夢幻航路   作:旭日提督

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お船のゲームのイベントが始まったり、2月の下旬からバイトが入ったりするので投稿ペースが少し遅くなります。


第八話

 コーバス星系は比較的小さな星系で、M型主系列星(赤色矮星)の主星を中心として2つの岩石惑星と1つのガス惑星、そして無数の小惑星からなる星系だ。この星系は人類の居住には適さず、惑星をテラフォーミングしてもこのような辺境では利益がないため実行されていない。そんな星系内で、巡洋艦〈高天原〉は加速のために第3惑星の重力によってスイングバイを実行し、そのまま第2惑星へ接近していく。

 第3惑星を通過した〈高天原〉では、艦の統括AIである早苗がレーダーに不審な影を捉えていた。

《艦長、第2惑星の衛星軌道上に不審な反応を捉えました。》

異常を探知した早苗は艦長である霊夢に報告する。

「ここからだと反応の正体は掴めないか。早苗、偵察機は出せる?」

霊夢は艦の現在位置からでは異常の正体を掴めないため、艦載機により偵察を行うことにした。

「艦長、それならいい機体がある。F-17数機を偵察型のRF-17に改装しておいた。あれの探知範囲なら、相手が敵艦でも敵の探知範囲外から補足できる筈だ。」

霊夢の方針を受けて、サナダが新型偵察機の使用を進言する。

「ありがとサナダさん。じゃあ早苗、その偵察機を2機、該当宙域に派遣して。」

《了解です。》

霊夢の命を受けた早苗は、〈高天原〉の甲板上にある艦載機用のハッチを開き、2機のRF-17を発進させる。RF-17は、その名の通りF-17をベースとした偵察機で、F-17の背面に大型の回転式レドームを装備し、機体下部には大型の安定翼が追加されている。現在艦にはパイロットがいないので、艦載機はすべて早苗の制御下で稼働している。

《偵察機発進。接触まで10分ほどかかります。》

「敵の可能性もあるから、各員第2種警戒配備ね。いつでも戦闘に移れるように備えて。」

霊夢は敵の可能性を考慮してすぐに戦闘に移れるよう乗員に命じる。

「了解。」

コーディが席につき、主砲の発射準備を整える。

《艦長、敵の場合は直ぐに戦闘速度に移れるよう、機関の出力を上昇させます。》

「分かったわ。」

早苗は〈高天原〉が接触まで慣性航行で相手に悟られぬよう航行するが、いつでも戦闘速度に移れるように機関の出力上昇のスタンバイに入った。

 そして凡そ10分が経過し、偵察機から詳細なデータが送られてくる。

《反応の正体が判明しました。対称はブランジ級1隻、YT-100型貨物船が6隻。ですがIFFはヤッハバッハを示していません。》

早苗が反応の正体を詳細に報告する。YT-100型貨物船は100m級の小型貨物船で、船首にブリッジを持ち、両舷には翼状に配置された円形の貨物室が接続されている。船尾にはスタビライザーとエンジンを備えている。

「それって、対称はヤッハバッハじゃない、って事でいいのかしら?」

「ああ、それでいい、艦長。早苗、相手の拡大映像を投影してくれないか。」

サナダは霊夢の質問に答えると、早苗に相手の姿をメインパネルに投影するように命じる。

《はい。映像出力します。》

早苗がメインパネルに相手の姿を映し出す。そこには、衛星の裏側に隠れるように密集した船団の姿が映し出された。

「見ろ、このブランジ級は全体的に装甲の劣化が激しいだけでなく、ヤッハバッハ正規軍のものにはない武装や設備が搭載されている。輸送船も半数以上の4隻はエンジンを増設しているのが確認できるな。」

映像を見たサナダは、相手船団の特徴を解説する。

「この映像から判断する限り、相手は海賊の可能性が高い。正規の輸送業者の船ならあんな追加武装は普通は施さないし、第一こんな辺境星系を通らない。」

サナダは、映像と状況から、相手は海賊だと判断した。

「海賊ね。このまま進むと気づかれるかしら。」

《はい。このまま直進して第2惑星に接近した場合、相手船団のレーダー探知圏内に入るものと思われます。ここで転舵しても、慣性航行を中止して通常航行に移行する必要があるのでインフラトン反応が上昇し、相手に気付かれる可能性があります。》

早苗は霊夢に詳細に報告する。

「ここで叩いておくべきでは?艦長。」

艦橋に残っていたフォックスが進言した。

「交戦するなら、先に補足した此方から先手を仕掛けるべきだ。此方なら、艦載機隊を発進させ、アウトレンジから一方的に相手を攻撃できます。」

続いたコーディが、具体的な作戦案を伴って進言する。

「そうね、ここで叩きましょう。全艦戦闘配備。海賊船団をジャンクに変えてしまいなさい。」

霊夢は海賊船団と自艦隊の戦力を比較し、自艦隊が有利であると判断して戦闘準備を命じた。霊夢には、ここで海賊船団をデブリに変えることでジャンク品を回収し、艦隊運営費用の肥やしにしようという思惑もあった。

「了解。全艦戦闘配備に移行。」

 コーディは主砲のトリガーに指を掛けた。

《全艦載機、発艦します。フライトデッキ開放。偵察機はそのまま現宙域に待機させ、攻撃隊の誘導を担当させます。》

〈高天原〉は再び艦載機用のハッチを開放し、早苗が操る戦闘攻撃隊が発艦する。

《全艦載機発艦。接敵まで約15分です。》

早苗が報告する。

 攻撃隊はそれなりの規模なので、海賊船団は流石に気付いたのか次第に散開し、機関出力を上げて加速していく。攻撃隊は対艦ミサイルの射程に到達すると、一斉に海賊船団に向けてミサイルを放った。海賊船団は少ない対空火器で必死にミサイルを迎撃しようとするが、如何せん迎撃兵装が少ないため、大半のミサイルの着弾を許してしまう。ミサイル攻撃を受けた海賊船はあるものは爆散し、インフラトンの青い火球と成り果てたが、あるものは爆発により船体が千切れ、制御を失って漂流を始めた。さらに攻撃隊は混乱する海賊船団に突入し、レーザーやミサイルで海賊船の甲板上の設備を破壊していく。

《攻撃成功。改造輸送船4隻撃沈、2隻大破。ブランジ級も大破しました。》

攻撃が成功し、早苗が戦果を報告する。

「艦長、デブリを回収するにしても、まだ海賊の生き残りがいるかもしれん。〈サクラメント〉を突入させ、自動装甲歩兵部隊を送り込もう。」

サナダが提案する。自動装甲歩兵とは、対人戦闘用に開発された人形ロボットで、その外見は歩兵が着用する重装甲服に酷似している。

「分かったわ。〈サクラメント〉を突入させなさい。」

霊夢はサナダの提案を受け入れ、〈サクラメント〉を海賊船団のデブリに突入させるよう命令する。〈サクラメント〉は自動操縦で海賊船団の残骸に接近し、舷側のハッチから次々と小型の人形ロボットを射出していく。

「海賊の生き残りはどこか一箇所に集めさせよう。」

サナダは海賊の生き残りがいた場合は安全な箇所に集めるように自動装甲歩兵達に命令する。自動装甲歩兵部隊は海賊船の残骸に取り付くと、レーザーカッター等で外郭に穴を開けて突入していく。サナダはその様子をモニターを通して監視する。

「今のところ生き残りはいないようだ。」

サナダはモニターを監視しながら報告する。

「あれだけ派手にやったからな。」

コーディが海賊船の残骸を眺めて呟いた。

「ん、ちょっと待て。ここに何かあるな。」

 海賊船内を進んでいた装甲歩兵から送られてくる映像を眺めていたサナダが、気になる箇所を見つけたので装甲歩兵に調査するように命令した。装甲歩兵は命令通りにサナダが指示したドアを開放する。ドアの先の部屋は電気が落ちていたため、装甲歩兵はヘッドライトで部屋の中を照らした。そこには、幾つかの気密コンテナが積み上げられていた。気密コンテナに設けられた小窓を照らすと、中で白い何かが動いているのが確認できる。

「艦長、これを見てくれ。今映像をメインパネルに転送する。」

サナダは装甲歩兵から送られてくる映像をメインパネルに転送した。

「これは、動物か?」

映像を見た霊沙が呟いた。

「どうやらそのようだが、これがどうした?」

フォックスがサナダに尋ねた。

「この動物はアンドロメダモフジだ。アンドロメダ銀河の特定の惑星にしか生息しない希少な動物で、相次ぐ密漁と乱獲で絶滅危惧種に指定されている。こいつの特徴は毛玉に見えるほど全身白い体毛に覆われていて、両耳の間にに赤い嗅覚器官を持っている点だ。」

サナダは動物の説明をしながら、その動物の全体を写した写真を映像の横に表示した。

「さっきの映像ではこの箇所に特徴的な赤い嗅覚器官が見えるな。この動物はアンドロメダモフジで間違いない。」

サナダは映像を一時停止してその動物がアンドロメダモフジである証拠を示す。

「この海賊船団は密漁船だったって事か?」

コーディーが尋ねた。

「いや、ここはアンドロメダモフジの生息する惑星からは遠い。恐らく運び屋だろう。」

サナダがコーディーの質問に答える。

「珍しい動物なのは分かったけど、これどうすれば良いのかしら?」

霊夢は映像の動物を眺めながら呟いた。

「こいつらは絶滅危惧種の貴重な動物だ。幸いこの艦には本格的な自然ドームもあるから、保護して飼うのはどうだろうか?」

サナダが提案する。

「そうね、このまま置いといてもこの子達が拾われる保障はないし、うちで預かりましょう。サナダさん、コンテナをこっちに運んで頂戴。」

霊夢はアンドロメダモフジを自分の艦で保護することにし、モフジ達が入れられた気密コンテナを〈高天原〉に運ぶように命じた。

「了解した。コンテナは一度〈サクラメント〉に収容してから、〈サクラメント〉とドッキングしてこちらに運び込むぞ。」

サナダはコンテナを一旦〈サクラメント〉に運び込み、デブリの回収が終わると同時にコンテナを〈高天原〉に移すことにした。

 

 

  デブリの回収も終わり、現在〈高天原〉は〈サクラメント〉とドッキングして気密コンテナを運び出している。サナダ、霊夢、霊沙の3人は、このドッキングベイに来ていた。

  このドッキングベイには、作業を指揮するサナダと、あとはモフジが気になる私と霊沙が野次馬的に集まっている。因みに海賊船の生存者は確認できなかった。発見した遺体は宇宙葬に処してある。幾ら海賊とはいえ、遺体は粗末には出来ない。

〈サクラメント〉に繋がる気密室から、自動装甲歩兵が気密コンテナを押しながら乗艦する。コンテナのなかには、モゾモゾと動く白い動物が見えた。

「ではこいつらを自然ドームに運び込むぞ。」

サナダが装甲歩兵達に指示し、コンテナを艦内に運び込む。その様子を私は眺めていた。

「サナダぁ~、こいつら撫でてみていいか?」

コンテナの中を覗き込みながら、霊沙が猫なで声でサナダさんに懇願する。

「自然ドームに放すまで待っていろ。こいつらは別に逃げたりはしない。」

サナダは霊沙を適当に配って、作業を進める。

 自然ドームに到着すると、コンテナが開放され、モフジ達がドーム内に解き放たれた。写真で見た通り、モフジは体長約1mと大型で、全身手足が隠れるほど長くて白い体毛で覆われており、毛玉のように見える。顔は体に比べて小さく、両耳の間には天狗の帽子のようにも見える特徴的な赤い嗅覚器官がある。

「可愛いわね、この子達。撫でてもいいかしら?」

 私はサナダさんに撫でてもいいか訊いてみる。モフジ達は慣れない環境に戸惑っているのか、辺りをキョロキョロと見回しながら草を突っついたりしている。

「アンドロメダモフジは比較的温厚な動物だ。身の危険を感じない限りは人間を襲うことはない。」

サナダさんにそう言われて、私は近くにいたモフジを撫でてみる。毛並みはしなやかで、撫でるともふもふしている。椛の尻尾みたいな触り心地だ。モフジは「わふぅ~」という気持ち良さそうな鳴き声を出して地面に座り込んだ。

「おまえ、気持ちいいの?」

私はモフジを優しく撫でながら、モフジに尋ねてみる。モフジは「わふぅ~~」と鳴くだけだ。

「おお、もっふもふだぞ、こいつ。」

ふと霊沙を見ると、彼女は一匹のモフジに飛びついて抱きしめながら撫で回している。その表情はとても気持ち良さそうだ。

「おい霊沙、その辺りにしておかないとそろそろ・・・」

 サナダさんが何か言いかけたとき、霊沙が抱きついていたモフジが突然ぶるっと震えて霊沙を振り落とし、毛並みを逆立たせながら「がるるるるる」と威嚇するような鳴き声に発して霊沙を睨んだ。何が起こったのか分からずに振り落とされた霊沙は尻餅をついて「いてて・・・」と呟きながら起き上がる。

「君がいきなり抱き付くから、驚いて怒っているな。モフジは刺激に弱いから、気を付けろ。」

サナダさんはモフジの気性を説明して霊沙を窘めた。

「わ、分かったよ。ほらほら、私は恐くないぞー」

霊沙はサナダの忠告を受けて、今度はモフジにゆっくり近付いていくが、モフジは相変わらず「がるるる」と威嚇している。

「そんな不気味な刺青していたら、誰も近付かないわよ。」

そんな霊沙を見て、私は彼女をからかってみる。

「なっ・・・オマエに言われる筋合いはないぞ!」

霊沙は顔を赤くして大声で反論するが、その大声に驚いたモフジが「わ"ふ"ぅ"っー」と吠えながら霊沙に飛びついて押し倒した。

「お、オマエ・・・いきなりどうしたんだよ!」

霊沙はいきなり飛び付いてきたモフジに驚いて、モフジを引き剥がそうとする。

「ひとつ言い忘れていたが、モフジは肉食だ。こんなこともあろうかとドックフードを艦に積み込んである。」

ここでサナダが霊沙にモフジの食生を教える。

「そのモフジは襲われる前に君を食べてしまおうと思っているのかも知れないな。」

「何ッ!おいオマエ、私は美味しくないぞ!離れろ!」

霊沙は必死にモフジを振りほどこうとするが、モフジの力が強く、一向に振りほどけない。

「わ"ふ"ぅ━━」

霊沙は抵抗を続ける。モフジは暫くすると、霊沙の上から降りて地面に座り込んだ。

「ふむ・・・どうやら君が自分にとって危険な存在ではないと分かってもらえたようだな。」

「ふぅ、た、助かった・・・」

霊沙は体についたモフジの毛を払いながら、立ち上がって一息ついた。

「今度からは気を付けなさいよ。」

私は先程の惨状を見て霊沙に忠告していく。

「ああ、分かった。次は驚かせないように気をつけるよ。」

霊沙は私の忠告を聞き入れて、踵を返して自然ドームから立ち去っていく。

「さて、我々も戻るとしよう。」

「そうね。もう少しでワープの予定地点だから、私も艦橋に戻らないとね。」

モフジが落ち着いたのを確認すると、サナダは自動装甲歩兵に空のコンテナを持ち帰るように指示し、私も自然ドームを出て艦橋へ戻ることにした。

 

 

《艦長、間もなくワープ予定地点です。周囲に異常は認められません。》

 海賊を撃破し、デブリの回収を終えた〈高天原〉と〈サクラメント〉は、星系の主星である赤色矮星を通過して、ワープ予定地点に差し掛かりつつある。早苗は、ワープを実行するに当たって、周囲に障害がないことを報告した。

「ならさっさとワープしてしまいましょう。総員、ワープに備えて頂戴。次の目的地はイベリオ星系、第4惑星軌道付近の宙域よ。」

私はワープの目的地を告げ、乗員にワープに備えるように命令する。艦橋の乗員は命令を受けて、ワープに入るときの加速に備えるために席についた。

「艦内に異常なし。機関出力、ワープ可能領域まであと5%だ。」

サナダさんが艦内の状況を報告する。

《機関出力100%に達します。間もなくワープ可能です。僚艦もワープ準備完了しました。》

私は機関出力がワープ可能に達するまで待ち、ワープ準備完了の報告を受けて号令を発する。

「ワープしなさい。」

《了解です。》

〈高天原〉と〈サクラメント〉は、イベリオ星系を目指すため、再びハイパースペースに飛び込んでワープに入った。

 




もふじもふもふ。椛ちゃんの尻尾もふもふしたいです。

もふじは東方のキャラ、犬走椛の二次創作キャラです。本作のモフジは、外見はこのもふじですが、ある惑星に生息する希少な動物と設定しています。

今回は無限航路の醍醐味、海賊狩り回です。無限航路の海賊はプレイヤーの資金と名声のためにひたすら狩られる運命にあります。南無。私も少年編でグランヘイムを作るためにカルバライヤでダタラッチ艦隊を狩り続けました。面倒でしたね。ひたすら同じ航路を行き来するのは。ですが少年編のうちにランカーになれば大マゼラン製の戦艦でヒャッハーできます。シルグファーンもダウグルフも怖くないぜ!(但しグランヘイムだと青年編の最初のとあるシーンが酷いことになりますw)

今回登場したYT-100型貨物船は無限航路でトスカさんのデイジーリップのモデルになった艦という設定です。型式番号は捏造です。

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