魔法少女リリカルなのは Vivid Wing stars   作:ライジングスカイ

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misson:9 海鳴市

護送任務から数日

アンジュが寮から出ると既にロイスが待っていた

「おはよう、アンジュ」

あの護送任務以降、ロイスはずいぶん態度が柔らかくなっていた

「おはようございます、ロイス」

ちょうどそこへカレルとリエラもやってきた

4人は談笑しながら朝の訓練へと向かっていく

 

「はぁ!」

アインハルトの攻撃に対しリエラがアイギスを掲げる

防御魔法を展開しアインハルトの攻撃を受け止めるリエラだったが魔法ごと吹っ飛ばされてしまう

「痛たた」

腰を打ったのかさすりながら何とか立ち上がるリエラ

「強力な攻撃手段を持たないリエラさんは、とにかく相手の攻撃を耐えて好機を待つ」

再度構えながら説明するアインハルト

「そのためにもアイギスを信じ、自分の力を信じてください、迷いは禁物です」

「は、はい」

立ち上がったリエラが再びアイギスを構える

「お願いします」

 

ヴィヴィオの射撃魔法をよけながらアンジュが向かっていく

だが弾幕に阻まれ思うように前に進めない

「カウンターヒッターは観察力が命、全体をよく見て隙を探すの」

「はいっ!」

ヴィヴィオに言われ目の前の弾丸だけでなくそれを放つヴィヴィオも観察しながら動くアンジュ

弾幕を潜り抜けヴィヴィオに飛び横蹴りを放つが腕でガードされてしまう

「そう、そんな感じ、もっと打ちこんできて」

そう言いながらヴィヴィオは反撃の魔法弾の準備に入る

 

腰に二本の刀を差した訓練服姿のリオの拳に炎と雷が纏われる

「ロイスの当面の目標は攻撃と防御の両立、懐にはいられないように、相手の進路を塞ぎながら攻撃する」

「お願いします」

ロイスが構えるとリオも拳を振り上げ向かっていく

リオが向かってくる正面、左から右に向けて水を放つとリオが飛び上がって上から狙ってくる

「リヴァイアス」

「yes」

ロイスの指示を受けリヴァイアスが地面からリオに向けて水を放つ

だが寸でのところでリオに避けられてしまう

「もっと早く!相手に悟られないように!」

「はいっ!」

 

「カレルの課題は移動と攻撃の両立、スピードだけで言ったら、カレルは多分六課で一番速い」

コロナが操作するのは訓練用の自動操機

カレルに向かって次から次へと攻撃を繰り出す

「一度止まってから攻撃するんじゃなくて、スピードを生かして、移動を繰り返しながら、相手に居場所を悟られないように、同じ場所になるべくとどまらないように」

 

厳しい訓練が行われている一方、部隊長室でははやてとリインが書類仕事をしていた

「あれ?メール?」

書類に部隊長印を押していたはやてだったが突然のメールに首をかしげる

「アリサちゃんから?」

「わぁ、久しぶりです、でも私用のメールなら後にしてくださいね」

リインの苦言に対してはやては真剣な表情になる

「いや、どうやらそうやないみたいやね」

 

「出張?」

ヴィヴィオの言葉にファビアは首をかしげる

「うん、管理外の異世界、昔輸送中の事故で紛失した古代遺失物(ロストロギア)が発見されたんだって、古代遺失物狩りに狙われる可能性もあるからって」

資料をまとめ終えたヴィヴィオがファビアのほうに向きなおる

「それでこないだの事件、なのはママや番長たちが非常線を張ったんだけど結局逃げられちゃって、でも逃走ルートの候補はいくつか割り出せたんだ、だから」

「逃走ルートの絞り込み」

「うん、古代遺失物狩りは他の世界で現れたこともあるから次元航行部隊の執務官に頼むのがいいかと思うんだ」

そう言って画面を操作するヴィヴィオ

「だからヴィクトーリア・ダールグリュン執務官に頼んでみようと思うんだけど」

「出張から帰った後、一度会えないか問い合わせてみる」

ヴィヴィオの言葉を遮り彼女の頼みを先読みしたファビアに苦笑するヴィヴィオ

「話が早い副官がいてくれて助かるよ」

 

「おまたせ」

通信を終えヴィヴィオが食堂にやってくると既にフォワードたちや隊長陣、はやてとリイン、ディエチ、ユミナ、アルトが揃っていた

「それやったら新人たちも揃ったことやし食事しながら出張任務のこと確認しよか」

そう言ってはやてが画面を開く

 

「え?第97管理外世界?それって」

行き先を聞いたカレルが驚き声を上げる

「せや、私やヴィヴィオのお母さん、高町なのは教導官の故郷、カレルやリエラの生まれた場所」

「情報提供者ははやてちゃんの子供のころからの友達です」

嬉しそうな顔でリインがはやての言葉を繋ぐ

「懐かしいなぁ、うちのママ達忙しいからさ、小さい頃一人でそっちに遊びに行ったりとかもしたんだよ」

「“達”っていうのは?」

「お父さんの妹のフェイト・T・ハラオウン執務官、ヴィヴィオさんのお母さんとは子供のころからの友達なんだって」

「その辺の細かいところは特秘事項になってるからあんまり詮索しないであげて」

クリームスパゲッティをフォークで巻き取っていたディエチの言葉にアンジュは彼女を見た

「ん?どうかした?」

「あ、いえ………ただディエチさんも名前の感じが似ている気がして」

「察しがええなアンジュ、と言っても、ディエチのお父さんの御先祖様が、元々そっちの出身なだけで、ディエチ自身はミッド育ちやけどな」

「両親がミッド生まれで、地球暮らしだったカレルたちとちょうど逆ですね」

はやての説明で納得するアンジュとロイス

「そういえば、ロイスたちの出身世界って?」

アルトの質問に最初に応えたのはロイスだった

「僕の育ちはミッドですが、生まれは第32管理世界のムーランです、その世界の水は特別な魔力を持っていて、僕みたいな水の魔法資質を持った人間が稀に生まれるそうです」

「へえ、いろんな世界があるんだね」

「なんだか、出張先がどんな世界か楽しみになってきました」

ロイスの言葉にユミナとアンジュが瞳を輝かせた

「で、アンジュはどこ出身なの?」

「私は物心つく前に火事で両親を亡くして、ミッドにある民間の保護施設で育ちました」

「あっ!ごめん!悪いこと聞いちゃった?」

「大丈夫です、施設のみなさんにはよくしてもらって、魔法もそこで教わったんですよ」

アンジュの言葉に申し訳なさそうにするアルトだったがアンジュは気にしてない様子

「それに今は六課のみなさんがいますから」

アンジュのその言葉にフォワードの仲間達も満足げに笑った

 

そして出張先、海鳴市へとやってきた新生六課の仲間達

「ここが………」

「部隊長の故郷………」

はじめてやってきたロイスとアンジュが目の前の湖の光景に息をのむ

「あ、きたわね」

ビジネススーツに身を包んだブロンドの女性が彼女たちに気付き声をかけた

「アリサちゃん!」

「アリサさん!お久しぶりです」

それに気付いたはやてとヴィヴィオはアリサに駆け寄った

「はやて久しぶり!ヴィヴィオ達も元気そうね」

「はい、元気です」

再会を喜ぶはやてたち

「っと、アンジュ、ロイス、紹介するね、この人が今回の古代遺失物(ロストロギア)発見者で、民間協力者の」

「アリサ・バニングスです、こっちでちょっと大きな会社の社長をやってます」

「あ、アンジュ・マーキュリーです」

「ロイス・ローレンスです」

自己紹介して敬礼するアンジュとロイス

「アンジュに、ロイスね、よろしく、カレルとリエラも元気そうね」

「はい」

「本当にお久しぶりです」

「そう言えば二人はこの世界の出身だったな」

その様子を見ていたロイスが納得したように呟く

「ちいさいころ何度かお会いしたことがあって」

そんなロイスにリエラがこっそり説明する

 

アリサが別荘の扉をあけると中には既に先客がいた

「お、みんな来たか」

オレンジ色の子犬が彼らに駆け寄ってくる

「アルフ!」

ヴィヴィオが声をかけると子犬は彼女たちの目の前で少女の姿に変わった

「お、初めての顔もあるな」

一同を見回して軽く口笛を吹かすアルフ

「アリサさん、使い魔をお持ちなんですか?」

「違う違う、あたしのじゃなくて友達のよ、あたし魔法なんて使えないし」

「まあ、あんたらもそのうちあたしのマスターに会うことあるだろうし、今は古代遺失物(ロストロギア)だ、案内するからついてきな」

そう言ってアルフがロッジの奥へと向かう

 

アルフの案内で古代遺失物(ロストロギア)を保管してる部屋にやってきた

「で、これが問題の古代遺失物(ロストロギア)?」

「何か………箱みたいですけど」

ロイスとアンジュが覗き込むガラスケースの中には箱のようなものが

「これはケースみたいなもんさ、何かを運んでた時のものってとこまでわかったんだけどさ、そっちは?」

アルフの問いかけにはやてとヴィヴィオが事前に調べてきたデータを取り出す

「うーん、流出してから結構たっとるからなぁ、一応データベースと照会してみたけど記録がないなぁ」

「ユーノ司書長に頼んで調べてもらってますから、そのうちわかるとは思うんですけど」

そんな会話をしているとふとロイスが何かに気付く

「ケース………運ん“でた”って………まさか」

「あたしたちが見つけた時はもう………」

つまりこの箱の中あったものはもうどこかに流出しているということだ

「それやったらまず流出した本体を探さんとな、コロナは上空からサーチャーとセンサーの設置、移動してる可能性もあるからな」

「了解」

「私たちは地上から作業に入りましょう」

一足先に飛びだすコロナに続いてアインハルト、カレル、リエラも出発する

「私たちとリイン二尉は中距離探査、クリスもお願いね、リヴァイアスにも簡易版の探査魔法をセットしておくから」

ヴィヴィオの言葉にクリスも敬礼で返す

「ほな、機動六課出張任務、古代遺失物(ロストロギア)の探索と護送、開始や」

はやての言葉と共に全員が腕を高く掲げる




おまけ(高町なのは)
ヴィヴィオが管理局に入局した後三等空佐に昇進
これまで以上に教導の現場で活躍
自身の経験から教え子たちにはまず第一に命を背負い戦う覚悟について真っ先に教えている
無茶をすることこそ減ったものの主治医のシャマルにはやはりお世話になってばかり
「局員としては文句のつけようがないが患者としては最低最悪」というのはシャマルの談
ヴィヴィオが執務官試験に合格し独立してからは自宅で一人で過ごすことが増え寂しい思いをしているらしい

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