"まだあれは研究中だろ"とか"付けるなら大口径ガトリングレーザーだな"とか口走っているのを聞いて、なんかお礼を言う気が失せたわ。やっぱりこいつらはマッドサイエンティストみたいだ――――

 

「ま、まぁ・・・お礼は言っておくわね。」

 

「おう、感謝しろよ!」

 

「これで少しは我々も見直されたことだ。」

 

 でも働きは確かなので、お礼はちゃんと言っておこう。予算増額は話が別だけど。下手にこいつらの予算を上げると、何をされるか分かったものじゃないわ。艦内で試作機暴走とか、私は御免よ?

 まぁ、多少の底上げは考えた方がいいかな?今後の戦力強化の為にも必用だし。

 

「で、何隻作るんだ?」

 

「そうね・・・まずは2隻ってとこね。それ以上は予算的に厳しいわ。」

 

「そうか。ああ、造船所には建造させておくぞ。」

 

「分かったわ。」

 

 サナダさんにデータプレートを返すと、サナダさんは造船所の一角に向かっていく。そこで建造を命令するみたいだ。

 

「それで、艦名とか決めてるのか?」

 

 にとりに艦名を尋ねられて、そういえば何も考えていなかったことを思い出した。

 

「いや、さっき見せられたばかりだし、まだ考えてないわ。付けたかったら、貴女達で考えてもいいわよ。設計したのはあんたらなんだから。」

 

「そうか、良いのかい?」

 

「別に、私はあまりそういうの思い付かないからね。」

 

「なら、こっちで考えとくけど、いいかい?」

 

 どうもにとりは艦名を付けたいらしく、目を輝かせながら聞いてきた。

 

「良いわよ。じゃあ、私はこれで。」

 

「おう、じゃあこっちで考えておくぞ!」

 

 取り敢えず用事も済んだので、私は造船ドックを後にした。

 

 後日にとりに艦名を訊いてみると、〈エムデン〉〈ブリュッヒャー〉の名が与えられたらしい。

 

 という訳で、新たに軽巡洋艦2隻を編成に加えた私達の艦隊はネロを後にした。ああ、コーディの情報収集の方だけど、あの星にはメディックとかいう慈善医療団体の本部があったみたいだ。対スカーバレルには役に立たなさそうなので、無視しても構わないでしょう。他には特に有力な情報はなかったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜エルメッツァ中央・惑星ゴッゾ周辺宙域〜

 

 

 

 

「敵4隻のインフラトン反応消失。残り3隻からは降伏信号を受信しました。」

 

 ネロを出た後、私達はオムス中佐の協力者だという0Gドックを探して惑星ゴッゾへと向かっていた。途中でさっきのようにスカーバレルに絡まれたりもしたが、片っ端から返り討ちにして資金源のジャンク・鹵獲艦に変えていく。これで今までの分を合わせたら6000G位は稼げたかしら?

 

「工作艦はジャンクの回収、本艦の保安要員は機動歩兵隊を指揮して投降艦を制圧せよ。」

 

 戦闘が終了し、工作艦はスクラップと化した海賊船のガラクタ漁りに、〈開陽〉からは生き残った海賊船を制圧するため、機動歩兵改を満載したシャトルが複数発進した。

 

「警戒態勢を維持しつつ、ゴッゾに進路を取って頂戴。」

 

「了解。」

 

 新たなスカーバレルの群を警戒しつつ、私達は一路ゴッゾを目指す。

 

 

 

 

 

 あれから残念なことにスカーバレルの襲撃はなく、私達は無事にゴッゾへと辿り着いてしまった。もっとお金寄越しなさいよ海賊共。期待した時に限って攻めてこないんだから。

 

「じゃあ、私達は下に降りて酒場に行ってくるわ。艦は任せたわよ。」

 

「了解。」

 

 ゴッゾの宇宙港に入港した後は、艦隊をコーディに任せて、私を含めた数人で0G御用達の酒場へと向かう。勿論情報収集の為だ。

 私が艦を降りてエレベータに向かうと、辺りはうちの上陸希望者で埋まっていた。

 生活必需品は大体宇宙港で手に入るのだが、それ以外の日用品や娯楽品などは地上で買う必用がある。私は服とかはあまり興味がないけど、女性クルーはそういうのが目当てだったり、男性クルーも趣味のためのものとかを購入しているらしい。詳しくは知らないけどね。

 

「おい、霊夢、ここだぞ。」

 

 私を呼ぶ声がして、その方向に振り向いてみると、霊沙が手を振っているのが見えた。

 霊沙がいる位置には、彼女の他に保安隊のエコーに砲手のフォックス、パイロットのバーガー、タリズマンにオペレーターのミユやノエルさん、サナダさんに、それと船医のシオンさんが集合していた。

 

「全員集まってるわね。じゃあ、早速行くわよ。」

 

 私は地上に降りる仲間が揃っているのを確認して、軌道エレベータに乗り込んだ。

 

 

 

 

 〜惑星ゴッゾ・酒場〜

 

 

 

 

「あら、いらっしゃい。こんな辺境に、お客さんが大勢来てくれるなんて、嬉しいわ。」

 

 酒場に入ると早速、ここの従業員を思われる少女に声を掛けられる。年は14、5歳辺りで、見た目はすらっとした体型で、赤い長髪を右肩の方に巻いて纏めているのが印象的だ。

 

「今日はお世話になるわ。席は空いてるかしら?」

 

「はい。こちらにどうぞ。あっ、私、ここで働いているミイヤ・サキです。これからはご贔屓にしてくださいね?」

 

「ええ、私は0Gドックの霊夢よ。よろしく。」

 

 私はミイヤさんと挨拶を交わすと、案内された席についた。

 

「ところで、どうしてこの星に来られたんですか?」

 

「ああ、ちょっと海賊退治を頼まれてね、そのための人探し、って感じかしら?」

 

 こんな辺境の星に大勢で押し掛けたのが気になったのか、ミイヤさんがゴッゾに来た理由を尋ねたので、特に隠すことはないと思って目的を話したら、なにやら驚いた表情をされた。

 

「海賊って・・・あのスカーバレルですか!?」

 

 まぁね、と答えたら、ミイヤさんの表情がさらに驚いたものになった。

 

「れ、霊夢さんって、女の人なのに凄いんですね!この辺は、男の人ですらアルゴンを怖がって近づかないのに・・・」

 

 まぁ、中央政府ですら討伐には及び腰なんだから、この反応は無理もないわね。

 

「ところで、その人探しって、どんな人を探しているんですか?」

 

「ああ、私と一緒で、海賊退治を頼まれた若い0Gドックの人らしいわ。なんでも、かなり若い見た目だとか。」

 

 私が探し人の特徴を教えると、ミイヤさんは心当たりがあるのか、確認するように、一度後ろを向いた。彼女の視線の先には、空間服に身を包んだ、白髪の若い男の姿が見えた。

 

「えっと、あちらのお客様も、海賊退治に行くらしいですよ。」

 

 へぇ〜、あの人がね・・・

 視線の先にの男は、後ろ姿だが、幾分か華奢な印象を受ける。男というよりも、少年と表現した方が良さそうだ。少年といえば、オムス中佐は、協力者は私と同じ位の外見年齢だと言っていたわね・・・

 

「ちょっと話してくるわ。」

 

 私は席を立って、ミイヤさんが指した少年の方に寄る。

 

「失礼するわ。貴方がユーリ君で間違いないかしら?」

 

 少年の後ろから声を掛ける。

 

「えっ―――あ、はい。僕がユーリですけど・・・。」

 

 その少年は、後ろから見た通り華奢な体型で、白髪に赤い瞳をしていた。肌も男の人にしては、随分白く感じる。

 少年の名は、オムス中佐から教えられた協力者の名前と一緒だ。同名とかでない限り、海賊退治に行くらしいのだから、本人で間違いないだろう。

 

「オムス中佐から海賊退治を頼まれているらしいわね。」

 

「ええ、そうですが―――って、もしかして、オムス中佐が通信で言っていた"増援"って、貴女のことですか!?」

 

 どうやら、オムス中佐は先に私のことを教えてくれていたみたいだ。これなら話が早い。

 

「そうね。こっちも海賊退治の依頼を受けて、貴方に会うように言われていたからね―――これから宜しく、でいいのかしら?ユーリ君。私は博麗霊夢、貴方と同じ0Gドックね。」

 

「はい、もう御存じだと思いますが、僕はユーリです。こちらこそ、よろしくお願いします、霊夢さん。」

 

 私が手を差し出すと、彼も手を出して、握手する。

 一通り挨拶が済むと、私は彼の向かいの席に腰を下ろした。

 

「へぇ、あんたがあの中佐が言っていた"増援"か。うちのも大概だか、あんたも随分若いんだねぇ。」

 

 年のことを言われるのはこれで何度目かしら。少なくとも、見た目以上は生きてるわよ。というか、この人誰?

 

「ああ、こちらはトスカさんで、僕の艦で副長をやって貰っています。」

 

「子坊から紹介があった通り、今はこいつの下で副長をやっているトスカ・ジッタリンダだ。よろしく。」

 

「私は博麗霊夢よ。こちらこそよろしく。」

 

 どうやらこの目の前の女性は、ユーリ君の所の副長らしい。褐色の肌にロングヘアーの白髪をした体型のいい女性で、動きやすそうな服を着ている。大人の女性って感じの雰囲気の人だ。

 トスカさんとも一通り挨拶を済ませると、早速"本題"に入る。

 

「ところでそっちは、スカーバレルの拠点につい何か情報はないかしら?どうもこの星の先にあるみたいだけど。」

 

「はい、そうなんですが、この先にはメテオストームがあるらしいですよ。そちらの艦は大丈夫ですか?」

 

 ユーリ君が言うにはメテオストームなるものがスカーバレルの拠点であるファズ・マティの前にあるらしいが、そもそもメテオストームって何なのよ。

 

「メテオストームか―――これはこのゴッゾとファズ・マティの航路上にある宇宙海流で、2つの巨大ガス惑星の引力によって潮汐を起こして流動しているものだな。この小惑星帯の中では、デフレクター無しでは艦船に甚大な損害が出るだろう。」

 

 ってサナダさん!?いつの間に居たのよ!

 まぁ、デフレクターはうちの艦隊では標準装備だから、問題ないとは思うけど。

 

「とまあ、そんな訳で、デフレクターがないと奴らの拠点に殴り込みは難しいって訳だな。ところで、誰だそれ?」

 

「ああ、うちの科学主任のサナダさんよ。」

 

「サナダだ。宜しく。」

 

 トスカさんも、いきなり現れて解説したサナダさんに驚いていたらしい。

 

「よ~し、じゃあ、話も纏まったところで、パーティータイムといきますか!」

 

 

 と、トスカさんが話を終わらせると、彼女は酒瓶を取り出して、これから共に戦うことになるユーリくんの艦隊との親睦も兼ねて、宴会が始まった。

 

 途中であっちのクルーの一人とユーリくんがトスカさんに女装させられたり、フォックスがあちらの戦闘班の人間のトーロって人に砲術指南をしていたり、ミユさんとノエルさんの女性オペレーターコンビは向こうの女性クルーと話していたりと、酒場は夜通し賑わっていた。私もしばらくお酒は控えていたのもあって、トスカさんと飲み比べなんかしていたら酷いことになったわ。

 

 

 

「う"ー、飲みすぎたかも・・・」

 

「艦長、だから途中であれだけ注意したじゃありませんか、もう・・・」

 

 宴会も終盤で、私が飲みすぎてカウンターに突っ伏して轟沈していたら、シオンさんがそんな私を気遣って毛布をかけてくれた。

 

「ありがと、シオンさん―――」

 

「どういたしまして、艦長。体には気をつけて下さいよ?」

 

「うん―――善処するわ。」

 

 

 私はそのまま、眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宴会も終わり、霊夢艦隊とユーリのクルーが寝静まった頃、やや日が明け始めたゴッゾの酒場に、数人の男が入ってきた。

 男達は酒場を物色すると、ここの看板娘であるミイヤと、女装させられたユーリのクルーの一人―――イネス・フィンを誘拐した。イネスは少年にしてはやや長めの銀髪をしていて、ついでに女装でメイド服と眼鏡をさせられていて、おまけに顔立ちも中性的で凛々しい感じなので、男達の嗜好にヒットしたのかもしれない。

 こんな大胆な誘拐でも、誰一人として起きないのは、皆が酒にやられて簡単に起きないからだろう。

 数人の男がミイヤとイネスを誘拐した後、店内に残った男達は物色を続け、カウンターで寝ている黒髪の赤いリボンをつけた少女に手を伸ばしたが―――――

 

 

「―――――っ、くせ者ッ!!」

 

 

 男の手は棒のようなもので弾かれ、少女は一気に飛び退いた。

 

「痛てえっ――――!」

 

 手を叩かれた衝撃で、男は思わず呻き声をあげた。

 

「その成りは・・・海賊ね、あんた。」

 

 男の小汚ない容姿を見て、少女は男を海賊だと見破る。

 正体が知られた海賊達は、周りの人間が起きるのを恐れて、一目散に酒場から逃げ出した。

 

「逃げようったってそうはいかないわ。夢符『封魔陣』!!」

 

 少女――――霊夢が叫ぶと、彼女の袖から無数のお札が飛び出して、逃げようとする男達に纏わりつき、彼等を拘束した。

 

「なっ、なんじゃこりゃぁ!」

 

「私を襲おうなんて考えたのが運の尽きね。覚悟しなさい!」

 

 霊夢はお札に拘束された男達に向かってお祓い棒を突き立てて、そう宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきはいきなり襲われたので、取り敢えず私はそいつらを返り討ちにしてやったわ。

 襲った奴らを拷問にかけてみたら、けっこうヤバい事態だということがわかった。なんでも、あいつらの証言からすると、ミイヤさんと、昨夜女装させられていたユーリ君のとこのクルーが先に拐われていたらしい。

 

「早苗、ここにいる私のクルー全員の端末から、大音量でなんか流して起床させなさい!」

 

《了解です!》

 

 私は端末から早苗に命令して、周りの人間を起こさせるように言った。その直後、店内に大音量でラッパの音が響き、思わず私は耳を塞いだ。(大音量で海自起床ラッパが流れる)

大音量で流せとは言ったけど、流石にこれは五月蝿いわね。

 

 大音量に気づいて、驚いたり、目を擦りながら起きてきた連中に事態を説明すると、特にユーリ君のところのクルーは、まだ酒が残っているのか、ふらついた足取りの人もいたが、急いで自分の艦へと戻っていった。

 

「まぁ、私もクルーの奪還には協力させてもらうわ。」

 

「有難うございます。それでは、僕は艦に戻ります!」

 

 私ももう少し海賊共から情報を聞き出すのが早ければその場で奪還できたかもしれないし、このまま別れるのは気まずいので、クルーの奪還には協力することにした。

 

 ―――それに、私に触れようとした代償、高くつくからね、覚悟しておきなさい―――

 

 自分があの薄汚い海賊共の標的にされたことを考えたら、あいつらを吹っ飛ばさないと気が済まないわ。

 という訳で、私もクルーに緊急召集をかけて、急いで艦隊の出港準備を進めさせた。

 

 

 ああ、ひっ捕らえた海賊だけど、当然サツに引き渡したわ。残念だったわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〜ユーリ艦隊・旗艦ブリッジ内〜

 

 

 

 

 ユーリ艦隊の旗艦を務める、赤いカラーリングのサウザーン級巡洋艦〈スレイプニル〉の艦内では、慌ただしく出港準備が進められていた。酒場で海賊に拐われたクルーと、酒場の看板娘を取り戻すためだ。

 

「インフラトン・インヴァイダー起動、出力上昇中!」

「火器管制、重力制御、共に異常ありません!」

「全乗組員の乗船確認しました。」

 

 艦橋では、小太りの少年―――トーロ・アダに、ピンク髪の少女―――ティータ・アグリノス、緑色の髪をした、ユーリの妹であるチェルシーが、各部からの報告を読み上げて、艦長であるユーリに伝える。

 

「よし、出港準備完了次第、直ちに出港する!」

 

 〈スレイプニル〉は出港準備が完了すると、僚艦である2隻の赤いアーメスタ級駆逐艦を伴って、急ぎゴッゾを後にした。

 ユーリ艦隊が出港した直後、隣の大型艦ドックからも、重低音を響かせながら、何隻かの大型艦が飛び出した。

 

「で、でけぇ・・・!」

 

 その艦隊の姿に、思わずトーロが声を上げた。 艦隊は全部で12隻あり、うち5隻は、1000m級以上の大きさで、この辺りで使用されているグロスター級戦艦に匹敵するか、それ以上の大きさだった。

 1隻の赤いラインの入った、大口径主砲複数を搭載した1800mサイズの大型戦艦が、〈スレイプニル〉の隣を通過していく。

 

《こちら〈開陽〉の霊夢よ。連中は恐らくファズ・マティの方向に逃げていった筈。まずはそっちを探すわ。》

 

「分かりました。協力ありがとうございます、霊夢さん。」

 

 ユーリ艦隊の横に展開している艦隊は、どうやら霊夢のものらしい。

 ユーリは霊夢に礼を告げると、自分の艦隊に最大速度での追撃を命令した。

 

 

 ―――待ってろイネス、ミイヤさん、必ず助けてやるからな―――

 

 

 ユーリは、海賊に囚われた二人の身を案じて、艦隊を急がせた。

 




今回で原作主人公のユーリとご対面になります。彼の艦隊のカラーは、宣伝映像での赤いカラーのサウザーン級とアーメスタ級のものです。

原作では、ここから3隻の艦隊だけでファズ・マティに挑んでいましたが、普通に考えたら自殺行為ですよね、あれ。

霊夢艦隊もサウザーンを建造しましたが、あちらとは違ってサナダさんの魔改造がないので、ユーリ君のサウザーンはこの時点での原作での最高性能のサウザーンとお考え下さい。(ランカー装備は無しです)

霊夢の方のサウザーンは、能力値の上昇分はモジュールのものとありましたが、この性能は原作のモジュールの数値をそのまま使っています。ガイドブック等をお持ちの方は、組み込まれたモジュールがどれか推察してみては如何でしょうか?(尚、青年編で手に入るモジュールも使っています。)


ちなみに霊沙のことですが、忘れているかもしれないので改めて書いておきますが、彼女の外見は禍霊夢です。
ただ、霊夢が16歳相当の外見なら、霊沙は14歳程度です。



あとイメージBGMの「軍隊のテーマ」ですが、あれは原作では軍事基地とかで流れているやつです。曲名が分からないので、適当にそう呼んでいます。

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