ラブウィザード! 〜希望の柱〜   作:しょくんだよ

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ユニコーン「ブルル‥(はぁ‥)」
クラーケン「ウニュ?(どうしたユニコーン?)」
ユニコーン「ヒヒーン‥(最近僕の出番少ないよね‥
クラーケンやガルーダと違って飛べないからファントム探しに
限界があるせいからかな‥)」
クラーケン「ウニウニ(そんなことないぞ、ユニコーンは
地中とか掘れてノームのときは活躍してたじゃないか、
もっと自信もてよ〜っ。)」
ユニコーン「ブルルルッ(クラーケン‥!)」

晴希「おーいっ、クラーケンちょっときてくれ〜」
クラーケン「ウニュ(あ、呼ばれちゃった)」
ユニコーン「ヒヒーン!(僕はーーー!!?)」


第13話 新たな指輪

6月の初旬。

2ヶ月も経てばさすがに女子高も

だいぶ慣れてきたものだ。

 

新たにμ'sのメンバーに加入した

3年生の矢澤にこ。

これでメンバーは俺こと、

操真晴希を入れて8人!

梅雨も明け日差しが照らす中、

気合いを入れ今日も練習を始めるのだが、

 

 

 

「「「「にっこにっこにーーっ!」」」」

 

 

 

「全然ダメ!もっと大きな声でっ!」

 

現在にこの指導を受けているのだが

にこ曰くキャラ作りの練習らしい。

 

だが‥そんなものよりも‥

 

「晴希!もっと大きな声出しなさいよ!」

 

俺も練習に無理やり加えられ

皆と一緒ににこにこにーをしていた。

 

「‥いやさ、なんで俺も‥?

やる必要なくない‥‥?」

 

「はぁ?μ'sのメンバーとして

練習に参加するのは当然でしょ?

全力でサポートするって言ったのは

どこのどいつよ。」

 

確かに言ったけど‥‥

ぐっ‥‥あの時の俺をぶん殴りたい‥。

 

「ほら、ラスト30回!」

 

「えぇー⁉︎まだやるのかにゃー‥」

 

星空凛はこの練習は嫌なのか、

あるいは疲れたのか肩を落とす。

 

「何言ってるの?まだまだこれからだよ!

お願いします、にこ先輩!」

 

「凛ちゃん、頑張ろ?」

 

高坂穂乃果、小泉花陽はやる気なのか

笑顔で凛を応援し、

再びにこにこにーを再開する。

 

 

「‥‥‥この練習、意味あるの?」

 

「ま、まぁ発声練習だと思えば‥‥」

 

隣で西木野真姫が小声でそう言うと

ジロジロと俺の方を見てくる。

 

「‥‥‥何?」

 

「べ、別に‥

先輩がそんなポーズとってるのが

ちょっとおかしくて‥。」

 

 

 

シャラップ。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ふぃ〜‥‥‥。」

 

練習を終え一息ついた俺の横で

穂乃果達は騒いでいた。

 

「ビッグに、ライトに、バインド‥

改めて見ると色々な指輪があるんだねぇっ。」

 

「穂乃果ちゃんの指につけてるのは

エンゲージって言うんだよね?☆」

 

「‥‥今更だけど、なんで穂乃果と花陽だけ

指輪をつけてるのよ?」

 

「穂乃果先輩とかよちんだけ指輪してて

なんかずるいにゃっ!」

 

「そのぶん酷い目にあっちゃったけどね。」

 

穂乃果、南ことり、にこ、凛、花陽の

順番で言いながら指輪を眺めている。

練習が終わった後に穂乃果は

指輪を見せてほしいと

言ってきたので今持っている

ウィザードリングを全て出し、

それを女子全員で手にとって眺めていた。

 

「この指輪は宝石でできていますけど‥

どうやって手に入れたんですか?」

 

俺は使い魔のブルーユニコーンを持って

可愛がっていると、

園田海未は困った質問をぶつけてきた。

 

「あ〜、それは聞いた話だと

魔法石って言う

すごい貴重で珍しい宝石を使って

作られた指輪で、

俺にとっての恩人みたいな人から

ちょくちょく指輪をくれるんだよ。」

 

「なるほど‥晴希の恩方はとても

すごい人なのですね。」

 

「その恩人さんもすごい魔法使いなのっ?」

 

「こんな指輪を作れるなんて

すごいです!尊敬ですっ!」

 

海未との会話に穂乃果と

興奮する花陽が

ぐいっと入ってくる。

 

「ま、まぁそうだな。

あ、そうだ、にこ。」

 

「何?」

 

色んな意味での魔法使い(神様)だがな。

俺はある事を思い出し、

鞄の中に手を入れる。

が。

 

「‥ん‥?なんだこの白い袋‥。」

 

ふと、俺は入れたはずのない小さな

袋が鞄の中に入っていた。

その中身を見ると

 

「これは‥新しい‥指輪?」

 

中に入っていたのは紙切れと

2つの指輪だった。

1つはドラゴンが

口から火を吹いてる感じの絵柄で

もう1つは‥。

 

「‥!フレイムリング‥じゃないな‥

なんだ‥新しいスタイルの指輪‥?」

 

もう1つは変身リングだった。

フレイムリングと同じ形をしているが

バイザーの上に角らしきものがあり、

宝石の頭部には別の赤い宝石が加わっている

新しい指輪だった。

そして小さな紙切れを俺は広げて読んでみる。

 

 

 

新しい指輪じゃ。

がんばるんじゃぞ❤︎

 

 

 

‥‥え?これだけ?

説明とか書いてないの?

神様適当すぎだろ!

つーかハート使うな気持ち悪い!

 

「晴希、まだなの?」

 

「え?‥あぁ、悪い。」

 

俺は2つの指輪を鞄にしまい、

目的の白い小包を取り出し

にこへその小包を差し出す。

 

「えっ‥、何よこれ?」

 

「まぁ開けてみな」

 

「あー!にこ先輩だけずるいっ!」

 

「凛達のは〜?」

 

突然渡す小包を見て穂乃果と凛は

羨ましそうに見てくるが俺は無視した。

にこは首を傾げながらその小包を開けると、

 

 

「‥えっ⁉︎これって‥!」

 

「伝伝伝!!?」

 

いち早く反応したのはアイドルの話に

なるとキャラが変わる花陽だった。

そう、中に入ってたのはあの超レアの

DVD全巻BOX、以下略の伝伝伝だ。

 

「どうしたのよこれ⁉︎しかも新品⁉︎」

 

さすがのにこも突然のプレゼントに

驚いていた。

 

「まぁその、俺の友達にアイドルオタクが いるんだけど

そいつが引退していらないからあげるって

言って貰ったんだ。

俺が持っててもしょうがないし、

それはにこにあげるよ。遠慮なんかすんなよ?」

 

ファントムに壊されたって聞いたから

買ってあげた事は秘密だけどな。

まぁ実際はネットで買ったんだけど‥

初めてだぞ‥あんな大金叩いて買ったのは‥

 

「‥あ‥ありがとう‥。」

 

にこは申し訳なさそうに受け取るが

顔はどこか嬉しそうだった。

 

ハーピーの事件から数日が経つが

俺から見て根が強いのだろうか

だいぶ立ち直れたと思う。

この子の心の強さは人一倍みたいだな。

‥‥まぁ、意外と泣き虫だったって事も

分かったし、ずっと頭を撫でて上げたんだが

アレでよかったのだろうか‥‥。

 

俺はそう思っていると花陽が

目をキラキラさせながら言った。

 

「じ、じゃあ早速部室で見ましょう‥!」

 

「おいおい、もう今日は帰る時間だろ?」

 

「くぁあああ‥‥」

 

彼女は物凄く見たがるが練習を終え、

季節もだいぶ暖かくなってきたので

日が沈むのは遅いがもうすぐ5時だ。

 

「明日は土曜日登校だし、

お昼から見ればいいよ☆」

 

「そうですね、たまにはアイドルについて

勉強するのも必要ですし。」

 

「それについては私も賛成ね。」

 

ことり、海未、そしてレッドガルーダを

肩に乗せている真姫はそう言ってくる。

 

「そゆこと、問題ないか?部長さん。」

 

「‥‥まぁこれは晴希のだし、

いいわ、特別に見させてあげる。」

 

「〜〜っ!」

 

にこの許可も出て、言葉にならない声で

花陽のテンションは上がっていた。

 

 

 

 

 

「しゃばどぅびたっちへんしーん!

しゃばどぅびたっちへんしーん!」

 

 

「変身!」

 

「ふれいぃむ!ぷりーず!

ひーひー、ひーひーひぃー!」

 

「仮面ライダー穂乃果!

さぁ、ショータイムだよ!」

 

 

途中で俺達の会話から抜けて

俺の指輪で遊んでいる穂乃果と凛。

凛はウィザードライバーの

音声を口で演じて

フレイムリングを付けた穂乃果は

決め台詞を真似て

ポーズをとっていた。

 

‥なかなかサマになってるなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 

夕方、授業を終え、

通学路を帰ってる小学生を

メデューサは歩道橋の上から見つめていた。

 

「‥‥見つけた、あの子ね‥‥。」

 

メデューサの目先には

元気に帰る小学生と違い、

俯きながら帰る1人の小学生を

不気味な笑顔で見つめていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「んー、今日もドーナツうまいなぁ。」

 

「あ、アンタ本当にドーナツ好きね‥‥。」

 

練習を終え 俺と穂乃果、海未、ことり、

そしてにこの

4人で通学路を帰っていた。

1年組は何やら女の子の買い物がしたいらしく

校門で別れ、そちらには使い魔の

ユニコーンとイエロークラーケンを

護衛させた。

そして俺は昼に購買で買った

いつものプレーンシュガーを

美味しく食べている。

身体動かした後の甘いものは格別なんだよ。

 

「晴希と言ったらドーナツ、

これが当たり前なんですよ。」

 

「そうそう、当たり前当たり前っ。」

 

「‥それは分かったけど穂乃果、

当たり前のようにドーナツとらないでくれる?」

 

海未と穂乃果がそう言うと穂乃果は

しれっとした態度で俺のドーナツを

1つ袋からとり、口に運ぶ。

 

「いいじゃん、減るもんじゃないんだしっ。」

 

「減ってるから言ってるんだよ。」

 

 

「うーん、やっぱり美味しいねぇ☆」

 

「‥意外とイケるじゃない。」

 

「ご馳走様です晴希。」

 

「へ‥?うぉおおお⁉︎いつの間に!?」

 

穂乃果と喋ってる間に

ことり、海未、にこにいつの間にか

ドーナツをとられていた。

くはぁ‥大量に買ったとはいえあと3つ‥

まぁいいか‥‥。

そんな会話をしながら帰ると

空からガルーダが飛んできて

何かを知らせるように鳴きだす。

 

「ガルちゃん、どうしたの?」

 

「‥‥‥ファントムか。

穂乃果、ドーナツ預かっててくれ。」

 

ことりが首を傾げるが、

俺はファントムの知らせだとすぐに気付き、

穂乃果にドーナツの入った袋を渡し、

ガルーダの後を追うように走る。

 

「うわわ、ちょっと晴希君!」

 

「っ!、にこ達も行くわよ!」

 

「あ、にこ先輩!?」

 

にこ達も晴希の後を追いかけ走り出す。

 

 

ーー

 

少年は突然現れたグールに追いかけられ、

必死に逃げるが前方の柵や橋の上から

次々とグールが湧き出て少年の逃げ道を塞いで行く。

突然の化け物に少年は怯え、

その場にしりもちをついてしまう。

1体のグールが槍を構え少年に向けようとした

その時、

 

「「ッ!?」」

 

遠くから晴希がウィザーソードガンで

撃った弾は追跡弾の様にグールだけに当たり、

少年に群がっていたグールは吹き飛ぶ。

少年は戸惑いながらも晴希の姿を見る。

 

「子供相手に大人数なんて

それは不公平じゃないか?

‥俺も仲間に入れさせてもらうよ。」

 

《ドライバーオン・プリーズ》

 

そう言いながら俺は走る際に付けた

ドライバーオンリングをベルトにかざし、

ベルトはウィザードライバーへ形を変える。

そしてシフトレバーを上下に動かす。

 

 

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

 

 

テンションの高い待機音声が鳴り響き、

起き上がるグールの群れは標的を少年から

俺へと変え、持ち前の槍を構える。

そして俺はフレイムリングのバイザーを下げ、

魔法の言葉を言った。

 

「変身。」

 

軽く左手を顔の横に振り、

待機音声が鳴るドライバーへとかざす。

 

 

《フレイム!・プリーズ

 

ヒーヒー・ヒーヒーヒー!!》

 

左手を真正面へ振り上げると

そこへ魔法陣が現れる。

俺はそこへ走り潜り抜けると

仮面ライダーウィザードへと姿を変えた。

 

グールへ接近し、1体のグールが

槍を振りかざしてくるが、ウィザードは

ウィザーソードガンの銃モードでそれを弾き、

槍を突き出してくるグール達をかわしながら

コントラクトリガーを引き、グールへ放つ。

横、背後から近付いてくるグールに

蹴りやかかと落としをして怯ませるが

ここは狭い道なので派手に戦えない。

 

だからその場を使うのが華麗な戦い方。

ウィザードは飛び上がり、壁を蹴って

グール達の顔面を蹴り上げる。

 

「よっと! ハァッ!」

 

ウィザードがグール達を

次々倒していくところを少年は

怯えながらもただ見ていた。

あらかた片付いたウィザードは

ウィザーソードガンを剣モードに構え

残りのグール達に斬りかかる。

 

その光景を橋の上から

メデューサは邪魔が入ったと

不満そうな顔をしてその場から

姿を消した。

 

「晴希君!」

 

「あ、あそこに子供が!」

 

それとすれ違う様に

橋の下から穂乃果達が現れ、

座り込んでる少年の姿を確認する。

 

「もう大丈夫よ、あの魔法使いが

悪い奴を全部やっつけてくれるから。」

 

「さ、こちらへ。」

 

にこと海未は少年を立ち上がらせ

交戦しているウィザードから離れる。

 

 

「せいっ!」

 

ウィザードは襲い掛かるグール達を

薙ぎ払いよろめくグール達。

その隙に腰を少し低くし、

ウィザーソードガンに力を入れると

剣先が赤く発行する。

 

「ハァアアッ!!」

 

再び襲い掛かるグール達にウィザードは

回転斬りのように斬りつけグール達は

そのダメージに耐え切れず爆散した。

 

「よし‥今回はグールだけみたいだな‥。」

 

周りにはそれらしいファントムがいない事を

確認したウィザードは変身を解き、

少年の元へ近付く。

 

「大丈夫か?」

 

「ちょっと擦りむいてるけど大丈夫だよ。」

 

ことりがその子の容態を確認しそう言うと

俺はそうかと安心する。

 

「よし、これで大丈夫よ。」

 

「おぉ、にこ先輩なんだか慣れてるみたいですね!」

 

にこは鞄から絆創膏を取り出し少年の

擦りむいているところへ貼ってあげた。

それを見て穂乃果が言うと、

た、たまたまよ!などと言って顔をそむける。

それを見ていると海未が俺に近寄ってくる。

 

「晴希、この子がゲート‥みたいですね?」

 

「あぁ、また狙われるかもしれないな。」

 

俺は当たりを見回すが人の姿は見当たらない。

それに襲われてたのはこの子だけだったので、

ゲートはこの子で間違いない。

 

「この子を守るなら、まず保護者の方に

話をしないといけませんね。子供を勝手に

匿うわけにはいけませんし‥。」

 

海未の言う通り勝手に匿うなどまだ俺達は

未成年だが犯罪だ。

俺は海未の言葉に頷くと少年へ歩み寄る。

 

「君、お家はどこ?」

 

「えっ‥?」

 

「送って行くから、またさっきの化け物に

狙われるかもしれないからな

‥‥‥‥‥どうした?」

 

俺がそう言うとなぜか少年は暗い表情になり俯く。

 

「晴希が怖い顔してるからじゃない?」

 

「ちょ、それは酷すぎじゃないかにこさん。

俺、怖い顔してる‥‥?」

 

にこにそう言われ俺は少年へ近寄り

聞いてみると‥。

 

「っ!」

 

 

チーン!

 

 

「ハグアッッ!!?」

 

「晴希君っ⁉︎」

 

突然少年は男の急所‥き◯たまに蹴りを入れ

俺はその場に倒れ込む。

ことりが駆け付けてくれるが、

なんか寒気がしたのはなぜだろう。

蹴りを入れた少年は逃げ出そうとする。

 

「ま、待ってください!」

 

海未が少年の手を握り止めようとするが

 

「助けてー!誘拐されるー!!」

 

「えっ⁉︎ちょ、誘拐!?」

 

「海未ちゃんが誘拐してる!?」

 

「ち、違いますっ!」

 

少年は叫び出し、穂乃果に言われると

海未は慌てて手を離す。

そして再び逃げ出す少年に今度は

にこが捕まえる。

 

「待って!ごめんね、ビックリしたよね、

あのお兄さん変身する人だけど

悪い奴じゃないから安心して、ね?」

 

よろよろと股間をおさえながら来る晴希を見ながら

お姉さん対応のにこに少年はやっと安心したのか

少し落ち着き始める、が。

 

「誘拐犯だと〜!?」

 

たまたま通り掛った警察が俺たちを見て

叫ぶ、って警察⁉︎まずくないか‥?

俺は今手を掴んでるにこを見ながら

そう思ってると。

 

「現行犯で逮捕する!」

 

カシャン。

 

「‥‥‥え?‥なんで?」

 

その手錠は何故か俺に掛けられた。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

一方、1年生組。

 

花陽が服や私物などを買いに

凛、真姫と一緒に駅前のデパートへと来ていた。

そして一息を入れる為、フード店で休憩していると

 

「‥‥ん、穂乃果先輩から電話?」

 

ふと、真姫の電話が鳴り、

画面には穂乃果の名前が書いてある。

真姫はそれを確認して電話を出た。

 

「もしもし、どうしたの?

‥‥‥え?ヴェエエ⁉︎何やってるの⁉︎」

 

「‥真姫ちゃん?」

 

「どうかしたにゃ?」

 

隣に座ってる花陽と、向かい側に座ってる凛が

水を飲みながら驚く真姫に声を掛けると。

 

「‥晴希先輩が警察に捕まったらしいわ。」

 

「ぶふぅっ!?」

 

「ヴェエエエエッ!?」

 

向かい側で水を飲んでいた凛がそれを聞いて

勢いよく真姫に口に含んでた水をぶちまけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

警察署にて。

 

 

 

 

 

 

 

「本当に申し訳ありませんでした!まさか

あの南警部の娘さんだとは知らずに‥!」

 

 

「あ、いえいえ大丈夫です、

私たちも責任がありますし‥」

 

何故か俺だけ連行され警察署に来たのだが

なんとビックリ、ことりの父親は刑事をしているらしい。

聞いていなかったから知らないとはいえ

とりあえず、助かった。

先ほどことりのお父さんが来て

事情を説明してなんとか誤解がとけたのだが、

(そのお父さんはすぐに別の仕事がある為

どこか行ってしまった)

新米警察がことりに頭を下げ謝ってる姿を

俺はにこと一緒に見ていた。

 

「ことりも凄いわね、お母さんが学校の理事長で

お父さんが警察だなんて。」

 

「だな、おかげで助かった。まぁ結果的に

あの悪ガキも保護できたし。」

 

 

「‥‥。」

 

「‥‥‥。」

 

「‥‥‥。」

 

 

俺がそう言って少年を見ると

穂乃果、海未、少年の順番で机に座り、

貰ったジュースをストローで

ブクブクさせながら飲んでいた。

海未さん、顔死んでますよ?

誘拐って言われたのそんなにショックでしたか?

 

 

「失礼します、お母さんがいらっしゃいました。」

 

「失礼しますっ‥!ひろき!」

 

ふと、女性警察が部屋に入りそう言うと

その後ろから息を切らせお母さんらしき人が

入ってくなり少年、

ひろきの姿を確認して声を上げる。

ひろきはお母さんの姿を見ると

嫌そうに顔をそむける。

 

「どうして誘拐されるなんて嘘ついたの!?」

 

「あ、あのすいません、俺たちも悪いんです。

いきなり手を掴んだら子供もビックリしますよね‥

あぁ、俺 操真晴希って言います。」

 

叱ろうとする母親に俺は割入り

母親に自己紹介をすると、何故か母親は

目を見開いて俺をマジマジと見つめ出す。

 

「‥操真‥晴希‥?‥っ晴希君!?

まぁ久しぶり‥私 美希子よ?覚えてない?

こんなに大きくなって‥‥!」

 

「え?」

 

「晴希君‥、知り合い?」

 

ことりがそう尋ねてくるが、

俺は全くこの人を知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

マンションの屋上にて。

 

 

 

 

 

「また指輪の魔法使いに邪魔されたみてぇじゃねえか?

なんでグールなんかにやらしたんだよ。」

 

メデューサが階段を降り どこかへ行こうとすると

フェニックスがそう言ってメデューサを止める。

 

「‥子供相手なら十分かと思ってね‥‥。」

 

「俺にやらせろよ。俺なら魔法使いがこようと

関係ねぇ、余裕で倒してゲートを絶望させられる。」

 

「ダメよ。」

 

メデューサがそう言うとフェニックスは高台から

飛び降り、イラ立て気味に言うが、簡易れず

メデューサは拒否する。

 

「前にも言ったはずよ。貴方は衝動に任せて

人間を襲うでしょ。間違って貴重なゲートに

死なれたら困るの。」

 

「‥‥‥今度はうまくやるって!」

 

今まで黙ってみてたせいか諦めきれずに

メデューサに許可を貰おうとする。

だが、メデューサはその瞳を青く光らせ

怪人態へと姿を変え、禍々しいオーラを

フェニックスへ見せつける。

まるで自分の方が立場は上だと言わんばかりに。

 

「‥‥‥信用ねぇなぁ。」

 

フェニックスはため息を吐くと

階段を降りてどこかへ行こうとする。

 

「‥‥どこへ行く気?」

 

「‥()()()()()を貰いにいくんだよ。」

 

メデューサに聞かれるとフェニックスはそう答え

怪人態へと姿を変え、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

警察署の外にて。

 

 

6時を過ぎる時間帯、にこは家の用事があると

先に帰り、残った4人とひろきとそのお母さん、

美希子で話をしている俺達。

美希子は積もる話もあるのか俺と2人だけで

会話をするため少し遠くで話をすることになった。

 

「ねぇ、ひろき君のお母さんって

晴希君の知り合いなの?」

 

「知らない。」

 

穂乃果はひろき君にそう言うとひろきは

首を振り、晴希が残していたプレーンシュガーを

食べていた。

 

「ということはひろき君が生まれる前の知り合い

なのでしょうか?」

 

「多分そうじゃないかな?」

 

海未もことりも気になってるのか首を傾げる。

 

「気になるよね!‥晴希君、自分の事

魔法使いだってこと以外あまり話してくれないし。」

 

「そういえば家族の事も話してくれないですね‥

ずっと1人暮らしをしているようですし‥。」

 

穂乃果と海未は遠くにいる晴希を見つめていると

ことりはまさかとはっと口を開ける。

 

「もしかして‥あのお母さんが初恋の人‥?」

 

「えぇっ⁉︎」

 

「ま、まさかそんなこと‥!」

 

「‥それはないと思うけど‥。」

 

ことりの言葉に穂乃果、海未、ひろきが

順番に口を動かす。

 

 

 

遠くで穂乃果達がわいわい騒いでるのを見ながら

俺は美希子と話をしていた。

 

「‥本当に何も覚えていないの‥?」

 

「はい‥全く‥すみません、

せっかくお会いしたのに‥。」

 

「謝ることないわよ。‥そうよね、

あんな事があったらショックで

記憶喪失なんてことがあってもおかしくないわね‥」

 

美希子はそう言ってどこか寂しい目で

俺を見つめている。

話をまとめると、俺は小さい時、

両親を事故で亡くしたらしい。

両親が意識不明の重体の中、

病院で付き添ってくれたのが

この人、美希子さんだったみたいなのだ。

 

転生された時に両親がいない設定だったのは

覚えているが転生されたのは高校2年の

状態だったので、その前の記憶は全くない。

だからそれまでどんな人と仲がいいのか、

今までどんな生活をおくってきたのか

全くわからないのだ。

 

「‥まぁ生活に不自由なく過ごせているので

全然大丈夫ですよ、それより、俺の話

信じてもらえましたか?」

 

「あ、えぇ‥、えっと、ひろきがそのゲートで

ファントムって化け物に襲われてるって事よね?

それに晴希君が魔法使い‥って‥何が何やら‥。」

 

「まぁいきなりそんなこと言われても

困惑するだけですよね。」

 

俺はそう言うと魔力切れで指輪に戻った

クラーケンリングを取り出し右手に付け、

ベルトへかざした。

 

「え?」

 

《クラーケン!・プリーズ》

 

その動作に声を出す美希子の目の前に

プラモの様な形の模型が現れ

そこから素早く組み立てていき

クラーケンが完成する。

そしてクラーケンの頭に

クラーケンリングをはめると

魔力が戻ったクラーケンが再び動き出し

美希子の周りをふよふよと飛び始める。

 

「‥信じてもらえました?」

 

「え、えぇ、こんなの見せられちゃね‥。」

 

初めて見る生物に若干引き気味の

美希子は晴希が魔法使いだということを信じる。

そしてクラーケンはその場から

穂乃果達の方へと飛んでいった。

 

「とにかく、ひろき君の事は俺が守ります。

だから安心してください。」

 

「‥ありがとう。たくましく育ったのね‥

あんな事があったのに‥少しホッとした。」

 

美希子は俺の顔を見てそう言う。

だが俺は過去の事が全く分からないので

自分はこんな平常心でいるのだろう。

‥俺の過去って言ってもこの世界に

来る前の嫌な過去しかないけどな‥。

 

少しその過去を思い返すと

暗い気持ちになり俺はその場で

小さく首を振り美希子を見た。

 

 

 

「俺は、」

 

この世界で。

 

「みんなの、」

 

μ'sや人々を守る為の。

 

「最後の希望だから‥ね。」

 

 

 

俺は笑顔で美希子にそう言うと

ひろきの方を見て口を動かす。

 

「親になって、あの時の

ご両親の気持ちがよく分かる‥

中々伝わらないけどね。」

 

 

そう言って美希子は穂乃果達の方へと

歩き出した。俺もその後を歩き

穂乃果達と合流する。

 

 

「さ、ひろきお家に帰ろう。

晴希お兄ちゃんが一緒に来て、

貴方の事を守ってくれるって。」

 

「‥嫌だ。」

 

だがひろきはプレーンシュガーを口にくわえて

駄々をこねるかのように

美希子の言葉を受け入れなかった。

 

‥ん?なんで俺のドーナツ食ってんだこいつ。

俺は穂乃果を見ると口笛を吹きながら

目は上の空だ。

 

「え?」

 

「帰りたくない、僕が晴希ん家行く。」

 

マジか、こんな悪ガキの子守りなんて

俺1人じゃ見れないぞ。

 

「おい何言ってんだ、家に帰って

お母さんとお父さんと一緒にいる方がお前も安心だろ?」

 

「パパやママなんか嫌いだ!いない方がいい!」

 

俺が説得してもひろきはそう言って

ゆうことを聞かなかった。

 

「‥ひろき!」

 

「あぁ、お母さんっ。晴希君はもちろん、

私も泊まりこんで24時間体制で守りますから!」

 

「ん、穂乃果もくるの‥‥‥え?」

 

叱ろうとする美希子に穂乃果はそう言った。

 

それは普通に爆弾発言だった。

 

「ほ、穂乃果ちゃん⁉︎」

 

「穂乃果!貴方、殿方の家に泊まりに

行く気なのですか⁉︎」

 

ことりと海未が止めに入る。

いやさすがに俺も抵抗がある‥

女子と屋根の下でお泊まりなんて生まれて1度も

したことがない。そんな事したら俺は眠れなくなる。

 

「だ、大丈夫だよ!晴希君ん家はそんなに汚くないし

何気に広いから問題ないよ!」

 

さらっと失礼な事言ったなこいつ。

‥だが、穂乃果は1度決めた事を曲げない性格なのは

ことりも海未も重々知っている。

2人は顔を見合わせ、海未はため息を吐くと。

 

「‥分かりました、では、

私も一緒に行きます。穂乃果だけでは

心配ですし‥。」

 

「へ??」

 

「じゃあ、ことりも行こうかな☆」

 

「ウエッヘ? いやいや、男の家だし、

明日学校だr」

 

「とゆうわけで、よろしいでしょうか

お母さん!」

 

おーい、人の話聞けーい。

 

「‥‥分かりました。晴希君、皆さん、

よろしくお願いします。」

 

‥いや、マジデスカ。

俺の前でめっちゃ深く頭を下げる美希子。

‥こんな頭下げられたら断り辛いやないすか‥。

 

「よぉし!じゃあさっそく準備して

泊まり込みだぁ!」

 

「おーっ☆」

 

「うぅ‥やはり緊張します‥‥って、

穂乃果、ことり!荷物っ!」

 

穂乃果、ことり、海未はひろきを引っ張り

歩いて行った。

まさかの女の子と泊まり込み‥

俺、大丈夫なのだろうか‥いろんな意味で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

とある洞窟にて。

 

 

 

 

 

「指輪の魔法使いのせいで、ファントムは

増えるどころか減っています。でも俺なら奴らが

出ようと関係ない、いくらでもゲートを絶望させられる!

‥俺にやらせてください。」

 

「いかがいたしましょう、ワイズマン‥。」

 

あのフェニックスが頭を下げてるのに対して

冷静でいるメデューサ。その先には

白いカーテンで覆われ、その奥には

人の影らしき物がベットからゆっくり起き上がり

フェニックスの言葉に静かに笑い出す。

 

「‥‥本当かフェニックス?

つまらぬ仮借に飽きて、暴れたくなったのではないか?」

 

 

「‥はっは、何だよ、お見通しか。」

 

ワイズマンがそう言うと緊張感が解けた様にその場の

石に座り込む。

 

「フェニックス!」

 

「構わん。」

 

その態度を見てメデューサは怒るが

ワイズマンはそれを制した。

 

「‥‥いいだろう、人暴れさせてやる。」

 

「おっしゃあっ!っしゃ!」

 

許可を貰いフェニックスはメデューサの前で

ざまぁみろと言わんばかりに拳を握る。

 

「‥子供がゲートなら‥‥‥、

お前にピッタリの方法がある‥‥‥。」

 

ワイズマンはそう言うとカーテンが開かれ

その姿をメデューサとフェニックスに見せる。

 

「‥どんな方法すかっ?」

 

フェニックスはそう聞くと

ワイズマンは静かに笑い、その内容を喋った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

晴希家にて。

 

 

 

「‥‥ほっ、‥あ、あぁあぁ⁉︎」

 

穂乃果は積み立てられたジェンガから

1つブロックを外すとバランスがなくなり

ジェンガは崩れ落ちる。

 

「うあーん!また負けたぁ!」

 

「穂乃果ちゃんの負け〜☆」

 

「いぇーいまたお姉さんの負け〜。

じゃあ、罰ゲーム〜」

 

一緒にしていたことり、ひろきが

そう言うとひろきは用意してある

水性のマジックペンを取り出して

穂乃果の顔に落書きをする。

 

「おーい、ご飯できたから机の上

片付けろ‥‥ぶはっ。」

 

料理を作っていた俺はキッチンから

穂乃果達を見ると穂乃果の顔は

ひどい落書きをされていた為思わず

吹いてしまった。

 

「晴希君笑わなくてもいいじゃん!」

 

いやその顔は無理ある。

額に肉と書かれヒゲなどが

濃く書かれてもはや別人だ。

 

あれから各自準備して俺の家に集まって

こうしてひろき君と遊んでる訳なんだが

‥まぁ、男の家に泊まるのに

よく親は許したモンだ。

穂乃果家はよく買い物で行くので

家族とも親しみがある。

お父さんは相変わらずだけど、

ことりもお母さんはよく知ってる人物なので

俺だと任せられるのか了承してくれたみたいだ。

‥‥警察のお父さんはどうなったのか知らないが。

 

問題は海未だ。何せ先ほど電話が

きたのだから驚いた。凛とした声の母親で

すごい丁寧に娘をお願いしますと言われ

つい電話越しなのに頭を下げてしまった。

 

まぁ何はともあれこうして泊まる事になった。

 

「海未ちゃん、晴希君!

今日のご飯はー!?」

 

「肉じゃか、初めて作ったから口に合うか

わからないけど。」

 

「いえ、晴希君飲み込みが早くて

とても上手でしたよ。」

 

俺は海未に教えてもらいながら

料理を作ったんだか流石は海未。

料理の腕前も良く、教え方もとても丁寧で

覚えやすかった。俺も一人暮らしをしてる

身だから料理スキルもかなり付いてきてるぜ

俺と海未は机におかずを並べて

穂乃果達はおぉーと目を

キラキラさせていた。

 

「いいなぁ!私も作ればよかったかなぁ」

 

君はもう少し料理の勉強してから

キッチンに立ってくれ。

 

「てか、その顔洗ってこいよ。」

 

「お姉さん顔変だよ。」

 

「ひろき君が書いたんでしょ⁉︎」

 

「今洗ってきてください、

気になって食べ辛くなるじゃないですか。」

 

海未がそう言うと海未ちゃんのバカーっ

と言って洗面所へ向かった穂乃果だった。

 

「怪物に襲われたわりには元気そうだね」

 

ふと、ことりが俺にそう言ってくる。

あんな思いをしたのにひろきは

全く気にしていないかのように

無邪気に遊んでいた。

 

 

「うーん、どうかな?」

 

 

 

ーー

 

 

10時を回る頃、

小学生ならもう寝てもおかしくないのに

ひろきは起きてテレビを見ていた。

 

「今日は穂乃果がひろき君を

守ってあげるから安心していいよ!」

 

「どうせ寝ちゃうんでしょ?」

 

「ね、寝ないよ!ねぇことりちゃん。」

 

「どうかなぁ‥?」

 

ことりは首を傾げ穂乃果は

海未にも同じことを聞いてみたが。

 

「スー‥スー‥」

 

「はやっ⁉︎」

 

海未は敷いてあるお客用の布団で

寝息を立ててぐっすり寝ていた。

規則正しい生活をしている為か

寝るのクッソ早い。

 

あ、お客用の布団は急いで買いに行ったぞ

買った瞬間コネクトで家に置いて

手ぶらで帰宅、いやー魔法って便利☆

 

そして俺は、顔に紅葉マークが

くっきりと残ってリビングの方で

ことりとココアを飲んでいた。

 

それは、バスタオルを風呂におき忘れたので置きに行こうとドアを開けた瞬間、

穂乃果がちょうどお着替え中の所を

覗いてしまい、顔に強烈な

一撃を喰らったのだ。

(けっしてわざとではない。本当です。)

そして海未とことりに怒られ

俺は今ナイーブなのである。

 

穂乃果は怒ってるのかと思いきや

俺の顔をチラチラ見るなり

頬を赤く染めている。

いやもう本当ごめんなさい。

 

「と、とにかく、お姉さんは今日は

オールしちゃうぞ〜〜!」

 

 

 

 

1時間後、

 

 

 

「雪穂〜‥‥おちゃ〜〜‥‥‥」

 

 

まぁ分かってはいたが沈没した。

 

ことりも自宅から持ってきた枕で

スヤスヤと寝ている。

 

よく寝れるよな、男の子いるのに‥。

 

俺は1人、ココア(二杯目)を飲みながら

本を読んでいると、いつも寝ている

俺のベットでもぞもぞと寝返りを

繰り返すひろきの方を見る。

すると鼻の啜り声が聞こえ始める。

 

「‥本当は帰りたいんだろ?」

 

俺がそう聞くとやはり起きていたのか

ひろきはゆっくりと身体を起こす。

 

「‥‥どうして意地はってるんだ?」

 

俺はそう言いながら布団で寝ている

穂乃果達を避けてベットへ腰を下げる。

すると泣くのをやめてひろきは喋り出す。

 

「‥パパが悪いんだ、いつも仕事が

忙しい忙しいってそればっかり、

この前の誕生日もちゃんと

約束した物を買ってくれたと思ったら

違うのを買ってきたんだ‥‥‥

‥‥別に欲しいものと違ったから

怒ってるわけじゃないんだ。

パパは僕の話、ちゃんと聞いてないだって

思って‥、なのに、ママはパパの

味方をするし、2人とも僕のことなんて

どーでもいいんだ!」

 

不満がたまっていたのか

つらつらと喋るひろき。

 

「そんなことないって。」

 

「あるよ!今日だって僕、

死ぬかと思ったのに‥‥‥

結局ここん家に預けたじゃん。」

 

やっぱり怖かったんだな。

ひろきはグールの事を思い出したのか

涙目になる。俺はやれやれと息を吐き

スマホを取り出すとメール履歴を開き

ひろきに見せた。

 

「‥‥これ、全部ママから‥‥?」

 

そこにはずらりと美希子と書かれた

文字が並んでいた。

ひろきはスマホを受け取り

メールの内容を確認すると、

 

『何があっても守ってあげてください』

 

『襲われた時は晴希君だけが頼りです。

どうかよろしくお願いします。』

 

『ひろきは無事ですか?』

 

などと全てひろきの心配する

メールが数十分毎にきていた。

 

「子供の事をどーでもいいなんて言う

お母さんはいないよ。」

 

俺はそう言って元気づける。

これだけ心配する母親を見ると

俺からしたら今日初めて会った人物だけど

本当にいいお母さんだった。

あんなお母さんを持つひろきが

俺は羨ましかった。

 

「お母さんはお前の事が心配だから、

俺に預けたんだよ。‥俺がお母さんの

知り合いで、俺が、魔法使いだから。」

 

俺は一旦区切りひろきを見つめる。

 

「明日、お母さんにもちゃんと

話してあげなよ?ひろきが何に

怒っているのか‥‥‥、な?

俺もついててあげるからさ。」

 

俺はそう言ってひろきの頭を撫でると

ひろきは俺を見て頷いた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

翌日。

 

 

 

 

「今日はひろき君家でお泊まりだね!」

 

「2日連続は大丈夫なのか‥?」

 

昼で学校が終わり、家でおとなしく待っていた

ひろきを迎えに行き 今日は練習を休んで

ひろきの家へ向かう途中だ。

その付き添いで穂乃果、真姫、凛が

ついてきてくれている。

 

「なんで凛達もお泊まり

誘ってくれなかったにゃっ!?」

 

「わ、私は別に興味ないけど‥。」

 

「その割には凄い興味ありそうだよ

お姉さん。」

 

なぜ1年の2人がついてきたのかは

分からない。因みに花陽は今日は

伝伝伝を見る日だったので少し迷ったが

希少なDVDを見ることに決め、今は

にこ、海未、ことりの4人で

学校で観覧中だ。

 

「いやアレは強制的だったんだよ‥。」

 

俺は凛の言葉に返答するとぷくーっと

頬を膨らませ俺を見る。

 

「まぁ今日は凛達がひろき君の面倒を

見てあげるにゃ!」

 

「ダメだよ凛ちゃん!穂乃果が

面倒見てあげるんだから!」

 

「そんな事言って昨日寝てたじゃん。」

 

ひろきにそれを言われうぐっ!

と、その場に固まる穂乃果。

なんだかんだで穂乃果はすっかり

ひろきのお姉さん気分になっている。

俺はその光景を笑いながら

道を歩いていると。

 

災いは、突然やってくるものだった。

 

 

 

 

目の前でズタボロにされている

美希子が倒れていた。

 

 

「ママッ!!」

「っ!美希子さん⁉︎」

「ひろき君のお母さん!!」

 

ほぼ同時に叫び、俺たちは

美希子の元へ駆け寄ろうとすると

すぐそばにいるファントムに気付き

立ち止まる。

 

「おぉ、会いたかったぜぇ!

指輪の魔法使い。」

 

美希子の首を掴み持ち上げると同時に

かけていたメガネが地面に落ち、

フェニックスは美希子を投げた。

意識はなく人形の様に地面を転がる

美希子を見て俺の怒りが込み上げてくる。

 

「こいつをやるのは簡単すぎてよぉ、

テメェなら息の根止める前に‥。」

 

フェニックスは一旦区切ると落ちてある

メガネをグシャリと踏む。

 

「思う存分あそべれそうだなぁ‥。」

 

「‥‥‥‥‥‥‥。」

 

クソが、こいつ今まで出会ってきた

ファントムの中でも一番許せない

ファントムだな‥‥。

 

「穂乃果、凛、真姫‥、2人を頼む。」

 

「う、うん‥!」

 

「分かったっ。」

 

「っ‥。」

 

怒りが爆発しそうな晴希を見て

3人は焦りながらもひろきを連れて

美希子の元へ駆け寄る。

その隙に俺はドライバーオンリングを

ベルトにかざし、

 

《ドライバーオン・プリーズ》

 

ベルトはウィザードライバーへと

形を変える。

俺はフェニックスを睨みながら

シフトレバーを上下に動かした。

 

 

 

《シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!

 

シャバドゥビタッチヘンシーン!》

 

 

 

待機音声が鳴り響き、俺は

フレイムリングのバイザーを下げて

軽く左手を顔の横へと振り、

ドライバーにかざした。

 

 

「変身。」

 

 

静かに怒る魔法の言葉をいいながら。

 

 

 

《フレイム!・プリーズ

 

ヒーヒー・ヒーヒーヒー!!》

 

 

左手を横へと振り上げるとそこへ魔法陣が現れる。

魔法陣は俺の身体を通り抜けると

俺は仮面ライダーウィザードへと姿を変えた。

 

「お望み通り‥俺が遊んでやるっ!」

 

「っへ、おう。楽しませてもらうぜ。」

 

フェニックスは右手から火を出すと

一気に燃え上がり巨大な大剣、

〝カタストロフ〟を出す。

 

ウィザードはウィザードローブを払うと

同時に走り出し、助走をつけた蹴りで

先制攻撃を繰り出す。

 

「むぅん!」

 

だがフェニックスはそれを交わし

カタストロフを勢いよく振りかざしてくる。

ウィザードはそれを避けると振りかざした

大剣で地面が割れる。

相当な破壊力と見たウィザードは一旦距離を

とろうとするがフェニックスは

攻撃をやめず、その場で回転してカタストロフを

振り回してくる。

 

だが重い武器なのか攻撃速度が鈍く、

その隙にウィザードはフェニックスに

攻撃を仕掛ける。

 

だが全く通用しない。

 

「うぉらっ!」

 

「っ!」

 

再びフェニックスは大剣を横へと振り上げ

ウィザードはその場でバク転をし攻撃をかわす。

着地したと同時にウィザードは

ウィザーソードガンを剣モードで取り出し

大剣を使うフェニックスを迎え撃つ。

 

 

 

「ママッ、ママ!ママ!」

 

ウィザードとフェニックスが交戦してる中

ひろきは意識のない美希子へ必死に呼びかけていた。

 

「触っちゃダメ!腕の骨も完全に折れてるわ‥!

凛、応急処置をするから手伝って!

先輩は私のパパの病院、西木野総合病院へ連絡を!

早くしないと手遅れになるわ!」

 

「わ、分かったにゃ!」

 

「うん!‥ええとまずは救急車救急車!」

 

医者の娘の真姫は瞬時に容態を確認し

迅速な対応で凛と穂乃果に呼びかける。

ひろきは涙目になりながらも必死に

美希子へと呼びかけた。

 

 

 

ーーーー

 

 

「おぉらっ!!」

 

「ハァッ!」

 

穂乃果達から距離を置き、

木々が生い茂る林の中で

戦闘を繰り広げてる

ウィザードとフェニックス。

だがフェニックスの力は

今までのファントムとは桁違いで

カタストロフの勢いを防ぎきれず、

 

「おらよ!」

 

「ぐはっ⁉︎」

 

ウィザードは斬りつけられ

おされる一方だった。

 

「このっ!」

 

「きかねぇなぁ!オラ!」

 

ウィザードはウィザーソードガンで

斬りつけようとするが簡単に避けられ

お腹へ蹴りを入れられ背後の木へとぶつかる

ウィザード。

 

「あぐっ!‥‼︎」

 

怯んでる隙もあたえてくれず

振りかざす大剣を間一髪で避けるウィザード。

背後の木は真っ二つに切れ

カタストロフの火で一瞬で燃え上がった。

 

生半可な攻撃じゃダメージすらあたえられない。

ウィザードはフェニックスの

猛攻撃をかわすことしかできなかった。

 

「足元がガラ空きだぜ⁉︎」

 

フェニックスはそう言いながら

避けるウィザードの右足を

大剣で斬りつける。

 

「うっ⁉︎あぁっ!?」

 

足に激痛が走り

その勢いで宙を舞うウィザードは

そのまま地面へと転んでしまう。

 

「ほら、立てよ!」

 

「っ⁉︎うぅああ!!」

 

恐らく出血を起こしてるであろう

右足の痛みをウィザードは耐えて、

振りかざす大剣を跳ね起きの要領で

払いのける。

 

「おっと!?やるねぇ!」

 

一瞬だけ怯んだフェニックスは

どこかの誰かと同じように戦いを楽しんでいる。

 

「ハァアアッ!」

 

ウィザードは距離をとり回転跳躍しながら

ウィザーソードガンを振りかざした。

 

「ふん、緩いんだよテメェの攻撃は、よっ!」

 

「うぁっ⁉︎」

 

だがフェニックスに簡単に受け止められ

カタストロフで斬りつけウィザードは吹き飛ぶ。

 

「くっ!!だったらこれは!」

 

ウィザードは体制を立て直し

ウィザーソードガンのハンドスプリングを開く。

 

 

《キャモナスラッシュ!

シェイクハンズ!

 

キャモナスラッシュ!

シェイクハンズ!》

 

ウィザーソードガンから待機音声が流れ

ウィザードはフレイムリングを

ハンドオーサーにかざした。

 

《フレイム!スラッシュストライク!

 

ヒーヒーヒー・ヒーヒーヒー》

 

 

「ハァアア‥‥!」

 

剣先に渦の様に火が燃え上がり

ウィザードはウィザーソードガンを両手で持ち

ゆっくりと腰を低くする。

 

「ハァッ!デヤァ!!」

 

ウィザードは横、縦の順番で

ウィザーソードガンを振りかざすと

十の形をした斬撃が出来き、ソレは

フェニックスへと飛んでいく。

 

 

だが。

 

 

「ハァァ!」

 

フェニックスは

それすらも簡単に防いだ。

 

「‥その程度の〝火〟じゃ、

きかねぇなぁ‥‥。」

 

「何っ⁉︎」

 

「魔法の火が使えんなら、

こんくらいやってみやがれ!!」

 

フェニックスはそう言うと

気合いと共にフェニックスの身体は

灼熱の業火の如く燃え上がる。

それは周りの木々や草が一瞬で消し炭になるほど

強力な火だった。

 

「うっ⁉︎ぐぁ‥‥‥うぁぁぁあああ!!」

 

火に強いフレイムスタイルでさえも

その熱波にウィザードは耐え切れず

吹き飛んだ。

 

「うっ‥⁉︎ぐぁ‥身体が‥熱い‥!」

 

ウィザードはその場で焼けるように熱い身体を

抑えながらもがいている。

 

「ハッハッハァ!これが

地獄の、業火ってモンだ!」

 

「‥っ、だったらコレだ!!」

 

燃え上がるフェニックスがそう言うと

ウィザードはウォーターリングを付け、

シフトレバーを上下に動かし、

待機音声を聞く暇もなく

ドライバーにかざした。

 

《ウォーター!プリーズ

 

スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜》

 

音声と同時に左手を真上へ振り上げると

水でできた魔法陣が現れ

ウィザードの身体を下へと通り抜ける。

そしてウィザードは

ウォータースタイルへと姿を変えた。

変えると同時に ウィザーソードガンを

銃モードに構えハンドスプリングを開いた。

 

《キャモナシューティング!

シェイクハンズ!

 

キャモナシューティング!

シェイクハンズ!》

 

音声が鳴り響き、

ウィザードはウォーターリングを

ウィザーソードガンの

ハンドオーサーにかざした。

 

《ウォーター!シューティングストライク!

 

スイースイースイー・スイースイースイー》

 

銃口に水のエネルギーが収束していき

燃え上がるフェニックスへと

ウィザーソードガンを構える。

 

「っハァッ!!」

 

そしてコントラクトリガーを引き

水の銃弾をフェニックスへ放った。

 

「フンッ!」

 

だがそれすらも、

フェニックスはカタストロフを振り上げ、

水の銃弾は一瞬で蒸発されてしまった。

 

「っ⁉︎」

 

「無駄無駄ぁ。それっぽっちの水じゃ

水遊びにもなりゃしねぇ‥‥。」

 

フェニックスはそう言うと

ゆっくりと、こちらへ近づいてくる。

 

「っ‥‥!何てやつだ⁉︎」

 

どの攻撃も通用しないウィザードは

焦りと恐怖を感じ慌てて

バインドリングを付けドライバーへかざす。

 

《バインド・プリーズ》

 

音声が鳴るとフェニックスの周りの地面から

無数の魔法陣が現れ、そこから

水でできた鎖が飛び出しフェニックスに

巻きつき拘束する。

 

「ふん。」

 

止めたのは一瞬だけで簡単にちぎられ

バインドは消えていった。

 

「‥‥。」

 

「‥!クソっ!何か手は‥!」

 

ふと、ウィザードは昨日貰った新しい指輪を

思い出す。

 

「‥一か八かだ!」

 

ウィザードは赤い魔法リング、

〝スペシャルリング〟を付け

シフトレバーを動かし

ドライバーにかざした。

 

《エラー》

 

「はっ⁉︎なんで‥⁉︎」

 

魔力も切れてないはずなのに

エラー音が鳴るだけだった。

 

「くそっ!なんでだ!こっちは⁉︎」

 

今度はもう1つの指輪、

赤い変身リングを付け

シフトレバーを上下に動かし

ドライバーへかざしたが。

 

《エラー》

 

「うっそだろ⁉︎」

 

こちらもエラー音がなるだけだった。

 

「ほらほら、どうした!!」

 

「しまっ⁉︎ぐぁぁああ!」

 

 

余所見をしている間にフェニックスは

近付きウィザードを大きく斬り上げた。

物凄い勢いで吹き飛んだウィザードは

林の先のダムの橋へと転がる。

 

「うっ‥ぐぅううあ‥‥⁉︎」

 

「‥テメェ如きの魔力で

俺に敵うわけねぇだろ!」

 

倒れ込むウィザードにフェニックスは

近付き、お腹に何発も蹴りを入れる。

 

「うごっ⁉︎がはっ⁉︎」

 

「フンッ!」

 

ウィザードはやられまいと

立ち上がろうとするが

フェニックスはカタストロフを振りかざし

再び膝をついてしまうウィザード。

 

「‥‥なんだよ、もう終わりか‥フンッ。」

 

「うぐ‥⁉︎」

 

倒れ込むウィザードにフェニックスは

首を掴み軽々とウィザードの身体を持ち上げた。

 

「‥っ‥っ‥‥!?」

 

息が出来なくなるほど締め上げられた

ウィザードはウィザーソードガンを手放し

フェニックスの手を離そうとする。

 

「‥だったら‥‥。」

 

フェニックスはカタストロフを

ゆっくりと構える。

 

 

やばい‥‥!

 

死ぬ‥‥⁉︎

 

 

「くたばれっ。フン!」

 

 

そして空中へ放り投げ出された

ウィザードは振り上げた大剣に

斬りつけられる。

 

 

 

「ぐあぁぁぁああっ!!」

 

 

 

ウィザードは

燃え上がる身体とともに

ダムの湖へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、仮面ライダーウィザード

 

 

 

「流石はワイズマンね‥。」

 

指示通りウィザードを倒すことができた

圧倒的な強さを誇るフェニックス。

 

 

「ひろき君は希望を捨てちゃダメだよ。」

 

病室へ運ばれる美希子に不安がるひろき、

それに対して勇気付けようとする穂乃果。

 

 

「強そうな奴がいるじゃねえか!」

 

病院へ入り込んだフェニックスに立ちはだかる

ダークウィザード!今回は味方なのか?

 

 

「ドラゴン!俺に‥力を貸せ!!」

 

晴希の身体の中にいるドラゴンとご対面!

そして新しい姿へ変わるウィザード。

その強さとは‥⁉︎

 

 

第14話 ドラゴンの咆哮




はいー!書きました(^^)
そろそろ髪を切ろうか悩むしょーくんです。

圧倒的な強さを誇るフェニックスに
敗れてしまうウィザード!

そして次回はダークウィザードとフェニックスが戦いに!
果たしてどちらが勝つ⁉︎

評価、感想などがあれば是非お願い致します(^^)

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