ラブウィザード! 〜希望の柱〜   作:しょくんだよ

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ミニミニタイム!


【騙されやすい奴】

3時間目の授業中、ちょうど小腹が減る時間だ。
小鳥がさえずり、教卓では先生が
教科書を読んで説明をしている。
そして隣のオレンジ頭は
机に突っ伏してお昼寝‥今日は平和だな‥。
ちなみに今は歴史の時間。


晴希「‥‥‥?(あれ?通知が‥。)」

そんな暇な時間はついついスマホをこっそり
いじってしまうのがたまに出る俺の悪い癖。
ラインの通知らしく、確認すると相手は
二藤攻大だった。



KO–DAI!:暇!

KO–DAI!:暇だぜ!

KO–DAI!:授業つまんねぇ‥_| ̄|○

KO–DAI!:うひょー(・Д・)


晴希「‥‥‥。」

無視しようと思ったがこのまま放置したら
何百件も通知しまくるだろう、俺は先生に
気付かれないようスマホをいじった。


晴希:うるさい

KO–DAI!:お!返信きた!(^^)
授業中にいじるとはおめーもなかなか悪だな!

晴希:じゃあ授業に戻るわ

KO–DAI!:待て待て待て!
冗談です(;_;)かまってくれ〜!

晴希:なんだよ?

KO–DAI!:単刀直入に!
何か面白いことねーか!?~_~;

晴希:あーそういえば、
さっきお前の事を好きって言ってた
女の子がいたぞ。なんか今日中に告白する
みたいな事を言ってたなーー。


軽い冗談でその文を入力した後、
しばらくしても攻大から
連絡が来ることはなかった。



ーーーー

お昼休みにて。


晴希「‥‥あれ?そういえば絵里、
攻大の奴どうした?」

絵里「攻大なら今職員室よ。
授業中、急に立ち上がって、マジかよー!
って叫んだ後、スマホ没収されて
先生に呼び出されてたわ。全くあのバカは‥。」


晴希「‥‥‥そか。」


後で謝っておこう‥。


第37話 マヨラーの祖母

とある地下通路にて。

 

 

 

 

「まさか‥‥フェニックスがやられるなんてね‥‥。」

 

 

2人の魔法使い、操真晴希と藍崎秀夜に倒された

フェニックス。不死身の能力なのにどうやって

倒されたのか、メデューサはそこが疑問に

思っていたがその疑問は背後にいる

青年によって掻き消される。

 

 

「ねぇねぇミサちゃん!どうするのこれから?」

 

 

「これからって‥‥‥?」

 

 

「だって、1人でワイズマンの意思を

実行するのは大変でしょ?」

 

 

「‥‥そう、もしかして貴方が

手伝ってくれるの‥?〝グレムリン〟?」

 

 

青年、ソラがメデューサに近寄り

そう言うとメデューサはソラのもう一つ名を呼ぶ。

するとソラは甲高い不気味な笑い声と共に

その姿を変え、爬虫類のような頭部に

全身緑色の体、〝グレムリン〟に姿を変える。

 

 

「僕、ユウゴより役に立つと思うよ?」

 

 

「‥‥‥まさかフェニックスを‥?」

 

 

「フフフフ!僕は何もしてないよ?」

 

 

もしかしたら、こいつがフェニックスを

誑かして何かしたかもしれない。

一瞬そう思ったメデューサはゆっくりと

近寄ってくるグレムリンにニヤリと笑うと。

 

 

 

「フンッ。」

 

 

「っ!ぉおっとっ。」

 

 

瞬間、メデューサは怪人態に姿を変え

目を光らせた。グレムリンは咄嗟に右へ交わすと

背後のコンクリートの壁に衝撃が走った。

 

 

「あぶないなぁ、いきなり何するのさ?」

 

 

「貴方は信用できないわ。

それに、もう()()()はいるの。」

 

 

「代わり?それって他のファントム?」

 

 

「そうね‥‥‥。

噂をすれば、来たみたいよ‥‥。」

 

 

メデューサの攻撃を交わしたグレムリンは

その代わりのファントムに興味を持つ。

すると、メデューサは何か感じたのか

地下通路の奥を見てニヤリと笑う。

グレムリンもつられて奥を除くと

黒い西洋の様な鎧を身に纏い、

仮面の様な顔の下から青く光らせた瞳が

ギラリとこちらを向く者がメデューサ達に

向かって歩いていた。

 

 

「へぇっ、見ない顔だね!新人さん?」

 

 

「ワイズマンが直々に呼び寄せた

新しいファントムよ。名前は‥‥‥」

 

 

 

グレムリンの言葉にメデューサは

そう返して名を呼ぼうとしたが、

その黒いファントムが先に言葉を放った。

 

 

 

「我はタキシム。ワイズマンの命により

お前達と共に行動することとなった。

以後よろしく頼む。」

 

 

「うっわ、堅苦しい人だなぁ。

そんなにガチガチだとやりづらくない?」

 

 

「無論、全てはワイズマンの為に。」

 

 

忠誠を誓うような騎士の喋り方に

グレムリンは若干話し辛そうになる。

するとグレムリンはタキシムではなく

メデューサに向かって口を動かした。

 

 

「この人が戦力か〜〜。

えー、僕も仲間に入れてほしいな〜?」

 

 

「‥‥だったら、それなりの働きを見せなさい。

話はそれからよ。」

 

 

仲間に入れてとおねだりするグレムリンだが

メデューサは冷たくそう言い、その場から立ち去る。

どうやら次のゲートを探しに行ったのだろう。

残ったグレムリンは突っ立っているタキシムに

声をかけた。

 

 

「‥‥そういえばタキシムさんは、

人間の頃はどんな名前だったの?」

 

 

「‥‥?我はタキシムの名だけ。

人間の記憶などない‥‥。」

 

 

「え?それはないよ〜。

タキシムさんだって絶望して生まれたんでしょ?」

 

 

ファントムは人間の中にあるゲートから

生まれ、誕生する魔物。

グレムリンは人間の頃の名を聞くが

タキシムは本当に知らないのか首を傾げる。

 

 

 

「んー名前がないのかー。

だったら僕が名前を付けてあげるよ!

タキシムだから滝川さん!滝川さんね!」

 

 

「タキ‥ガワ‥‥?

何だその名前は‥‥‥?」

 

 

「いいからいいから!

じゃあ滝川さん、僕は用があるからまたね〜!」

 

 

勝手に名を付けられたタキシムは

不思議そうにグレムリンを見るが

グレムリンは無邪気にそう言って

その場から立ち去る。

そしてタキシムが見えなくなった辺りで

人間態に戻ると、先ほどまで子供染みた顔が

急に真顔になり、地下通路の方角に振り返った。

 

 

 

 

「人間の時の記憶がないなんておかしいな‥。

あのファントム‥、何かありそうかもね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

とある噴水広場にて。

 

 

「お〜段々肌寒くなってきたな〜‥」

 

 

「ったくだらしないわねー。

あんた男なんだからこれくらい平気でしょ?」

 

 

「そうですよ晴希。

このくらいで寒いと言っていては

冬は乗り切れませんよ?」

 

 

「ぐっ、俺は寒さに弱いんだよっ。」

 

 

休日、俺こと晴希は園田海未と

新曲の衣装作りの生地を取りに行く為、

仕立て屋の近くの噴水広場で南ことりと

現地集合で待ち合わせをしていた所、

矢澤にこと偶然出くわし、彼女も暇してたので

一緒に来てもらおうと思っているのだが

10月となると寒さが増して薄着の長袖で

来た俺はかなり堪えていた。

それをにこと海未がだらしないと言ってくるが

‥俺は寒がりなんだから仕方ねぇだろ。

 

 

 

「‥‥‥‥あぁあっ!!?」

 

 

「「「え?」」」

 

 

すると広場のベンチからかなり驚いた声が聞こえ

俺達は振り返るとそこにちょいと

オシャレをしている二藤攻大の姿があった。

 

 

「‥‥こ、攻大‥‥?なんだその頭‥?」

 

 

「てゆか、こんなところで何してんのよ?」

 

 

いつもワックスでかましてるライオンヘアの

頭なのに今日はワックスも何もつけてないのか

髪を下ろしてその手には手鏡と一輪の花を

持っていた。俺から言わせばその頭は気持ち悪い。

そんな感じで俺は攻大を見ているとにこが

別の質問をしていた。すると攻大は

ニヤニヤとにやけだし小さくこう言った。

 

 

「い、いや〜実は今から待ち合わせで‥

ことりちゃんと‥。」

 

 

 

「ほー、ことりと待ち合わせか‥‥って」

「「「えぇっ!!?」」」

 

 

デートの待ち合わせかと思い俺は

軽く流そうとしたが

待ち合わせ、そして相手がことりという

言葉が脳内で暴れまわり、そして

にこと海未と共に驚愕する。

 

 

「だっはははぁ〜!急に呼び出されちゃってさぁ!

分かってるって皆まで言わなくていい〜!

まさかことりちゃん、俺に気があったなんてな〜。

まぁそんな僻むな君たち。

いや〜モテる男はつらいぜぇ〜!」

 

 

 

「し、信じらんない‥‥。」

 

「‥え、でも、ことりは俺達と約束が‥。」

 

 

どうやらあのテンションだと本当に

待ち合わせらしく、俺は一度スマホを取り出して

先ほどからことりと連絡していた画面を開くと

『もうすぐつく!』と新着メールが届いていた。

待ち合わせ場所はここで合ってるはず、

なのに攻大を呼び出すなんて一体何考えてるんだ?

俺は首を傾げながらにこと海未を見るが

2人も同じ気持ちなのだろう。すると。

 

 

 

「攻大君☆」

 

 

「‥き、きた!?‥‥お、おうっ!!」

 

 

 

その本人が来たのだ。

甘々しい声が攻大の名を呼び、攻大は

緊張しながら振り返るとそこに立っていたのは

私服姿で満面の笑みを浮かべたことりだった。

笑顔で手を振ることりに攻大は先ほどから

気持ち悪いほどのニヤニヤをかましていた。

‥え?これガチなん?

俺は本当に一瞬そう思ってしまったが

その予想は大きくずれたのだ。

ことりが手を振り終わると一歩右へと移動する。

すると、ことりの背後から現れたのは

白髪で和服を着ているお婆さんが立っていた。

 

 

 

「攻大!」

 

 

 

「っ!!ば、婆あちゃんっ!!!!?」

 

 

 

「「「婆ちゃん!?」」」

 

 

そのお婆さんを見た攻大は一気に

笑顔が失せて怯えた顔で叫んでいた。

とゆか、え?婆ちゃん‥‥?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「何日も外国に行ったっきり

帰ってこないかと思えば、秋葉原に居ただなんて、

しかも勝手に学校の入学手続きを済ませて

通っているらしいじゃない。

攻大、一体どうゆうことか説明しなさい。」

 

 

「あーいやあの‥えと‥忙しくて‥な。」

 

 

 

 

 

 

「凄く厳しそうな祖母ですね‥‥。」

 

「ことり、何で攻大のお婆ちゃんと

一緒にいたのよ?」

 

 

「う、うん‥。ここに来る途中で

道に迷っていたお婆ちゃんを見かけたの。

道案内をしてる内に話していたら

攻大君のお婆ちゃんだったから、

ついでにと思ってこの公園に攻大君を呼んだの。

攻大君ってすっごいお金持ちのお家らしいよ?」

 

 

「え、マジデ?」

 

 

奥のベンチで話している祖母と攻大。

その隣で俺と海未とことりとにこは

背を縮めてヒソヒソと話していると

いきなり祖母の声が大きくなり

俺達はビクッとなってしまう。

 

 

「遊んでいるなら、今すぐ福井に帰って来なさい!」

 

 

「あ、あの‥‥。」

 

 

 

先ほどから怒られているのか

しょんぼりしている攻大、それを

フォローしてくれるかの様に

海未が祖母に声をかけた。

 

 

 

「急に割り込んでしまってごめんなさい。

あの、‥‥二藤君にも実は事情がa」

 

 

「だぁ!?ちょちょちょちょちょい!!

うみー!うみうみー!」

 

 

「むぐっ‥‥!?」

 

 

海未が事情を言いかけた瞬間、

攻大は慌てて海未の口を塞いで祖母から

少し離れた場所へ連れ込むと攻大は小さい声で

海未に話した。

 

 

「頼む、俺が魔法使いだって事は、

婆ちゃんには内緒にしといてくれ‥‥。」

 

 

「え‥‥?な、何でですか‥?

大体、攻大が隠し事をしているから

先ほどから怒られてるんですよ?

せっかく福井からここまで来てくれたのに」

 

 

「海未、考えてみろ。

ファントムを食べなきゃ死ぬって

親に言えるか?‥‥てか、攻大。ちょっと。」

 

 

焦る攻大に海未は少し怒り気味に口を動かすが

そこへ俺が気付いていない海未に声をかけると

海未はあっ‥と声を漏らす。

そして俺は攻大を手招きして海未からも

遠ざからせると、俺は小さい声で口を動かした。

 

 

「あれって転生後の祖母で合ってるんだよな?」

 

 

「あ、あぁそうらしいぜ。

最初は訳分からなかったけど神のおっちゃんから

話聞いてな‥‥一応話は通ってるんだけど

すっげえ面倒くさいんだよ‥‥‥。

晴希のところもいるんだろ?」

 

 

攻大の言葉に俺は前まではなと小さく頷き、

攻大は察したのか俯いてしまう。

俺も転生してからの記憶は穂乃果達と出会う

前の記憶だったが、どうやら転生後の

この体には生まれた時からの記憶があるらしく

俺には父さんと母さんがいた。

だけど小学生の頃に交通事故で死んでしまった。

だが俺はこちらの世界の父と母に死ぬ間際に

最後の希望を貰い、そのおかげで俺は

一歩強くなり、ドラゴンの力を手に入れた。

攻大も同じ感じって事はもしかしたら

秀夜もそうなのだろうか‥‥。

 

 

「ちょっと、何ボソボソと話してんのよ。

あんたのお婆ちゃんどうするのよ?」

 

 

俺と攻大で会話をしていると背後から

にこが顔を出してそう言ってきた。

理由はともかくお婆さんを待たせては悪い。

俺もどうするかとぼやいて攻大を見ると

攻大は暗い表情で口を動かした。

 

 

「クソォ‥‥転生‥‥じゃなくて

魔法使いだってことがバレたら‥‥‥‥怒られるぅ!

すげー厳しい婆ちゃんなんだよぉ〜‥。」

 

 

「だからってこのまま放っておくのもダメでしょっ。

それで、あんたこれからどうする気?」

 

 

「んなこと決まってんだろ‥‥。」

 

 

叱られる子供みたいな顔をする攻大に

俺とにこは呆れた顔をするが、

こちらを睨んでる祖母を見てにこは

選択を急かす。すると攻大は何か策でもあるのか

ニヤリと笑い‥。

 

 

 

「バックれる!!」

 

 

 

「あ、ちょっ!?攻大っ!」

 

「攻大っ!!」

 

「攻大君っ!?」

 

「あー逃げやがった。海未、お婆ちゃん頼むわ。」

 

 

「え、えぇっ!?ちょ、晴希っ!?」

 

 

 

全力で駆け出した攻大の後をにことことりは

追いかけ、俺はお婆さんを一人にしてはまずいと

海未に残らせて攻大の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

使われていないトレーニング場にて。

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥。」

 

 

トレーニング場内では体育系のタンクトップの

男性が土嚢を積んだ台を鎖で繋げて

ギシギシと金属音を鳴らしながら

降ろし上げをしていた。

 

 

「頑張っているわね、〝ワータイガー〟。」

 

 

「‥‥メデューサ様‥‥、ハァ!」

 

 

そこへメデューサが現れタンクトップの男性に

声をかけると男性は両手をクロスさせ、

勢いよく振り下げると同時に吠える仕草をする。

すると虎かシャチの様な姿をした

〝ワータイガー〟になる。

 

 

「今朝ゲートを見つけたの、力を貸してくれる?」

 

 

「分かりました‥‥‥。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

再び噴水広場にて。

 

 

 

「お婆さん、撮りますよー?

ハイ、チーズ。」

 

 

海未の合図で初めて来た秋葉原の景色に

見とれていた攻大の祖母、敏江は振り返る。

すると、パシャリとシャッター音が鳴り

どことなく新鮮な1枚がデジカメに収められた。

 

 

「よかったです。少しでも気晴らしになって。」

 

 

「えぇ?」

 

 

「あ、いえ。せっかく秋葉原に

来ていただいたのですから、二藤君が戻って

くるまでここ周辺を見物をしてみましょう。

私が案内しますよ。」

 

 

敏江から逃亡した攻大を晴希とことりとにこは

追いかけるため一旦離れ、残された海未は

持っていたデジカメを使って敏江に

秋葉原の魅力を知ってもらおうと話していた。

 

 

「ごめんなさいねぇ、こんな可愛い

海未ちゃんにまで気ぃ使わせちゃって‥

‥本当にあの子ったらもう‥‥。」

 

 

「い、いえそんな!二藤君には

いつもお世話になっていますので‥‥。」

 

「あ、そうだ。」

 

珍しく積極的に話す海未だが褒められるのは

慣れてないのか頬を赤らめながら軽く

そっぽを向くと、敏江は何か思いついたのか

持ってきた鞄に手を入れた。

 

 

「これよかったら、お守り。

蛙だから無事に帰る、よーく効くわよ〜。」

 

 

「あ、ありがとうございますっ。」

 

 

渡されたのは蛙の形をした折り紙だった。

手先が器用なのか綺麗に折られており

敏江はそう言いながら海未に渡すと

海未ははにかみながらも受け取った。

 

 

 

 

「‥‥お前が()()()か?」

 

 

「え‥‥‥?」

 

 

だが突然そこへ、先ほどメデューサと

対話していたワータイガーが姿を現す。

ワータイガーは敏江の姿をはっきり確認すると

腰をかがめ両手をクロスし、吠える様な仕草をする。

 

 

「絶望してファントムを生み出せ‥!」

 

 

 

「うわぁあああっ!?」

 

「っ!?ファントム!

お婆さん!逃げましょう!

さ、こちらです!」

 

 

そしてその姿を怪人態に変え、

敏江と海未に近付こうとする。

敏江と海未は驚き、老人である敏江は

腰を抜かしかけるが何度もこの状況を経験

している海未は冷静に判断し、

無理に走らせないよう小走りでその場から逃げ出した。

 

 

「ひぇえ‥‥!!」

 

 

「大丈夫です、大丈夫です。こちらへ!」

 

 

いきなりの怪物に驚く敏江だが

海未は安心させながら物陰に隠れ、急いで

スマホを取り出し、晴希に連絡を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

「い〜や〜だ〜〜〜〜!

絶対行かねえ〜〜!!」

 

 

「何子供みたいな事言ってんの‥‥!

いいから!行くわよー‥‥!」

 

 

「攻大君、おねがぁい☆」

 

 

「い、嫌なもんは嫌だっつーの〜〜〜!!」

 

 

 

「あー、あー、何やってんだか‥‥‥ん?」

 

 

噴水広場から少し離れた所にて、

追い詰めた攻大だが木に捕まって先ほどから

離れようとしない。仕方なくにこは

引っぺがそうとするが余程会いたくないのか

吸盤みたいにくっついて木から離れようとしない。

ことりの必殺のお願い攻撃ですら

ビクともしないとはこりゃ相当行きたくないらしい。

俺はため息を吐きながらその場を見ていると

スマホの着信が鳴り、取り出し画面を見ると

相手は海未からだった。

 

 

「もしもしどした?‥‥‥え?

お婆ちゃんがゲートっ!?」

 

 

 

「っ!!なにっ!!?」

 

 

「どわぁ!?」

「ピイッ!?」

 

 

俺は通話に出るとかなり深刻な声をした

海未がファントムに追われていることと

お婆ちゃんの敏江がゲートだって事を知らされる。

俺は口にしてその事情を繰り返すと

木にしがみついていた攻大は聞こえたのか

バッと木から手を離し、引っ張っていた

にこはことりを巻き添えに豪快に転んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

「さぁ!かくれんぼは終わりだ。」

 

 

「‥‥‥っ!」

 

 

晴希との通話を終え、晴希達が来るまで

身を隠そうとした海未と敏江だがあっさりと

見つかってしまいジリジリと近寄るワータイガー。

 

 

「やるしかないようですね‥‥!

参ります!たぁっ!」

 

 

後がないと思った海未はその辺に落ちていた

少し太めの木の棒を握りしめ剣道の様に

ワータイガーに向かって木の棒を振り下ろした。

だが相手は怪物。振り下ろした

木の棒は当たりはするがあっけなく折れてしまう。

 

 

「っ!?」

 

 

「ふん、邪魔だ。」

 

 

「きゃあっ!!」

 

 

ワータイガーは海未を掴むとプロレスの要領で

肩に海未の身体を乗せ、軽々と投げ飛ばした。

 

「海未ちゃんっ!?」

 

 

「もう逃げられないぞ‥‥。」

 

 

「‥‥‥っ!!」

 

 

投げ飛ばされた海未に向かって敏江は叫ぶが

ワータイガーはもうすぐそこまで狭まっている。

敏江は抗おうと睨み返していたその時だった。

 

 

 

「‥‥ぐぉっ!!」

 

 

「婆ちゃんっ!!」

 

「攻大っ!?」

 

 

「海未っ!」

「海未ちゃんっ!!」

 

 

ワータイガーの背中から火花が飛び散り

ワータイガーはその場に転ぶと

その先の後ろにはウィザーソードガンを

銃モードで構えた晴希が立っており

攻大は敏江を、にことことりは海未の名を呼び、

にことことりは海未と敏江の元へと駆け寄った。

 

 

「毎度毎度、嫌なタイミングで来るな。

行くぞ攻大!」

 

 

「皆まで言わなくていい!おう!」

 

 

俺は攻大にそう言いながら攻大と共に前に立ち

予め出していたウィザードライバーの

シフトレバーを上下に動かした。

 

 

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

 

 

「変〜‥‥あ‥‥‥っ!!?」

 

 

「‥‥‥‥?」

 

 

 

「変身。」

 

 

《フレイム!・プリーズ

 

ヒーヒー・ヒーヒーヒー!!》

 

 

ウィザードライバーから待機音声が流れ

攻大も予め出していたビーストドライバー、そしてビーストリングを付けて変身しようと

していたが、急に掲げてた手を収め、

腰に巻きつけてるビーストドライバーを隠したのだ。

それを見た敏江は首を傾げるが

その間に俺はフレイムリングのバイザーを下げて

ドライバーにソレをかざすと音声が鳴り響き、

俺の横から出現した魔法陣が身体を通り抜ける。

そして俺は仮面ライダーウィザードへと姿を変え、

先にワータイガーへと駆け出したのだ。

 

 

「おい!お年寄りは大切にするもんだって

パパに教わらなかったか?」

 

 

「生意気な口を‥‥‥デァッ!!」

 

 

ウィザーソードガンを剣モードに変え

ワータイガーに振り下ろすが受け止められる。

その間にウィザードはそう言うと静かにキレた

ワータイガーがウィザードの腹部を蹴って

距離をとると隣に置いてあった

ウォータークーラーを軽々と持ち上げ

ウィザードに放り投げてきた。

 

 

「ハァッ!!」

 

ウィザードはウォータークーラーを

ウィザーソードガンで斬りつけると辺り一帯に

水を撒き散らしてしまうがウィザードと

ワータイガーは関係なく交戦する。

 

 

「お婆ちゃん!大丈夫!?」

 

 

「え、えぇ‥、あれは‥一体‥‥?」

 

 

「晴希は、怪物から私達を守る魔法使いなんです。」

 

 

ことりは敏江の安否を確認するが

海未のおかげで無傷のようだった。

敏江は戦っているウィザードを何者か聞くと

にこに支えられながら海未はそう答えた。

 

 

「ちっ!指輪の魔法使い!面倒をかけさせるな!」

 

 

ウィザードがいてはゲートを絶望させるのは

難しいと判断したワータイガーはグールの

魔法石をばら撒き、地面から湧き出た

グールの群れで敏江達を襲わせようとした。

 

 

「あ〜もぉ‥‥!‥くそっ!」

 

 

敏江の前では変身できない攻大は

遠くの物陰に隠れて状況をちらちらと見ながら

ビーストリングを見つめた。

 

 

「あぁ‥‥!変〜〜身‥‥!」

 

 

《SET!Open!!

 

L!・I!・O!・N! ライオーン!!》

 

 

座り込みながら攻大は小さく魔法の言葉を

言いながらこれまた小さく両腕を回し

左のリングスロットに変身リングをはめ込み

やりにくそうに回転させると

リベレイションズドアが展開され、

その中からキマイラオーサーが現れる。

そして一際テンションの高い音声が鳴り

座った状態で真正面に魔法陣が現れ

攻大の身体を通り抜けると攻大は

仮面ライダービーストへと姿を変えた。

 

 

 

「「「「ーーーーッ!」」」」

 

 

広場では既にグールの群れが敏江達に

近づいておりウィザードは助けに行こうにも

ワータイガーに邪魔をされる。

そして一体のグールが槍を振りかざそうとした時だった。

 

 

「どぉりゃあっ!!」

 

 

「「「‥‥あっ!」」」

 

 

そのグールの背後からビーストが

ダイスサーベルを使って斬りつけたのだ。

敏江の前で魔法使いを言うなと言っていた

攻大が変身しているのを見て海未とことりと

にこは思わず声を漏らしてしまう。

 

などと言っている内にビーストは一気に

群がっているグールを一掃させ魔力を

取り込んでいると敏江が恐る恐る

海未達に聞いてみた。

 

 

「あ、あれも‥魔法使い‥‥?」

 

 

「あ、いや‥え〜と‥。」

 

 

「フン!お前か、ファントムを喰わなきゃ

死ぬという魔法使いは!」

 

 

「そのとおーり!‥‥あ‥‥‥‥‥。」

 

 

敏江の言葉にどう返していいのか分からない

海未達は知らないフリをしていると

ウィザードと交戦していたワータイガーが

ビーストに向かってそう言っていた。

ビーストはいつも通りに威勢良く言おうとしたが

背後にいる敏江の事を思い出して急に押し黙る。

するとビーストは軽く咳払いをすると跳躍し、

見晴らしのいい所で着地し、振り返ると‥。

 

 

 

 

 

 

 

「そうよ❤︎私が、噂の魔法少女!❤︎

ビーストよっ❤︎」

 

 

 

 

「はい!❤︎」キラーン☆

 

 

【1カメラ】

 

 

「うふっ!❤︎」キュピーン☆

 

 

【2カメラ】

 

 

「アハハー!❤︎」シュバーン☆

 

 

【3カメラ】

 

 

 

 

 

 

「「「え‥‥。」」」

 

 

「ま、魔法少女‥‥?どわっ!?」

 

 

 

突然甲高い声でビーストはそう名乗り

決めポーズを取ると海未とにことことりは

かなりのドン引きをしており、

ウィザードも仮面の下では凄い顔をして

そう呟くと、油断してしまいワータイガーに

吹き飛ばされる。

 

 

 

「私が貴方をパクッと、食べてあげるわ❤︎」

 

 

「‥‥何だ、お前気持ち悪いぞ。」

 

 

「悔しい〜!❤︎えぇーいっ!❤︎」

 

 

さすがのワータイガーも思わず口にして

そう言うがビーストはぶりっ子少女みたいに

両手を口の下辺りに持ってきて可愛子ぶり、

キモい声を上げて高台から飛び降りた。

 

 

「とぉっ!❤︎」

 

 

「ぐっ!?」

 

 

「やぁ〜!プリッ❤︎」

 

 

「うぉっ!?」

 

 

「はーい!くるくるくるくる〜!❤︎」

 

 

「どぉあっ!?」

 

 

不思議とビーストとワータイガーの一帯だけ

妙に輝いており、変なBGMが聞こえてくる。

ビーストは華麗で優雅に、そしてプリッとした

お尻を突き出してダイスサーベルを

新体操のリボンのように攻撃し、

ワータイガーはやりにくいのか攻撃を

食らい続けていた。

 

 

「‥‥いやマジか‥‥マジで!?」

 

 

ウィザードも調子狂いそうに武器を振り回し

ビーストと共にワータイガーを攻撃する。

 

 

 

「はぁっ!」

 

「はぁい❤︎」

 

 

「ぐぉあっ!」

 

 

 

「ん〜‥ちゅば❤︎うふふっ❤︎」

 

 

「‥‥‥‥‥マジだ‥‥。」

 

 

吹き飛ばしたワータイガーに

投げキッスをするビーストにウィザードは

痛い子を見る目でそう言った。

 

 

「ぐっ、2人相手じゃ部が悪い!とぉ!」

 

 

「あっ!待て!」

 

 

ワータイガーは胸元を抑えながら言い放つと

その場から跳躍してどこかへと姿を消した。

ウィザードは追いかけるのをやめて

変身を解き、隣の魔法少女をチラリと見た。

 

 

「う、ぅぉおえええええ‥‥‥。

うぅ‥、あー疲れた‥‥もう無理‥‥‥。」

 

 

本人もその気でやったわけではないらしく

四つん這いになって気持ち悪そうにしてるのを

俺は汗を垂らしながら見たが、

すぐに敏江の場所へと走った。

 

 

「大丈夫ですか?お怪我は?」

 

 

「え、えぇなんとか‥‥‥‥。」

 

 

「っ!!‥‥‥‥。

んんっ!じ、じゃあ!私はこれで❤︎

バイバーイ❤︎バイビー❤︎」

 

 

俺は敏江の元に駆け寄り様子を聞くと

敏江は大丈夫だと言ってビーストの背後姿を見た。

ビーストは視線を感じたのか恐る恐る振り返ると

咳払いをし、また魔法少女の口調に戻り、

その場から走って姿を消した。

そしてその光景を高台からソラが見下ろしていた。

 

 

「なるほど、今度のゲートはビーストの

お婆ちゃんか、フフッ。」

 

 

「グレムリン、何か見つけたのか‥?」

 

 

ソラが何か思いついたのかクスクスと笑うと

その背後からタキシムが声をかける。

 

 

「あ、滝川さん!ちょうどよかった。

滝川さんにも手伝ってもらいたいんだっ。

あと、僕の名前はソラだよっ。」

 

 

「‥‥?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その夜、神田明神にて。

 

 

 

「‥‥‥‥はぁ。」

 

 

「お、いたいた。よっ。

てか、お前も一緒に食べていけばよかったのに。」

 

 

焚き火をして1人寂しくカップ麺を食べてる

攻大に俺は声をかけて攻大の隣に座ると

攻大は食べるのをやめて口を動かした。

 

 

「あそこに居たくなかったからだよ。

つーか、何で来たんだよ?」

 

 

「いいじゃねーの。たまにはこうして

男同士で語ろうぜ?」

 

 

「その言い方きもちわりぃぞ?」

 

 

「魔法少女のお前に言われたくないな。」

 

 

あの後、ゲートである敏江を1人にさせたら

まずいと思い、敏江は奈々城コヨミの家に

泊まらせた。コヨミの両親は都合により

海外で仕事をしているらしく今現在コヨミは

祖父の代から住んでいる骨董屋で

一人暮らしをしている。

コヨミは全然問題ないと言っていたが

いきなり押しかけていきなり預けるのも

アレだからと言って海未も一緒に泊るらしく、

先ほどまで数時間前まで攻大と俺もいたのだが

やはり祖母の事が苦手なのか途中で

痴話喧嘩し始め攻大は出て行ってしまったのだ。

で、俺はコヨミの家で用意された晩御飯を

ご馳走になって攻大の後を追い、攻大が

いつもいる神田明神に来た、とゆうわけだ。

 

 

「なぁ、攻大のお婆ちゃんってどんな人だったんだ?」

 

 

「‥‥俺の覚えてる記憶だと、子供の頃から

やたら厳しくて、なんか怒られてばかりだったんだよ。

やる事なす事全部反対しやがってさ‥。

だけど不思議だよな‥、転生前の人生と

転生後の人生を両方生きた感覚で最初は

かなり気持ち悪かったぜ‥‥。」

 

 

「‥‥あぁ、そうだな。

だけどこんな経験絶対ないから

俺は得したと思ってるぞ。

‥そうだ、お前の転生前ってどんな感じだった?

おぼえてるか?」

 

 

こんな話をできるのは同じ転生者である

攻大、もしくは秀夜だけかもしれない。

俺は攻大の転生前の人生を聞くと

攻大は気まずそうに語り出した。

 

 

「俺、旅行とか大好きで、金貯める為に

高校卒業した後すぐに就職したんだよ。

だけど社会は厳しくてさ。

仕事を終えて、疲れて帰って、寝たらまた仕事。

その繰り返しでさ。もぉ、疲労が溜まりに溜まって。

それで、ある日事件が起きたんだ。

睡魔にやられそうな状態でトラックを運転したら

いきなり学生が飛び出してきてよ‥。

思い切り轢き殺したんだ‥‥‥。

その後俺は思わず逃げて‥‥気が付けば、

海の近くまで来ていた。」

 

 

「‥‥‥あ〜分かった。

その後の状況は大体読めた。」

 

 

攻大の転生前の過去を聞いて

俺はその後の状況が予想でき

無理に喋ってもらうのはいけないと思い

俺は片手を上げてそう言った。

恐らく自殺したんだろう‥。

 

 

「だけどなんか奇遇だな‥。」

 

 

「何がだ?てか、俺喋ったんだから

晴希の過去教えろよ。」

 

 

「あ、あぁ。まぁ単純にまとめたら

見た目ブサイク頭も運動もよくない

冴えない高校生生活をおくってて

ある日道路に飛び出した子供を庇って

トラックに轢かれた‥‥そんな感じだ。」

 

 

「そうなのか‥‥てか奇遇だな、俺がはねた時、

その学生、小さい子供を庇ってたぞ?」

 

 

 

俺と攻大はそれぞれの転生前の過去を話し、

お互いが妙に共通点を持っていた。

そして2人は顔を見合わせ、同じ動作で

焚き火を見る。

 

 

「‥‥‥ま、まさかな!」

 

「そ、そだな!ありえないありえない!」

 

 

なんか聞いてはいけない事を聞いてしまった

2人は無理矢理話を終わらせて本題へと戻った。

 

 

「‥‥なぁ、晴希。俺の代わりに

婆ちゃんを福井までおくって帰ってくれないか?

‥‥‥‥頼む。」

 

 

「‥‥ったく、しょーがないな。」

 

 

落ち着きを取り戻した俺と攻大。

そして攻大は真剣な表情で頼み事を

お願いしてきたので俺は笑いながら了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

コヨミの家にて。

 

 

 

「すみませんねぇ、こんなことまで

させてしまって‥‥。」

 

 

「あ、いえ。お気になさらないでください。

私が好きでやっているだけなので。」

 

 

「うふふ‥‥、本当、海未ちゃんは

肩のマッサージが上手だねえ。」

 

 

敏江と海未はコヨミの家に泊まり、

今使っていない空き部屋で海未は敏江の

肩叩きやマッサージなどをしていた。

海未は敏江と仲よさそうに話していると

昔を思い出したのか少し語り出す。

 

 

「私、小さい頃お婆様が居ました。

いつもマッサージしたりご飯を一緒に

作ってたりして本当大好きでした。

中学生の頃にお亡くなりになりましたが、

凄く可愛がってもらえて‥‥。」

 

 

「そぉ‥‥お婆ちゃんの事大好きだったのね。」

 

 

「はいっ。」

 

 

笑顔で語る海未は本当に大好きだったのだろう。

敏江が聞くと大きく頷き、海未はちょっと

思い出したのか窓の外を少し眺めていた。

 

 

「羨ましいわあ、私は孫に好かれていないから‥。」

 

 

「そんなこと‥、二藤君は幼い頃

どんなお子さんだったのですか?」

 

 

海未はマッサージしながらそう聞くと

敏江は少し息を吐いて口を動かした。

 

 

「攻大は小さい頃からやんちゃでね、

木にロープを括り付けてターザンごっこをしたり

脚立を使って屋根の上へ登ろうとしたり、

1人で川の畔に行こうとしたり、‥‥

‥本当に危なっかしい子だから

口やかましくせずにはいられないのよ‥。」

 

 

「そ、そ、それは大変だったでしょう‥‥?」

 

 

敏江は攻大の昔話を語ると海未は苦笑いして

目が泳いでいた。海未も小さい頃、穂乃果と

出会ってからは、ことりと一緒に

ほぼ同じことをしたからである。

‥‥否、強制的にさせられたからである。

 

 

「疎んじられても、当然かしらね‥‥。」

 

 

「お婆さん‥‥‥、そんなことありません。

二藤君が福井に帰ってくれと言ったのは

秋葉原よりずっと安全だからだと思うからです。

それにちゃんとお婆さんを助け‥‥あ。」

 

 

「え?」

 

「あ、いえいえ!と、とにかく

二藤君はお婆さんの事、

疎ましいなどと思ってませんよ。私が保証します。」

 

 

「‥‥海未ちゃん、ありがとねぇ。」

 

 

優しい海未の言葉に敏江は少しだけ、

安心の笑顔を見せたが、そのどこかでは

不安の顔を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

使われていないトレーニング場にて。

 

 

 

「‥‥あのゲート、どうやって絶望させるか‥。‥ん?」

 

 

指輪の魔法使いの邪魔が入り、

一度撤退したワータイガーは作戦を練っていた。

このままではメデューサに合わせる顔がない。

そんなことを考えていると、入り口の扉が

開く音が聞こえる。

 

 

「悩んでるみたいだね、井川君?」

 

「‥‥‥‥。」

 

 

「‥‥誰だお前逹は?俺をその名で呼ぶのは

ウワァ!」

 

 

そこへ入ってきたのは人間態のソラと怪物態の

タキシムだった。井川とはワータイガーの

元は人間の時の名前なのだろう。

その名で呼ばれたワータイガーは

吠える仕草をすると怪物態へと姿を変える。

だかソラも甲高い声で笑いながら怪物態となり

タキシムと共に近付く。

 

 

「僕はソラ。で、こっちは滝川さん。

この姿では2人とも初めましてだよね?」

 

 

「ファントムか‥‥、一体何のようだ?」

 

 

「無論、ゲートの絶望の手助けだ。」

 

「‥‥何?」

 

 

グレムリンが自己紹介をすると

同じファントムと確認したワータイガーは

警戒を解き、要件を聞くとタキシムが答えた。

 

 

「ビーストは、自分が魔法使いだって事を

お婆ちゃんに知られたくない、これって

使えると思わない?フフフフッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

翌日の朝、一般道にて。

 

 

 

「ごめんなお婆ちゃん。

一緒に帰るのが俺たちで。」

 

 

「いえいえ、あんな出来損ないよりも

よっぽど心強いわぁ。」

 

 

「‥‥攻大、せめて駅までお見送りに

来ればよかったのに‥‥。」

 

 

翌日、学校に行く前に敏江を福井へ帰らそうと

俺と海未で駅まで見送りに行っている途中。

俺は攻大に頼まれ駅に見送るが、海未も

どうしてもと一緒について来ていた。

遅刻しそうになったら変身して飛んでいけば

ギリギリに間に合いそうだな。

そう思っていると海未がボソッと攻大の事で

呟く。

だが、俺たちが気付かなかった。

俺たちの背後からめちゃくちゃ怪しい格好で

後をつけてきている攻大がいたことを。

 

 

「‥‥駅まで、駅まで駅まで‥‥‥。」

 

 

 

そして、歩くこと数分。

老人をこのまま歩かせるのは負担がかかるので

駅まではバスを使うことにした。

ちょうど終点が神田駅のバスがバス停に到着し、

数名の客と怪しい男、そして海未は敏江を

ゆっくりとバスの中へ入れ、俺は念のため

ファントムがいないか辺りを確認する。

 

 

「‥‥いないな、よシブッ!?」

 

 

俺はそう言ってバスに乗り込もうとした

瞬間だった。突然顔に強い衝撃が走り

俺はその場に倒れてしまう。何が起こったのか

分からない俺は顔を上げると、

バスのドアが閉まっていたのだ。

 

 

「え、ちょ!?運転手さん!?

俺、乗る!乗りますよー!?もしもーし!」

 

 

ププーッ!

 

 

俺は何度もドアを叩いてそう言うが

バスはクラクションを鳴らしてそのまま

走り出したのだ。

 

 

「‥‥‥うそーん。」

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

バスの中にて。

 

 

 

「ちょっ、あの、運転手さん!?

まだ乗客していない人がいましたよっ!」

 

 

「‥悪いが乗せるわけにはいかん。」

 

 

晴希が置いてかれたのを見た海未は

急いで運転手に声をかけるが、

どこかで聞き覚えのある声で返された。

そして運転手が海未に振り返ると、

海未は驚愕した。

 

 

「‥‥ハァッ!」

 

 

「っ!?」

 

 

「「「キャーーッ!!」」」

「ば、化け物!?」

 

 

吠える仕草をして怪物態へと姿を変えた

ワータイガーだったからだ。

その姿を見た攻大は思いきり口を開けて驚き

乗客の皆も悲鳴をあげて困惑する。

ただ1人、アイマスクとヘッドホンをかけて

爆睡している少年を除いて。

 

 

「今度こそそこのゲートを絶望させてやる!

むぅん!」

 

 

ワータイガーはそう言うと思いきり

スピードを上げ、ハンドルを右往左往へと

切り始める。立っていた海未はバランスを崩して

右へ左へと大きくよろめき、乗客も敏江も

必死にしがみついていた。

 

 

「うおっ!?」

 

 

「zzZ‥‥‥。」

 

 

「くっそ!何でこの乗客こんな状況で寝てんだよ!」

 

 

攻大も必死に手すりにしがみついてると

隣に乗っているアイマスクとヘッドホンを

かけた少年は大きく揺さぶられながらも

爆睡していた。それにつっこむ攻大。

 

 

「フン!」

 

しばらくするとワータイガーはグールの魔法石を

取り出し、乗客の足元にばら撒いた。

するとそこから3体のグールが湧き出て

槍を構えると乗客は更に悲鳴を上げて怯え出す。

 

 

「っ!このままでは‥‥‥!!」

 

 

グールを見た海未はそう言って敏江の方を見る。

今動けるのは私しかいない。

そう思った海未は昨日敏江から貰った

蛙の折り紙を取り出し、決意すると。

 

 

「はぁああああっ!!‥‥きゃあっ!?」

 

 

「っ!海未ちゃんっ!!」

 

 

勇気を出して1体のグールの懐へ突っ込んでいく。

バスの揺れもあり少しよろめくグールだが

すぐに体制を立て直し、持ち手の槍の刃の付いてない

部分で海未を突き飛ばすと、海未は

敏江の座ってる席まで飛ばされてしまう。

 

 

「‥だあっ!くそ!おぉりゃあっ!!」

 

 

変装した攻大は声を荒げると席から飛び上がり

近付くグールへと蹴りを入れた。

グール3体はよろめくがすぐに立ち上がり

反撃に出ようと狭いバスの中で

槍を振りかざしてくる。攻大は乗客や敏江、海未に

当たったらまずいと思い、自ら

刃の付いていない部分に当たりに行き、

攻撃を防いでいた。

 

 

「(くそ‥!変身すれば‥!?)どあっ!?」

 

 

「‥‥‥っ!こ、攻大!?」

 

 

「攻大!?いつからバスに!?」

 

 

「え‥‥だっ!?しまっ‥‥!!」

 

 

そう思っていた刹那、攻大はグールに顎辺りを

思いきり殴られバスの床に転んでしまう。

そして敏江と海未は攻大だと知ってしまった。

何故だと思い、攻大は顔に手を当てると

ボンバヘアのカツラと帽子とグラサンが

先ほどの攻撃で飛ばされた事に気付き

慌てて顔を隠そうとするが、そんな時間はなかった。

 

 

「「「ーーーッ!!」」」

 

 

「ひいっ‥!?」

 

 

 

「‥‥‥!うがぁっ!!どけっ!おらっ!」

 

 

敏江に近付いていくグール3体。

悲鳴を上げる敏江を見て、攻大は止む終えず

グール3体を敏江から離れさせ運転席側へと

蹴り飛ばした。

 

 

「攻大‥‥!?」

 

 

「わり、婆ちゃん。説教は後でな。」

 

 

 

 

《ドライバー オン!》

 

 

攻大は敏江にそう言いながら

ドライバーオンリングをかざす。

そしてビーストドライバーを出した攻大は

ビーストリングを左中指に取り付け、

バスの天井に当たらないよう頭上に勢いよく掲げる。

 

 

 

「変〜〜〜〜〜身っ!!」

 

 

長々しく魔法の言葉を言いながら

両腕を席に当たらないよう大きく回し、

勢いよくCの文字を表すポーズで右に身体を傾け

左のリングスロットにビーストリングをはめ込み、

回転させるとリベレイションズドアが展開され

その中からキマイラオーサーが現れる。

 

 

「おらぁっ!!」

 

 

《SET!Open!!

 

L!・I!・O!・N! ライオーン!!》

 

 

 

テンションの高い音声が鳴り

掛け声と共に攻大は両手を広げると

真正面に魔法陣が現れ攻大の身体を通り抜ける。

そして攻大は仮面ライダービーストへと

姿を変えた。

 

 

 

「っ!またお前か!」

 

 

「!?攻大‥、その姿‥‥!?」

 

 

「皆まで言わなくていい!ランチタイムだ!

おらっ!」

 

 

 

ビーストへと姿を変えそれを見た

ワータイガーは面倒くさそうにハンドルを叩く。

敏江も驚き、話しかけようとするが

ビーストはそれを制し、グールへと攻撃し始めた。

 

 

「ふん!小賢しい!」

 

 

「おらぁっ!‥っとっととと!?」

 

 

また邪魔されると思ったワータイガーは

バスのハンドルを大きく回転させる。

攻撃していたビーストは大きく揺らめき

バスのドア付近の方までよろめいてしまう。

 

 

「ふっ、落ちろ。」

 

 

「どあっ!?お、落ちる!?」

 

 

ワータイガーはそれを見計らい、

バスのドアを開けるスイッチを押すと

ドアが開かれビーストはドア付近に

しがみつくが、今にも落ちそうになる。

 

 

「ーーーーーッ!」

 

 

「だあっ!?おい!?やめっ!?やめんか!」

 

 

「ーーーーッッ!?」

 

 

落ちそうになるビーストにグールの1体が

槍を突き出して攻撃してくるが、

ビーストは上手く避け、その槍を掴むと

逆にグールを外へと放り投げた。

その勢いでビーストは中へと戻り

グールは勢いよく道路に叩きつけられてしまう。

そして再び車内で交戦するビースト。

 

 

「ちっ‥‥‥ん?」

 

 

 

《グラビティ・プリーズ》

 

 

 

「はぁっ!!」

 

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」」

 

 

しぶといビーストにワータイガーは

舌打ちをしていると前方に1台のバイクと

それに跨ってこちらを見ている

仮面ライダーウィザードがいた。

先回りしたウィザードはバスが来るのを確認すると

グラビティリングを付け、シフトレバーを動かし、

ドライバーへとかざした。

すると、バスの真正面に大きな魔法陣が現れ

アクセル関係なくバスは徐々にスピードが落ちて

停車してしまう。

無理矢理もあったので乗客の皆は強めの

衝撃がくるが、怪我はなさそうだった。

 

 

「っ!今だ!お前ら早く逃げろっ!!」

 

 

「!お婆さん!今のうちに!」

 

「え、えぇ、えぇ!」

 

 

バスが止まった瞬間にビーストは

2体のグールを取り押さえ海未、敏江、

そして乗客の皆を外へと出させた。

全員が出たのを確認したビーストは

2体のグールをバスの外へと蹴り飛ばし、

外で待機しているウィザードと合流する。

 

 

「何だ、結局ついてきたんだな。」

 

 

「っ‥‥見送りだけだ!さっさと片付けるぞ!」

 

 

「当然!」

 

 

 

ウィザードとビーストはそう言って

ウィザードはシフトレバーを動かし

ウォーターリングを左中指に取り付け

ビーストはカメレオリングを右中指に取り付け

お互いのドライバーにかざし、セットした。

 

 

 

《ウォーター!・プリーズ

 

スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜》

 

 

《カメレオ!ゴーッ!

カカッ、カッカカッ、カメレオー! 》

 

 

「うし、でやぁっ!」

 

「おうりゃっ!!」

 

 

互いの魔法陣がウィザードとビーストを通り

ウィザードはウォータースタイル、

ビーストはカメレオマントを纏うと

ウィザードは水を帯びたウィザーソードガン

銃モードで2体のグールを撃ち抜き、

それに怯んだグールへカメレオマントから

伸び出た舌でグールを締め上げ爆散させる。

そしてグールの爆発した所から魔法陣が現れ

ビーストのドライバーへと吸い込まれていった。

 

 

「あ、あれが‥‥攻大‥‥?」

 

 

「‥‥‥‥。」

 

 

 

「っふう、後はお前だ!メインデッシュ!」

 

「うし、早く決めるか。」

 

 

「だーれがメインデッシュだ‥‥‥?ハアッ!」

 

 

「「おわぁっ!?」」

 

 

ビーストの正体が攻大だと知った

敏江は驚いてビーストを見るが海未は

何を言えばいいか分からず黙っていた。

グールを食べたビーストはそう言って

ワータイガーをバスの中から出させ

早々に決めると言ってウィザードは

ハリケーンリングを、ビーストは

ドルフィンリングを付けようとしたその時、

ワータイガーの胸の部分から光弾が放たれ

ウィザードとビーストはそれを食らってしまう。

 

 

「調子に乗るなよ魔法使い共!!」

 

 

「くっ!指輪落とし‥ぐあっ!?」

 

 

「晴希!んにゃろ!!」

 

 

怒るワータイガーの攻撃に

ウィザードとビーストはそれぞれの指輪を

落としてしまいウィザードは取りに行こうとすると、

ワータイガーの突進攻撃に突き飛ばされる。

それを見たビーストはダイスサーベルを取り出して

ワータイガーに攻撃しかけるが。

 

 

「うぉらっ!って何っ!?」

 

 

「ふっ‥。こんなもんか?」

 

 

「がぁあ‥‥!!なんつー馬鹿力だっつーの!?」

 

 

ダイスサーベルを振り下ろすが

ワータイガーは片手でそれを受け止める。

ビーストはゴリ押しで力を入れてワータイガーの

手ごと斬ろうとしたがワータイガーの力の方が

上で徐々に引き剥がされていく。

そしてもう片方の手でよろよろと起き上がる

ウィザードに攻撃しようとした瞬間。

 

 

 

 

《エキサイト・プリーズ》

 

 

 

 

 

「ウォラアッッッ!!!」

 

 

「ぐっ!?うぉおおあっ!!?」

 

 

「うおっと‥!えっ‥?で、でかっ!?」

 

 

突然、魔法発動の音声が鳴ると

屈強な体をした戦士がワータイガーに

アッパーを決め、ワータイガーは頭上高く

吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。

それを見たビーストはかなりゴツい体の戦士に

驚愕してしまうが、ウィザードはそれが誰か

すぐに分かった。

 

 

「っ!秀夜!?」

 

 

「ったく、騒がしくて起きちまったかと思えば、

てめーら楽しそうな事やってんじゃーねかよ?

つーか、ここ駅?」

 

 

「あ!てめ紫の魔法使い!

てか騒がしくて起きたって、

まさかバスの中で寝てたのってお前!?

何でバス乗ってたんだよっ?」

 

 

「あ?そうだけど?

バス乗ってちゃ悪りーかクソマヨネーズ。」

 

 

「誰がクソマヨネーズだ!!?

クソは余計だろ!」

 

 

「(あ、マヨネーズは否定しないのね。)」

 

 

屈強の体、エキサイトリングを使用して

アッパーを決めたのは

仮面ライダーダークウィザードこと、

藍崎秀夜だった。

元の体型に戻ったダークウィザードは

嬉しそうに手首を軽く振るいながらそう言うと

ビーストは思い出したかのように叫ぶ。

何だ?バスの中で何かあったのか?

ウィザードはそう思っていると

吹き飛ばされたワータイガーが

よろよろと起き上がりダークウィザードを見る。

 

 

「あ、あれも魔法使い‥‥?

い、一体魔法使いは何人いるんだい‥?」

 

 

「え、えと‥何人でしょうね‥‥‥?」

 

 

 

「貴様‥、紫の魔法使い!

また面倒な者が増えたか‥‥!」

 

 

「面倒で結構、んじゃ、

ディストラクションタイムと行こうか!」

 

 

敏江はダークウィザードを見ながら

そう言うと海未は困った顔で答える。

ワータイガーの言葉に軽く流す

ダークウィザードは決め台詞を言って

ワータイガーに向かって駆け出した。

ウィザードとビーストも遅れを取るまいと

駆け出そうとするが先ほど落とした

指輪を思い出し、2人の魔法使いは

落ちてる指輪を拾い、互いは指輪を

中指に取り付けた。

 

 

「おい紫の魔法使い!そいつは

俺の獲物だかんな!ここ最近

ファントム喰ってないからやべーんだよっ!

‥‥‥ん?あれ?これ、晴希の指輪じゃねーか!?」

 

 

 

《ビースト・プリーズ》

 

 

「うおっ!?え、何これ?」

 

 

ビーストは右のリングスロットに

はめ込もうとしたが何故か入らず

おかしいと思って確認すると、

それはウィザードが使うハリケーンリングだった。

そして逆にウィザードはドルフィンリングを

付けてるとは知らずにドライバーへとかざすと

聞き覚えのない音声が流れウィザードは動揺する。

するとウィザードの身体は

リキッドリングみたく液状化して

地面の中へと入っていった。

 

 

「うお、お?何だこれ!?

うははっ、すげぇすげぇ!」

 

 

「ぐおっ!?何だ!?」

 

 

「ちょ、操真!んだその能力!?」

 

 

 

地面の中へと入ったウィザードは

交戦しているダークウィザードと

ワータイガーの方へ向かうと、地面から

イルカのように飛び出しワータイガーを

ウィザーソードガンで斬りつける。

見たことない能力でダークウィザードも

興味があるようでウィザードに戦いながら聞いていた。

 

 

「おい!何でお前俺の指輪使えて

俺はお前の使えねーんだよ!?

しかも俺の使うのよりかっこいい能力だし!」

 

 

「おっほぉ!なぁ攻大!これ俺にくれない?」

 

 

「うっせ!やるかバーカ!!

さっさと返せ!バーカ!

てか、お前らトドメは俺に譲れ!

ファントムは滅多に喰えねーんだからよ!」

 

 

「っ!」

 

 

ウィザードはドルフィンリングをちょうだいと

強請るが自分は他人の指輪を使えないと

わかって悔しいのか子供みたいに怒りだす。

そして前線で戦ってるダークウィザードと

ウィザードに割入り、2人の魔法使いに

そう言うビースト。その言葉に

バスの陰から見ていた敏江はあることを思い出す。

 

 

『絶望してファントムを生み出せ‥‥!』

 

 

『お前か、ファントムを喰わなきゃ

死ぬという魔法使いは!』

 

 

 

「‥‥‥‥!」

 

 

「お婆さん、どうしたのです‥‥?

っ!?お婆さん!?」

 

 

 

昨日聞いたワータイガーの言葉を思い出した

敏江は何を思ったのか海未の声を無視して

突然戦ってる3人の魔法使いと

ワータイガーの所へ歩き出す。

 

 

「そこのファントム!私を絶望させなさい。」

 

 

「‥んだあのババアは?」

 

 

「っ!?お婆ちゃん?」

 

 

「おい!?何言ってんだ婆ちゃん!?」

 

 

突然予想外なことを言い出した敏江に

1人を除いて2人の魔法使いは驚いた。

だがそれとは裏腹にワータイガーは

理由は分からないがニヤリと笑う。

 

 

「フン、なんだか知らんがよく言った。

さぁ、死への恐怖で絶望しろ!!」

 

 

「っ!まずい!!」

 

「婆ちゃんっ!!」

 

 

魔法使いを無視して敏江に向かって駆け出す

ワータイガー。その行動にウィザードとビースト、

ダークウィザードも急いで駆け出したが、

敏江は全く逃げようとしない。

 

 

「‥!!ダメです!お婆さんっ!!!」

 

 

ワータイガーが敏江に向かって手を振り上げた瞬間、

隠れていた海未が駆け出し、敏江を突き飛ばした。

 

 

「きゃあぁっ!!?」

 

 

「っ!海未ぃ!!」

 

 

敏江の代わりに攻撃を受けた海未は

勢いよく吹き飛ばされ、気絶してしまう。

ビーストは敏江をかばい、ウィザードは

海未を助けようと駆け出したその時だった。

海未の目の前に見たことのある青年と、

全身黒の鎧を纏った謎の怪物が姿を現わす。

 

 

「面白い事になってるね?フフフフ!」

 

 

「お前は‥‥!?」

 

 

「‥‥何だあいつら‥?」

 

 

甲高い声で笑い、その姿を怪物に変化させたのは

グレムリンだった。そしてその背後に

立っているのはタキシム。

初めて見るその姿にその場にいる

ワータイガー以外は驚きの顔をしていた。

 

 

「ねぇねぇ!もしよかったら、交換しない?

この子(海未)とそちらのお婆ちゃん☆」

 

 

「っ!?」

 

 

「‥あ?何言ってんだてめぇ?

んなの関係ねーだろ。」

 

 

「ちょ、待て秀夜!」

 

 

最悪の取り引きにウィザードとビーストは

背筋が凍りついた。グレムリンの足元で

気絶している海未。強行突破で海未を

取り戻そうと考えたが、グレムリンの背後にいる

あの黒いファントム。あちらからは

物凄いヤバそうなオーラを感じる。

ウィザードはたじろいでいるとダークウィザードが

面倒くさそうにグレムリンに近寄ろうとした。

それを見たウィザードは急いで止め、

ダークウィザードは舌打ちをしてウィザードを

睨むがそんなことはどうでもいい。

 

 

「ねえ、ビースト君!

もしよかったらお婆ちゃんと2人だけでおいでよ?

あ、来なかったらもちろん。

この子の命はないけど?」

 

 

「‥‥‥てめ‥‥!」

 

 

グレムリンは海未の襟を掴みながら

そう言ってきた。

ビーストは怒りを爆発させそうになるが

今は堪え、グレムリン達を睨んでいた。

 

 

 

「それじゃあまた後でっ。

行くよ、井川君、滝川さん。」

 

「‥‥‥。」

 

「お、おいそんな急に‥!」

 

 

 

「っ!!待てっ!!」

 

 

グレムリンはそう言って

ワータイガーとタキシムはグレムリンの

近くに集まる。

ウィザードは追いかけようとするが

グレムリンは手から緑の光弾を辺りに撃ち、

衝撃と共に煙が舞い上がる。

そして、一瞬の内にファントムは消えた。

 

 

 

 

「っ!海未っ!!!」

 

 

 

ウィザードは海未の名を呼ぶが、

そこには海未の姿はどこにもいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

 

 

「こいつの命を奪うか‥それとも‥。」

 

 

海未を捕まえたグレムリン。

祖母を助けるか、海未を助けるか。

どうする!

 

 

「頼む‥今婆ちゃんに死なれたら‥

俺、絶望する‥‥!」

 

祖母の気持ちを知り、攻大に涙が‥。

 

 

 

「人間、何故そこまで足掻く‥?

あの魔法使いに選択の予知はないぞ。」

 

 

「そんなことはありません!

私は晴希逹を信じます!」

 

 

捕まりながらも抵抗する海未に

疑問を抱くタキシム。

 

 

「私はもう十分に長生きしました。」

 

 

「やめてくださいっ!!ダメです!

お婆さんっっ!!!」

 

 

約束の時!攻大達の決断は!?

 

 

 

 

第38話 お婆ちゃんの温もり

 

 




はいどもしょーくんですす!( ゚д゚)

いやー久々にすぐに投稿できた!
このテンポがいいんですけど、
中々できないんですよね(>_<)


はい、やってきました魔法少女!笑
どうですか?気持ち悪く仕上がりましたよ笑
そして中盤に明かされた攻大の転生前の過去!
晴希と何らかの関わりが‥?
後半は少し参戦したツン夜に続き
上級ファントムのタキシム!
次回はそのタキシムの実力が見られます!
そして捕まった海未、残された祖母の運命は‥!?
今回は海未が活躍するシーンですね(^^)
次回も恐らく早めに投稿できたらいいな‥。


感想、評価などがあれば是非お願いします(^^)

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