ラブウィザード! 〜希望の柱〜   作:しょくんだよ

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ぐっ‥‥体育で前転が決まって喜んでたら
隣でバレーやってた女子らのボールが
顔面に当たった‥‥友達に笑われるわで
痛かったっす(;_;)


にこ「どんまいにこ❤︎」


第29話 大切なともだち

ーーーー

雨の降る屋上にて。

 

 

 

 

 

「晴希君っっ!!!」

 

ファントム、レイスとの戦闘で

自ら身体を使ってμ's達を庇い倒れる

操真晴希。その怪我は以前背中を

やられたよりも酷く、

倒れた晴希の一帯は血で染められていたのだ。

 

 

「っ!!晴希さんっ!!」

 

 

「「晴希さん!!」」

 

 

μ'sメンバーが呼びかけてる中、

観客の方から高坂雪穂、絢瀬亜里沙、

天空寺拓人もその存在に気付き、

名前を呼びながら駆け寄ってくる。

 

 

 

「‥‥‥‥!息はしてる‥‥っ!

急いで病院に行かないと間に合わないわ!」

 

 

医者の娘である西木野真姫は晴希の首に手を置き

脈が微かに動いてるのを確認して

一瞬は安心したものの、今の血の量。

このままでは出血多量で死んでしまう恐れもある。

 

 

「っ!晴希っ!!!!」

 

 

すると、観客の背後の柵からもう1人、

魔法使いビーストがファルコマントで

飛んできて晴希がいるこちらへと着地した。

 

 

「攻大君っ!!晴希君が‥晴希君が!」

 

 

「おい‥‥嘘だろ‥‥!?

くっそ!また無茶しやがって!!

ファントムはどこだ!!?」

 

 

「大丈夫、まだ息はあります!

ファントムなら晴希が倒しましたっ。」

 

 

「早く病院へ連れてかないとっ‥!

私、携帯取ってくる!」

 

 

変身を解いた二藤攻大の駆けつけに

穂乃果は反応するが

血まみれの晴希を見て攻大は屋上の床を

強く拳で叩きファントムを探したいのか

周りをキョロキョロと見るが

園田海未がそれに答え、南ことりは

そう言って部室へと向かおうとした。

それと同時に絢瀬絵里は困惑してる

観客を見て立ち上がり、口を動かした。

 

 

「すみません!今日のライブは中止にします!」

 

 

「‥‥‥!!」

 

 

この状況なら仕方ない、とは分かっていても

絵里の後ろにいる矢澤にこは納得いかないのか

手を強く握り唇をかみしめていた。

 

 

「にこっち‥‥‥!」

 

「‥分かってるわよ‥‥早く晴希を病院に

連れてかないと。」

 

 

 

東條希が悔しんでるにこへ呼びかけるが

にこは静かに答えて横たわる晴希を見て

駆け寄った。

 

 

 

「晴希君っ‥‥死んじゃうの‥‥!?」

 

 

「大丈夫だ!それだけは絶対にさせねぇっ!」

 

 

「ねぇ、攻大っ。」

 

 

 

小泉花陽は涙を流しながら晴希を見るが

攻大は焦りながらもそう言って

皆を安心させようとする。

すると絵里が攻大の名前を呼ぶ。

 

 

「さっき、また無茶したって言ったわよね?

何かあったの‥‥‥?」

 

 

「っ‥‥‥‥。」

 

 

「‥‥ちょっと、何かあったの?

何で黙ってるのよ!?」

 

 

絵里の言葉に攻大は黙り込み、

何かあると分かったにこは今の感情を

攻大にぶつけるかのように攻大に近寄る。

 

 

「事情は後や!とにかく晴希を中まで運ぶで!」

 

 

「ぐずっ!うぅっ‥‥‥晴希ぐん‥‥!!」

 

 

「凛!泣いてないで早く行くわよ!」

 

 

 

 

「わ、私たちも手伝います!」

 

「おい!何か止血できるものないか!?」

 

 

希の言葉に一旦落ちつくにこは

晴希の方へと駆け寄り、

泣きじゃくる凛に真姫はそう言って

観客達も手伝い、晴希を慎重に

学校の中へと運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

西木野総合病院にて。

 

 

 

 

 

 

 

パァアン‥‥!

 

 

 

手術中のランプが光ってる

手術室の前で強く鈍い音が聞こえる。

それは真姫が攻大の頬をぶっていたからだ。

 

 

 

「何で‥‥何でそんな怪我してたのに

病院に連れてかなかったのよっ!!」

 

 

「そんな状態でファントムと戦うなんて

命を投げ出してるようなものじゃないっ!!

どうして魔法使いは命知らずな人ばかりなのよ!?」

 

 

「真姫、にこ!落ち着きなさい!

攻大を攻めてもしょうがないでしょっ!」

 

 

 

攻大の襟を掴んで涙目に怒る真姫と

その横で攻めるにこに絵里は

叫んで2人を止める。

 

 

 

「絵里ちゃん!いいんだ‥っ。

本当ごめん!‥‥‥晴希はお前達に

迷惑かけたくないから黙っててくれって

必死だったんだ‥!」

 

 

あの時素直に病院に連れて行かせば

こんなことにはならなかっただろう。

晴希の気持ちを説明するが、

これはもう、完璧に自分のせいだと

攻大は暗い表情でそう答えた。

 

 

 

「‥‥いや、ウチのせいでもあるんや。

ウチが調査に行こうなんて言わなければ‥。」

 

 

「皆まで言わなくていい!!俺が‥!」

 

 

「止めなさい希、攻大!

‥‥これはみんなの問題よ。

自分1人を攻めても仕方ないわ。」

 

 

 

希と攻大が互いが悪いと攻めようとすると

絵里は止める。すると、廊下の方から

スーツを着た女性が1人と

それらしい服を着た女性が1人こちらへと

歩んでいた。

それは音ノ木坂学院の南理事長と晴希達の担任、

山田博子先生だった。

 

 

「あ、お母さん‥‥。」

 

 

「‥‥理事長‥‥山田先生‥‥。」

 

 

それに反応したのは

病院の椅子に座ってることりと穂乃果だった。

 

 

「晴希君は‥‥まだ手術中みたいね‥。

貴方達、今起きてること、どうゆう事か

説明してもらえるかしら?」

 

 

いつも優しい顔をしている南理事長だが、

今の顔はそんな人とは思えない

真剣な表情だった。

晴希達が魔法使いってことは

学校では一部の生徒が知っているが

先生や理事長は魔法使いの存在は知っているが

正体が晴希達って事を知らない。

いずれはバレると分かっていても

こんな事を話せば騒ぎになる事

間違いなしだろう。

 

 

 

「‥‥理事長、俺が話します。」

 

 

「‥分かったわ、じゃああちらの方で

詳しく聞かせてもらえるかしら?」

 

 

「はい‥。」

 

 

魔法使いである攻大はより責任感を感じたのか

自ら手を上げて理事長にそう言うと

理事長は病院のロビーの方で話そうと言って

攻大とともに行こうとする。

 

 

 

 

その時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ないが、貴方方に

この件を知る必要はない。」

 

 

 

「っ!?」

 

「っ!?誰ですか‥!!」

 

 

 

廊下の壁から‥否、突如壁に現れた

魔法陣から白い魔法使いが現れ、

攻大や理事長、先生やμ'sのメンバーは

その存在に驚く。

 

 

「えっ‥!あのベルト‥‥‥。」

 

 

「!晴希君のとそっくり‥‥!!」

 

 

「白い‥‥魔法使い‥‥!?」

 

 

穂乃果、ことり、海未が驚き、

その後ににこ、希、絵里も

白い魔法使いの存在に驚くが

()()()()()()()1年組は驚きはするが

少し警戒していた。

 

 

 

「お前、誰だっ!?」

 

 

「‥貴様が知る必要はない。」

 

 

「んだとっ!?」

 

 

攻大は白い魔法使いに問うが

さらりと受け流されいつもの調子で

カチンとくる攻大。

すると白い魔法使いは見たことない指輪を

右手に取り付け、シフトレバーを上下に動かし、

ソレをドライバーへとかざした。

 

 

 

 

《デリート・ナウ》

 

 

「「‥‥!!」」

 

 

音声が鳴り白い魔法使いは攻大、ではなく。

その横にいる南理事長と山田先生に右手を

向けると白い光の球が飛び出し、

理事長と山田先生に当たる。

その球に当たった2人は電源が落とされた

ロボットのように固まる。

 

 

 

「っ!先生っ!!?」

 

「理事長っ!!」

 

「お、お母さんっ!!」

 

 

「っ!?テメェ!何しやがったっ!?」

 

 

 

固まった2人に海未、凛、ことりが叫び、

攻大は白い魔法使いにそう言いながら

ドライバーオンリングを取り付けようとするが、

白い魔法使いは構わず口を動かした。

 

 

 

 

「‥‥‥心配ない、

()()()()()()()()()()()()()()()()()

2人にはこのまま帰ってもらう、‥行け。」

 

 

「「‥‥‥‥‥。」」

 

 

白い魔法使いがいい終わり、2人の教師に

顎をくいっとやってそう命令すると

2人は無言のまま病院の出口へと歩いて行った。

 

 

 

「あ‥!?先生っ!」

 

 

「お母さんっ!?」

 

 

海未、ことりが後を追おうとするが

白い魔法使いは左手を出して2人を制し、止める。

 

 

 

「心配ないと言ったはずだ。

‥‥それと、アーキタイプ。」

 

 

 

「‥?あ、俺?‥ってか、

何だアーキなんとかって?」

 

 

白い魔法使いは右手の人差し指を

攻大につきさしてそう言うと

自分の事だと遅れて返事する攻大。

 

 

「ファントムを倒すのはこちらとしても助かるが、

あまり騒ぎを起こすな。

後処理を頼まれてる私にとって

色々と面倒なのでな。」

 

 

「後処理‥?どうゆうことですか?」

 

 

「‥君達は知らなくていい。

君達は()()()()の生活を

送っていきなさい。」

 

「あ、あの‥!」

 

真姫の質問に白い魔法使いはそう答えながら

右中指にテレポートリングを取り付ける。

穂乃果が呼び止めようとしたが

シフトレバーを上下に動かし、

ソレをドライバーにかざした。

 

 

 

《テレポート・ナウ》

 

 

 

 

「あっ!?待ちやがっ‥!!」

 

 

 

攻大は白い魔法使いを捕まえようと駆け出すが

ギリギリのとこで白い魔法使いは消えて

攻大は勢いよく転けてしまう。

 

 

「っってぇー!んだよあいつ‥!」

 

 

「攻大、貴方さっきの魔法使い知らないの?」

 

 

「知らないぞ、今初めて会ったっ。」

 

 

鼻をおさえる攻大に絵里は聞いてみるが

本当に知らない顔で首を振る攻大。

 

 

「真姫ちゃん達は会ったことあるんやったんやな?」

 

 

「え、えぇ‥でも指輪渡してくれただけで‥。」

 

「後は何もなかったよっ。」

 

 

希の言葉に真姫、凛は答え、花陽は

無言で頷いてると、手術中のランプが消えて

中から真姫の父親である西木野慎二が

マスクを取り、息を吐きながら出てきた。

 

「ふぅ‥‥。」

 

 

「っ!パパっ!!晴希は!?」

 

 

「っ、落ち着きなさい真姫、

とりあえず手術はなんとか成功だ。」

 

 

 

「「「「「「「‥‥‥!!!」」」」」」」

 

 

真っ先に近寄って聞いた真姫に

慎二は両肩に手を置いて抑えて

手術成功を伝えるとμ'sメンバーは

喜びに包まれるが次の言葉に

それは止まる。

 

 

 

「だが、体のあちこちがかなりの重症だ。

今一命を取り留めている事が

奇跡としかいいようがない‥だが、

彼は当分の間、絶対に動かせない体になってる。

意識もいつ戻るかわからない‥。」

 

 

 

「‥‥‥‥‥っ!」

 

「っ!そんな‥‥‥!」

 

 

 

「‥‥‥。」

 

 

メンバーが手術室を見て驚愕する中、

真姫は俯いていた。

あの出血の量、そして昨日怪我した背中の傷。

普通の人間なら死んでもおかしくないはずだ。

だが魔法使いだからなのか、

晴希は一命を取り留めている。

 

 

 

「‥‥大丈夫、きっと晴希はすぐに回復するわ、

みんな、後はパパ達に任せて服着替えましょ。」

 

 

真姫はそう言って皆を見る。

突然の出来事なのでライブ衣装のまま

病院に来ていた。

病院の方がタオルなどを貸してはくれたが、

露出してる服、そして雨にうたれていたのか

メンバーの何人かくしゃみをしていた。

 

 

「‥そうね、とりあえず服を着替えましょう。」

 

「でも、服は学校に‥‥。」

 

「心配要らないわ、今セバスが

学生服取りに行ってるから。」

 

 

絵里、花陽の言葉に真姫はそう答えて

μ'sメンバーを病院の使われてない個室へと

向かわせた。

 

 

「‥‥‥‥‥。」

 

 

「‥‥穂乃果ちゃん、行こう‥?」

 

 

立ち止まる穂乃果をことりは静かに

手を掴んで個室へと向かった。

だが穂乃果の表情は暗い顔のままだった。

そしてそれはことりも同じであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

次の日、西木野総合病院の病室にて。

 

 

 

「‥‥‥‥。」

 

 

文化祭もあの白い魔法使いの仕業なのか

何事もなかったかのように終わった。

だが文化祭のライブは雨がひどくなり

中止してしまったことになっており、

晴希の怪我はなんらかの事故で通しているらしい。

そして今日文化祭の後の日の祭日、

心電図モニターや人口呼吸器を

取り付けて目を覚まさない晴希を穂乃果は

朝早くから来てずっと側にいていた。

 

 

「‥‥本当、無茶しすぎだよ‥晴希君‥。」

 

 

穂乃果は小さく独り言の様に呟く。

すると、病室の扉からノックが聞こえ、

挨拶と共に入ってきたのは

私服姿の攻大と絵里と希だった。

 

 

「あ、絵里ちゃん、希ちゃん‥。」

 

 

「うっす。」

 

「朝早くからお見舞いに来てたんやね。」

 

 

「‥‥晴希の様子はどう?」

 

 

攻大と希は俄かに笑って軽く挨拶をし、

絵里は晴希の容体を聞くが穂乃果は首を振って

晴希を見た。

 

 

「まだ意識が戻らないままだよ、

お医者さんの人もすぐには戻らないだろうって‥。」

 

 

「‥そっか。‥‥‥へっ、こいつ

アホみたいな顔して寝やがって‥‥‥。」

 

 

穂乃果の言葉に攻大はいつもみたいに

バカにして晴希を見るが当然返事はなく、

攻大の顔は寂しげな表情でいっぱいだった。

 

 

「‥‥穂乃果、突然だけど伝えたい事があるの。」

 

 

椅子に座った絵里は話しづらい表情で

穂乃果に話しかけるが、その内容は

穂乃果も何となくだが理解しており、

さきに口を動かした。

 

 

 

 

 

 

「ラブライブ!‥出場しないんでしょ‥?」

 

 

「っ‥‥えぇ。」

 

 

「知ってたん?」

 

 

穂乃果の言葉に喋ろうとした絵里が驚き、

希はそう聞くと穂乃果は俯いたまま頷く。

 

 

「うん、朝トーナメント表を見たんだけど、

‥仕方ないよね、私がちゃんとしてなかったから‥。」

 

 

「いや、皆まで言わなくていい!

あれは完全に俺が悪かったんだ‥。」

 

 

「やめなさい2人とも。

‥‥黙っていた晴希も悪いけど

それに気付かなかった私全員の責任でもあるわ。」

 

互いは自分のせいだと決めつけるが

絵里はそれを制す。晴希が倒れて気持ちがぶらつく

この状況でラブライブ!出場は無理だと判断し、

メンバーで話し合って決めたらしい。

そして朝穂乃果はふとランキングを見て

気付いたのだ。

もうランキングにμ'sの名前は載ってないと。

 

 

「ごめんなさい、私達で勝手に話を進めて‥。」

 

 

「ううん、大丈夫。

‥仕方ないよ!あはは‥‥。」

 

 

「穂乃果ちゃん‥‥‥。」

 

「‥‥‥。」

 

 

絵里が謝ると穂乃果は無理に笑って

そう言うが攻大と希は心配そうに彼女を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「じゃあ、私達は行くわね。」

 

「穂乃果ちゃんも無理せんよーにな。」

 

「穂乃果ちゃん、また明日なっ。」

 

 

 

「うん、じゃあね。」

 

 

 

あれから1時間ほど経過して、

穂乃果はもう少し残ると言って

お先に帰った絵里と希と攻大。

軽く手を振って見送った後、

穂乃果は再び病室のベッドにいる晴希を見た。

 

 

「‥‥‥‥‥‥。」

 

 

 

 

 

 

 

『ライブ、必ず成功させるから!

しっかり見ててね!!』

 

『‥‥あぁ、穂乃果、ファイトだぜ。』

 

 

 

 

 

 

ふと穂乃果は

文化祭が始まる前の雨の夜にかわした言葉を

思い出す。その時既に晴希は怪我をしていた事を

穂乃果は気付いてやれなかったことを悔やみ、

ギュウっと握りこぶしをつくる。

 

 

「‥‥もぉ、‥‥本当バカだよ‥‥‥あれ‥?」

 

 

気がつくと穂乃果は溢れんばかりの涙を流していた。

 

 

 

「あれ‥‥?おか‥しいな‥‥‥昨日沢山泣いたのに

‥‥‥穂乃果、泣き虫なのかな?‥‥うぅ‥‥!」

 

 

意識不明の晴希、ラブライブ!エントリー叶わず。

気持ちがごっちゃになり、抑えきれない感情が

穂乃果の中から溢れ出し、その病室は

心電図モニターの音と、静かに泣く少女の音

だけが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

病院からの帰り道にて。

 

 

 

 

「はぁ〜‥‥‥‥‥。」

 

 

「攻大、でかいため息出さないでよ。」

 

 

病院からの帰り道、ラブライブ!エントリーを

断念したのを穂乃果に伝えた絵里達。

帰る途中で攻大は大きくため息を吐く。

 

 

 

「分かってるよぉ〜‥‥。」

 

「こんな気の抜けた攻大は初めてね‥。

過ぎた事を考えても仕方ないわ。」

 

「せやね、‥今は晴希君の回復を待って、

ウチらは穂乃果ちゃん達を励まそうや。」

 

 

顔が死んでる攻大に絵里は汗を垂らしながら

そう言うと、希が少しだけ微笑むと

歩きながら病院の方へ振り向いた。

そして希は昨日突然現れた

白い魔法使いの事を思い出す。

 

 

「(あの魔法使い‥一体何者なんやろ‥?

カードで占っても何もでんし‥‥‥。)」

 

 

希はそう思いながらタロットカードを取り出し、

1枚のカードを手に取る。

それは昨日と引いた同じカードで

「The mystery」と書かれていたほぼ表紙が

真っ黒なカードだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

その夜、ことりの家にて。

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥‥‥。」

 

 

 

海外留学の日が近付く中

ことりは自宅の服や必要な物を

ダンボールに入れて身支度をしていた。

 

 

 

「‥‥‥‥あ。」

 

 

ふと、ことりは掛けてある衣装に気づく。

それは穂乃果達とμ'sを結成し初めて

講堂でライブをした時に使った衣装だった。

その服をしばらく見つめているとドアから

ノックの音が聞こえる。

 

 

 

「はい?」

 

 

「ことり、穂乃果ちゃんには話したの?」

 

 

 

入ってきたのはお母さんである南理事長だ。

白い魔法使いに何かされたあの日。

ことりは帰った後文化祭の事を聞いても

「ライブと晴希君のこと‥残念だったわね。」

と、本当にその記憶を消されたみたいで

そう返事するだけだった。

それ以外は生活や会話など、

何の影響もなさそうなのでごく普通に会話を

しているが、今迫ってる留学にことりは

両親との会話が少なくなっていた。

 

 

 

「‥‥‥‥‥うん、明日話す。」

 

 

「ちゃんと話しなさいよ?

大切な友達でしょ?」

 

 

「‥‥うん。」

 

 

 

南理事長に言われことりは俯きながらも頷く。

文化祭のライブが終わったら話す予定だったのだが、

晴希が倒れてしまい、穂乃果はここ最近

ずっと病院へ見舞いに行っている。

それにラブライブ!エントリーも断念してる

今、ことりは穂乃果に余計話づらくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

数日後、登校中にて。

 

 

 

『では!ランキング1位に輝いた

A-RISEの皆さんから一言!今のお気持ちは?』

 

 

『はいっ!皆さんの暖かい応援のおかげです!』

 

『本当にありがとうっ!』

 

『応援、よろしくね!』

 

 

 

 

「やっぱA-RISEが断トツ1位か〜っ。

スッゲェな。」

 

 

μ'sの出場もなくなり辺りはすっかりA-RISEや

上位のスクールアイドルなどの

ポスターなどでいっぱい。

以前行ったアイドルショップ専門店も

A-RISEのグッズばかりになっていた。

そして今スマホでネットの生中継で行われてる

動画を見ながら攻大はそう言うと

隣にいるにこはふんと鼻を鳴らす。

 

 

「当然よ、A-RISEはトップに君臨する

スクールアイドルなのよ。

A-RISEを抜くグループなんて奇跡が

起きないと絶対無理よ。」

 

 

いつもの調子で喋るにこだが

数日前まではラブライブ!の大会を

やめるのににこだけ最後まで反対していたのだ。

それだけラブライブ!に出たかったのだろうが、

皆の気持ちも考え、嫌々了承し、

今に至る訳だがすっかり元の状態に戻っており、

側にいる希と絵里も互いを見て笑っていた。

そして絵里達は階段付近でA-RISEのポスターを

見て立ち止まる穂乃果を見る。

 

 

 

「‥‥‥‥。」

 

 

「‥‥穂乃果ちゃん、気にしないで?」

 

 

「‥‥うん。」

 

「‥あ、あの‥‥穂乃果‥‥‥ちゃん‥‥‥。」

 

 

一緒に登校していたことりは優しく励ますが

彼女の顔は暗く、落ち込んでいた。

その状態で留学の話などとても出来ず、

ことりはここ毎日、言い出しては

黙り込んでしまうだけだった。

 

 

 

 

 

「相変わらずやね。」

 

「まだ晴希も意識戻ってないのよね?」

 

 

「あぁ、いつまで寝てんだよあいつは‥。」

 

 

その様子を3年組の希、絵里、攻大の順で

喋るとにこが呆れた目で口を動かす。

 

 

「学校始まってからずっとあんな感じじゃない。希。」

 

 

「お、任せて〜っ。」

 

 

にこの言葉に希は反応すると両手をワシワシ

しながら穂乃果へと背後から近づき、

 

 

 

「ガシッ!」

 

 

 

「ゔぉっ!?うわぁあああああっ!?」

 

 

 

「ぴぃっ!?」

 

 

穂乃果の胸を勢いよく掴み、

穂乃果は急に掴まれたのか凄い声で叫び

それにびっくりしたことりは鳥みたいに鳴いて驚く。

 

 

 

「元気がない時にアレやられたらやばいわよ〜っ。」

 

 

「ハラショー‥‥、攻大?どうして鼻血出てるの?」

 

 

「み、皆まで言わなくていい‥ちと、

チョコレート食べ過ぎたかな‥。」

 

 

その様子をにこはニヤニヤしながら言って

顔が引きつる絵里、そして隣の攻大は

鼻血を抑えながら皆に見えないように

左手でグットを作っていた。

 

 

 

「希ちゃんっ!?」

 

 

「ぼんやりしてたら次は

アグレッシブなの行くよ〜〜?」

 

 

「い、いえ!結構です‥‥。」

 

 

 

穂乃果はなんとか希から離れるが

希はイタズラ笑みでそう言うと

穂乃果は全身の鳥肌が立ちながら後ずさる。

 

 

「あんたも諦め悪いわね、

それとも晴希が目ぇ覚まさない事を気にしてんの?」

 

 

そこへ階段を登ってきたにこに声を掛けられ

その言葉に穂乃果はすぐに暗い表情へ戻る。

 

 

「わ、分かってはいるよ‥‥。

晴希君は徐々に回復していってるって

言われてるから、大丈夫だと思う‥‥。」

 

 

 

「ん〜‥あ、穂乃果ちゃん。

近くのスーパーで限定のめっちゃ美味いパンが

出たらしいぜ。」

 

 

「えっ!?本当!?」

 

 

「嘘だぜ。」

 

 

「攻大君ひどいよ!?」

 

 

突然攻大が思いついたホラ話を

穂乃果は信じ込み目を輝かせていたが

笑いながら嘘と言うとガビーンと効果音が

鳴りそうな勢いでショックを受ける穂乃果。

そのやりとりに絵里はクスリと笑い、口を動かす。

 

 

「そうやって元気にしていれば、

みんな気にしないわよ?それとも、

みんなに気を使ってほしい?」

 

 

「そうゆうわけじゃ‥‥。」

 

 

「今日から練習にも復帰するんでしょ?

そんなテンションで来られたら、

迷惑なんだけど?」

 

 

絵里、にこに若干イタズラ笑みで言われる穂乃果は

思わずクスっと笑う。そして穂乃果は首を振り

にこ達に向かって喋った。

 

「そうだねっ、ずっとこんなテンションじゃ

いけないよねっ。」

 

 

「お、穂乃果ちゃんのテンションが戻ったか!?」

 

「みたいやねっ。」

 

 

いつも通りの雰囲気に戻った穂乃果を見て

攻大と希はそう言って笑顔を見せる。

 

 

「そうよ、晴希も回復に向かってることだし、

退院したらみんなで笑顔で迎えましょう?

それに、私達の目的はこの学校を存続させること。

でしょ?」

 

 

絵里は音ノ木坂学院を見ながらそう言う。

そう、元々はラブライブ!出場するためではなく、

学校を存続させるためにスクールアイドルを

始めたのだ。

残す問題は晴希が無事に目を覚まし、

笑顔で迎えてあげること。

それを教えられた穂乃果の表情は

ゆっくりと変わっていき、

元気よく絵里の言葉に頷いた。

 

 

「‥‥穂乃果ちゃん‥‥。」

 

今なら言えるかもしれない。

ことりは勇気を振り絞って

穂乃果に伝えようとしたその時。

 

 

「穂乃果ーーーっ!」

 

 

学校の方から弓道部の朝練を終えた

海未となぜか1年の真姫、凛、花陽が

穂乃果の名前を呼び、走ってこちらに来ていた。

 

 

「うわっ。海未ちゃん!?

凛ちゃん達もどうしたの!?」

 

 

「はぁ‥はぁ‥‥‥っ、た‥た、‥‥。」

 

 

「た‥‥‥‥」

 

「た‥‥‥‥!」

 

 

「たすけて‥っ!」

 

 

「はぁ?」

 

 

息を切らした海未、凛、真姫が〝た〟を

強調し、花陽が思わずたすけてと言ってしまい

にこは訳が分からず絵里達と首をかしげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

アイドル研究部にて。

 

 

 

「来年度入学者受け付けのお知らせ‥‥‥」

 

 

「「「「「「これって!?」」」」」」

 

 

部室で突然海未に1枚のプリントを渡され

穂乃果が上の大きな字の所を読むと、

にこ、希、絵里、攻大、ことり、そして穂乃果が

口を揃えて海未達を見る。

 

 

「中学生の希望高アンケートの

結果がでたんだけど!」

 

「去年のより思案する人がずっと多いらしくて!」

 

「今朝見たらこんな張り紙が

貼ってあったんだにゃー!」

 

 

「‥ってことは‥‥‥?」

 

「学校が‥‥‥。」

 

花陽、真姫、凛が嬉しそうに答え

穂乃果とことりは互いを見てそう言ってると

海未は穂乃果とことりの手を掴む。

 

 

「穂乃果、ことり!学校が‥‥、

国立音ノ木坂学院は、

存続することになったのですよっ!」

 

 

「「‥‥‥〜〜〜っ!!」」

 

 

「マジかよっ!?」

 

「さ、再来年は分からないけどね!」

 

「ハラショー‥‥‥。」

 

 

海未の言葉に穂乃果とことりは喜び、

その後ろで攻大達もは驚く。

あのツンツンな真姫も今回ばかりは

嬉しいのか興奮しながらそう言っていた。

そして絵里はやり遂げたんだなという

表情で涙を零しながらそう言った。

 

 

「学校が続く‥‥!私達、やったんだよっ!」

 

「嘘‥じゃないんだ‥‥っ!」

 

 

「えぇっ、早く晴希にも

知らせてあげたいですね‥!」

 

 

「もちろんっ!」

 

 

穂乃果、ことりは互いを見ながらそう言って

海未の言葉に穂乃果は笑顔で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

放課後、校門前にて。

 

 

 

 

「本当に!?」

 

 

「えぇ。」

 

 

「嬉しい!やったやったぁ!!」

 

 

一緒に帰ろうとした穂乃果とことりと絵里は、

校門前で待っていた絵里の妹、亜里沙に

晴希の容体が少しずつ回復してるのと、

学校存続が、決まったことを話て、

亜里沙は大いに喜んでいた。

 

「よかったねっ。」

 

 

「はいっ!来年からよろしくお願いします!」

 

 

穂乃果の言葉に元気よく頭を下げる亜里沙だが

その亜里沙の頭に絵里はそっと手を置く。

 

 

「その前に、まず入試で合格しないとダメね?」

 

 

「うんっ!頑張るっ!」

 

 

絵里と亜里沙のやり取りを見て

穂乃果はふと自分の妹の事を思い出す。

 

 

「あ〜あ、うちの雪穂も受験するって

言わないかな〜‥。」

 

 

「あ、この前話してたら、ちょっと迷ってました!」

 

 

「え、本当っ!?よし!帰ったら説得だね!」

 

 

穂乃果がそう言ってもじもじしてると

亜里沙が絵里の横から顔を出して穂乃果に伝えると

穂乃果は喜び、ガッツポーズを取った。

 

 

「‥‥あ、でも次のライブどうしよう?」

 

 

「そうね‥、大急ぎでやる必要は

なくなってしまったわね。」

 

ふと思い出した穂乃果の言葉に絵里は

そう言って考え込む。

学校の存続が決まったことだしラブライブ!

出場も無くなった。だとしたら次のライブは

そんなに急がなくても大丈夫だった。

 

 

「‥‥あのっ。」

 

「?どうしたのことりちゃん?」

 

 

考えてる2人に先ほどまで黙っていたことりが

穂乃果達に声をかける。

 

 

「私、ちょっと買い物があるから‥‥ここで‥」

 

 

「え?何買いに行くの?」

 

 

「ちょっと‥‥‥。じゃあっ。」

 

 

「あ、ことりちゃんっ。」

 

 

ことりはそう言って信号が点滅するのを見ると

急いで挨拶し、横断歩道を走っていった。

 

 

 

 

「‥なんか元気ないよね、ことりちゃん‥。」

 

 

「希達も気にしていたわ、学園祭の前だったかしら。

なんか、悩んでるんじゃないかって‥。」

 

 

「え‥‥、そんなに前から?」

 

 

ここ最近、ことりは妙に落ち込んでいた。

晴希の事で落ち込んでるのかなと

思っていた穂乃果だが、絵里の言葉で

その思考は変えられ、穂乃果は走っていく

ことりを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

次の日の放課後、

アイドル研究部にて。

 

 

 

 

 

「にっこにっこにー❤︎

みんなー、グラスは持ったかな〜?」

 

 

「「はぁーいっ。」」

 

「グラスってこれただの紙コッ‥」

 

 

「細かいところは気にしないにこ❤︎」

 

 

学校存続が決まったということで

部長であるにこがお疲れ会をしようと提案したのだ。

晴希がいない状態でやるのを攻大や穂乃果は

少し拒んでいたが退院したらまたすればいいと

絵里の言葉で了承し、手作りのサンドイッチや

唐揚げなどの料理を並べてにこが皆の前に

立って司会を務めていた。

 

「それでは、学校の存続が決まったということで、

部長のにこにーから一言、

挨拶させて頂きたいと思いまーすっ。」

 

 

「「「「「おぉーっ!」」」」」

 

 

司会のにこの言葉にμ'sメンバーは

拍手を送り、椅子に座ってる希と絵里は

互いを見るなり微笑んでいた。

だが窓際に座ってる海未、ことりは

暗い表情のままだった。

そして、部長らしい事をするにこに

攻大は軽く違和感を覚える。

 

 

 

「思えばこのμ'sが結成され、

私が部長に選ばれた時からどのくらいの

月日が流れたのであろうか‥!

たった1人のアイドル研究部を耐えに耐え抜き、

今!こうしてメンバーの前で思いを語れるなんt」

 

 

「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」

 

 

 

「ちょっと待ちなさーーい!!」

 

 

にこの演説は無視してメンバーは乾杯をし、

テーブルに並べてあるお菓子や唐揚げなどを

ありつけることにした。

 

 

「へっへー!いっただっきあーす!」

 

 

「ちょっと攻大!?自分の分だけ

マヨネーズかけなさいよ!?」

 

 

「にゃあ‥よくそんなにかけて食べれるにゃ‥。」

 

「マヨラー通り越してマヨ食主義者ね‥。」

 

 

「あ、攻大君。穂乃果にもちょうだいっ。」

 

さっそくと言わんばかりに攻大は

マヨネーズを取り出し唐揚げはおろか

ポテトチップスやサンドイッチにまで

ぶっかけようとするが真姫に止められる。

止められた攻大は愚痴愚痴と文句を言いながら

自分のだけにマヨネーズぶっかけて口へと運ぶと、

それを見た凛とにこは顔が引き攣りながらそう言う。

すると穂乃果は自分のサンドイッチにかけてと

攻大にマヨネーズを催促していた。

因みにマヨネーズには【学校存続オツカレ】と

書かれていた。

 

 

 

「みんなー!ご飯炊けたよ〜!」

 

 

「「っ!〜〜〜〜っ!!」」

 

 

 

そして花陽は持参した白米を学校の

炊飯器を使ってお米を炊き、満面の笑みで

炊飯器の蓋を開けてご飯を皆に見せてそう言うと、

サンドイッチを頬張った凛と攻大が

即座に立ち上がって茶碗を差し出していた。

 

 

 

 

「‥ほっとしたようやね。」

 

「‥‥今はね、肩の力が降り立ってゆうか‥。」

 

盛り上がってる穂乃果達を見てる絵里に

希は話しかけると苦笑しながら絵里は答え

話を続けた。

 

 

「μ'sに入ってよかったやろ?」

 

「どうかしらね、正直私が入らなくても

同じ結果だったと思うけど‥。」

 

「そんなことないよ、μ'sは9人と2人。

それ以上も、それ以下でもダメやって

カードも言うてるよ?」

 

「‥‥そうかしら。」

 

 

希の言葉に絵里は苦笑から笑みに変わり

全体を見渡していた。

すると、先ほどから参加してない

海未とことりの方に目がいく。

そしてご飯を食べてる穂乃果もだった。

 

 

 

「ことり‥‥‥。」

 

「で、でも今は‥‥。」

 

 

「‥‥‥。」

 

 

昨夜、今日こそ言うと海未とことりは話し合い

海未は今しかないと後押ししたのだが

今の空気でことりは言いづらいのか拒む。

それを見かねた海未は

意を決して椅子から立ち上がる。

 

 

 

「ごめんなさい、みんなに

ちょっと話しがあるんです。」

 

「‥‥っ!」

 

 

 

「‥?」

 

「「「‥?」」」

 

「なになに?ご飯追加?」

 

「違うでしょ、てか食べるの止めなさいっ。」

 

 

海未がそう言うとことりは

後戻りができないと戸惑う。

そして海未の言葉に穂乃果、1年組が順に反応し、

攻大は飯の追加かと思いながらテーブルに

置いてある食べ物をどんどん口に運ぶが

一旦にこに止められる。

気が付けば半分ぐらいは1人で食べていた。

 

 

「‥聞いてる?」

 

 

「ううん。」

 

希は海未の大事な話を事前に聞いてたのか

絵里に聞くが絵里は全くと言わんばかりに

首を横に振る。

そして、

ことりが言えなかった事を海未は変わりに

皆に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実は‥‥‥‥、突然ですが、

ことりが留学することになりました。

2週間後に日本を発ちます。」

 

 

 

 

「‥‥‥‥っ‥。」

 

 

 

 

 

 

いつもながら真剣で、暗い表情の海未から

告げられた事実。ことりは俯き皆との視線を

合わせないようにしていた。

そして、衝撃の事実に場の空気は

まるでその空間だけ時が止まったかの様に

ぴたりと静まった。

 

 

 

 

 

「何‥‥‥?」

 

 

「嘘‥‥‥‥。」

 

 

「留学って海外にいくってことだよな‥?」

 

「ちょ、ちょっと‥どうゆうこと‥‥?」

 

 

 

突然の事実にμ'sメンバーは頭が付いて行けず

真姫から先に口を動かし、花陽、攻大、にこの

順でそう言うと、ことりは涙目になりながらも

ゆっくりと喋り始めた。

 

 

 

 

「‥‥‥前から、服飾の勉強したいって

思ってて‥‥そしたら、お母さんの知り合いの

学校の人が来てみないかって‥‥‥。

ごめんね‥‥もっと早く話そうと

思っていたんだけど‥‥‥‥‥‥。」

 

 

「学園祭のライブでまとまっている時に

言うのはよくないとことりは

気を使っていたんです‥‥‥。」

 

 

「それで最近‥‥。」

 

「行ったきり、戻ってこないの?」

 

 

ことりが言いづらそうに喋ると

海未がそのフォローをしてくれるかのように

割入って説明すると、最近元気がなかった

ことりの原因を知り、希は合点する。

絵里がことりにそう尋ねるとことりは

ゆっくりと頷いた。

 

 

「高校を卒業するまでは‥多分‥‥‥。」

 

 

 

「‥‥マジかよ‥‥‥‥。」

 

 

「「「「‥‥‥‥。」」」」

 

 

ことりがそう言うと攻大はそうつぶやいて

頭を片手で抱え、1年組、にこは俯いてしまう。

そして、穂乃果は唇を噛み締め、

ゆっくりと立ち上がり、ことりの方に歩いていく。

 

 

 

「どうして、言ってくれなかったの‥?」

 

 

「‥‥‥。」

 

「だから‥、学園祭があったから‥‥‥。」

 

 

「海未ちゃんは知ってたんだ‥‥‥。」

 

 

「っ、‥‥‥それは‥‥‥。」

 

 

先ほどまでの笑顔が嘘のように穂乃果の顔は

怒りと事実に受け入れられない感情で

いっぱいになり、ことりに聞くと

海未がフォローする。だが海未は、海未だけ

知っていたのかそれにますます腹が立つ

穂乃果はことりの前へとしゃがみこみ、

ことりの両手を上からぎゅっと握る。

 

 

 

「どうして言ってくれなかったの‥‥?

ライブがあったからっていうのは分かるよ?

‥でも、私と海未ちゃんとことりちゃんは‥

ずっとっ‥‥!」

 

 

「‥っ‥‥‥。」

 

 

「穂乃果‥‥‥。」

 

「ことりちゃんの気持ちも分かってあげ‥」

 

 

 

「分からないよっ!!」

 

 

 

理由を答えてくれないことり。

絵里と希は穂乃果を落ち着かせようと

声をかけると初めてかもしれない。。

穂乃果が声を上げ、その感情に

周り、特に1年組のメンバーは肩をビクッとさせ、

喋り続ける穂乃果の方を見る。

 

 

 

「だっていなくなっちゃうんだよ!?

ずっと一緒だったのに、離れ離れに

なっちゃうんだよ!?なのに‥‥、

なのに‥‥‥‥!」

 

 

 

「‥‥何度も‥‥言おうとしたよ‥‥。」

 

 

「っ!!」

 

 

 

もうすぐいなくなる友達(ことり)

その事実に認められない穂乃果は

感情を撒き散らしていると

ことりは静かに喋り、我に返る穂乃果。

 

 

 

「穂乃果ちゃん、ライブやるのに夢中で‥、

ラブライブ!に夢中で‥‥‥、だから、

ライブが終わったらすぐ言おうと思ってた‥。

穂乃果ちゃん、できたら‥晴希君も一緒に‥

相談にのってもらおうと思ってた‥‥‥。

でも‥‥‥晴希君が‥‥あんなことになって‥!」

 

「っ‥‥!」

 

一旦区切ることりの目からは今にも溢れそうな

涙を涙腺に溜め、それを見た穂乃果は

悲しげな表情で目を見開く。

 

 

「でも、‥穂乃果ちゃんだけは

聞いてほしかったよ!

穂乃果ちゃんに‥‥‥

1番に相談にのってもらいたかった!

だって‥!穂乃果ちゃんは

初めてできた友達だもん!!

ずっとそばにいてくれた友達だよっ!

そんなの‥‥そんなの!当たり前だよっ!」

 

 

 

「あっ‥‥!こと‥‥っ‥‥!!」

 

 

 

ことりはついに本音を言うと共に

涙を溢れんばかりに流し、言い終わると同時に

穂乃果の握ってた手を払いのけ

部室から飛び出し廊下を走って行った。

それを止めようと穂乃果も立ち上がり

ことりの名前を呼ぼうとするが足が動かず

その場に立ち尽くすだけだった。

 

 

 

「‥‥‥ことりは、行くかどうか

迷っていたみたいです。‥いえ、むしろ

行きたがってなかったようにも見えました‥‥。

ずっと穂乃果を気にしてて‥穂乃果になんて

言われるかとそればかり‥‥‥。

‥黙っているつもりはなかったんです‥。

本当にライブが終わったら言うつもりだったんです‥。

‥‥‥分かってあげてください‥。」

 

 

立ち尽くす穂乃果に海未は隣から

そっと声をかけている。正直海未も辛いのだろう。

震える右手を左手でおさえ、その目には

涙を溜めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

その夜、ことりの家では。

 

 

「‥ちゃんと話せた?」

 

 

「‥‥‥‥うん。」

 

 

すっかりもぬけの殻になってしまった

ことりの部屋。お母さんの理事長に

声をかけられても頷くだけの

ことりは最後まで片付けなかった

初ライブの衣装を手に取る。

 

 

 

「それ、とても大事なのね。」

 

 

「‥‥‥うん、この衣装が‥初めて‥

初めて他のみんなに見てもらった衣装だから‥

μ'sを始めて‥ここまで繋いでくれた‥

ことりの希望だから‥‥‥。」

 

 

衣装を大事そうに別の紙袋に入れるのを見て

理事長は尋ねるとことりはそう答えて、

ベットに座り込み、スマホの画面を確認する。

 

 

「‥‥早く寝なさい。」

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥。」

 

 

理事長は優しくそう言って部屋を出て行き、

ことりはしばらくメール画面を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

穂乃果の家にて。

 

 

「‥‥‥‥。」

 

ことりの留学にショックをうけた

穂乃果は部屋の電気を消して

机に置いてあるノートパソコンにうつっている

A-RISEの曲【Private Wars】を見ていた。

そしてスマホを取り出してことりに送ろうとした

メッセージを見直す。

 

 

私が夢中になりすぎて

みんなの気持ちとか

全然見えなくて

 

だから

 

ことりちゃん ごめんね

 

 

「‥‥‥今更謝ったって‥もう‥。」

 

 

送ろうとした内容を見て穂乃果は

そう言うとそのメッセージを消して

体育座りになってA-RISEの動画を

首が沈んでる状態で見た。

 

 

「すごいな‥‥

追いつけないよ‥こんなの‥‥‥。」

 

 

スクールアイドル1位のA-RISE。

そのダンスや踊りは秋葉はおろか

日本全国をも魅了している。

そんなプロに近いメンバーの踊りを見て

穂乃果はふと、晴希の言葉を思い出す。

 

 

 

 

『約束する。俺がお前の

最後の希望になってやる。』

 

 

 

穂乃果は自身の指にはめられてる

エンゲージリングを見て思い出した。

それは初めて晴希と出会った時の夜、

穂乃果がファントムに襲われ

絶望させられた時に言ってくれた言葉だった。

もし、晴希があんなことにならなければ、

この状況を変えていたかもしれない。

そう思った穂乃果はエンゲージリングを

強く握り、穂乃果は静かに呟いた。

 

 

 

「私‥‥‥今まで何やってたんだろね‥‥‥。

 

‥‥助けてよ‥‥‥晴希君‥‥‥‥‥‥‥。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

翌朝、音ノ木坂学院にて。

 

 

 

 

「‥‥‥‥。」

 

 

「おはよーっ穂乃果。」

 

 

「もう寝てるし‥‥。」

 

 

「起きてるー。」

 

 

机に突っ伏してる穂乃果に

ヒデコ、フミ、ミカの3人が声をかけるが

穂乃果は突っ伏しながら片手を上げて

気の抜けた返事をする。

 

 

「全く‥。」

 

 

「ねえ、ことりちゃん今日は一緒じゃないの?」

 

 

「‥‥うん。」

 

 

ヒデコが苦笑してるとフミコが

ことりの机を見てそう言うと穂乃果は

小さく返事をする。

ことりは海外留学の為の準備で

今日は遅れて来るみたいだ。

 

 

「今朝園田さんから聞いたよ?

ことりちゃん留学するんだって?」

 

 

「‥‥うん。」

 

 

「操真君もまだ意識戻ってないみたいだし‥

だんだん寂しくなっていくね‥‥。」

 

 

「‥‥うん。」

 

 

 

 

 

「穂乃果ーっ。」

 

「‥‥‥?」

 

ミカ、フミコの言葉に小さく返事するだけの穂乃果。

すると教室の外から呼ぶ声が聞こえ、

むくりと身体を起こして呼んだ方角を見ると

そこには絵里が立っており

こっちに来てと手招きしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー

 

 

音ノ木坂学院屋上にて。

 

 

 

「‥‥ライブ?」

 

 

「そう、みんなで話したの。

ことりがいなくなる前に、

全員でライブをやろうって。」

 

 

「来たらことりちゃんにも言うつもりよ。」

 

 

絵里の言葉に希はにこやかにそう言う。

絵里に呼ばれて屋上へ来た穂乃果。

そこにはことりと晴希を除いて

μ'sメンバーが集まっており、

もうすぐいなくなることりの為に講堂で

ライブをしようと皆が発案したらしい。

 

 

「そうそう!晴希の分は俺がバッチシ

カメラで撮影すっからよ!」

 

 

「攻大君、なんか目がいやらしいにゃ。」

 

「ど変態ね。」

 

「ど変態のマヨラーよ!」

 

 

「俺まだカメラ持ってるだけなんだけど!?

あとにこちゃんマヨラーは余計だろっ!」

 

 

晴希の為にと部活に使ってるカメラを、持って

攻大はそう言うと凛、真姫、にこにバカにされて

つっこむ攻大。いつもと変わらない調子の

μ'sメンバーだが、穂乃果は暗い表情のまま

なにも言わなかった。

 

 

「‥‥まだ落ち込んでるのですか?」

 

 

「‥‥明るくいきましょ穂乃果。

これがμ's9人の最後のライブになるんだからっ。」

 

 

「‥‥‥‥‥。」

 

 

 

海未と絵里が心配するが、絵里の言葉に

穂乃果の顔はだんだんと眉を寄せていた。

そして、穂乃果は口を動かす。

 

 

「私がもう少し周りを見ていれば、

こんな事にはならなかった‥‥。」

 

 

「そ、そんなに自分を責めなくても‥‥!」

 

 

「自分が何もしなければ、

‥‥こんな事にはならなかった!」

 

 

花陽がそう言うも穂乃果の声は更に上がり

学園祭如きにはしゃいでた自分を攻めていると

にこ、攻大、絵里が口を動かす。

 

 

「あ、アンタねぇ!」

 

 

「穂乃果ちゃん違うぞ!

あん時の原因は俺の不注意とファントムが悪い!」

 

 

「そうやって、全部

自分のせいにするのは傲慢よ。」

 

 

「っ、でも!」

 

 

「それをここで言って何になるの?

何も始まらないし、誰もいい思いなんてしない。」

 

 

反論する穂乃果に絵里は上級生らしく

穂乃果を説得する。

 

 

 

「ラブライブ!だって、まだ次があるわ。」

 

「‥‥そっ!今度こそ出場するんだから、

落ち込んでる暇なんてないわよ?」

 

 

 

「出場してどうするの?」

 

 

 

「‥‥え?」

 

 

重くなる空気に真姫は宥めようとそう言うと

怒りそうになったにこも落ち着かせて

笑顔でそう言うが次の穂乃果の言葉に

にこの表情は一変する。

 

 

 

「もう学校は存続出来たんだから、

出たってしょうがないよ。」

 

 

「‥‥穂乃果ちゃん‥‥‥‥。」

 

 

「それに無理だよ。A-RISEみたいにだって

いくら練習してもなれっこないよ。」

 

 

「‥アンタそれ、本気で言ってんの?

本気だったら許さないわよ。」

 

 

μ'sの目標は学校存続させるため、

もうそれが達成できた今、穂乃果は

これ以上スクールアイドルを続けても

意味がないと思い、皆にとって予想外な

言葉を放つが、その言葉ににこは

本気な顔で穂乃果を見る。

 

 

「‥‥‥。」

 

 

「許さないって言ってるでしょっ!!」

 

 

「ちょっ!?にこちゃん!」

 

「ダメェっ!!」

 

 

 

黙り込む穂乃果についににこはキレて

穂乃果に飛びかかろうとするが攻大は後ろから

掴み、真姫は抱きついてにこを止める。

 

 

 

「はなしなさいよ!!にこはね!!

アンタや晴希が本気だと思ったから!

本気でアイドルやりたいんだと思ったから

μ'sに入ったのよ!!ここに賭けようって

思ったから入ったのよ!それを

こんな事くらいで諦めるのっ!?

こんな事くらいで、やる気を無くすのっ!?」

 

 

にこのアイドルへの想いは

穂乃果達によって再び動かされた。

にこにとって穂乃果は大きな存在だったのだろう。

今目の前を失ってる穂乃果に

にこは思ってることを全てぶつけるが、

穂乃果は俯いたままで何も反応しない。

 

 

「じゃあ‥穂乃果はどうすればいいと思うの?

‥どうしたいの‥‥?答えて。」

 

「えりち‥。」

 

 

すると絵里が一歩前に出て訪ねた。

その言葉に穂乃果の瞳は徐々に色を亡くし、

ゆっくりと答えた。

 

 

 

全部私が悪いんだ‥‥‥。

もう、どうでもいい‥‥。

ことりちゃんがいないμ'sなんて‥‥。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「‥辞めます。」

 

 

 

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 

 

 

「私、スクールアイドル‥辞めます。」

 

 

 

 

 

 

誰もが想像もしていなかった一言に

その場の、全員が驚愕し、立ち尽くしていた。

そして穂乃果は言い終えるとゆっくりと

屋上の出口へと歩いていく。

 

 

 

 

 

そして、穂乃果がドアノブに手を伸ばそうとした

その時だった。

 

 

突然海未が走り出し、穂乃果の右手を掴み

こちらに振り向かせると。

 

 

 

 

 

 

パァアアン!

 

 

 

 

 

 

 

 

とてつもなく鈍い音が屋上に走る。

 

 

 

 

「‥っ‥‥‥っ!‥‥。」

 

 

 

一瞬穂乃果は何が起きたのか分からなかった。

次第に頬が熱くなりじんわりと痛みがくる。

目の前には右手を大きく出して

手のひらは赤く腫れてる海未が立っていた。

海未が穂乃果の頬をぶったのだ。

そして海未は涙を流して穂乃果に叫んだ。

 

 

 

「‥‥‥!貴方がそんな人だとは

思いませんでした‥‥。最低です‥‥。

貴方は最低ですっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

「じゃあこういう時こそ、

私達が何とかするしかないでしょ!」

 

 

あれから落ち込む穂乃果に

ヒフミトリオが参加!元気出して穂乃果!

 

 

 

「私はあの時、貴方達の手に救われた。」

 

 

絵里が語り、差し伸べられる手に

穂乃果は何を思うのか。

 

 

 

「ことりちゃん!行かないで!!」

 

 

旅立つことりを穂乃果は止める。

その気持ちにことりは‥‥‥。

 

 

 

「絶望してファントムを生み出せ!!」

 

 

「っ‥‥晴希君‥‥!!」

 

 

「さぁ、ショータイムだ!」

 

 

ファントムが現れ穂乃果達はピンチに!

だけど必ず駆けつけてくれる。

穂乃果達の‥μ'sの最後の希望、魔法使い(ウィザード)が!

 

 

 

 

 

 

1期最終話

第30話 ミュージックショータイム!

 




はい、しょーくんです!(^^)

次回で1期最終話!
いやーちょっと早かったかな‥?
その分2期はたっぷりとあると思いますので!


評価、感想などが、あれば是非お願いします(^^)

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