夢幻航路   作:旭日提督

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執筆を続けていると、スマホの予測変換がバカ過ぎてイライラしてきます。攫うをさらうで変換できないとか何なんですかね。 これじゃあガラケーのほうが賢いんじゃないかと思います。

今回は霊夢と禍霊夢(霊沙)以外の東方描写があります。とは言ってもなけなしの能力とスペカ描写ですが。


第一一話

 ~イベリオ星系郊外・微惑星滞留宙域~

 

 

 

  風のない時代とは、25世紀に、人類が"MAYAプロジェクト"と呼ばれる新天地探索計画に基づいて、地球から凡そ4万隻の巨大移民船団に乗って旅立ってから、約1万年に渡って続いた宇宙の大航海時代のことを指す。しかし、当時の記録は、多くの移民船団が人口減によって自然消滅したことにより滅失しており、その実態は未だ明らかになっていない。また当時有していたと言われている多くの先進技術も移民船団の消滅と共にそのノウハウが失われ、一部はオーバーテクノロジーとして扱われている。現在宇宙の各地に広がる人類の先祖は、この大航海時代を生き残った僅かな人類が新たな惑星に根差して発展したものである。

「へぇ、こんなところに中々凄そうなものが眠っていたのね。ところで、サナダさんはどうして目の前の遺跡が"風のない時代"のものだって分かったのかしら?」

 霊夢は眼前に鎮座している古代遺跡に関心を示しながら、サナダがこの遺跡の正体を言い当てたことを疑問に思い、彼に理由を尋ねた。

「以外と知られていないが、"風のない時代"の遺跡はこのM33銀河だけでも今までで3つほど見付かっていてね、それらには共通した特徴が確認されている。一つは目の前の遺跡に見られるような白銀を基調とした外装に、円盤や円錐形といった曲線を多用した有機的なデザインの宇宙建築だ。そしてもう一つが━━━」

サナダは説明を続けながら、手元のコンソールを操作して艦橋天上のメインパネルに遺跡の拡大画像と、文字が並んだ写真の画像を表示した。

「この遺跡の左側の、恐らく宇宙港と思われる開口部の上に書かれている表示を見てほしい。この文字は古代銀河標準語と呼ばれるもので、"風のない時代"の晩期から、ヤッハバッハ帝国の元となった旧ヤッハバッハ公国建国直前の時代、今から凡そ3000年前まで使われていた言語だ。この言語は資料が比較的豊富に残されており、解読も進んでいる。ちなみにここに書かれている表示の読みは、"ネオサイタマ・スペース・ステーション"、だな。」

サナダは遺跡の写真と文字列の写真を使って説明しながら、目の前の遺跡が風のない時代のものである証拠を提示した。

「あれが"風のない時代"の遺跡だってことはよく分かったわ。けど、時々思うんだけど、あんたの専門は何なのよ。0Gドックだと思ったら発明家だし、医者の真似事もするし、今度は考古学者ときた。」

霊夢はサナダの口から繰り広げられる専門的な説明に、感心を通り越して半ば呆れたように呟いた。

「私はただ、自身の知的好奇心の赴くままに行動しているだけだぞ、艦長。」

サナダは、その内容がさも当然であるかのように、霊夢に答えた。

 

━━ああ、やっぱこの人はマッドみたいだわ。それも河童みたいな人のようね━━

 

 霊夢は幻想郷で暮らしていた頃に、発明好きの河童が噛んでいた数々の騒ぎを思い出しながら、サナダに対して以前抱いていた常識人という評価を完全に覆し、マッドサイエンティストであると認識を改めた。

「とにかく、ここまで来たからには遺跡の外観だけ見ておさらばする訳にはいかないわ。貰えるものは貰っておきましょう。コーディ、艦を遺跡の宇宙港に入れてくれる?」

霊夢はここまで来たらもう引き下がれないと思い、遺跡を調査する為に〈高天原〉を遺跡の宇宙港に入港させるように命じた。

「了解だ、霊夢。墓荒らしとは、艦長も大胆なことを指示するようになったもんだな。」

指示を受けたコーディは、霊夢を茶化しながら命令に応えた。

「墓荒らしじゃないわ、有効利用よ!別に資源を頂くのは墓荒らしには入らないでしょ!」

霊夢は語気を強くしてコーディーの言葉を訂正した。

「その程度、分かってるぜ。」

コーディは霊夢の言葉を意に介さずに、操舵を続けた。

《コーディさん、遺跡の周辺には多くのデブリが確認されています。操舵には充分注意して下さい。》

レーダーで遺跡の周辺に広がるデブリ帯を捉えた早苗は、その存在を舵を握るコーディに警告した。

「了解。」

コーディーは警告を受けて気を引き締め、舵を握る力を強めた。

〈高天原〉は、無数に点在する大小のデブリを避けつつ、遺跡に接近していく。

「遺跡宇宙港まで距離あと600。当該宇宙港の周辺には、脅威となるデブリは存在しません。」

オペレーターのミユが報告する。

「その宇宙港に入港しましょう。機関微速。」

「了解、機関微速、減速スラスター噴射。」

霊夢は遺跡の宇宙港に入港するよう指示し、コーディは入港に備えて艦を減速させた。

「艦を回頭させるぞ。」

コーディがコンソールを操作すると、〈高天原〉の両舷に備え付けられた回頭用の小形ノズルが噴射し、艦はバックの体勢で遺跡の宇宙港に滑り込んだ。

「入港を確認。重力アンカー始動。艦を固定させるぞ。」

通常の宇宙港は港側のガントリーロックで宇宙船を固定するが、この宇宙港は遺跡のため、機能しているか分からないので、コーディは艦が入港したのを確認すると、艦が流されないように重力アンカーで艦の位置を固定した。

「後続艦も入港を終えた模様です。」

入港が完了した〈高天原〉の左隣には、同じように入港を終えた〈サクラメント〉が静止していた。

「じゃあ、早速探索隊を編成しましょう。」

 遺跡に入港すると、霊夢は遺跡を探索する部隊の編成を指示した。

「サナダさんと、保安隊の二人は連れていきたいけど、他に志願者はいるかしら?」

霊夢は艦橋全体を見回して、探索隊の志願者を募った。

「そんじゃ、私も行かせて貰うぞ。こんな面白そうなこと、見逃す訳ないだろ。」

霊沙はにやりと笑って、探索隊へ参加する意思を示した。

「私は残ろうと思います。確かに面白そうなことですが、緊急時に備えて、誰かは艦に残っている必要があります。」

オペレーターのノエルは、非常時に備えて、艦に残留することを希望した。

「私もノエルと同意見です。」

ミユも、ノエルと同じ意見を表明する。

「じゃあ霊夢、留守番組は俺が預かっておこう。何かあったら、早苗を通して艦長の端末に連絡する。」

コーディは残留組の纏め役を買って出た。

「じゃあ留守番組の指揮はコーディに任せるわ。サナダさんは連れていきたい人はいる?」

「そうだな・・・取り敢えず助手のチョッパーと、同業者のシオンは絶対に行くと言うだろうな。あとは、遺跡に降りるための内火艇のパイロットが一人欲しいところだな。」

サナダは、遺跡に降りる際に乗り込む小型艇のパイロットが必要だろうと進言した。

「そうね、パイロットならタリズマンかバーガーさんがいるから、後で話しておくわ。」

霊夢は、小型艇のパイロットとしてどちらか一人に話をつけておくと答える。

「では、探索の前にドロイドである程度の構造や遺跡の安全性は確認しておくべきだろう。艦長、〈サクラメント〉から自動装甲歩兵と探索ドロイドの部隊を先行して発進させ、その間に我々の準備を済ませようと思うのだが、どうかな?」

サナダは遺跡探索の方針を霊夢に提示して、指示を仰いだ。

「それで行きましょう。探索隊の参加者には、万一に備えて装甲服の着用を指示しておくわ。」

霊夢はサナダの案を承認し、各乗員の携帯端末に今後の活動方針を送信した。

「それじゃあ各員準備に取り掛かりなさい、掻っ攫えるものは根こそぎ頂いていくわよ!」

「了解!」

 霊夢は探索の準備を指示すると共に、遺跡探索へ向けて乗員を鼓舞し、士気を高めた。

 

 

 

  工作艦〈サクラメント〉からドロイド部隊が発進して約1時間が経過し、遺跡内部は呼吸可能な空気で満たされていることが判明し、構造も艦から近い区域はほぼ把握されていた。

 霊夢達は、遺跡探索に向けて準備を整え、小型艇に乗り込んでいた。艇のパイロットには、トルーパーのタリズマンが任命されている。彼曰く、病み上がりのリハビリだそうだ。バーガーには、非常時に備えて救援用の小型艇のパイロットを任されている。

 探索隊に参加する者は大半が装甲された宇宙服を着込んでいるが、霊夢と霊沙は空間服を着たままだ。元々空間服には宇宙服の機能があるのに加えて、霊夢の持つ"空を飛ぶ程度の能力"で外界の法則から"浮く"ことができるので、真空や有毒ガスにも一定時間は対応できる。なので、彼女は非常時にはこの能力を使うことにしている。霊夢曰く、能力を使わないと勘が狂っていざというとき時に使えなくなるからだそうだ。霊夢がベースとなっている元妖怪の霊沙も同じ能力があるので、彼女も空間服のままだ。

「全員乗り込んだな。じゃあ発進するぞ。いいな、艦長。」

「良いわよ。発進しなさい。」

操縦席に座るタリズマンは、全員の乗り込みを確認して、霊夢の許可が出ると艇を発進させた。

 エンジンを起動した小型艇は甲板から浮くとランディング・ギアを格納し、発進用のゲートが開口すると、艇はそこから艦を飛び出して遺跡の内部に突入した。

 小型艇はしばらく飛行を続けると宇宙港の隣にある造船所と思われる区画に突入し、そこに着陸した。

「私達は遺跡の中に進むわ。タリズマンはこの艇で待機してくれるかしら?」

「了解です。」

霊夢はタリズマンに小型艇の留守番役を命じた。

「チョッパーもこの艇に残って、探索ドロイドの部隊から送られてくるデータを私に転送して欲しい。」

「了解しました、班長。」

サナダもチョッパーに艇に残るよう命じ、ドロイド部隊から送られてくるデータを自分に送るように要請した。

「よし、それじゃあ探索隊は降りるわよ。私に続いて。」

小型艇のハッチが開き、霊夢を先頭に遺跡探索隊が降り立つ。

 遺跡の床は、硬い金属のようなもので作られており、装甲服の鈍い靴音が薄暗い空間に響き渡る。遺跡の造船区画はまだ生きているシステムもあるらしく、所々照明が点灯していた。しかし、それらの照明の明るさは区画全体を照らすほどのものではない。

「やはり内部にも、"風のない時代"の遺跡特有の有機的なデザインが見られるな。」

サナダは、ライトに照らされた遺跡の壁や床を見て呟いた。遺跡の内部も、外部と同様に壁や床に曲線を多用した有機的な模様が描かれていた。

「艦長、左側に何かあるぞ。」

薄暗い遺跡の中で、ふとヘルメットのライトを左側に回したエコーが、何か見つけたようで、それを霊夢に報告する。

「何があったの?」

霊夢はエコーの報告を受けて足を止め、自身もエコーが指した方向に振り向いた。

「あれは・・・遺跡の外にあった戦艦みたいね。」

霊夢は、ぼんやりと見えるそれのシルエットが遺跡を発見した際に漂流していた戦艦のデザインに近いことに気がついた。

 一行がその艦に近づいてみると、やはり遺跡の外にあった戦艦の同型艦のようだった。

「おおっ、やっぱ近くで見ると迫力あるな。」

霊沙が戦艦を眺めて、その感想を述べる。

「艦長の言った通りだな。やはり、これは遺跡の外にあったものと同型だ。恐らく、この遺跡の警備艦隊の主力艦だったのだろう。」

サナダは戦艦を観察して呟いた。

「サナダ班長、この艦の装備、解析はできないでしょうか?この艦を解析すれば、艦隊戦力の強化に繋がるのでは?」

サナダに同伴していたシオンが尋ねた。

「うむ、そうだな・・・だが先ずは他の区画を探索しよう。何処かに設計図でもあれば、此方の事情に合わせた改設計ができる。」

サナダは、かつて〈高天原〉を建造した時のように、遺跡から艦船設計図を発掘して、遺跡戦艦を再生することを目論んでいた。

「それなら、他の所も探索しましょう。」

一行は一旦戦艦から離れて、他の区画の探索へ向かった。

「艦長、あそこに扉らしきものがあります。どうやら空いているようです。」

 ファイブスが他の区画へ通じる扉らしきものを発見し、報告した。

「よし、そっちに進むわ。」

 霊夢達は、ファイブスが見つけた扉の内側へと足を進める。扉の向こう側は廊下になっており、ライトで照らされた壁や床には造船区画同様の意匠の模様が見られた。廊下の照明はエネルギーが切れているようで点灯しておらず、廊下の先には漆黒の空間が続いていた。

 一行が廊下を進んでいくと、ピピッ、ピピッ、と、サナダの携帯端末の呼出音が鳴り響いた。サナダは携帯端末を手に取り、送信者を確認する。どうやら、相手はチョッパーのようだ。

「どうしたチョッパー、何かあったのか?」

《はい、班長。ドロイド隊の一部が、居住区と思われる区画に突入しました。今、映像をそちらに転送します。》

 チョッパーは、ドロイド部隊の探索の進捗状況を報告した。

 サナダの携帯端末には、ドロイド部隊から送られてくる映像が表示された。そこには、黄色く霞んだ空気に覆われた多くの高層建築が映し出されていた。

「おい、みんな、こいつを見てくれ。」

サナダは携帯端末の映像のホログラムを拡大し、他のメンバーに声を掛けた。

「どうしたの?」

霊夢が、サナダに用件を訊ねる。「今チョッパーの奴から報告があった。ドロイド部隊の一部が居住区と思われる区画に突入したらしい。これはその映像だ。」

説明を受けた一同は、サナダの携帯端末から拡大される映像のホログラムを食い入るように見つめた。

「確かに、これは街のように見えます。しかし、空気の汚染が酷そうですね。」

シオンは、街を覆う空気の様子から、空気が汚染されている可能性を指摘した。

「ああ、とても人が住む環境には見えないな。」

シオンの意見に、エコーも同意する。

《どうやらその通りのようだ。ドロイドの分析結果では、当該区画の空気成分には基準値を大幅に上回る硫黄酸化物や窒素酸化物の存在が確認されています。二酸化炭素濃度は10%を越え、酸素濃度は1%以下のようです。》

チョッパーはドロイドから送られてくる空気成分のデータを読み上げ、その区画の空気が汚染されていることを報告した。

「やはり空気汚染でしたか。しかし、この遺跡には高度な科学力が投入されているのに何故、この区画の空気は汚染されているのでしょうか?」

シオンは、チョッパーの報告を受けて疑問に感じた点を呟いた。

「そうだな、この遺跡内で大規模な内乱が発生したか、環境を制御する装置が故障した結果か・・・どちらにしても、我々には分からないことだな。」

サナダは報告を受けて、居住区の空気が汚染された原因を考察する。

「チョッパー、その居住区は我々の現在位置と比べてどのくらい離れている?それと、方角の情報も頼む。」

《はい・・・大体、距離にして10kmほどのようです。遺跡の規模を考えると、近からず遠からずって距離のようです。方角は、班長達の現在位置から見て遺跡の中心方向、1時の方角のようです。》

チョッパーはサナダの質問を受け、霊夢達の現在位置と居住区との間の距離を測定した。

「艦長、例の居住区は避けて通るべきかと。居住区なら大して得るものはないでしょうし、空気汚染が酷すぎます。探索は、ドロイドだけで充分でしょう。」

サナダは、チョッパーの報告による情報を元に、霊夢に方針を進言した。

「分かったわ。私達は別の場所を探索しましょう。」

霊夢はサナダの進言を受けて、汚染された居住区を避けることにした。

 

「艦長、此方にも道が続いているようです。」

 霊夢達は、暫く進むと道の分岐点に到達した。一方は真っ直ぐ続いており、もう一方は右へ分岐し、階段が上に続いていた。

「右に行くわ。着いて来て。」

霊夢は進行方向を指示して、隊員もそれに続いた。

 

 階段を登り、しばらく進むと、そこは隔壁で閉ざされていた。

「艦長、隔壁です。」

「見れば分かるわ。」

 霊夢は隔壁の出現を受けて、これをどうやって突破しようかと思案した。

 見たところ。隔壁を操作するスイッチはあるが、機能停止しているようで、霊夢が触れても何の反応もなかった。

「艦長、爆破しますか?」

エコーが設置型の爆弾を取り出して、隔壁の爆破を試みようとする。

「待って、ここは私に任せなさい。ちょっと試したいことがあってね。」

 霊夢はエコーを制して一歩前に出て、腰に下げた刀━━スークリフ・ブレードを抜いた。

「艦長、この隔壁はスークリフ・ブレード程度では切れないと思うが・・・」

「まぁ、見てなさい。」

サナダは霊夢が刀で隔壁を破ろうとしているのかと考え、それでは破れないと指摘するが、霊夢はサナダの指摘を意に介さずに、刀を握る手に力を込めた。

 

 ━━刀身に霊力を纏わせて・・・断ち斬るっ!━━

 

 霊夢は自信の能力の一つ、"霊気を操る程度の能力"を駆使して、スークリフ・ブレードの刀身に彼女の大技"夢想封印"に匹敵するほどの霊力を込め、刀を"切断"に特化させる。彼女の霊力を込められたスークリフ・ブレードは鈍い赤色の光を発し始め、刀身の姿が朧気に霞み始めた。

 

「はああっ!」

 

 霊夢が力一杯刀を降り下ろすと、隔壁にヒビが入り、破片がこぼれ落ちた。

「艦長、今のは?」

 事の一部始終を見ていたシオンが霊夢に尋ねる。彼女は、霊夢が試したことが理解できなかった。

「ちょっと力を試したんだけど、詳しくはまた今度ね。気になったらサナダさんにでも聞いておきなさい。」

霊夢は自身の事情をここで長々と語るべきではないと思い、既に自分の事情を話して、そのことを知っているサナダならシオンの質問に答えられると踏んでそう指示した。

「う~ん、いまいち上手く行かなかったみたいね・・・夢想封印!」

 霊夢はヒビが入った程度の隔壁を見て、左手にカードを持って隔壁に突き付け、隔壁をこじ開けようとスペルカードを発動した。

 霊夢がスペルガードを発動すると、彼女の周囲に数個の赤い光球が現れて、隔壁に向かって突き進み、隔壁を破壊した。

「おい、こんなところでスペルカードなんて使うなよ・・・」

霊夢の行動に、霊沙が苦言を呈した。

「いいじゃない、使わないと腕が錆び付くのよ。さ、邪魔な隔壁も無くなったことだし、先に進みましょう。」

 霊夢は上機嫌な足取りで遺跡の奥へ進んでいく。それにサナダが無言で続いていくのを見て、霊夢の行動に茫然としていたシオンやトルーパーのエコー、ファイブスもそれに続いて隔壁の奥へ進んでいった。

 

 

  隔壁の奥へ進むと、開けた円形空間に到達した。その空間だけは、機能が生きているようで、照明が点いていた。

「ここは・・・」

「どうやら、まだ生きている区画にたどり着いたようだな。」

 サナダは立ち止まる霊夢達をよそに、その部屋に備え付けられているコンピューター類に目を向けた。

「成程・・・言語は古代銀河標準語のようだが、操作方法は我々のコンピューターとそう変わらないみたいだな。」

サナダはコンピューターに辿り着くと、操作を試みてあちこち弄り始めた。

「あっ、サナダ班長、操作できるんですか?」

シオンはコンピューターを弄るサナダに声を掛けたが、反応はない。

 すると、ゴウゥン、という鈍い音が響き、それに続いて機械音が響き始めた。

「あんた、今何したのよ。」

 突然の変化に驚いて、霊夢がサナダに尋ねた。

「なにって、単に動力を回復しただけだが。どうやらこの遺跡は管制設備が複数あるらしい。今起動したのは、造船区画とその周辺の動力のようだな。」

サナダは、いつもと変わらぬ真顔で説明し、コンピューターの操作に戻った。

「なに勝手なことを━━━って今度は何よ!」

霊夢がサナダに文句を言うと、今度は彼女の頭上にホログラムの画面が表示された。

「━━━よし、見つけたぞ!」

霊夢の頭上に出現したホログラムを見たサナダは、その場で拳を握りしめ、ガッツポーズを取った。

「何が"よし"よ、ちゃんと説明しなさい!」

「ああ艦長、これはすまないな。見ての通り、艦船の設計図を発掘した。」

サナダはホログラムを指して説明する。

「班長、早いですよ。けど流石です!」

シオンはサナダの手腕に感銘を受けて、それを称賛した。

「これは・・・あの漂流戦艦の設計図か?」

霊夢の頭上に浮かぶホログラムの設計図を見た霊沙が呟く。

「それだけではないようだな。その戦艦の他にも、3種類ほどの艦船設計図があるようだ。」

ホログラムには、遺跡の外や造船区画で遭遇した戦艦の他にも、背の高い塔型艦橋を艦の上下に備えた円柱形の艦体を持つ戦艦や、箱形の艦体に円柱形のメインノズルが接続されている戦艦、円と方形を組み合わせた平坦な艦橋を持つ葉巻型の戦艦の設計図などが表示されていた。

 

 

 

「ところで艦長。君は更なる戦力強化を望むかね?」

 

 

 

 マッドサイエンティスト・サナダは、そんな言葉を霊夢に囁いた。

 

 

 

 

 

 




SFにはよくいる専攻が分からない変態科学者って便利ですね。無限航路本編だとジェロウ教授みたいな人です。当作品ではサナダさんがその役目です。ちなみにサナダさんは2199ではなく旧作の真田さんなので、"こんなこともあろうかと"、と唐突に新兵器が登場したりするかもしれません。ご期待下さい。

霊夢が主人公なのに、何気に今話でスペカ初登場。夢想封印の威力は隔壁破壊用程度に押さえています。こういう能力描写はあまりしたことがないので、下手だったら許して下さい・・・。
なお、スペカは無限航路本編に絡んだ時点で一度の出番が確定しています。といっても大分先の話ですが。この作品はSF成分90%でお送りしていますので、スペカにはあまり期待しないで下さい。

終盤の戦艦設計図はヤマト的なデザインの艦船を想定しています。次回で霊夢艦隊大拡張&戦艦デザイン公開の予定です。お楽しみに!

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