夢幻航路   作:旭日提督

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最近無限航路の設定資料を入手しました。ゲームを買った当時はネット環境のない情弱愚民で、発売をみすみす逃してしまい、存在を知った時は既に書店から消えた後でした。あれから古本屋やネットで中古本を探して、ようやく入手することが出来ました。プレミアがついて高くなってましたが、読んでみるとやっぱり買って良かったなと感じてます。これで作品の詳細な設定も捗りそうです。グランヘイムは最初は正義の海賊のイメージだったんですね。なら宮武さんのあのヤマト的なデザインにも頷けます。艦首とか砲口の有無を除けばアルカディア号みたいな雰囲気ですよね。大正義3連装主砲は当初背負い式だったみたいです。ちなみに私は艦首が尖ってるアルカディア号よりマッコウクジラ頭のほうが好きです。あの方が戦艦らしい重圧感があって気に入っています。


第九話

 《ワープアウト確認。イベリオ星系、第5惑星軌道に到着しました。予定航路との誤差は0,0014です。》

 〈高天原〉の統括AI、早苗は、通常空間を確認して艦隊がワープアウトしたことを報告する。

「周辺スキャンを開始して。」

《了解です。》

艦長の霊夢は、艦隊の周辺に脅威となるものがないか早苗に確認させる。ワープアウトしてから、一番に行う作業だ。

「艦隊は予定通り居住惑星に向かうわよ。コーディ、舵はお願いね。」

「了解だ、霊夢。」

操舵席に座るコーディーは、霊夢の命令を受けて艦のスラスターを操作し、居住惑星である第3惑星へ向かう進路を取る。この星系でも慣性航路をするので、ガス惑星の第4惑星でもスイングバイを行う予定だ。

「艦長、一つ提案だが、いいかな?」

「何かしら、サナダさん。」

サナダから提案があると聞いて、霊夢はその内容を尋ねた。

「前この星系の説明をしたとき、ここにはデットゲートがあると言っただろう。第3惑星に寄港した後、星系に脅威が無いようならば調べてみないか?」

サナダは、自身の知的好奇心から、霊夢にデットゲートの調査を提案する。デットゲートは、霊夢達の現在位置から主星のG型主系列星を挟んで星系を取り巻く微惑星帯(太陽系でいうオールト雲に当たるもの)の中に存在している。サナダは、ボイドフィールドが機能しておらず、空間通商管理局に管理されていないデットゲートならば、ボイドゲートの構成物質を調査することができると踏んでいた。なおボイドフィールドとは、ボイドゲート周辺に展開されている一種の防御機構で、ボイドゲート本体に危害を加えるもの(レーザー、ミサイル、特攻船)などを認識して本体に到達する前にこれを防ぐシールドのことを指す。

「デットゲート付近の微惑星や準惑星は、このような辺境星系ならまず手は出されていない。運が良ければレアメタルの採取も望める。悪い話ではないと思うが。」

サナダの提案を聞いて、霊夢はその提案を呑むかどうか検討する。

「成程ね。確かに、悪い話ではないわね。ヤッハバッハが居なければ立ち寄ってみるわ。」

霊夢はサナダの提案には特に問題はないと判断し、提案を受け入れることにした。

《艦長、周辺宙域のスキャン完了。本艦周辺に脅威となるデブリ、小惑星、敵性艦隊の存在は認められません。》

 早苗は周辺のスキャンが終了したことを報告する。

「ならさっさと居住惑星に向かいましょう。念を入れて警戒は怠らないで。」

霊夢は奇襲に備えて警戒態勢を続けるよう命じた。〈高天原〉は、居住惑星を目指して進んでいく。

 

 

 《居住惑星宇宙港より入港許可が下りました。これより入港作業に移ります。》

 星系移動は特に問題は起こらず、〈高天原〉は居住惑星に到着した。現在〈高天原〉は宇宙港から入港許可が出たため、スラスターで艦を反転させて指定されたドックへと入っていく。

《ガントリーアーム固定。宇宙港から連絡通路が接続されます。》

ドックに入った〈高天原〉には、艦を固定するためのガントリーアームが宇宙港側から伸ばされ、同時に乗員が宇宙港と往き来するための連絡通路も艦のエアロックに接続される。

《入港作業完了しました。》

早苗から、艦が宇宙港に入港したことが報告される。

「入港時間は22時間ね。スクラップと資源の売却が完了したら、私とサナダさんにエコー、ファイブスの4人で地上へ人手探しに行くわ。コーディは艦の留守をお願い。」

「了解だ。留守は任せろ。」

私は艦の入港が完了したことを受けて今後の方針を乗員に伝え、物資売却のために艦を降りて管理局のカウンターへと向かった。

 

 今まで回収したデブリ等の物資は管理局に売却すれば資源としてリサイクルされ、新たな艦の資材や補修物資として利用される。この世界ではリサイクル技術が私が幻想郷にいた頃の外の世界よりも格段に発展しているので、レアメタルを多く含む艦船のデブリは高価で買い取ってくれる。今回は小惑星から回収した資源に加えてブラビレイの残骸と海賊から得られたデブリを売却し、5000Gほどの資金を得ることができた。これほどの大金を得られたのはやはり資源小惑星があったのが大きい。ブラビレイもサナダさんは金になる機関部は壊れて使えそうにないと言っていたが、2000m級の大型艦を1隻丸ごと解体したので結構な金額になったようだ。ちなみに海賊は違法改造で非正規部品を大量に使用していて、尚且つ船自体の痛みが激しかったためか、あまり金にはならなかった。この金額なら艦船の建造は流石に出来ないが、艦隊を維持していくには十分な金額だ。

 私は管理局のカウンターで資源の売却を終えると、早苗を通して〈サクラメント〉に売却する物資を宇宙港に搬出するよう指示して艦に戻り、地上へ行く乗員を纏めた。〈サクラメント〉は無人艦なので、指示した後の作業は全て自動で行われる。

「地上に降りる準備は出来たかしら?」

私は艦のエアロックに集まった3人に尋ねた。

「ああ、問題ない。」

「準備は出来ている。」

そう答えたのはエコーとファイブスの2人だ。何を勘違いしたのか、全身装甲服を着込んで無骨なミニガンやRPGみたいなミサイルを背負っている。

――これは失敗ね・・・彼等にはちゃんと目的を伝えた方が良さそうね――

「エコー、ファイブス。地上に降りるとは言ったけど、そんな重装備だと地上の警察組織に怪しまれるわ。せめて重火器は置いていきなさい。武装は護身用に留めて。今回の目的は地上の当局に感付かれずに人員を募集することだから、あまり目立ちたくないの。」

私はエコーとファイブスにその重装備は置いていくように要請して、理由も説明する。

「しかし艦長、我々が向かうのは、非合法の宇宙航海者が集まる酒場です。当然マフィア紛いの者もいるでしょう。抵抗手段は必用です。」

そう言ってエコーが反論する。

「だからと言ってそこまで重装備になる必要はないでしょ。何、酒場ごと吹っ飛ばすつもりなのかしら?」

私は若干語気を強めてエコーに言った。

「抵抗勢力はその場で殲滅すべきです。それに、強力な火器による弾幕ならばマフィア程度なら殲滅は容易です。」

さらにファイブスまで反論する。

「何よその弾幕はパワーだぜみたいな言い方は。とにかく、私達の目的は騒ぎを起こさない事。そもそもヤバそうなマフィアとかには声を掛けないようにすればいいだけよ。重火器の持ち込みは禁止よ。」

私は強い口調でエコーとファイブスに命じた。

「・・・了解です。」

私は何とかエコーとファイブスに重火器の持ち込みを止めさせることができたみたいだ。あんなものを酒場に持ち込めれたら困る。

「もう貴方達は戦争している訳じゃないんだから、少しはその脳筋を直しておきなさい。」

「善処します。」

エコーとファイブスは納得して準備し直す為に一旦自室に戻った。余談だけど、彼等の独特なヘルメットは中々愛嬌があると思う。あのヘルメットを着て首を傾げているところとかは、中身は男の人なのに可愛らしく感じる。

「どうやら、終わったようだな。」

 隣にいたサナダさんが話しかけてくる。

「貴方もいたなら助け船くらい出しなさいよ。」

私はサナダさんに、若干不機嫌な口調で反応した。

「いや、私の頭はは先日得たブラビレイのデータの解析とそれをベースにした設計図の製作のことで一杯でね。そこまで考える暇が無かったのだよ。」

サナダさんはそう弁解する。この人、今までは常識人だと思っていたけど、以外とマッドサイエンティストなのかもしれない。

「考え事も良いけど、少しは周りに注意しなさいよね。」

「善処しよう。」

サナダさんは私の指摘を微笑んで誤魔化した。

「それとさっきブラビレイを改設計とか言ってたけど、どんなの作ってるの?」

私は先程のサナダさんの話で気になったブラビレイのくだりに関することを訊いた。

「ああ、それか。今ブラビレイを合理化してより艦載機運用に特化させつつ、無人化によって不必要な機能を削減してサイズダウンとコストダウンした艦を設計している所でね。これが現在の完成予想図だ。」

サナダさんは説明を終えると懐から携帯端末を取りだし、ホログラムでその艦の完成予想CGを表示した。

 その艦は全体的にブラビレイの特徴を継承しているが、外見はほとんど別物だった。最大の特徴であった三段の飛行甲板は反転され、最下層が一番長くなっていて、三段目の上にはさらにアングルド・デッキを備えた飛行甲板を追加して合計四段に増加している。艦体側面はブラビレイとは異なり曲線で構成され、ブラビレイでは剥き出しだった飛行甲板の位置にも装甲が施されている。またブラビレイにはあった三段目の飛行甲板上の電磁加速フィールドジェネレータ群は廃止され、各飛行甲板に2本ずつ設置されたカタパルトにその役目を譲っている。艦首の観測ブリッジも右舷側に移った艦橋に機能を統合されて廃止されている。その艦橋もブラビレイとは異なり舷側に張り出して視認性を高めており、無人といいながら有人運用にも対応していることが窺える。エンジンブロックもブラビレイから変更され、艦尾下部から四層目の飛行甲板下部に移されている。それに伴って、艦首尾方向に貫通する飛行甲板は最上部の四層目と最下層となった。

「この艦は現在細部の設計に取りかかっている所だが、完成すればブラビレイに比べて建造費用でマイナス3万Gのコストダウンが望める。流石にサイズが半分では艦載機運用能力は落ちるがブラビレイにはあった長距離遠征に必用な機能を削ぎ落とすことで充分な搭載機数が確保されている。この艦に早苗のコピーAlと無人艦載機を搭載すれば、打撃力ならばヤッハバッハの空母機動部隊に匹敵するぞ!」

サナダさんは嬉々として解説を続ける。うん、やっぱりこの人マッドみたい。

「確かに強力な艦は魅力的だけど、今の私達には建造する資材も資金もないわよ?」

私がサナダさんに現実を突きつけると、サナダさんは真っ青な顔で私を見つめた。

「・・・艦長、そこをなんとか」

「ダメよ。建造は資金に余裕が出てからね。」

私がそう告げるとサナダさんは肩を落とした。この人は設計が完了したらすぐに作りたかったのだろう。だけど今は少し待ってなさいよ。

――でも艦自体の性能は中々、コストダウンしつつ高い能力で纏められているのは素直に凄いわね。有人運用するにしても、削った長距離航行能力は〈サクラメント〉の工作能力や〈高天原〉の娯楽施設で補える。一つの艦になんでも注ぎ込まずに用途を分けてコストダウンするのは中々良い発想だわ―――

サナダさんにはあのように言ったが私は内心ではサナダの能力に感心していた。いつかは戦力増強のために作ることになりそうだ。

「資金が貯まったら作るから、そんなに落ち込まないでよ。そろそろ地上に向かうんだから。」

エコー達が重装備を置いてきて戻ってくるのが見えたので、私はサナダさんを励まして、2人が戻ってくると再び宇宙港に向かって軌道エレベーターを目指した。

 

 宇宙港からまた垂直に走る新幹線に乗り、地上に降りた後、私達は真っ直ぐ0Gドッグ御用達の酒場へ向かった。基本的にヤッハバッハは0Gドッグの存在を認めていないので、酒場に来るのは密輸業で稼いでいる運び屋か、海賊の下っ端だと聞く。だが、ヤッハバッハに逆らって宇宙を旅する冒険者や0Gドッグ志望の人材が居ない訳ではない。私達が期待しているのはそんな人材だ。

 酒場が見えてきたので、私は一度深呼吸して気持ちを落ち着かせた。何せ初めての経験なので、どうしても緊張してしまう。

「じゃあ、入るわよ。入店後は各自行動ね。緊急時には端末で艦にも連絡して。」

「わかった。」

「「了解。」」

私は入店前に、サナダさんとエコー、ファイブスと打ち合わせ、酒場の門を潜った。

 酒場の中は、落ち着いた感じで纏められており、照明は薄暗い程度で、洒落た音楽が流されている。私は真っ先に酒場のマスターの前のカウンター席に腰掛けて、マスターに注文する。基本的に酒場のマスターはその宙域の情報に精通しており、情報を得たいならマスターに話を聞くのが一番だという。

「何でもいいから、お勧めを一杯、よろしく。」

「畏まりました。」

私の注文を受けて、マスターが酒を準備する。マスターから情報を聞き出すなら、ちゃんと注文しておくのは必須だ。酒場のマスターだって慈善事業でやってる訳ではないので、お金を落とさないと情報を教えてくれないからだ。

「どうぞ。」

私はマスターから差し出された酒を一口飲んで、話を切り出す。

「ところで、この辺りで宇宙に出たがってる骨のある奴とか居ないかしら?」

「おや、これはまた直接的に聞いてきますな。ええ、そうですね、この辺りだと、敗戦国から流れてきた元軍人なんかもちらほら見掛けますね。ほら、あそこの労働者風な彼とか。彼は元々戦闘機のパイロットだったらしいですよ。」

そう言ってマスターは、二人掛けのボックスに一人で座っている男を指す。男は茶色いジャケットとジーンズを履いて、茶色のベレー帽を被っている。いかにも工場帰りの労働者といった風格の男だ。

「ありがと。もう一杯お願いできるかしら?」

「これはどうも御贔屓に。」

私が礼を兼ねてマスターに注文すると、マスターは再びカウンターの奥に酒を取りに行った。こうやってマスターの気を引いておくのも情報収集には大切だ。場合によっては、さらに情報をくれる事もあるという。

「はい、どうぞ。」

マスターから、2杯目の酒が渡される。

「ありがとね。」

私はそう言って代金を払うと席を立って、酒のグラスを持ってマスターが教えた男の元に向かった。私は男の向かいの席に腰掛けて、まだ口をつけてない2杯目の酒を差し出す。

「なんだ、嬢ちゃんは。」

男は見知らぬ私を怪訝な目で見た。

「それは私の奢りよ。貴方、元軍人なんだってね。」

私は男の目を見て、話を切り出した。男はマスターを一瞥すると、「チッ」と舌打ちして再び私に視線を戻す。

「・・・俺はバーガー。フォムト・バーガーだ。言われた通り、国を亡くした元軍人だ。」

男は自分の名を私に伝える。

「私は博麗霊夢よ。0Gドッグで艦長やってるわ。」

私もバーガーと名乗った男に自己紹介する。

「へぇ、あんたみたいな嬢ちゃんがかい。そこら辺のコルベットで気を良くしただけじゃないだろうな。」

バーガーは軽く私を睨んだ。私の見た目では、まだ駆け出しの子供程度にしか見えないのだろう。

「確かに0G歴は浅いけど、コルベット1隻何てことはないわよ。巡洋艦クラスの船なら持ってるわ。それと、私は嬢ちゃんって呼ばれるほど子供じゃないわよ。」

私はむすっとしてバーガーに反論した。

「仕方ねぇだろ、見た目が嬢ちゃんなんだから。なんだ、合法ロリって奴か?」

バーガーが皮肉気に、にやにやしながら私をからかう。

「そうだと思ってくれて結構よ。少なくとも、酒が飲める年齢にはなってるわ。」

「そうかい。ところで、こんな話をするために声を掛けた訳じゃねぇだろ?」

バーガーは酒を一口飲んで、私に尋ねた。

「ええ、貴方が元軍人だっていうから、良ければうちのクルーにでもなってくれないかと思ってね。」

私は直接バーガーに用件を伝えた。

「・・・どれ、フェノメナ・ログを見せてみな。」

バーガーが私にフェノメナ・ログを見せるよう要求する。私は、バーガーに従って携帯端末にフェノメナ・ログを表示させた。

「ほぅ、新参にしては良くやっているな。ヤッハバッハの警備艦隊に喧嘩売って勝ってるとは中々だ。」

バーガーは私のフェノメナ・ログを見て、感心したように感想を述べた。

「どうかしら?」

私はバーガーに結論を訊いた。

「ああ、気に入ったぜ。いざって時にヤッハバッハと正面からやり合う根性は中々のものだ。良いだろう、あんたの提案、引き受けたぜ。」

バーガーは私の申し出を承諾し、握手を求めた。

「これから宜しくな、可愛い艦長さん。」

「ええ、宜しくバーガー。歓迎するわ。」

交渉が成立し、バーガーが新たにクルーに加わった。私達は酒を飲み干すとボックス席を立ち、手が空いているようだったファイブスにバーガーの案内を任せた。私は他にも人材が居ないか見て回りたいので、その事もバーガーに伝えておく。

「では、彼を艦に案内します。」

「よろしく頼むぜ。」

バーガーは、ファイブスに案内されて酒場を去った。その姿を確認すると、私は再び酒場に注意を戻し、全体を一瞥する。

 すると、カウンターの端に金髪の女性が、酔ってでもいるのだろうか、項垂れた様子で酒を飲んでいるのが目に入った。僅かに見えた女性の瞳は紅色で、左側の髪は赤いリボンで纏められている。服装は白黒の洋服だ。

 彼女の姿を目にした時、私はその名前を口にせずにはいられなかった。

「ルー、ミア?」

 

 

 

 

 

 私は、今日はいつもの店ではなく、わざわざこの0Gドッグ御用達の酒場に足を運んでいた。理由は単純、仕事が無くなったので0Gにでも雇って貰おうと思ったからだ。つい最近まで勤めていた会社は残業上等、16時間勤務、残業代?なにそれ美味しいのを地で行く超ブラック企業で、おまけにセクハラも酷い最悪の職場だった。再就職しようにも、こんな田舎では良い仕事も全然見当たらず、おまけに賃金も最低賃金より下回るところが多い。ヤッハバッハの航宙禁止法のお蔭で田舎が発展から取り残された結果だ。ならいっそのこと0Gにでも雇ってもらえば少なくとも今までとは違った生活ができる。そう踏んでいたのだが、誰も声を掛けてくる奴は居なかった。自分で言うのも難だけど、これでも容姿は良い方だと思う。血気盛んな0Gの1人や2人はナンパしてくると思っていたのだが、どうやら見当違いだったらしい。

 いい加減声を掛けられないことに苛立ってやけ酒していたところ、どこからか自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「ルー、ミア?」

確証はないが、恐らくそうだろうと、疑問形で自分の名前が呼ばれる。振り返って声の主を探すと、呆然と立ち尽くしている少女の姿が見えた。

「やっぱり、ルーミアよね。でも、なんで・・・」

少女は何か疑問に思うところがあったようだが、私は目の前の少女は記憶にない。

「私の名前を呼んだのはあんたかい?」

私は少女に声を掛ける。

「えっ、ああ、はい・・・そう、ですけど。」

少女は戸惑った様子で私の質問に答え、私が手招きするとこちらに恐る恐る寄ってきた。

 私は少女に隣に座るように促して、少女は私の左隣の席に腰掛けた。

「あんた、私の名前を知ってるみたいだけど、残念だけど私はあんたみたいな子を知らないんだ。私の名前、どこで知ったんだい?」

私は少女に疑問に思っていたことを問い質す。私には、目の前の少女のような黒髪で赤いリボンを着けた子は記憶にない。こんなに特徴的な容姿なら、覚えている筈だ。

「あの、貴女に良く似た人を知ってるんです。その人は見た目はまだ子供だったんですけど、成長したらきっと貴女みたいな容姿だろうなと思って・・・」

少女は私を呼んだ経緯を話す。

「そうなの。でも、子供の頃の私は別に有名人でも何でもないよ。」

「はい、その人は、貴女とは別人なんですけど、あまりに似ていたので・・・」

少女は言葉に詰まる。きっと、私によく似ているという人を思い出しているのだろう。

「それで声を掛けた訳か。名前まで同じなんて、こんな偶然もあるもんだね。まぁ、惑星1個に何十億も住んでる時代だから、こんなことも起こるもんかね。で、あんたは何ていうの?」

私は畏まった状態の少女の名前を尋ねた。

「霊夢・・・博麗霊夢です。」

少女は、自分の名前を私に伝える。

「霊夢か、いい名前だね。それと、そんなに畏まらなくても良いわ。こっちまで堅苦しくなる。」

「あ、はい・・・。」

私は少女――霊夢にリラックスするように言ってマスター話を続ける。

「ところで霊夢ちゃん、貴女はどうしてこんな所にいるんだ?」

私はこの0G酒場には不釣り合いな少女がいる理由を尋ねた。

「私は0Gドッグをやっているから、ここに良い人材が埋まっていないか探しに来ただけよ。それと、これでも酒が飲める年にはなってるんだから、ちゃん付けはよしてくれないかしら?」

霊夢が私の問いに答え、私の呼び方に文句を唱えた。

「それはすまないね。にしてもあんたみたいなのが0Gか。ちょっと話聞かせて貰えない?」

私の霊夢が0Gをやっているという話に興味を持って、詳しく話すように促した。話を聞くと、霊夢は少数のクルーと共にヤッハバッハから逃れて自由を求めているのだという。ついでにフェノメナ・ログも見せてもらったが、駆け出しで、ここらの田舎民にはヤッハバッハ圧政の象徴であるダルダベル級巡洋艦を血祭りに上げてるのも気に入った。この艦長の元なら、面白くやっていけそうな気がする。

「話は大体分かった。気に入ったよ、霊夢。クルーを探してるみたいだけど、よければ私もクルーにしてみるか?私としても雇って貰えるほうが嬉しいね。」

話を聞き終えた私は、霊夢に自分をクルーにしないかと提案する。

「分かった、貴女をうちに迎えることにするわ。」

霊夢は私の申し出を承諾して、私はめでたく再就職先を見つけることができた。

「じゃあ改めて自己紹介だ。私はルーミア・イクスヴェリア。これからよろしく、霊夢艦長。」

「こちらこそ、ルーミア。」

霊夢は差し出された私の手を握って、握手を交わした。

 

 霊夢と握手しながら、私は心の中で、まだ知らね0Gの生活に思いを馳せた。




今回でガミラス三段空母のフラグが建ちました。私が想像しているのはガイペロン級のランベアです。サイズは3倍位ですが。ヤッハバッハの艦は侵略のための長距離航海に備えて居住性が重視され、さらにダメコン等のために人を多く乗せていて、そのため艦が大型であると想像しているので、サナダの改ブラビレイ(ガミラス三段空母)はその部分を削って戦闘のみに特化させて小型化、コストダウンを図ったものと設定しています。
また、ヤマト2199から登場したバーガーですが、本作では人間として登場しているので肌は肌色です。ドイツ人みたいな見た目で、服装は映画でのホテルに閉じ込められていた時のものを想像しています。

ルーミアについてですが、彼女も人間として登場しています。見た目は大人のEXルーミアで長髪です。霊夢が彼女を見たときにあんな反応をした理由は、各自でご想像下さいw


また、今話からSW要素が薄れて様々な作品の要素が増えていくため、SWタグを外して多重クロスに変更します。主人公が霊夢で東方キャラがベースのキャラクターも増えたので、東方タグも追加します。

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