ラブウィザード! 〜希望の柱〜   作:しょくんだよ

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降臨、満を持して、、、どもです(ぺこり)


第46話 危険なアルバイト

前回のラブウィザ!〜

レギオンの能力で魔法の力の源『ウィザードラゴン』が

消滅し、魔力を完全に失った操真晴希は

μ'sのメンバーや二藤攻大の励まし、そして

諦めない強い思いが奇跡を生み、

晴希は魔力を取り戻し、

ウィザード インフィニティへと進化を遂げた。

 

そして、レギオンの脅威から数日、、

μ's達は次のステージへと移行する。

それは……

 

 

 

ーー部室ーー

 

 

 

 

 

 

「うぅ…いよいよだね…!」

 

「うぁー!心臓が今にも飛び出しそうだよぉ!」

 

「終わりましたか?終わりましたか?終わりましたね?」

 

「まだよ、海未。」

 

「っ!誰か答えてくださーいっ!」

 

「静かに。それじゃ聞こえないじゃない。」

 

パソコンのあるサイトを小泉花陽が開き

周りのメンバー達はあたふたと騒いでいる。

海未に至っては耳を塞いで現実逃避だ。

そう、今部室にいるのは操真晴希こと俺たち

『μ's』が予選通過の4位内を突破しているかの結果待ち。

そして発表が今日この時間に結果発表と来たもんだ。

ちょうど休み時間を挟んでなので

即、メンバーは部室に集まり、この状況ってこと。

 

「ったく、みんな慌てすぎじゃないか?

もっとリラックスにしとこうぜ。」

 

と言って(若干)震えながら唯一椅子に座っている俺は置かれてるコーヒーをすする。

 

「そうやね。晴希の言う通りや。

ちなみに、カードによると…。」

 

「うわわわ!希ちゃん!聞きたくないよ!

晴希君もそんなリラックスとかできないからっ!」

 

残念そうな顔をする希に高坂穂乃果は止めに入り

緊張が原因か俺も怒られてしまう。

ふむ、一応自分でも分かるくらい震えてるんだけど…。

 

「晴希。緊張してるよね?」

 

向かい側に座っている奈々城コヨミに感づかれる。

この前のファントム(レギオン)の件から

コヨミは俺の事を呼び捨てに呼ぶようになった。

嬉しい気持ちもあるが、小っ恥ずかしい。

俺は頬を赤めらせ小さく「ん。」と頷く。

 

「あ!出ましたっ!!」

 

この花陽の一言にメンバーは一斉に

パソコン画面へと顔を持っていく。

当然座ってた晴希とコヨミもだ。

 

「最終予選通過のチーム。

一位は…A-RISE。2位は…イーストハート。」

 

A-RISE…。まあ当然と言うべきだ。

秀夜がいる事も考えるとなんか負けた感があって

少し悔しいが…。

続いて2位のイーストハートも名を知らない人は

ほとんどいないほどのチーム。どちらも強敵だ。

さて、残すはあと2枠…。

 

「第…3位は……ミ……。」

 

 

「「「「「「「ミ?」」」」」」」

 

 

「ミ、ミッドナイトキャッツ…!」

 

『ミ』。頭文字を聞いただけで皆は

パソコンの画面へと寄せ集まるかのように

釘付けになってしまうが、

またしても違う有名グループで俺たちは軽く崩れ落ちる。

残すはあと1枠…、正直心臓がもたない。

 

「第、4位……。

ミ、ミュー……。」

 

「「「「「「「ミュー?」」」」」」」

 

そんな一瞬も与える間も無く、花陽はマウスを

スクロールし、再びメンバーは目を揃えて画面へと視線を寄せる。スイッチが入った花陽は

こんな状態なのに落ちついて…ないな。

目が血走っているぞ。

いや、そんな事より…頼む。

通過してくれ…!

 

「…ズ。」

 

「えっ?」

 

「ミ、μ's…。音ノ木坂学園高校!μ'sです!」

 

花陽が声を上げる目先の画面の中には

確かに第4位、μ'sとメンバーの9人が

揃っているのが写ってあった。

 

「μ'sって…私達だよね…?

石鹸とかじゃないよね…?」

 

「当たり前でしょっ!」

 

「その下りいつまでやるのかな??」

 

確かめる穂乃果だが真姫とことりにつっこまれてしまう。

全く、いつぐらい前のボケだ。

いやいやいや、そんな事はどうだっていい…。

第4位に入ってるって事は…。

 

「凛達、合格したの…?」

 

「予選を突破した…。」

 

「みたい…だね。」

 

凛、絵里、こよみと続いて画面を見ながら呟く。

俺も軽くほっぺをつねる。うん、痛いから夢じゃない。

てことは…。

 

「は、晴希君…!」

 

「あぁ、お前ら…。

予選通過したってことだっぶぉっ!?」

 

そう言った瞬間、穂乃果達は声を揃えて

やったー!と喜び、穂乃果は俺に抱きついてきた。

予選通過。日本の百といるラブライブの

グループの中から4位以内に入れたのだから

これは喜ばずにいられないわけがない。

 

「やった!やったよ晴希君っ!」

 

「お、おうっ!よくやったなみんな…!」

 

「あっ!そうだ!クラスのみんなにも言ってくるね!」

 

「凛達も知らせに行くにゃー!」

 

「あ!凛ちゃん待って!」

 

抱きついてきた穂乃果はバッと俺から離れ、

急いで部室から飛び出し、後に続くように

凛やことりたちも出て行く。ま、まぁ急に

飛びつかれたら誰だってびっくりするよな…。

さて、残されたのは俺とコヨミ、

あとずっと耳を塞いでいる海未だ。

 

「海未、海未っ。」

 

「終わりましたかっ、終わりましたかっ?」

 

「海〜未〜っ…。晴希…。」

 

コヨミは必死に呼びかけ肩を揺らすが

まだ現実逃避している海未にコヨミは目線を

俺に向けしんみりとした声で見てくる。

時期に元に戻るさ、と言わんばかりに俺は首を振った。

すると、突然校内放送の音が聞こえ俺とコヨミは

天井を見上げた。

 

『お知らせします。

たった今、我が校のスクールアイドル

「μ's」が予選を通過したとの報告が入りました。

繰り返しますーーー』

 

これは放送部の人かな。

仕事が早いな。恐らく放送部と仲がいい

真姫が知らせたのだろう。

放送が終わると耳を塞いでいた海未も聴いてたらしく、

俺とコヨミに満面の可愛いらしい笑みを見せる。

本当、みんなよくやったな。

 

「晴希、スマホなったよ?」

 

「え?あぁ、本当だ。」

 

俺はスマホを取り出すとライン通知が来ていた。

相手は絵里だ。

 

『さっそく練習するわよ。

まだ私達にはやることが残ってるんだから。』

 

と、書かれていた。

そうだ、俺達は通過しただけ。まだ終わっちゃいない。

海未とコヨミにも伝え、俺たちはすぐに屋上へと向かった。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

ーー音ノ木坂学園 屋上ーー

 

 

「最終予選は12月中旬。

そこで、ラブライブに出場できる一チームが決定するわ。」

 

「これを勝てば、念願のラブライブやね。」

 

「でも、A-RISEに勝たなくちゃいけないなんて…。」

 

屋上へと到着し、メンバーは練習着を

ドレスアップリングで着替えると

絵里、海未、晴希を中心とした打ち合わせが始まる。

次のライブまで1カ月ちょっと。

これに勝てば希の言う通り、ラブライブに出場。

だが、花陽の言う通り、あのA-RISEに

勝たなくちゃいけない。

不安やプレッシャーに襲われるのも無理はないだろう。

 

「今を考えたってしょうがない!とにかく頑張ろう!」

 

さすがリーダー。穂乃果の言葉には自然と自信が湧いてくる。

勿論、俺以外のメンバー達もやる気を出していた。

 

「その通りです。そこで来週からの朝練を

1時間早くしたいと思います。」

 

「ええっ!?凛、起きれるかな…。」

 

「この他に、日曜は基礎のおさらいをします。」

 

今まで6時集合が来週からは5時には集合、

そして日曜も基礎のおさらいか…。

おぉ、これはゲームとかしている

暇がなくなってしまう…。いや、我慢だ。

 

「練習は嘘をつかない。

でも、闇雲にしても意味がない。

質の高い練習をいかに熟せるか、

ラブライブ出場はそこにかかっているわ。」

 

絵里はそこで一旦区切ると俺にちらりと目を向け

軽く頷く。久々に真面目な絵里を見た気がするのは

黙っておいて、俺は一歩前に出て穂乃果達を見渡す。

 

「相手は経験を積んで来た強豪チーム。

だけどそこに並ぶ事ができたお前達の実力も本物だ。

ここで頑張らなければ、今までの苦労が水の泡だ。

みんな、最後まで諦めず必ず出場するぞ!」

 

言い終わると返事や掛け声はバラバラだが

一致団結したことには変わりはない。

ここまでこれたのも練習や励まし、苦労苦難を互いに支えあったからだ。

神田明神で誓ったんだから、絶対優勝を目指したい。

 

「よぉしっ!さっそく練習を始めるよー!」

 

「待ってっ!」

 

やる気を見せ、全員は

おーっ!と言おうとしたのだろうが、

ことりの一言でそれは消される。

 

「にこちゃんと攻大君は来てないの?」

 

「あ、にこっちもこうっちも、

今日は早めに帰ってたで?」

 

「大事な時に、呑気ねあの2人。」

 

「おやおやぁ?真姫ちゃん嫉妬かにゃー?」

 

「ゔぇっ!?違うわよ!意味わかんないっ!」

 

確かに、部室の時も来てなかったな。

一応今日は予選通過の結果発表だ、って事は事前に

伝えていたから見てくれてるとは思うんだけど。

 

「しょうがない、誰だって用事はあるさ。

よしっ!じゃあ練習を始めようか。

準備運動からお願いしまーす。」

 

俺の言葉に穂乃果達ははいと答え、

各自二人組み、余ってしまった海未はコヨミと組み

いつもよりハードな練習が始まった。

それにしても、攻大とにこは何をしてるんだろ?

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

市街地にて。

ーワイワイきゃんぷ広場ー

 

 

「うっへへへいっ♩

玉ねぎちゃーん〜。」

 

平日のこの時間帯でキャンプをする人は

キャンプ好きな人かこのマヨラーしかいない。

スーパーの買い物袋から二個ほど玉ねぎを出し

皮むきを終え水で軽く洗うと、二藤攻大は

折りたたみ式の机の上に木のまな板を設置し

その上に玉ねぎを置く。そしてザクッザクッと

端と端の部分を切り、ぶつ切りに玉ねぎを切っていく。

 

が。

 

ザクッ

「うおっ!?」

 

ザクッ

「ぅぁぉっ!!い、いてぇっ!

いてぇよぉっ!!」

 

途中で包丁を置き目を抑える攻大。

このままでは切りづらいと

思ったのかリュックからあるものを取り出す。

どこにでもなある百均の水中ゴーグルだ。

 

「快調快調〜!へっへっへぇっ!

待ってろ玉ねぎ野郎っ!焼いたら

マヨネーズぶっかけて喰ってやるからなぁ。」

 

と、楽しげに独り言を言いながらある程度の

大きさに切り終えるとすでに切っていた

肉、人参、かぼちゃなどが入ったボウルを取り出し

鉄の串に順番に肉、野菜、肉、野菜と刺していく。

そして彼の背後にはパチパチと炭に火が通ってある

バーベキューコンロ。

 

「具材たぁっぷり!栄養満点!

早めに帰って特売日を狙って買って正解だぜえ!

予選通過と晴希の魔力も戻ったことで!

(1人)バーベキューパーティーぃ!

今回の為に超高級なマヨネーズを用意sっ」

 

ワイワイとはしゃぐ18歳の少年。

串を持って網の上に置こうと振り返った瞬間だった。

まな板の上に置いてあったサラダ油の缶に

振り返った肘にあたり、缶は宙を舞い、見事に

バーベキューコンロの網の上に落っこちる。

 

「ぁああああっ!!やばい爆発する!ぅ…?」

 

慌てて串を置いて逃げようとするが

数秒経ってもなにも変化が起こらない。

 

「何だよぉ、びっくりさせんなってーーー」

 

 

 

ドォオオオオオンッッッ!

 

 

 

その瞬間。

缶が溶け、大量の油が炭に浸ると

漫画でありそうな大爆発が起き、

攻大はその爆発を諸に受け豪快に巻き込まれる。

 

「ぶっほっ!ぶへえっ!?ゲホゲホっ!

…あぁああっ!!俺の肉がぁあ…!」

 

頭はアフロ、服や体は黒焦げ、そして

持っていた肉や野菜は全て真っ黒に焼けてしまい

食べられたものじゃない状態になってしまった。

当然攻大はがっくりと膝が堕落し落ち込む。

と、そこへこちらへと走ってくる

女子高生らしき人が見える。

 

「ちょっ!?あんた攻大!?何してんのよ真っ黒じゃない!」

 

「え?お、にこちゃんっ、うっす。何してんだ?」

 

「なぁに呑気に挨拶かましてんのよっ!

あぁーアンタ服とかもぼろぼろじゃないっ!」

 

やってくるなり怒ってきたのは矢澤にこだ。

バーベキューの爆発で駆けつけたのだろう。

すると、やはり爆発音がでかかったのか

通りかかっていた人達の声が聞こえてくる。

にこはそれを見て あぁもうっ! と何かを決めたように目を大きく見開き、手に持っていた買い物袋を置いて周りを片付け始める。

 

「ほらっ!ぼーっと突っ立ってないで片付けて!行くわよ!」

 

「い、行くってどこへだ?」

 

「に、にこの家よっ!」

 

「ぇえっ!?にこちゃん家!?いや、でも悪いなぁ…。

いやいや、でも行ってみたいかもしれないし…

いやいやいや、、」

 

「うるさいわね!早くしなさいよっ!

来るのっ?こないのっ!?」

 

「あっ!は、はいっ!行きますっ!」

 

にこに言われるがまま、慌てて準備を始める攻大。

ゴーグルを外すと目の部分だけは

黒焦げになってないため、その顔を見たにこは

思わず笑いそうになっていた。

攻大とは出会ってまだ半年も経っていないが

彼、そして晴希と出会って色んな事が起きた。

にこにとっては彼らを特別な

存在だと思っているかもしれない。

 

「…!ほ、ほら、準備出来た?早く行くわよっ。」

 

「えっ!?ちょっ!まだできてないっつーの!

にこちゃん!おーいっ!」

 

何を考えたのかにこは頬を赤らめて

片付け途中の攻大を置いて、スーパーの袋を持つと

そそくさに歩き出す。

攻大も急いでリュックの中に物を詰め込むと

後を追いかけて行った。。

 

そして、それを木の陰から睨みつける視線もまた然り。

 

「………。」

 

「なぁにしてるの?ミーサちゃん?」

 

「っ!グレムリン…、タキシム…。」

 

後ろから狙うつもりだったのだろう。

メデューサの右手にはグールの魔法石が握られていたが

面倒な奴が来たと言わんばかりにそれを隠し、

タキシムとグレムリンことソラから目を背ける。

 

「何勝手な事してるの?…もしかして、

ワイズマンの言ってた事、もう忘れちゃった?」

 

「…。」

 

 

『メデューサ、タキシム。

今日から彼の指示でゲートを絶望させろ。』

 

 

無論、忘れるわけがない。

忠誠を誓っているワイズマンの言うことは

何が何でも絶対、それがメデューサの指名なのだろう。

だが、、、

 

「僕がぁ、ミサちゃんに指示を

出すはずじゃなかったっけー?」

 

グレムリン(こいつ)にだけは、

上から見られたくないのだろう。

そもそもなぜグレムリンがワイズマンに

選ばれたのかメデューサの

頭の中はその疑問と困惑でいっぱいだった。

能力も強さも、知識もグレムリンを凌いでるはず。

 

「…ゲートを見つけられるのはこの私だけだ。」

 

「わかってるよ。だから

協力してもらいたい事があるんだ。

ミサちゃん、それに滝川さんに。

…僕の大切な部下としてね?」

 

「!?私が部下…!?」

 

「そうだよっ。」

 

驚くメデューサに笑みを浮かべるソラは

彼女に近づくと左手を掴みあげる。

すると、あろうことか食べていたガムを口から

取り出し、メデューサの左手に置いて握らせたのだ。

 

「ちゃーんとゴミ箱に捨てといてね?フフッ!」

 

「…!!言わせておけば…!」

 

流石のこの行動に堪忍袋の尾が切れたのだろう。

メデューサはソラに反撃しようとすると

先程から黙っていたタキシムがメデューサの

肩を掴み止めに入る。

メデューサは睨みつけるが、タキシムは

抑えろと言うような目付きで小さく首を振る。

メデューサはソラから一歩下がると

ソラは笑いながら振り返り歩き去って行く。

 

「…タキシム。なぜ止めた?」

 

「これはワイズマンの意思。

例え上が誰であろうと

我はワイズマンの命令は絶対だ。

お前もそうだろう、メデューサ?」

 

「……えぇ、そうね…。」

 

タキシムの言葉に怒りはなくなったと思えるが

彼女の握られた左手は中のガムを御構い無しに

潰れるほど握り締められていた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

ーー矢澤家ーー

 

 

「いいっ!?今日起きた事は絶対!

メンバーには内緒よっ!?

もし喋ったらあんたのベルト海に投げ捨てるからね!」

 

「ひぃっ!?それだけはご勘弁をっ!」

 

にこに連れてかれ、やってきたのは

秋葉原のどこにでもあるマンションだった。

攻大の命でもあるベルトを投げ捨てるなどと言われ

ビビってしまう攻大。そんな事を言うのだから

よほど知られたくないのだろう。

念には念を入れられ、ようやくにこは自宅の鍵を開け、中へと招き入れる。

攻大は恐る恐る中へと入るが、それはほんの一瞬だ。

晴希の住んでいるマンションよりかは

言っては悪いが狭い。が中はどこにでもある

家庭的な家具の揃ったマンションだ。

リビングの椅子に座れと言われちょこんと座ると

にこは買い物袋を机に置き、別の部屋へと行く。

洗濯機がチラリと見えたのでおそらく洗面所だろう。

すると、入れ違いに別の部屋から

1人の小さな男の子が現れる。

鼻水を垂らし手にはおもちゃの

ぴこぴこハンマーが握られている。

いや、そんなことより、この子の顔付き、

にこにそっくりだ。おそらく弟だろうと攻大は察した。

 

「ほら、これで顔拭きなさい。」

 

「おねーちゃーん…。」

 

「あ、虎太郎。ただいま、いい子にしてた?」

 

「にこちゃんの弟か?」

 

「そ、弟の虎太郎よ。ほら、挨拶は?」

 

「……。」

 

虎太郎の頭を撫でるにこに顔を拭き終えた

攻大が尋ねると虎太郎はジッと攻大を見つめる。

そして。

 

「おねーちゃんの、かれし?」

 

「えっ!?」

 

「ばっ!?ちょっ!ち、違うわよっ!

どこでそんな言葉おぼえたのよっ!?

ち、違う違う!あれは、マヨネーズ大好きな

マヨネーズお兄さんなの!ほら、お姉ちゃん

いつも言ってるでしょっ?」

 

「ちょいちょい、にこちゃんっ。

お前弟に何を教えてんだーーー」

 

「…まよらー。」

 

「ンー?どこでそんな言葉覚えたのかな虎太郎君ー?」

 

いきなりそう聞いてくる虎太郎に攻大は驚き

にこは顔を真っ赤にして誤魔化そうとすると

虎太郎は何か思い出したのか若干笑いながら

攻大に指を指す。

 

「ほ、ほら。お菓子上げるから、

あっちの部屋でいい子にしてなさい。」

 

「…うんっ。」

 

にこは買い物袋から小さな袋菓子を取り出し

虎太郎に渡すと、虎太郎は目を輝かせお菓子を手に

小さな歩幅でトテトテと入ってきた部屋へと戻る。

所詮は子供、お菓子を前にしたら言う事は絶対…みたいだ。

 

「いやーしかし。にこちゃんに弟がいたなんてなぁ。」

 

「あんまり人の家をジロジロ見ないで。

後2人妹がいるわ。どちらも遊びに行ってるけど。」

 

「へぇ〜。あ、そうだにこちゃん。

予選通過のやつ見たか?」

 

「当然よ。ま、このにこが居れば当然の結果ね。」

 

「へ、相変わらずの自信だなぁ。

でも、何で今日は休んだんだ?」

 

「それは、…これ見ればわかるでしょ?」

 

と、言われにこは持っていた買い物袋に指をさす。

秋葉原にあるスーパーで攻大も

このスーパーにはよく行く。それに今日は

ここの店で高級お肉が安売りで2525円の特売日!

それで今日は練習を休んでバーベキュー!

…ん?

 

「あっ。もしかしてにこちゃんも?」

 

「そうよっ。さっきのキャンプ広場で

あんたも同じスーパーで買ってた肉で

バーベキューしてたでしょ?」

 

まさかにこちゃんもここの店の特売日を

知ってるなんて、と驚く攻大。

すると、不意に攻大はふっと笑ってしまう。

 

「ちょ、何がおかしいのよ?」

 

「いやいや、皆まで言わなくていい。

買い物の中身見れば何となくわかったぜ。

あの虎太郎や妹達の為に生活してんだろ?

優しいなって思ってつい笑っちまった。」

 

攻大の笑顔ににこは頬を赤らめそっぽを向く。

買い物袋の中身はどれも半額や値引きの品でいっぱいだ。

両親の姿を見ないところ、おそらくにこが

しっかりしているのだろう。でないとこの買い物や

特売日のことなどまず考えないはすだ。

 

「生活、大丈夫なのか?」

 

「…あんまり言いたくないけど、正直大変よ。

両親はマ…母親だけで、生活費はかつかつ。

私もバイトしてるけどそれでもやっとよ。」

 

「…そうか。何だったら俺がーー」

 

「同情はいらないわよ。」

 

「はい、すいません。」

 

攻大も元は転生した人間。神からもらったお金が

まだまだ使いきれないほど持っている。

彼自身も生活費のやりくりが得意な方なので

使い切ることなんてまずないだろう。

それを踏まえてにこに寄付しようと思ったが

秒で断られてしまう。

家事もして、μ'sもして、兄妹のために生活をして、

もしかしたら一番苦労しているのはにこなのかもしれない。

攻大はそう考え、同情してしまったのだろう。

それを見て ふぅ、と息を吐くにこはポケットから

一枚のチラシを取り出した。

 

「ま、アンタの助け舟なんて要らないわ。

いいバイトを見つけたんだからっ。」

 

「え?何だよ…。1日百万?

あー百万ね。はいはい えぇええええっ!!?」

 

「ちょっ!虎太郎いるんだから静かにしなさい!」

 

にこから渡されたのは金色の目移りが悪いような

輝きを放つ一枚の紙。そこには1日百万と

膨大な額の日当が書いてあるバイト募集のチラシだった。

攻大が目を見開いて驚くのも無理はないだろう。

 

「いやいやいやっ!これはありえねえだろ!

絶対詐欺だっ。行かない方がいいに決まってる!」

 

「そうかも知れないわ。でも!

行ってみる価値はある!攻大!アンタも今日

練習休んでるんでしょっ?」

 

「お、おう。そうだけどよ…。」

 

「なら!アイドルにはボディーガードが必要よ

!」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

ーーー音ノ木坂学院 屋上ーーー

 

 

「はぁーっ、今日は一段と疲れたあ…!」

 

「お疲れ様、穂乃果ちゃん☆」

 

「これくらいで根を上げたら後が辛いぞ?」

 

練習を終えた俺たち。まず一番に座り込んだのは

リーダー穂乃果だ。まあ、途中でひいひい言ってたし

予想はしていたが。

 

「晴希君、こうっちと連絡はとれた?」

 

「一応。にこは?」

 

「ダメね、連絡一つもないわ。」

 

「そのうちくるんじゃないかにゃ?」

 

絵里はスマホ取り出すが様子を

見る限り何も来てないようだ。

凛の言う通り、そのうちくるだろう。にこだし。

と、その時。一風が俺たちをそよぎる。

練習後にこの風は心地よい。

ふと、そよ風が吹き、それと同時に晴希の顔は真っ暗になる。

皆が晴希を見ると一枚のチラシが顔に

張り付いているのが分かった。

 

 

「ぷはっ!何だ一体……え?」

 

「どうかしたのですか晴希?」

 

そのチラシを見て晴希は固まり、

覗き込んできた海未、花陽も驚愕していた。

 

「なになに、どうしたのー?」

 

「株式会社ファイナンスって所で、バ、バイトの募集、

1日で、、に、日当、、百万…ヒャクマン!?」

 

「「百万っ!!?」」

 

「ピイッ!?」

 

「ラーメンタベマクリニャ!?」

 

「ハラショーっ!?」

 

「嘘やっ!?」

 

硬直していた海未、花陽を除き、この場の全員が

その額を聞いた瞬間驚いていた。

…ちょっと真姫さん。なんで首かしげるの?

 

「こ、これ本当なの!?

え、百万でしょ…?欲しい服や食べ物買いたい放題…。」

 

「日本…!いや、世界中のラーメン食べ放題旅行…にゃああ。」

 

「こ、これだけあれば…えへへへぇ☆」

 

「…白米…食べ放題……!」

 

これだけの額だ。欲に忠実なメンバーが

次々と妄想を初めてしまい、ことりに至っては

不吉な笑みを浮かべている。

これは二度見してしまう額だが、

俺は馬鹿馬鹿しいと紙をくしゃくしゃにする。

 

「あっ!晴希君何してるのっ!?」

 

「バカヤロ、怪しすぎるだろどう考えても。」

 

「そうよ、こんな給料ありえない。」

 

コヨミの後に続き、絵里、希も頷く。

それでも物欲しそうに見つめる欲に塗れた穂乃果達。

ふむ、もうひと押しいるな。

 

「こんな給料だ、とんでもない仕事をするに決まっている。

…奴隷のように……、はたらかされる……だろおぉなぁ?」

 

「「「「っ…。」」」」

 

「精魂尽き果てるまで……仕事漬けにぃさぁれぇるぅんだぁ…。

ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ……。」

 

「「「「ひっ…!?」」」」

 

「もしかしたら…死ぬまでワシワシかもしれへんでぇ…!?」

 

「「「「きゃあーーーっ!?」」」」

 

俺、コヨミ、希と迫真の演技で脅してみたが

少々やりすぎたかな?でもこれでやろうとは

思わないだろう。

そして地味にノってくれた

コヨミにびっくりしたのは内緒な。

 

「……これだけあれば、合宿には困らず

設備なども整えられる、衣装もお金かからずに

済むでしょうし、余れば練習道具が買えーーー」

 

「「海未。」」

 

「はっ!な、何でもありませんっ!」

 

いかん。近くにある意味欲望塗れがいたわ。

片手を頭に押さえてため息を吐く晴希。

すると、街の偵察をしていた使い魔のレッドガルーダが

パタパタと俺たちの上空を飛んできたのだ。

 

『ーーッ!』

 

「…え?にこが…?」

 

「なになに?ガルーダちゃんどうしたの?」

 

「あ、いや。にこが変なビルに

入ろうとしているらしくて。

名前は〜、株式会社ファイナンス…?」

 

俺はガルーダに聞くとピィッと頷く。

株式会社ファイナンスってさっきのチラシの所だっけ?

ったく、練習休んでなにしてんだあいつ‥え?

 

「えっ!?にこちゃんもしかして!

チラシのバイトの面接行っちゃったの!?」

 

「な、何よそれ!意味わかんないっ!」

 

「ど、どどどどうしようっ!?」

 

この場の全員があっ!と思ったのだろう。

ま、まさか本当に面接に行くとは…。

 

「みんな、早く支度するわよっ。」

 

「ウチらでにこちゃんを止めななっ。」

 

絵里と希はそれを聞いていてもたっても

いられなくなったのか準備万端で

すぐに鞄を背負っていた。

そうだな。こんな所で働いたら下手したら

ラブライブ!や学校どころじゃないかもしれない。

 

「よおし!にこちゃんのあとをつけるよ!」

 

「がってんにゃ!」

 

「晴希、ドレスアップをお願いできますか?」

 

「了解。」

 

《ドレスアップ・プリーズ》

 

俺は海未に言われるがまま

ドレスアップリングを右中指につけ、

ベルトに当て、右手をメンバーのみんなに

向けると彼女らの真下に大きな魔方陣が現れる。

魔方陣がメンバーの体を通り抜けると

練習着から学生服へと衣装チェンジさせる。

よし、じゃあ行きますか。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

ー株式会社 ファイナンスー

 

 

「えっと…あ、あったわ!

ふぅん、意外とでかいビルね。」

 

「ちょ、本当に行く気かよにこちゃんっ。

ぜってー怪しいってここ…!」

 

「何よ意気地無しね!ここまで来たのなら

後戻りできないわっ。それともこのにこの

ボディーガードをしてるのがそんなに不満?」

 

「いやいやいや、そこは否定してないっつーの。」

 

手首を振りながら攻大は言うが

にこは鼻で軽くふんっと鳴らすとズカズカと

チラシを持ちながら先へと進み

攻大も何だかんだで気になり2人は中へと入って行く。

エレベーターでしばらく登り、目的の階へと到着すると

2人は驚いた。大勢の人が既に並んでいたからだ。

遅れを取るまいとにこも攻大を連れて並ぶ。

それから数分経つとなぜか扉がギィイと不気味な音と共に勝手に開かれたのだ。

先頭の人は驚くがすぐに中へと入って行き、

後の列もそれに続く。

中は何処にでもある普通の会議室の様な部屋で

パイプ椅子がいくつも置かれてある。

人々は椅子へと座りにこと攻大も腰掛ける。

 

「…別にあんたは下で待っててくれてもよかったのよ?」

 

「そんなわけにもいかねぇだろ。

不安すぎるし、にこちゃん1人じゃ心配だからよっ。」

 

「えっ…?」

 

攻大の言葉に驚くにこ。

と、話している間だった。

 

 

「みなさんこんにちわ…。

ぼちぼち面接をはじめますかね…。

ふっふっふっふ…。」

 

 

出入り口のドアが開くと同時に黒のズボンに

黒のコートを来た男性が亡霊の様にスゥっと現れたのだ。

おそらく、この人が面接官だろう。

真っ青な顔で今にも倒れそうな感じの声で

男は啜り笑う。

その不気味さに面接する人達は

ほぼドン引気になり状態。攻大も気色悪いと

言わんばかりの引きつった目をしている。

 

「…!(こ、ここで先手取らないと、

アピールできないわっ…!にこ!頑張るのよっ!)」

 

にこは他の人達を見ながら自分に言い聞かせると

ガタンッと椅子から立ち上がり…。

 

「にっこにっこに〜❤︎

貴方のハートににこにこにー❤︎

笑顔届ける矢澤にこにこぉ❤︎

笑顔や元気なら誰にも負けませんっ❤︎

精一杯お勤めさせていただきます❤︎

どうか、よろしくお願いしますっ!にこっ❤︎」

 

「えっ?ちょっ!にこちゃん…?」

 

「あっ!は、はいっ!力仕事なら!

自分に任せてくださいっ!」

 

「は、はいはいっ!…ゲッチュ!ゲッチュ!」

 

にこのアピールに戸惑う攻大だが、その後に

我こそはと立ち上がり1人、2人とアピールをする人が続出。

すると、、

 

「…面接は以上です…。」

 

「え、はっ?…え、ぇえっ!?

ちょっと!まだ俺なんもしてねえっつーの!」

 

まさかの面接終了に周りの人はともかく攻大も

思わずツッコミをしてしまう。

面接官はまた不気味な移動の仕方で部屋から

出て行こうとすると、ふと、男性の後ろにあった

いくつもある鏡をチラ見する。

それを見た攻大は何か異変を感じたのだった。

 

 

☆☆☆

 

ー面接が行われたその隣の部屋ー

 

「なぜ、私がこんなことを…。」

 

その鏡の正体はなんとマジックミラー。

隣の部屋へと通じて、メデューサ、タキシム、ソラが

面接の様子を監視していたのだ。

ガチャン、とメデューサは小さなレバーを下げると

鏡は一瞬で普通の写し鏡へと戻る。

 

「なるほど…、面接と思わせて

ゲートをおびき寄せる作戦、か。

欲望に塗れた人間が手に取るように分かるぞ…。」

 

「ふふふっ!ね?ナイスアイデアでしょ?」

 

「…もういいだろ。」

 

嫌で付き合ってたのかメデューサは

呆れた顔で席を立とうとする。が、

ダーメと言いながらソラはメデューサの頭を掴み

無理矢理椅子へと座らせる。

 

「まだまだこれから何だからさっ。ハハハハハ!」

 

「グレムリン。その辺にしておけ…。」

 

「何言ってるの滝川さん。

まだまだこれからなんだからっ。

それに、僕はソラ、だからさ。」

 

メデューサの頭を押さえながら

高笑いするソラに当然メデューサは怒りの目を訴える。

軽く目をそらすタキシムだが、

その拳は怒りが煮えたぎるように強く握られていた。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

ーー株式会社ファイナンス入り口前ーー

 

 

 

 

 

 

「ここが株式ファイナンスか‥でかいなー。」

 

「‥今からでも面接は間に合うのでしょうか…。」

 

「「海未。」」

 

「はっ!?な、何も言ってません!

さぁ!にこを連れ戻しますよ!」

 

部活を切り上げ秋葉原に聳え建てられたビルへ足を運んだ

俺とμ’sのメンバー。さすが100万の日当だけあって

面接会場は立派な高層ビルだ。

とゆか、まだ海未は諦めてないのか‥。

止めるコヨミと絵里も疲れるだろうな。

呆れている顔が丸分かりだ。

 

「晴希、中にはどうやって入るの?」

 

「にゃー!ここは強行突破でーーー」

 

「待て待て。ここは俺1人で先に入る。

これだけ立派なビルだ。警備も頑丈だろう。

俺がにこを連れ出すからコヨミ達はここで待機。

何かあったら使い魔を通して連絡だ。いいな?」

 

先走る凛を止め作戦を伝えた俺は

凛の服を離すと同時に皆は了承、一部はぐちぐちと

文句を垂れるが気にせず、

俺はファイナンスの入り口へと入る。

 

「‥さてと。久々にコレ使うか。」

 

 

《スモール・プリーズ》

 

 

中はそれなりの立派な受付ルームとなっており

勿論警備員も数名いる。人目につかない死角へと

身を潜めた俺はスモールリングを指にはめ、

ベルトに当てると俺の身体は拳サイズに小さくなる。

 

「さて、どうやって行こうかな。」

 

小さくなった視野はまるで別世界。

見る物全てが大きく感じながらも上に上がる手段を探すが、

階段はこのサイズで登っていると日が暮れる。

となると、目に止めた矢先はエレベーターだ。

 

「‥あー!しんどい!このヤロ!

歩幅が小さいんだよぉ!」

 

嘆きながらでも晴希はエレベーターにたどり着き

偶然人が中から出て行くタイミングを見て

全速力で中へと入り込む。

息切れをしながらも魔法を解除し、元の大きさへと戻ると

面接会場がある階へと繋がるボタンを押し、

その場をやり退け、晴希は上の階へと上っていく。

 

 

 

ーーー

 

 

だが、それとはすれ違いに、、、

別のエレベーターから降りてきたのは

面接を終えたにこと攻大達だった。

 

「あぁー‥俺絶対落ちた‥。」

 

「なっさけないわねっ、あそこで何で自分を

主張しなかったのよっ。」

 

「いやあの面接の時間早すぎるっつーの。

‥でもよ、あの面接官、なーんか引っかかるんだよなぁ。」

 

「まあ、そう悲観的になるのも仕方ないわ。

ニコが受かったらお祝いに何か奢ってあげるわよ〜?」

 

「ぅるせ!まだ受かったわけでもないだろっ!

‥あっ、やっべ。携帯置いてきたかもっ。」

 

「はぁっ?ったくしょうがないわね。

先に出て待っているから早く取りに行きなさい。」

 

「わりいっ、サンキューっ。」

 

両手を合わせお礼を言いながら攻大は再びエレベーターに

乗り込んで行った。

 

 

 

ーーー

 

 

 

一方、ファイナンス入口前。

 

「晴希、大丈夫かしら?」

 

「よぉしっ!私も潜入して…!」

 

「ゔぇえっ!?ちょっ、穂乃果!?」

 

「だ、だめだよ穂乃果ちゃん!晴希君に

待てって言われたんだから待たないとっ!」

 

「にゃー!そうだよ穂乃果ちゃん!」

 

「そうですね、穂乃果の言う通りです。

‥やはり、私、私達も行くべきです!」

 

「ちょっ!?海未が1番行っちゃダメだよっ!

あ〜っ、こんな時にどうして

絵里と希はどこか行っちゃうのよぉっ。」

 

我先にと言わんばかりに穂乃果と海未は中へ入ろうとし、

それを止めることり、真姫、コヨミ。

晴希が入った後、絵里と希、海未は少し離れるからと言って

使い魔のクラーケンを連れてこの場を後にしたらしく

海未の袖を掴んで止めながら嘆いていた。

 

「‥でも、何でにこちゃんはこの高額なアルバイトに面接に行ったのかな‥?」

 

「1日100万ですよ?これを見てジッとしている人なんていますか?」

 

「え?そう?()()何とも思わないわ。」

 

いつの間にか落ち着いた海未の言葉に反応する真姫だが、

真姫の発言に皆は一瞬静まり返る。

 

「も、もしかして‥!彼氏‥!?」

 

「花陽。どうしてそこで彼氏が出てくるの?」

 

「いや、花陽ちゃんの言う通りかもしれない。」

 

「にゃ?穂乃果ちゃん?」

 

「にこちゃんは、きっと!悪い彼氏ができて

お金を貢いでいるんだよきっと!」

 

「「「「「えええっ!?」」」」」

 

驚く5人。にこが貢ぐ。いや、それより彼氏がいる事事態あり得ないと思う所だが、

もし彼氏がいたとしたら、人には話せない何かしらの理由があって

このファイナンスに赴いたのだろう。

だとすればここ最近の怪しい行動も少し納得をせざるを

得ない状況に考えを持っていかれる6人。

そして、戸惑う6人の目の前に、、、

 

 

「あ。」

 

「「「「「「あ。」」」」」」

 

 

ターゲット、にこが現れた。

 

緊張が走るこの空気。

話しかける、もしくは動くかでこの場は大きく左右する。

そんな雰囲気を放つが。

 

「っちぃ!何であんた達がここにいるのよ!?」

 

先に動いたのはにこだ。

入口に並ぶ6人と違う方角へ走り出し

捕まってはまずいと思ったのか

石の段差を、にことは思えないパルクールの様な動作で

飛び越え走り出す。

 

「あーっ!逃げたにゃー!」

 

「お、追いかけるよっ!」

 

「にこちゃん待ってー!」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

ーー株式会社ファイナンス 面接会場 ーーー

 

その頃、会場の中へとたどり着いた晴希。

既に終わったのか会場の中は間抜けの空だった。

 

「‥‥。誰だ?」

 

気配を感じ、俺は声を掛ける。

 

『バウッ!』

 

「何だ、操真か。」

 

「秀夜っ?‥お前が何でここに?ってかどうやって入った?」

 

「あ?窓から入ったが?」

 

飛んできたってか。ちくしょう俺の努力返せこの野郎。

 

「あ、さては100万のアルバイトか?やめとけ。

碌でもないバイトに決まってる。」

 

「ハッ、アホ抜かせ。俺がそんな面倒い事するわけねーだろ。

大体、転生した身だから金持ちくらいお前も分かってんだろ。」

 

秀夜の言葉に俺はそっかと軽く手を叩く。

俺達転生者は結構なお金を持って転生された身、

お金あればこんなとこ来るわけないもんな。

‥‥てことは。

 

「ファントムか?」

 

「あぁ、一日100万なんて都合のいい話あるわけねえ。

俺も気になってきてみたが、見事にビンゴだ。」

 

『バウッバウッ!』

 

秀夜の使い魔ブラックケルベロスが吠える。

ケルベロスはファントムの気配、人に擬態しているファントムを見分けられる少しずるい能力を持っている。

ケルベロスが吠えるのでファントム絡みは間違いないだろう。

だとしたら、にこがあぶないな‥。

 

「‥えっ?あぁっ!晴希に秀夜!?何でここにいるんだよ!?」

 

忘れ物を取りに来た攻大は、まさか晴希と秀夜に会うとは

思いもしなかったのか声を上げ驚く。

 

「あ?マヨネーズも来てたか。」

 

「攻大っ?ちょうどよかった。にこはどこだ?」

 

「えっ?に、にこちゃんならもう面接終わって下に降りたぞっ‥?」

 

「攻大、率直に言うぞ。この面接、ファントムが絡んでる。」

 

「はっ!?‥マジかよっ。」

 

ここに攻大以外の魔法使いが2人。

そうなれば理由なんていらない。

理解した攻大は何か思ったのか会場の奥にある鏡を見遣る。

 

「何か怪しいと思ってたけど、そこの鏡変なんだよ。」

 

「あぁ。ケルベロスもその鏡を見て吠え出した。

怪しい匂いがするってなぁ。」

 

 

「‥そう。この鏡はマジックミラーになっているの‥‥。」

 

 

入口から女性の声が聞こえ、俺達は振り返るとそこには

ファントムのメデューサがいた。

 

「っ!?ファントム!」

 

「あぁー!やっぱりファントム絡みかよぉ!

まあそんな上手い話あるわけねえか〜。」

 

「‥。マジックミラーだと?」

 

「そ。その鏡の向こうは小部屋で私が

面接に来た人間達の中からゲートを探していたの。

‥ちょうど1人いたわ。ツインテールの()()()。」

 

「っ!?にこが!?」

 

「!?」

 

「ほぉ、あのツインテールが。」

 

「早く助けに行ったほうがいいんじゃない?」

 

「あ?何だ、ファントムの癖に随分話すじゃねえか。

死ぬ間際に親切にでもなったか?」

 

「勘違いするな。今はお前達と遣り合う気はない。

こうして話すのは()()()()()()()よ。」

 

メデューサは言い残すと幻影の様に身体が

透けてその場から姿を消した。

 

「くそっ!俺がついていながら気付かなかったっ!

俺探してくる!」

 

「あちょっ!攻大!秀夜、俺達も後追うぞっ。」

 

先に出て行った攻大を追いかけようと秀夜に声を掛けるが、

秀夜は待てと言わんばかりに左手を俺に向けて出していた。

 

「その必要はなさそうだぜ操真。」

 

秀夜は顎をくいっと会場の隅の方を向ける。

よく見ると隅の一部だけ景色がぼやけて見えるのが分かり

俺はウィザーソードガンを取り出し構える。

 

「‥ふっふっふっふ、よく私が分かりましたね‥‥。

指輪の魔法使い‥。私も〝運〟がいい‥。」

 

薄暗く不気味な笑い声と共に現れたのは

全身緑色の植物で覆われたファントム〝ボギー〟。

武器であろうボギーに合う植物で造形された槍を

ゆっくりと構えてこちらの様子を伺っていた。

 

《ドライバーオン・プリーズ》

 

「運がいいのは俺達のようだな。

ここでお前を仕留める事ができる。」

 

《ドライバーオン・プリーズ》

 

「はっ!すぐ楽にしてやるよっ!」

 

俺と秀夜はウィザードライバーを出し、変身リングを付け、

変身する体勢を構える。

 

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

 

「変身。」

「変っ身!」

 

 

《ダークネス・プリーズ

 

アク アク・アクアクアーク!!》

 

《フレイム!プリーズ

 

ヒーヒー・ヒーヒーヒー!!》

 

 

魔法の言葉を言い、変身リングをドライバーへとかざす。

2つの魔法陣が俺と秀夜の身体を通り抜けると

2人は仮面ライダーウィザード、

仮面ライダーダークウィザードへと姿を変えた。

 

「さあ、ショータイ」

「先手必勝だぁ!」

 

 

《ダークネス!・シューティングストライク!

 

アクーアクーアクー・アクーアクーアクー》

 

 

ダークウィザードはウィザーソードガンのハンドオーサーへ

ダークネスリングを付けた右手を握手するかの様にかざし、

待機音声が鳴り響き銃口に紫色のエネルギーが集まる。

 

 

「えっ!?いきなりすぎだろっ!」

 

「っ!?」

 

「遅え!!ウラアッ!!」

 

ボギーもいきなりの必殺攻撃に身動きが取れないのか

槍を構え動く気配はなく相手の出方を伺っている様に見えた。

コントラクトリガーを引き収縮したエネルギーを放つ。

紫のエネルギー弾は避ける暇も与えずボギーに見事命中し

爆散した。

ちょ、えぇっ、、呆気なさすぎるぞっ、、

てか、俺の出番もなしに終わっちゃったよ‥。

 

「お前、俺の出番全くないじゃないか。」

 

「あ?ファントムは部が悪いとすぐ逃げ出すだろが。

こういうのはさっさとでかい一撃ぶち込んで消えてもらうのが得策なんだよ。」

 

「まあそうだけども‥。」

 

変身を解除するなり、秀夜の言う事には理が叶っているので

何も文句は言えず俺は髪の毛を掻く。

 

「‥まぁ、これはこれで一件落着か。早いとこ

にこ達を探して状況を説明しないとだな。」

 

 

私も〝運〟がいい。

この言葉に何か引っ掛かるが、とりあえずファントムは倒した。

俺達はこの場を後にし、にこ達を探しに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

「はぁ‥!はぁ‥!こ、ここまでくれば大丈夫よねっ‥。」

 

面接を終え、入口にいた穂乃果達に見つかってしまい

逃げ出したにこ。恐らくバイトのチラシを見て嗅ぎつけたのだろう。

あの後絵里と希と海未にも鉢合わせしてしまったが

にこの体格を活かして狭い路地や車の間をくぐり抜け

逃げ出したが、遠くから「なんか不本意だにゃー!」と

聞こえたがそんな事は構っていられず、

何とか撒くことができ、息を整えていた。

 

「と、とりあえず攻大に連絡をしないとね‥。」

 

やばいと思ったとは言え、一緒に来た攻大を置き去りにしてしまったのが申し訳ないのだろう。

スマホを手に取り、画面を見ると

着信履歴が目に入る。

そこには用のある攻大からだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

ファイナンスの屋上にて、メデューサは 

何か成功したかの様な笑みを浮かべ、街中を見下ろしていた。

そこにグレムリン事、ソラとタキシムが近づいてくる。

 

 

「フフフフっ!あれれ?ミサちゃん、

随分ご機嫌がいいみたいだねっ?」

 

「あら、グレムリン。貴方の計画は失敗のようね。

ついさっき、指輪の魔法使いにボギーがやられたわよ。」

 

「なっ‥!もうやられたのか‥。指輪の魔法使い、

侮れない奴らだ‥。」

 

タキシムの言う通り、今回は最も簡単に倒されてしまった。

ファントムを生み出すのが幹部のファントムの使命だが、

ましてワイズマンに認められたソラの初仕事。

今回の失敗は大きな支障を受けたに違いない。

が、そこを漬け込んだのがメデューサだ。

ソラの悔しい顔が見たいのだろうか、様子を伺っている。

 

だが、ソラは変わらず〝笑っていた〟

 

「フフフフっ!何言ってるのミサちゃん。

笠原さんは倒されてからが本領発揮さ。

ここからが、彼の本当の恐怖が始まるんだよ?」

 

「何だと‥?」

 

「どう言う事だ?」

 

 

「フフフフっ!さあ、笠原さん。期待通りに、ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇっ!?ファントムの仕業!?」

 

「あぁ、もう倒したけど。」

 

「やっつけたの!?」

 

「流石晴希ね。」

 

「インフィニティになってもう敵なしやねっ。」

 

「あ、いや‥ま、まあな。」

 

ファントムを倒し、穂乃果達と合流した俺だが、

秀夜は興味がないのか帰ってしまった。

俺は面接会場の出来事、穂乃果達はにこと会った出来事を

お互いに情報交換しているところだ。

どうやら、にこには逃げられたらしく、

スマホにも繋がらないらしい。

そして9人掛かりで捕まえようにもここは渋谷だ。

街の構造や抜け道を辿って行けば逃げ足の早いにこだから

わけないのだろうな。

 

「もう凛、怒らんといて?ごめんな?」

 

「にゃー、どうせ凛は小さいですよー。」

 

凛はどうして涙目で両手で胸を押さえてるのか、

気にはなるが今はそっとしておこう。

 

「はぁ‥。ファントムの仕業でしたか‥。」

 

「本当に残念そうだね?海未ちゃん意外と欲まみれなの?」

 

ことり、たまに心にグサっとくる毒舌はやめてあげよ?

海未も立派な人間だからね?

 

「‥でも、何でにこちゃん。私達を見て逃げ出したのかな。」

 

「よっぽど知られたくなかったんじゃない?

にこちゃん、ああ見えてプライド高そうだし。」

 

穂乃果のぼやきに真姫が言う。

 

「さて、どうしようか。にこと攻大と連絡が取れないし。」

 

「あ!にこちゃん!」

 

困っていた直後だ。花陽が指の先に見えたのは

こちらに歩いてくる女の子。‥にこだ。

にこ、、なんだけど。

 

「なんか、小さい?」

 

「えぇ、にこにしては小さい‥わね。」

 

コヨミと絵里が首を傾げる。

俺も思っていた。にこにしては確かに小さい様に感じる。

 

 

「そんな事ないにゃー。にこちゃんは小さいけど、

そこまで、、、ちいさいにゃー!?」

 

「‥え?あの‥何か?」

 

 

女の子は凛の声に驚きこちらに尋ねる。

そこにいたのは、顔はにこだが、見た目は明らかに

小さな女の子だった。

 

 

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

 

 

「今すぐ電話をかけ直しなさい!」

 

「バックナンバーってどうゆうことですか!」

 

「説明しなさいっ!」

 

 

アパートで何やら揉め事。

一体どうしたのか‥。

 

 

「にこちゃん、そろそろいい加減に‥。」

 

 

「あ、当たったわよぉ!!」

 

 

「は?またまたぁ〜…マジカヨォ!?」

 

 

宝くじに挑戦するにこ。

まさかの一等‥‥!?

 

 

 

「心配性ねアンタ。

にこは〜もう大丈夫にこ〜☆」

 

 

「ぐっ‥‥本当に運が操られてるのか‥!」

 

 

金持ちになったにこは調子に乗り‥‥。

一方でウィザードはかなり苦戦中のようだ‥。

 

 

「ここがお前のステージだろ。にこちゃん。」

 

 

第47話 宇宙No. 1アイドル

 

 

 




お久しぶりです!

ええ、本当ラブウィザード久しぶりです。
色々とあって勝手に休止してしまい申し訳ございません。
何とかまた書くことができました。

ちょっと書き方を変えました!
一印象を少し強めで書いてみようかと思いやってみました。
はい!今回はお察しの通り、
にこのお話とあの不幸になるお話のミックスです!
ミサちゃん、今更前からいたゲートを狙ってる
無理矢理感は出ちゃってますが、、
それにしてもここからのお話は本当メデューサ可哀想ですよねえ、あのグレムリンの
言いなりになって相当悔しいでしょうに。
そこを宥めるのがうちのオリジナルのタキシムちゃん!
彼の活躍も増やしていかないと(・∀・)



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返信は遅いかもですが
チェックしてニヤニヤしてます!笑

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