ラブウィザード! 〜希望の柱〜   作:しょくんだよ

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海未「前回の晴希が使っていた
ビッグリングという指輪はすごいですね。」
晴希「おう、あれを使えば
身体の一部が巨大化できるんだ。
複数の敵を払いのけたり色々と便利なんだ。」
海未「身体の一部ってことは顔も‥ですか?」
晴希「まぁな、こんな風に‥」
《ビッグ・プリーズ》
海未「きゃあぁぁっ⁉︎き、キモいです!」
晴希「き、きもっ⁉︎」チーン

穂乃果「いやー今日もパンが美味い!」

今日も平和な1日でした。


第5話 蕾が開く少女の願い

「えぇ⁉︎じゃあ、花陽ちゃんがゲートだったの⁉︎」

 

「そうなんだよ。」

 

午後17時半頃、

夕日が落ちようとしてる時間、

音ノ木坂学院の屋上で練習を終えた

高坂穂乃果は俺の伝えた事実に驚く。

穂乃果は俺が学食で買った

プレーンシュガーを勝手にとって

許可なく食べ始めた。

 

「それで⁉︎ファントムは⁉︎」

 

「あ、うん。なんとか倒した‥よ‥

あの、穂乃果さん、ドーナツ‥」

 

食わせてくれないか‥?

魔力使って腹減ったんだ

何か食べないと倒れちまう〜。

 

「急に走り出すので心配しましたが‥

無事で何よりです。」

 

「うんっ、1年生の子たちも無事でよかったね☆」

 

一緒にいる園田海未、南ことりも

安心して、

 

 

 

俺のドーナツを食べだす‥って

バカヤロウ‼︎3つしか買ってないんだぞ⁉︎

あー俺の貴重な魔力源が〜‥

 

「んんんっ‼︎練習終わりの甘いものは

美味いっ‼︎」

 

プレーンシュガーを食べて穂乃果は

満面の笑みを浮かべそう告げた。

一緒に食べる海未とことりも美味しいと

言って3人は仲良く食べる。

‥まぁ、いっか。1度は絶望した

この子もここまで立ち直る事ができたんだし。

 

俺はふうっと息を吐き、立ち上がる。

 

「晴希?どちらへ?」

「あ、晴希君っ。一緒に帰ろうよ!」

「勝手に食べたの怒っちゃった?」

 

「いや違うよ。ちょっと小泉の様子を

見てくるから、穂乃果達は先に帰っててくれないか?」

 

 

そう言うと海未とことりは了承したが

穂乃果だけ頬をプクーと膨らませこちらを

ジト目で睨んでくる。

 

「いいもん!ガルちゃんと一緒に帰るもん!」

 

そう言って先ほどから俺たちの頭上を飛んでいる

使い魔、レッドガルーダに指をさす。

 

「悪いって、今度何か奢ってやるから

それで許してくれないか?」

 

俺がそう言うと穂乃果は目を輝かせ

イチゴパフェ!と、叫んだ。

 

俺ははいはいと苦笑し、屋上を後にした。

 

‥とは言っても今日はもう遅いし、

休日の明日様子を見ようかな‥

 

俺はそう考え、穂乃果達のもとに

戻って一緒に帰ることにした。

いつものように穂乃果の家に行って

まさかの晩御飯をご馳走してもらった。

その時に穂乃果の妹の雪穂や母親に

彼女いるのとか聞かれて

なぜかそれに怒った穂乃果を

宥めるのは大変でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついでに父親も怖かった‥

 

無口だったんだもん!

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「‥‥‥ちちんぷいぷい!」

 

ボオオォォッ‥

 

 

「うわーすげぇ!」

 

「手から火が出たー!」

 

「どうやったのー⁉︎」

 

休日の学校の近くの広場で、小泉花陽は

友達の星空凛と

集まってくれた子供達の前で

昨日だせた魔法を披露していた。

 

「か、かよちん!すごいにゃ⁉︎

見せたかったものってこれだったのかにゃ⁉︎」

 

凛も花陽の魔法に驚く。

手から火がでるなんて

かなり危なっかしいが。

 

「すごい手品!」

 

「どうやってやんの⁉︎」

 

「そうにゃ!凛にも教えてほしいにゃ!」

 

子供達と凛は興味津々で花陽に

聞いてくる。

 

「手品なんかじゃないよ。

本当に本物の魔法だよ!凛ちゃん!」

 

何もタネや細工などしていない。

突然できた花陽のできたてホヤホヤの特技。

それは正真正銘の魔法だった。

 

いつも引っ込み思案な花陽は

堂々と人の目の前で立って入られた。

憧れていた魔法が使えるように

なったのでかなり自信がついたのだ。

 

今ならなんでもできる気がする。

今度、穂乃果先輩や操真さんにも、

見せてあげよう。

 

そう思った花陽は

もう1度見せる為、

指先に力を入れる。

そして振り上げようとした時、

 

「お話中、恐縮です。」

 

「うわわっ⁉︎」

 

振り上げた先にはスーツを着た

男性が立っていた。

 

「おじさん、誰にゃ?」

 

凛がそう尋ねると

 

「失礼致しました、私、テレビ夕日

[モーニングアイランド]で司会を

務めさせております。田島と申します。」

 

そう言って田島は名刺を花陽に差し出した。

そこにはいつも朝と夕方で放送されてる

モーニングアイランドのデザインが

施されていた。

 

「え、えっと、何かご用ですか‥?」

 

わざわざこんな所にテレビ局が来るなんて

今大人気のスクールアイドル、

「A-RISE」の取材かなにかの筈だ。

花陽はそんな事を思いながら

田島は口を動かす。

 

「少し、取材をさせていただけないでしょうか?」

 

「‥‥‥‥取材?」

 

「も、もしかしてテレビの⁉︎」

 

 

「え、ぇええっ⁉︎⁉︎」

 

花陽が首を傾げていると

凛が横から顔を出し、

田島に詰め寄る。

 

「(わ、私が‥テレビの取材‥‥⁉︎)」

 

いきなりテレビの取材させろと言われて

驚かない人はいないだろう。

田島は笑顔で頷き、

花陽は取材について説明を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

晴希は今神田明神へと来ていた。

花陽の様子も見た方がいいかもしれないが

(念のため使い魔で見張ってもらっている)

転生してきたこのラブライブの世界、

色々見て回らないともったいない。

 

そう思って俺は

マシンウィンガーでこの街を見て回っていた。

かなりの時間走行していたので

この神社で一息ついてるとこである。

 

 

「んんーっ‥つかれたー‥」

 

「何に疲れたん?」

 

「うわっしょい⁉︎」

 

伸びをしていると

後ろから巫女の姿をした女性に

声を掛けられた。

うわ、久々に変な声だした。

 

「い、いえ、ずっとバイクで

走行してたので疲れが‥‥

‥って貴方は生徒会の‥」

 

俺が顔を確認すると

その女性は音ノ木坂学院の生徒会

副会長の東條希だった。

 

「おぉ、ウチの事を知ってるんやな、

操真晴希君。」

 

箒を持った希は俺の名前を言ってくる。

 

「そりゃ通ってる学校の生徒会ですからね‥

‥え、なんで俺の名前を?」

 

「音ノ木坂学院に編入してきた

初の男やからね、多分音ノ木坂の生徒は

皆知ってるんとちゃう?」

 

関西弁の口調で希はそう言った。

それもそうか、あの学校の生徒で男の人は

俺だけだからな。

早く他に誰か編入してくれないだろうか‥

 

「晴希君、君もスクールアイドルの子達と

学校の為に頑張ってくれてるみたいやね。」

 

「えぇ‥まぁ一応、一緒に踊ったりはしませんが‥」

 

「え?踊らないの?面白そうやん」

 

やめてください。それだけは

転生した状態でもごめんです。

 

「俺なんかよりずっと輝いてる子達がいますよ」

 

 

それは今のμ's、穂乃果達だ。

初めてのファーストライブの時、観客は

手で数えるほどの少数人数だった。

 

それなのに、彼女達は歌い、踊ってみせた。

 

決して上手いとは言えないが

俺にとってとても輝いていた。

 

 

「そういえば東條さんもあの場にいましたよね?

なんで講堂の外にいたんですか?

せっかくでしたので入って見ればよかったのに」

 

「希でえぇよ。それでもよかったんやけど

結果は分かってたことやったしな〜。」

 

む、こいつも穂乃果同様フレンドリーか。

なかなかの強敵だな。

 

「は、はぁ‥。」

 

「晴希君。」

 

希は俺の名前を呼ぶ。

 

「はい?」

 

「君はこれからの物語の鍵になる存在。

これからも、μ'sに協力して助けてあげてな?」

 

そう言って彼女は1枚の

タレットカードを見せる。

そこには(HOPE)と描かれた

カードがあった。

希望‥‥‥‥え?

‥え‥この人何者‥‥?

 

「あの‥それはどうゆう‥」

 

「ふふ、分かるんや。

カードがウチにそう告げるんや。

‥ところで、アレは晴希君の?」

 

ふと、空を見上げると

晴希の使い魔の1匹、

イエロークラーケンが

フヨフヨと空を飛んでこちらを見ていた。

花陽を見ててと頼んだ

クラーケンだ。

 

「クラーケン、どうした?」

 

え?花陽の様子見てこいて?

わかったわかった。

 

「ふぅん‥クラーケンって言うんや、

可愛いペットやね。その子、よくこの

神田明神に顔を出すんよ。」

 

希がそう言うとクラーケンは希の周りを

はしゃぐようにフヨフヨと飛ぶ。

おい、お前も女の子好きかよ。

 

「クラーケン、あまり人前に出るなよ

希さんもこいつの事は秘密でお願いします。

それじゃ、俺はこれで。」

 

「うん、ほなな〜。」

 

希は手を振って

箒で神社を掃除しながら

クラーケンと喋り出す。

俺は階段を降り、バイクに跨り、

花陽の、もとへと向かった。

 

 

 

 

 

「晴希君‥‥なかなか

スピリチュアルな子やね。

クーちゃんっ。」

 

晴希の後を見ながら希は言うと

クラーケンは回転しながら頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!今日は皆さん!驚きますよー?

本物の魔法をご覧いただきます!

タネも仕掛けもありませんよー?

では、お願いします!」

 

田島はそう言うと、カメラを持った人は

花陽のもとへ近づく。

 

「(よ、よぉし‥凛ちゃん!私頑張るね!)」

 

花陽は凛の顔を見ると

田島の後ろの観客に混じっている

凛は頑張れーと手を振って応援していた。

 

そして花陽は指先に集中して

指を前に出して、

 

「ちちんぷいぷい!」

 

魔法の言葉を言った。

 

すると指先から火がでて

観客たちはその光景に驚き、

小さな歓声と拍手が

花陽を包み込んだ。

 

「素晴らしい!では、

もう1度お願いしてもよろしいでしょうか⁉︎」

 

田島は拍手しながらそう言ってくる

花陽は頷き、再度指先を集中して

前に突き出す。

 

「ちちんぷいぷい!」

 

そして手から火が出る。

拍手が花陽の気持ちを向上させ、

今度は連発で魔法を使った。

 

「ちちんぷいぷい!

 

ちちんぷいぷい!

 

ちちんぷいぷいー!」

 

最後に突き出した指先から

今度は大きめの火が出てきたので

観客の皆は後ずさる。

 

「あ、ご、ごめんなさいっ!」

 

だけど手から出る炎がすごいのか

観客は喜び拍手をする。

 

「かよちん!すごいにゃ〜っ‼︎」

 

凛も嬉しそうに拍手をする。

 

「いや〜小泉さんお見事でしたねぇ!」

 

「あ、田島さんっ。」

 

田島は花陽に近づき拍手をする。

 

「素晴らしい!もうこれは正真正銘

魔法としか言いようがないっ!

私、感動致しましたよーっ!

貴方はこの世の中に夢と微笑みをもたらす

奇跡の魔法使いだぁ!」

 

「い、いえいえそんな‥‥」

 

田島は淡々と花陽を褒め、

花陽は顔を赤く染める。

 

「そこでね、ご相談があるんですが‥

明日、休日と言う事ですし、

スタジオにお越し頂けませんか?

‥生放送ですっ。」

 

「え?‥‥ぇえ!?」

 

「生放送って!生放送かにゃ⁉︎

すごいにゃかよちん!

有名人にゃー‼︎」

 

まさかのスタジオで生放送に

花陽は驚きを隠せずにいた。

 

「生‥ですか?」

 

「生です。」

 

「なま‥」

 

「ナマ‥」

 

なまを、強調して会話する花陽と田島。

するとそこへ、

 

「小泉っ!」

 

晴希が顔を出す。

 

「あ、操真さん!」

 

「にゃ、操真先輩っ。」

 

「っ‥‥では、私はこれで。」

 

俺の存在に気づいて花陽と凛は手を振る。

スーツを着た男は早々とどこかへ行った。

なんだこの人集りは?

 

「あ、お、お疲れ様ですっ。」

 

花陽は田島にお辞儀をすると

凛と共に俺のもとへ来た。

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「へ?魔法使いになった?」

 

俺と花陽、凛は近くの

ファーストフード店で

ちょうど小腹が空いたので

ハンバーグを食べることにした。

 

「そうにゃ!

かよちんは、すごいにゃよ!

かよちん、見せてあげるにゃ!」

 

ハンバーグにかぶりつきながら

凛は喋る。

 

こら、口に入れた状態で喋るんじゃない。

 

「で、でもここ店内‥」

 

花陽はジュースを飲みながら辺りを

キョロキョロする。

 

「小さい炎なら大丈夫だよ!」

 

凛に背中を叩かれ

花陽はやる気なのか

指先に集中する。

 

「ちちんぷいぷいっ。」

 

小さな声で花陽はそう言って

手を出す。

 

 

が、何も起きない。

 

「あ、あれ?

ちちんぷいぷい!」

 

もう1度花陽は手を突き出す。

 

「ど、どうしたのかよちん?

調子悪いの?」

 

「ありゃりゃ、小泉。

手品ならちゃんとタネとかしこんどかないと」

 

そう言って俺はハンバーグを口に運ぼうと

するが、凛に止められた。

 

「手品なんかじゃないにゃ!

あれはちゃんとした魔法にゃ!」

 

凛は俺の顔を見ながら

言い放つ。

 

「きっとこの前怪物に襲われた時、

かよちんの中の

眠っていた力が覚醒したんだにゃ‼︎」

 

「なに‥‥?」

 

俺は脳内にヘルハウンドの攻撃方法を思い出す。

待てよ‥原作だとあのファントムはもう一つ

なにか能力があったような‥‥

 

くそっ!どうしてだ⁉︎

なぜかウィザードの記憶が

こんなに曖昧になってるんだ⁉︎

 

俺は頭を片手で抱える。

ここに来るまではハッキリ覚えていたのに

あれから数日、だんだんと

原作の記憶が頭の中から〝無くなっていく〟ように

曖昧になっていた。

 

「あのファントム‥‥

なにか小細工でもしたのか‥?」

 

 

「ん〜‥なんでかな‥‥」

 

「きっとさっき使い過ぎたんだにゃっ。」

 

花陽と凛はそう言って花陽の手を見つめる。

 

「‥小泉。君の魔法は‥多分偽物だ‥。」

 

俺は残った記憶を探りながらそう告げた。

 

「え‥‥?」

 

「偽‥物‥‥‥?」

 

花陽と凛は俺の顔をみて驚く。

 

「騙されてるんだ‥ファントムに‥‥

小泉を襲ったあの化け物に、何か仕組んでたんだ。

魔法使いに見えるように。」

 

俺がそう言うと凛は机をバンと叩いて

俺に叫んだ。

 

「そんなはずないにゃ!先輩が来る前は

ちゃんとかよちんの手から火がでて、

みんな笑顔にさせてたにゃ!

 

‥‥‥‥‥わかったにゃ」

 

凛はそう言うと目つきが変わり、

俺を睨んできた。

 

 

 

「先輩が魔法でかよちんの邪魔してるんでしょ?」

 

「‥‥は?」

 

「り、凛ちゃん‥」

 

突然の誤解に俺は口を開けてしまう。

花陽もおどおどしながら凛を宥めようとする。

 

「先輩は自分以外に魔法使いができたから、

それが邪魔になって、かよちんの事を邪魔してるんだ!」

 

「ち、違う!これは怪物の作戦だっ。

小泉を騙して喜ばして、後でどん底に突き落とす、

そうして絶望させる気なんだっ。」

 

「それは先輩じゃないの⁉︎」

 

「な、なんだと‥っ。

俺はそんなつもりで言ってない!」

 

俺も机から立ち上がり、口論する。

店の中の人達も何事だとこちらを見てくる。

 

 

「凛達の前で魔法を使って!

魔法はあるって信じさせて!なのに

かよちんの魔法は偽物だなんて!」

 

「奴らの狙いは小泉を絶望させることだ!

説明しただろう⁉︎語尾ににゃをつけてる

お前の頭じゃ分からなかったか⁉︎」

 

「なっ⁉︎今はそんな話

どーでもいいにゃ!

これは癖なんだからしょうがなi」

 

 

 

「2人ともやめてっ‼︎」

 

 

 

俺と凛が喧嘩してる中、花陽が

声を荒げて静止させる。

 

その顔は今にも泣きそうになっていた。

そして我慢できなくなったのか

走り出して店を出て行った。

 

「かよちんっ!」

 

凛も後を追いかけ店を出ていく。

残った俺はバツ悪そうに席に座る。

 

自分の中のウィザードの記憶が曖昧で

動揺してしまったのか凛と喧嘩をしてしまった。

そして凛の言葉に俺は心に

グサリと何かが刺さったような

感覚が走る。

 

「魔法使いに‥‥なりたい‥か‥‥

‥俺は‥‥

なんのために魔法使いに‥‥」

 

 

そう考えながら、俺はその場に突っ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

廃墟のビルにて、

 

 

「あんの野郎っっ!クソッッ‼︎

役立たずがっ‼︎あっさり負けやがってぇ‼︎」

 

人間態のフェニックスは辺り構わず

その場にあるものを壊し、声を荒げる。

 

ソファーでその光景を見慣れたように

人間態のメデューサは口を動かす。

 

「役立たず呼ばわりはまだ早いわよ?‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねぇ、ヘルハウンド。」

 

 

 

 

「恐縮です。」

 

どこからかやられたはずのヘルハウンドの

声が聞こえ、フェニックスは辺りを見回す。

 

すると笑い声と共にフェニックスの影から

ヘルハウンドが現れた。

 

「ヘルハウンド⁉︎お前、

魔法使いにやられたはずじゃ‥‥⁉︎」

 

「おや?フェニックス様は私の

〝影に入る能力〟をご存知なかったのですか?」

 

確かにあの時、ヘルハウンドはウィザードにやられ、

使われていない工場に突っ込み、爆発した。

 

だが、

 

爆発したのはヘルハウンドの乗っていたバイク

ブラックドックだけだった。

ヘルハウンドは爆発に巻き込まれる瞬間

影に入りこみ、その場を逃れたのだ。

 

「うっはぁ⁉︎やるじゃねえかっ‼︎

そんなこったろうと思ってたぜっっ‼︎」

 

喜びながらフェニックスはメデューサに

「すげえなぁ」と言うが

メデューサは無視し、立ち上がる。

 

「それで、ファントムは生まれそうなの?」

 

ヘルハウンドは不気味に笑い喋る。

 

 

 

「すでに〝タネ〟は仕込んであります‥。

明日をお楽しみにしてください‥‥。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

花陽Part

 

 

花陽の家の外にて。

 

 

 

「‥‥はぁ‥。」

 

 

あの後、私は家に帰って

凛ちゃんも来てくれたのだが

今日は帰らせましたら、

 

今日、操真さんに私の魔法

見せるつもりだったのに‥魔法がでなかった‥

 

きっと調子が悪かったんだね‥

操真さんは怪物のせいだって言ってた‥

嘘をついてるようには見えなかった‥

でも私はその言葉を信じたくなかった‥

 

せっかく、せっかくできた魔法なんだよ‥

この魔法のおかげで、人前に立つのが怖かった

私は自信を持つことができた。

 

私はもう1度だけ、

指先に集中し、

魔法の言葉を言った。

 

 

「ちちんぷいぷい!」

 

ボオオォォッ

 

 

 

嘘‥‥でた‥‥でたよ!

 

 

「や、やった‼︎」

 

 

 

喜んでいる私。

私の影が一瞬揺らめいたことを

この時の私は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

 

俺はファントム調査の為、自宅から出て、

階段を降りようとした時、

ふと俺のスマホから着信音が鳴った。

 

画面を確認すると穂乃果からの着信だった。

 

「もしもし、どうした?」

 

 

『あ!晴希君?朝のテレビ見た?』

 

「朝のテレビ?どうした?」

 

『えぇ⁉︎見てないの?

花陽ちゃんすごいね!

あの子、晴希君と同じ魔法使いだったのかな⁉︎

(穂乃果!また始まりますよっ。)

あ、うん分かった!

晴希君も確認してみたら?』

 

その言葉を聞いて俺は

とっさに自分の部屋に戻り、

テレビの画面を付けた。

 

 

『モーニングアイランド〜〜♪』

 

 

そこには朝の放送、

モーニングアイランドの番組が始まっていた。

 

画面の右下には

 

『究極の魔法‼︎

奇跡の路上魔法使い』

 

と描かれた題名が載っていた。

司会者も昨日広場で見た田島という人が

解説をしていた。

 

『それでは!登場していただきましょう!

奇跡の路上魔法使い!

 

小泉花陽さんのご登場ですっ!

どーぞ!』

 

拍手と共に扉の向こうから

花陽が緊張しながら絵本を持って登場した。

 

「っ‼︎‥くそっ!

ガルーダ!」

 

俺はガルーダを叫ぶとすぐに

窓の向こうからガルーダが飛んできた。

 

「このテレビ局場所案内してくれ!」

 

ガルーダは頷き、その後を追うように

俺は部屋から飛び出した。

 

下に置いてあるバイクに跨り、

ジェットヘルメットを被ると

昨日の凛の言葉を思い出した。

 

 

 

 

『凛達の前で魔法を使って!

魔法はあるって信じさせて!なのに

かよちんの魔法は偽物だなんて!』

 

 

 

 

 

「‥俺は‥‥」

 

その言葉に深く考え込む俺。

 

すると、

ポケットから1つの指輪が光りだす。

俺はそれを取り出すと

それはライトリングだった。

 

「これは‥‥」

 

指輪を見つめていると

一瞬、脳内にある言葉がよぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後悔するより前に進もうぜ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ‼︎」

 

俺はその言葉に目が覚めた。

 

「そうだよ‥なに迷ってんだ俺‥

俺は‥‥‥‥仮面ライダーっ‥

この世界の人々を守るために‥

 

俺はこの力を手に入れたんだ!」

 

仮面ライダーは正義の味方。

それが戦う答えだ!

 

 

ありがとう、晴人さん‥。

 

 

俺はある人へと感謝し、アクセルを回し、

全速でテレビ局へと向かった。

 

 

 

 

街にでた俺はアクセルを全開に

ガルーダを先頭に道路を走る。

 

 

「(あの司会者がファントムだ‥!

小泉に魔法が使えるとその気にさせといて‥

ここでガツンと落とす気だ‥!)」

 

俺はそう思い、交差点を曲がり、

目の前のビルへ直行した。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「小泉さん、こちらのお持ちの本、

これはなんでしょう?」

 

生中継が行われている中、田島が

花陽の持っている本を尋ねていた。

 

「あ、は、はい!私、小さい頃から

この絵本が大好きで!この本に出てくる

魔法使いに私はずっと憧れていました!」

 

画面にその絵本を見せる花陽。

 

「なるほど、では、さっそく

小泉さんの魔法を

見せていただきましょう!

小泉さん、お願いします!」

 

「はいっ!」

 

そう言って田島は後ろに下がり、

花陽はカメラの前に立ち、

指先に意識を集中させる。

 

 

「私は‥できる!」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

テレビ局の下で、一緒に同行した凛は

スマホで花陽の生中継を見ていた。

 

 

「かよちん!頑張れー!」

 

あんなに人見知りで

引っ込み思案な友達が、今こうして

テレビに出ていた。

凛はその姿に喜びを感じていた。

それと同時に昨日フード店で

喧嘩した晴希が頭の中をよぎる。

 

「‥ふ、ふん!あれは先輩が悪いにゃ!

かよちんはちゃんと魔法が使えるのにケチを

つけるからだにゃ!」

 

凛はそう言ってスマホの画面に目を向ける。

だけど、凛の心にはなにかが

引っかかっているような気がして

しょうがなかった。

 

その時、

 

 

「うわああぁっ⁉︎」

 

突然、警備員が吹き飛んできた。

その先を見ると2体の怪物、グールが

警備員を襲っていた。

 

「にゃ⁉︎な、なんで怪物がっ⁉︎」

 

凛は立ち上がり距離をとろうとする。

が、グールは凛の存在に気付き

襲おうと槍を構え接近してきた。

 

「ひっ‥⁉︎」

 

凛はしゃがみこんで目を塞ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイスしゃがみだ!星空っ!」

 

 

すると、突然のバイク音とともに

晴希が現れる。

2体のグールをバイクで吹き飛ばし、

持っているウィザーソードガンを

銃モードにして連発し、

2体のグールはそれを受け、爆散した。

 

「にゃ‥せ、先輩っ!

なんでここに⁉︎」

 

「事情は後だっ。お前も乗れ!」

 

停止させた晴希は凛に向かって

ヘルメットを投げ渡す。

凛はわけが分からないまま、

ヘルメットを被り、

晴希はアクセルを回し、

テレビ局の駐車場の中へ向った。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

撮影が行われている中、

花陽は目を瞑り、指先に

意識を集中させている。

 

そして目を開き、

手を突き出して、

花陽は魔法の言葉を叫んだ。

 

「ちちんぷいぷい!」

 

 

 

 

だが、何も起こらない。

 

 

「え‥あ、あれ‥‥?」

 

花陽はひどく焦る。

生中継が行われている間は

失敗など許されない。

 

花陽は涙目を浮かばせながら

手を上下に振る。

 

「ちちんぷいぷい!

ちちんぷいぷい!

ちちん ぷいぷいっっ!」

 

カメラの人達も動揺する。

スタッフも紙に「早く出せ」と書いて

花陽に見せる。

それを見た花陽はますます焦り、

何度もカメラの前で魔法を唱える。

 

「‥やっぱり嘘じゃないですか‥」

 

「生放送なんだからタネはちゃんと

仕込んでおかないと〜‥」

 

「あーぁ、ダメじゃん。」

 

司会の人達も呆れたように花陽を見る。

 

「え、えと、あの‥そのっ、

ち、ちゃんと昨日は出たはずなのに‥」

 

「お前に、魔法が使えるわけないだろう」

 

それを言ったのは

すごく褒めてくれた田島だった。

何かが成功したような顔付きで

田島はこちらに歩いてくる。

 

「ほら、今 日本中がお前のことバカにしてるぞ〜?

とんだ嘘つき野郎だって‥」

 

「た、田島‥‥さん‥?」

 

なんで‥?私のこと奇跡の魔法使いって

言ってくれたんじゃないの‥?

 

花陽は頭の中がパニックになり、

田島は口を動かす。

 

「田島なんて人間は‥もう

とっくの昔に死んでるんだよ‥‥。

 

 

俺と言うファントムを生み出してなぁ‥?」

 

 

 

 

 

その時、田島の顔が変化する。

そして、化け物の姿に変わった。

 

 

「っ!ひっ‥⁉︎⁉︎」

 

花陽は持っていた絵本を落とす。

会場のスタッフたちは悲鳴をあげる。

 

そして、テレビを見ていた

人達も驚きの声をあげる。

 

 

 

穂むらでは、

 

「ふ、ファントム⁉︎

花陽ちゃん!逃げて!」

 

「ほ、穂乃果!テレビが見えません!」

 

「ど、どうしよう!穂乃果ちゃん⁉︎」

 

「お姉ちゃん、何かの撮影?」

 

 

 

真姫の家では、

 

怪物が現れた瞬間、

紅茶を吹き出す真姫、

それを向かい側の男性の顔に

ぶちまける。

 

「ケホッ!ケホッ!

ご、ごめんパパッ!」

 

 

 

そして、テレビ局に戻り、

 

 

 

 

「うっ⁉︎‥‥うぅっっ‥‥‼︎」

 

ヘルハウンドは花陽の首をしめる。

 

「炎を出したのはお前じゃない‥

この俺がやったのさ‥‥」

 

するとヘルハウンドは花陽の

影に入りこみ、花陽の身体が

何かに乗っ取られたかのように

身体がかたまる。

 

「えっ‥あっ‥⁉︎」

 

花陽の身体はゆっくりと

絵本が落ちている方に身体が向き、

絵本に指を向けた。

 

「‥‥‥っ‼︎

や、‥‥‥いやっ‥‥‼︎」

 

「こんなふうになっ‼︎」

 

 

瞬間、

花陽の手から炎が出て、

絵本を燃やした。

 

「‥‥‥あ‥‥っ。」

 

小さい頃から読んでいた絵本は

炎に包まれ、みるみるうちに

消し炭になっていく。

 

「みたか?これが、お前の魔法の正体さ。

あーっはっはっはっはっ‼︎」

 

影から出てきたヘルハウンドは

愉快そうに高笑いする。

 

その時、

 

「ううっ‥‥⁉︎」

 

花陽は心にヒビが入るかのように

痛みが心臓に走る。

 

「これでお前はもう立ち直ることはできない‥‥

さぁ、絶望の淵に沈め!

そして新たなファントムを生み出すのだ‼︎」

 

 

 

「ファントムッ‼︎」

 

ヘルハウンドが笑っていると

出入り口から晴希と凛が姿を現す。

 

「っ!かよちんっっ‼︎‼︎」

 

「ウィザードか‥?

今更きてももう遅い‥‥諦めろ!」

 

 

《ドライバーオン・プリーズ》

 

 

俺はヘルハウンドの言葉を無視して、

ベルトをウィザードライバーに変える。

ヘルハウンドの後ろには

焦げた本を見ながら絶望している

花陽の姿があった。

 

「‥‥おいファントム‥‥。

お前は人の夢を何だとおもっている‥」

 

俺はドライバーのシフトレバーを上下に動かす。

 

 

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン‼︎

 

シャバドゥビタッチヘンシーン‼︎》

 

 

 

「簡単に人の心を踏み躙るお前の心は

最低に腐っているなぁ‼︎

 

変身っ‼︎」

 

待機音声が流れる中、俺は怒りに身を任せ

フレイムリングをドライバーにかざす。

 

《フレイム!・プリーズ

 

 

ヒーヒー・ヒーヒーヒー‼︎》

 

俺は真正面に手を突き出す。

すると、そこに魔法陣が現れ、

それに向かって走る。

くぐり抜けた俺は

仮面ライダーウィザードに姿を変えた。

 

「さぁ、ショータイムだっ‼︎

星空!小泉を頼むっ!」

 

ヘルハウンドとぶつかり、攻防戦を

しながらウィザードは凛に叫ぶ。

凛はすぐさま花陽のもとに駆けつける。

 

「かよちん!かよちん!」

 

花陽の身体はゲートの侵食が進み、

身体には徐々に亀裂が走る。

 

ウィザードの戦いはテレビを

通して日本中に広まっていた。

 

 

穂むらでは、

 

「晴希君ー!頑張ばってー!☆」

 

「海未ちゃん!晴希君

なかなかテレビ映りいいね!」

 

「呑気な事言ってる場合ですかっ⁉︎」

 

 

 

 

晴希の家では、

 

 

「晴希の奴、派手にやってくれとるのぉ‥

渡した指輪、今が使いどきじゃぞ。」

 

 

 

 

 

そしてテレビ局、

 

 

「ハァアッ!」

 

「ぐっ⁉︎」

 

ウィザードはヘルハウンドに強烈な一撃を与え、

ヘルハウンドは吹き飛ぶ。

 

「小泉っ‥‥‥‥っ⁉︎」

 

ウィザードの足が動かない。

足下を見るとそこには影に入っていた

ヘルハウンドがウィザードの足を掴んでいた。

勢いよく飛び出したヘルハウンドは

ウィザードを剣で斬りつけてくる。

 

「がはっ⁉︎‥‥このっ‼︎」

 

ウィザードは武器の

ウィザーソードガンを

銃モードで連発するが、ヘルハウンドは

影に身を隠し、姿を消す。

 

「はぁ⁉︎くそ!どこに行きやがっ‥‥ぐはっ⁉︎」

 

探していると上からヘルハウンドは

剣を振り下ろしウィザードを

斬りつけ、ウィザードは吹き飛ぶ。

どこを狙っても影に隠れ、

隙あらば攻撃してくるヘルハウンド。

そしてウィザードの一発が

カメラに直撃し、生放送の映像は

そこで途絶えた。

 

穂乃果達が騒いだのは言うまでもない。

 

「クソっ!これじゃあ‥‥

そうだっ!」

 

俺はライトリングを取り出して付け、

ドライバーにかざした。

 

《ライト・プリーズ》

 

音声がなるとライトリングから

強烈な光が会場を照らす。

 

「うっ!眩しいにゃ‥‼︎」

 

「‥‥‥ひかり‥‥。」

 

凛は目を瞑り、花陽はその光景を見ていた。

 

「ぐおおおおおっ⁉︎ば、バカなぁ⁉︎」

 

ヘルハウンドは影から出てきて顔を抑える。

そしてウィザードはヘルハウンドを蹴り上げ

勢いに乗せ、ウィザーソードガンを

剣モードで斬りつける。

 

「これが、前に進むための魔法だ!

最後はこいつで、一気に決める!」

 

ウィザードはフレイムリングを外し、

青い宝石の〝ウォーターリング〟を付け、

ドライバーを上下に動かし、かざした。

 

《ウォーター!・プリーズ

 

スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜》

 

腕を掲げると水でできた魔法陣が浮かび上がり、

ウィザードの身体を通る。

そしてウィザードは青をベースとした

〝ウォータースタイル〟へと姿を変える。

 

「火には水を‥ってな。

さぁ、フィナーレだ!」

 

水の力を得たウィザードは

ウィザーソードガンのハンドスプリングを開く。

 

《キャモナスラッシュ‼︎

シェイクハンズ‼︎

 

キャモナスラッシュ‼︎

シェイクハンズ‼︎》

 

待機音声が鳴る中、

ウィザードはヘルハウンドの攻撃を避けながら

ウォーターリングをハンドオーサーにかざす。

 

《ウォーター!・スラッシュストライク‼︎

 

スイースイースイー・スイースイースイー》

 

ウィザーソードガンの剣先に

水のエネルギーが渦を巻くように溜まり、

 

「ハァアアアアッ‼︎‼︎‼︎」

 

ヘルハウンドに向けて斬りつけた。

 

「ぐっ⁉︎がぁぁぁあああっ!!!!」

 

 

それを受けたヘルハウンドは

ダメージに耐え切れず、爆散した。

 

 

俺は息を吐く間も無く、フレイムスタイルに戻り、

花陽のもとへ駆け付けた。

 

「小泉!」

 

「先輩っ‥‥!かよちんが‥かよちんが‥!」

 

「あぁ、分かっている」

 

俺はエンゲージリングを取り出すと

花陽が何か喋ってきた。

 

「‥‥操真‥さん‥‥私‥‥

‥‥‥魔法なんて‥‥最初から

つかえなかったんだね‥‥‥」

 

「‥でも、使える奴がここにいる。」

 

「え‥‥?」

 

花陽が顔を上げるとウィザードは

自分に手を当てて喋る。

 

「小泉の魔法の夢は、俺が継いでやる。

だからお前は、もう1つの、

アイドルになる夢を叶えろ、お前なら必ず出来る。」

 

そう言ってウィザードは花陽の指に

エンゲージリングをはめた。

 

「約束する。俺がお前の、最後の希望になってやる。」

 

ウィザードはドライバーのシフトレバーを

上下に動かし、そこに花陽の手をかざした。

 

《エンゲージ・プリーズ》

 

鐘の音色の音声と共に

花陽の意識は途絶え倒れ込む。

そして花陽の上に

アンダーワールドの入り口の

魔法陣が浮かび上がり

ウィザードはそれに飛び込もうとする。

 

「先輩っ!」

 

隣の凛は泣きじゃくりながら

ウィザードを呼ぶ。

 

「かよぢんを‥たすげて‥あと、

先輩‥ごめん‥なさい‥‥‥‼︎」

 

泣きながら言う凛にウィザードは

彼女の肩に手を置く。

 

「大丈夫だ、必ず助ける。

それに、謝る必要はない、

星空は彼女の為に怒ってくれたんだ。

俺の方こそ、言い方が悪かった、すまない。」

 

頭を下げたウィザードに

凛はにへっと笑い、今度こそ、

花陽のアンダーワールドへ、飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「よっと、ここが小泉のアンダーワールド‥

っと、かなり亀裂が入ってる‥」

 

飛び込んだウィザードは

辺りを見回す。

どうやら図書館のようだが、

亀裂があちこちにあり、

その面影は消えそうになっていた。

 

「あれは‥小泉?」

 

図書館の奥には幼い少女が絵本を読んで座っていた。

その絵本は彼女が読んでいた絵本。

森の魔法使いだ。

 

「‥っ!」

 

すると、少女からヒビが入り、

そこから巨大なファントムが姿を現した。

 

「うおっと‥‼︎」

 

咆哮を上げ、図書館から出て暴れ回る

ファントム、〝サイクロプス〟は、

ビルをよじ登り、武器らしき棍棒で辺りを

破壊していく。

 

「行くぞドラゴン!」

 

ウィザードはドラゴライズリングを指に付け、

ドライバーにかざす。

 

《ドラゴライズ‼︎・プリーズ》

 

 

音声がなり終わるとウィザードの頭上に

魔法陣が浮かび上がり、

そこからウィザードラゴンが咆哮を上げ、

サイクロプスに向かって突進する。

ウィザードもそれに続き

マシンウィンガーで後を追う。

 

「ドラゴン!俺に従えっ‼︎」

 

空中を飛び回り火炎攻撃をするドラゴンに

サイクロプスの振りかざした棍棒が当たり、

凄い勢いでこちらに吹き飛ぶ。

そしてマシンウィンガーをドラゴンの背中に合わせて

合体し、ウィンガーウィザードラゴンとなり、

ウィザードはサイクロプスに向かっていった。

 

咆哮を上げて振りかざしてくる棍棒を避けながら

ドラゴンは噛み付きサイクロプスを放り投げ

火炎攻撃を繰り出す。

それを喰らい吹き飛んだサイクロプス。

そしてウィザードはキックストライクリングを

付け、ドライバーにかざした。

 

《チョーイイネ‼︎

 

キックストライク‼︎

 

サイコー‼︎》

 

「ぐっ、かなり魔力が持ってかれるなぁ!

さぁ!フィナーレだっ!」

 

ウィザードは力が抜ける身体を根性で粘り、

ドラゴンの身体は変形して

巨大な龍の足

〝ストライクフェーズ〟へと姿が変わる。

そしてストライクフェーズを右足に装着し、

凄まじい蹴りをサイクロプス目掛けて放つ。

 

「でぇやぁぁぁああああっっ!!!」

 

これがドラゴンの力を借りた必殺技。

 

〝ストライクエンド〟

 

サイクロプスは衝撃に耐え切れず

動けないでいた。

そしてその蹴りをまともに喰らい、

サイクロプスは苦痛の悲鳴を上げ、爆散する。

 

 

 

「あだっ⁉︎」

 

着地したウィザードは右足から

ストライクフェーズが外れ

かっこ悪い形となって地面に倒れた。

 

 

 

「ふ‥ふぃ〜‥‥」

 

 

最後の決めセリフだけ言ってガクッと

倒れ込むウィザードだった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

あれから数日、

花陽からゲートは消え、

彼女が気が付いた時は病院だった。

その時に両親がいて凄い心配したんだと。

 

その時、花陽は親から、

 

広場で不審者(ファントムだけど親にはそう伝えた)に

襲われそうになったところを

凛と晴希が助けてくれた

と言われたらしい。

 

 

 

さすがにテレビはヤバいらしかったのか

神様は、その時の人々の記憶の一部を

消したらしいのだ。

 

神様スゲェ。てか、それ大丈夫なのか‥?

 

 

なんとか立ち直る事ができ、

回復することができた花陽。

 

 

そして学校の放課後‥。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり‥メンバーになるって事?」

 

 

 

ことりがそう言って首を傾げる。

 

現在屋上で、練習をしていた

穂乃果、海未、ことりとサポートの俺の前に

 

凛と真姫に連れてこられた花陽が来ていた。

 

「はい!かよちんはずっとずっと前から

アイドルやってみたいと思ってたんです!」

 

「そんなことはどーでもよくて!

この子はけっこう歌唱力があるんです!」

 

「どーでもいいってどうゆうこと⁉︎」

 

「言葉通りの意味よ!」

 

凛と真姫は花陽の良いところをアピールしながら

花陽を両側から挟んで口論をする。

 

「あ、私はまだ‥なんてゆうか‥‥」

 

まだ抵抗があるのか

花陽は小さな声でそう言った。

 

「もう!いつまで迷ってるの⁉︎

絶対やった方がいいの!」

 

「それには賛成。やってみたい気持ちがあるなら

やってみたほうがいいわ。」

 

「で、でも‥私は‥‥」

 

「凛は知ってるよ、かよちんはずっとずっと。

アイドルになりたいって思ってたこと!

もう迷ったりしちゃダメ!

かよちんは凛たちがついてるから!」

 

両肩に手を置き、じっと見つめる凛。

 

「凛ちゃん‥西木野さん‥」

 

「小泉、君は絶望から立ち直る事が出来たんだ。

自信を持て、君は強い子だ。」

 

「操真さん‥‥」

 

小泉、君は偽物の魔法に頼らなくたって、

十分 強い心を持っているんだ。

例え挫けても‥‥

 

 

「かよちんっ。」

「小泉さんっ。」

 

トンっと花陽の背中を押す2人。

 

ほら、そうやって背中を押してくれる仲間がいる。

 

そして目の前には俺たちがいる。

 

迷うことなんてない。

 

勇気を出せ、小泉花陽!

 

花陽は指にはめてる

エンゲージリングを胸に置き、

口を開く。

 

 

「私!小泉花陽と言います!

1年生で、背も小さくて、声も小さくて‥、

人見知りで、得意なものもなにもないです。

でも、‥‥でも!アイドルの思いは

誰にも負けないつもりです!

‥‥‥‥だから!

μ'sのメンバーにしてください!」

 

花陽は涙目になりながら頭を下げる。

 

よく言ったな‥小泉‥

お父さん嬉しっ‥‥じゃなくて、

俺は嬉しいぞ‥。

 

俺は穂乃果達と頷き合い、

穂乃果は立ち上がり、

 

一歩前に出る。

 

 

 

「こちらこそ!

よろしくっ!」

 

 

 

手を差し出す穂乃果

そして笑顔でそう言った。

 

 

 

花陽は涙を流し、その手を掴み、

夕日に染まる彼女達に風が吹き、

2人は握手した。

 

 

 

 

「かよちん‥偉いよぉ‥グスン‥‥」

 

「なに泣いてんの?」

 

「な、泣いてなんかいないにゃ!」

 

「それで?2人は?」

 

 

「「え?」」

 

凛と、真姫は声を合わせてことりと海未を見る。

 

 

「まだまだ、メンバーは募集中ですよっ。」

 

ことりと海未は

笑顔で手を差し出す。

 

 

 

「‥っ、は、はい!よろしくお願いします!」

 

凛はことりの腕をしっかりと握る。

 

が、真姫は‥

 

 

 

 

 

「私は‥‥小泉さんの背中を押しただけです。

せっかくの、お誘い‥ごめんなさい‥‥」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って真姫は後ろを振り返り、歩き出す。

 

 

「に、西木野さん‥‥」

 

「‥‥‥‥西木野‥。」

 

 

その姿を残りのメンバーは

ただ見ることしかできなかった。

屋上を後にした真姫。

 

「私には‥‥‥‥‥

頑張ってね‥小泉さん‥‥」

 

そう呟いて彼女は誰もいない階段を

静かに降りるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「なんで断ったんだろう‥」

 

真姫の加入断りに疑問を抱くμ's。

 

 

「ちょー面倒なんすけどー?」

 

壊れた車の上で寝転ぶ黒人。

 

 

 

「ピアノは私の希望なのっ!」

 

真姫はそう言った。彼女の真実とは。

 

 

「高いとこは好きかい?化け猫ちゃん。」

 

《ランド!》

 

黄色の姿に変わるウィザード。その実力は。

 

 

 

第6話 真実とピアニスト




やべぇ、めっちゃ長い。
そしてグダグダです‥(>_<)

μ'sに入らなかった真姫!
その理由とは⁉︎

感想などをお待ちしてます(^^)

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