比企谷兄妹の年越し   作:乾電池博士

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ども、松です。
4話目ですね。今回は不思議と創作意欲がわき、早めに完成しました。
ただし期間はいつも通りですが……少し遅すぎですね。

余談ですが、折本のキャラソンを聞いたときは思わず失笑してしまいましたね。あれは反則です。

今回のストーリーはヤンデレに入る前の箸休め、僕の感覚ではハートフルストーリーにしたつもりですが……どうでしょうかね?それではどうぞ!

《前回のあらすじ》
小町にわざわざ教えられながらも自らの思考の渦にとらわれ、忠告をほとんど聞き流してしまった八幡。
そんな中、小町は八幡を初詣に誘う。
八幡が神に、強く誓ったものとは…?


正月編
4:垣間見える、二人の絆


午後 幕張本郷駅前

 

 というわけで、ここからは少し遠いが幕張・稲毛地域では一番大きいであろう神社の稲毛浅間神社に向かうことになった。小町曰く「神頼みならなるべく高校から理解神社の方がご利益ありそうだよね~」ということらしいが……

 だが我が妹はここの神社に祀られている神様、木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)というらしいが、これが何の神様か知っているのだろうか。

 いくら大きな神社…例えば伊勢神宮に行ったとして伊勢神宮(内宮)は「神恩感謝」を伝える場、簡単に言うと生きていること自体を感謝する場である。なので、高校合格という矮小な私利私欲を誓ったところで神は困惑するだろうし、そこに祀られている神様の天照大御神(あまてらすおおみかみ)にも結構失礼なのかと。

 だから小町の判断の仕方はあまり正しいとは言えないであろう。

 …そもそも総武高校の最寄駅は京葉線の稲毛海岸だしな。

 かといって菅原道真が祀られている亀戸天(かめいどてん)神社は仕事の帰りに両親で参拝してくるらしいし、わざわざ千葉県を出て錦糸町近くまでなんてあまり行く気にはならん。

 そしてもう一つの湯島天満宮は上野に位置する。それはさすがに遠すぎる!ということで結局小町の判断は最善なのだろう、認めたくはないが。

 そもそもあの妹がそこまで考えているかどうかなんてわからんし。てか東京にまで言って人ごみに紛れたくなんてない。俺のボッチ属性が悲鳴を……

 そういえば親父が「仕事さえなければ大宰府でも徹夜しても行ったのにっ…!」って嘆いてたな……そして小町はそれを冷めた目で見ていた。…親父ザマァ。

 まあ実際、初詣に行く神社の神様はどんな神様なのかを一々気にしている人はなかなかいないのではないだろか。ひょっとしたら寺院に参拝していても、それを『初詣』と称している人もいるかもしれない。ただし地元に知名度の高い神社があり、そこに毎年毎年お参りしている人たちは別だろうが。

 とりあえずそのことは…面倒臭いから参拝した後にこっそり全て明かしておくとするか。小町としても計画が脆くも崩れ去る、なんてことは避けたいだろうしな。

 そもそも神頼みするものなんかじゃないと言われればそれまでなのだが、誓いを立てるくらいだったらいいだろうな。初詣とはそういう場なんだし。

 

 このようなことを頭の片隅に考えながらJRの方に入らないように気を付けて改札を通過し、京成幕張本郷駅2番線のプラットホームに降り立つ。

 そしてスマホをいじる暇もなく千葉中央行の普通列車が滑り込んできたので、二人で乗り込む。

 この先京成幕張・検見川(けみがわ)と停車し、10分としない内に京成稲毛に到着、ここで下車だ。

 そしてこの駅から県道134号線に沿って歩くこと5分。そう、この稲毛公園内に浅間神社はある。

 

* * *

 

稲毛浅間神社 一の鳥居

 

「とーちゃーく!」

 

「ああ、そうだな……」

 

「お兄ちゃん、何でいつも以上に目が濁ってるの?って…ああ、なるほどね。」

 

 小町は察してくれたが俺にも自覚はある。まずとにかく人が多い。前後左右どこを見渡してもひたすら人、人、人。「初詣について行く」という時点である程度の覚悟は決めたつもりだったが、やはり多少は気分が悪くなる。

 また今まで述べてこなかったが、電車内と駅、ここまでの道路、屋台、全てにおいて同様。要は俺はここに来るまで人波しか見ていないということになる。何そのクソゲー……

 何回目かもわからぬ俺の溜め息が、喉から()れる。

 

「本当に大丈夫?顔色悪いよ?」

 

 こうやって本気で兄を心配してくれるとは、本当にいい妹を持ったものだ。

 

「あ、今の小町的にポイント高くない?」

 

「そうやって茶化さなければな。」

 

 …二重の意味でも。

 

「ぶーっ!何それ~」

 

 小町は少し不満げに口先を尖らせる。

 

「ふふっ」

 

 小町の顔があまりに可笑しく、おもわず笑い声をあげてしまった。

 

「はぁ、やっとお兄ちゃんの顔色が戻ってきてくれた。」

 

 少し呆れ顔を浮かべながらも、ふとそんなことを口にした小町。なら俺が返す言動は一つだ。

 

「そうか。ありがとな、小町。」

 

 隣人にしか聞こえないとても小さな声音でそう呟き、頭をわしゃわしゃと幾分か強めに撫でてやった。

 

「きゃー」

 

 そうやってわざとらしく嫌がるような仕草を見せながらも顔だけは嬉しそう、というのもまた兄の特権である。やはり小町は可愛い、異論は認めんっ!シスコンだって?それは俺からしたら褒め言葉だな!

 

* * *

 

 あの後何かあるわけでもなく手水舎(てみずや)に立ち寄ったあと、人の流れに沿って本殿へ。

 この辺りでは一番大きい神社とはいえ大して広いわけでもないため、すんなり辿り着いた。人々の雑踏の中、寺の参拝方法と混同しないように、兄弟そろって一礼し、鐘を強く鳴らした後10円を各々投じる。その(のち)二礼二拍手し、祈念する。

 

 ―――――小町は何を望み、何を神の目前で誓ったのだろうか。もちろん総武校合格は固く誓っただろうが、その他に…本質的な、切実に望んだものは一体どういったものなのだろうか。……詮索は良くないな。これは忘却の彼方へと放り込んでおこうか。

 

 そして…俺の誓いは二つ。一つ目、『俺達家族は今年こそ誰一人怪我せず、病気を患わず、健勝に生活いたします。』

 そして二つ目――――――『小町の高校受験成功のため、俺はどんな補助にでも精一杯勤しみます。どうか、見守っていただけますよう、お願い申し上げます』―――――




4話でした。お楽しみいただけたでしょうか?
ご感想、ご評価、ご意見、誤字報告などなど、本当に宜しくお願いします!

このお話は、もう少しで完結を迎えると思われます。この作品を読んでいただいている皆様、最後までお付き合い宜しくお願い申し上げます。


投稿スピードが全く改善されず、読んでいただけている読者様にはご迷惑をおかけします。恐らくこれからもこんな感じです。ですが、精一杯やらせていただきますのでご理解をお願いいたします。こんなでも応援していただけるという方がいらっしゃいましたら、非常にありがたいです。
以上

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