魔法少女リリカルなのは Vivid Wing stars   作:ライジングスカイ

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misson:5 ファーストミッション

まだ日も昇り切っていない早朝

自室に備え付けられたキッチンでディエチは調理に勤しんでいた

タッパーの中身を一つ取り出し味見をしてみる

「ん、上出来」

 

同じころアンジュも目を覚まし伸びをしていた

本出動はまだなく訓練漬けの毎日が続いている

それでも強くなるためにアンジュはいやな顔一つせず努力を続けていた

「今日も頑張ろう」

 

朝から部隊長室でリインと仕事をしていたはやて

すると来客を告げるブザーが鳴り響く

「どうぞ」

「失礼します」

扉が開くとトレーを持ったディエチが入ってきた

「これ、よければ食べてください」

「あー、おおきにな、忙しくて食堂行く暇ないから助かるわ」

「ありがとうですディエチ」

はやてとリインにお礼を言われ照れるディエチ

「そう言えば、ここに来る前にフォワードのみんなに差し入れ持っていったんですけど」

「ああ、みんなどうやった」

「みんな頑張ってましたよ」

 

「じゃ、今日の早朝訓練のラスト一本、行ってみようか」

そう言ってコロナがブランゼルを掲げると彼女の背後に巨大なゴーレムが姿を現した

「ゴライアスを倒すか、5分間攻撃を捌き切れればクリア、だれか一人でも被弾したらやり直しね」

彼女の言葉と共にゴライアスが拳を鳴らしフォワードたちが身構える

「それじゃ、スタート!」

コロナの合図と共にゴライアスがフォワードたちに襲いかかる

全員が散開してゴライアスを見据えた

「お前達5分間逃げきる自信は」

「正直あまり」

「僕もだ、訓練終わりで疲れきっているからな」

ロイスの問いかけにアンジュとカレルが答えた

「なら何とか倒すぞ、速攻で決める」

そう言ってロイスが水を出現させる

「ポセイドンゲイザー!」

大量の水が波となってゴライアスに襲いかかる

いったんはバランスを崩すゴライアスだが両手を突き出し水をせき止めた

「駆け抜けろ!ソニックムーブ!」

続けてカレルが勢いよくゴライアスに突っ込んでいく

だがゴライアスは体を慣らすと回転してカレルを阻む

直前で離脱したため被弾は免れたがこれでは近づけない

「何とか動きを止めないと」

「それなら私がやる、カレル!」

リエラの意図に気付いたカレルは声をかけられ頷いた

「フォトンスティンガー!ファイア!」

魔力弾で一瞬だがゴライアスの動きを止めることに成功したカレル

「チェーンバインド!」

続けてリエラが杖を掲げると鎖でつながれたリングがゴライアスを拘束する

「今ならいける!」

それを見たアンジュがゴライアスに向かっていく

「アクセルスマーッシュ!」

アンジュの拳がゴライアスを直撃しその巨体を打ち砕いた

 

「つ、つかれた~」

「もうだめ~」

何とかゴライアスを倒したもののフォワードたちは全員疲れ切っていた

「みなさん大丈夫ですか?」

アインハルトが見かねて声をかける、ヴィヴィオも一緒だ

「これ、さっきディエチさんが持ってきてくれたから」

そう言ってヴィヴィオはフォワードたちにタッパーを差し出した

受け取ったフォワード陣は首をかしげている

「何ですかこれ?」

「シロップ漬けの果物だよ、それ食べて栄養補給してね」

「私たちも選手時代によく頂きました」

ロイスの疑問にヴィヴィオが答えると試しにアンジュが一つ食べてみる

「後でユミナさんにマッサージしてもらってね」

ヴィヴィオがそう言うとアインハルトがフォワードたちを見ながらしばし考える様子を見せていた

「誰かデバイスを見せてもらっていいですか?」

アインハルトの問いかけに首を傾げつつも一番近くにいたリエラがデバイスを差し出した

「やはり………かなり傷んできてますね」

「そろそろ本出動があってもいい頃だし、みんなも訓練になれてきた」

ヴィヴィオ達の会話にフォワードたちは困惑した様子で見合った

ヴィヴィオが手を合わせると全員が彼女に注目する

「全員、マッサージが終わったらマリーさんの所へ行き、任務用の新デバイスを受け取ること、いい?」

それを聞いてカレルとコロナ、アンジュは声を上げて喜んだ、ロイスも口には出さないが嬉しそうな表情をしている

 

「じゃあ、私とリオはここで」

隊舎に戻る途中ヴィヴィオはフォワードたちと別れた

「ヴィヴィオさん達はどちらに?」

「古代遺失物狩りって知ってる?」

コロナの言葉にフォワードたちは首をかしげるが

「聞いています、最近噂になっている古代遺失物所有者を狙った強盗犯ですね」

ロイスだけは知っていたようで淡々と答えてみせた

「ヴィヴィオさんはそのことを調べているんです、私達機動六課の担当になる可能性の高い案件ですので」

 

リオの運転するバイクは道路を疾走していく

「気持ちいい~」

後ろに乗ったヴィヴィオは心地いい風を感じていた

「で、どのくらいわかってるの?古代遺失物狩りについて」

「うん、狙われてるのは主に高エネルギーを秘めた古代遺失物、つまり古代遺失物狩りはそのエネルギーを使って“何か”をしようとしてる」

「その“何か”を突き止めるのが私たちの仕事」

「そういうこと、一応ファビアやユーノ司書長もその辺については調べてくれてるけど」

ヴィヴィオ達がそんな話をしている傍ら

近くのビルの屋上に黒いローブで全身を隠すかのような姿をした人影があった

ローブをかぶった影は管理局のマークがついたトラックを見つけるとそちらへ飛び上がる

 

一方フォワードメンバーはマッサージを終えマリーのもとを訪れていた

「これが私たちの………」

「そう、新デバイス、六課の任務、そして、みんなの特性に合わせた最新型」

マリーの言葉と共にそれぞれのデバイスが持ち主の手元に浮遊しながら収まっていく

「設計は私が、コロナやアインハルト、ティオも協力してくれたの」

「もちろん私もです」

明るく告げながらリインが部屋へ入ってくる

「その子たちは生まれたばかりですが、六課の隊長たちやメカニックのみんなが協力して、いろんな思いを込めてやっと完成したんです、大切に、だけど性能の限界まで思いっきり使ってあげてください」

「で、機能説明だけど、その子たちには何段階かに分けて出力リミッターがかかっているの」

「最初の段階だと、今までと比べてもそんな驚くほど差が出るわけではないと思いますので、それで扱いを覚えていただきます」

「扱いに慣れ始めたら隊長たちやリイン曹長、マリエル技官の判断でリミッターを解除していくね」

「「「はい!」」」

アンジュ、カレル、リエラが元気よく返事をする一方でロイスは渡された自分のデバイスを見つめていた

「じゃあ午後の訓練の時にでも微調整を………」

次の瞬間あたりに警報が鳴り響いた

「え!?なに!?」

「非常警報!?一体何が………」

すると通信が開きあわてた様子のディエチが映った

「マリーさん!フォワードの子たちそこにいます!?」

「いったい何があったんですか?」

焦るディエチにロイスが問いかける

「管理局から地方施設に貸し出されていた古代遺失物を運んでいたトラックが古代遺失物狩りの襲撃を受けた!本局からの緊急要請だけど出撃できる!?」

ディエチのその言葉に全員が顔を合わせる

「やらせてください」

「ああ、緊張します………」

「アンジュさんしっかり」

ロイスが力強く答える横でガチガチに緊張するアンジュ

「オーケー、先にヘリポートで待ってるからすぐに乗り込んで、機動六課、初任務だよ」

そう言ってディエチは通信を切った

「行きましょう、機動六課、初任務へ」

「「「「了解!」」」」

アインハルトの言葉と共に4人は一斉に駆け出す

 

管制室にはやてが飛び込んでくる

既にエルス、ラグナ、ファビアはスタンバイしていた

「状況は?」

「襲撃を受け輸送トラックが転倒、積荷の古代遺失物が奪われました」

「古代遺失物は何や」

「ジュエルシードです、返却後は盗難防止のため厳重に保管される予定でした」

「なんでそないなもんこのタイミングで貸し出しに出しとるんや」

ラグナの報告を受け頭を抱えるはやて

「事件より以前から貸し出されていたものですね、今回の事件を受けて返却自体は早めたようですが手続きに時間がかかったようです」

はやての言葉を聞き資料を読み取るリイン

「前線メンバーと救護班は?」

「救護班は現在陸路で移動中、10分後に現場到着予定、前線メンバーは………」

「八神部隊長、こちらディエチ」

ファビアの言葉を遮るようにディエチから通信が届く

 

「現在前線メンバーと共に輸送ヘリにて現場に移動中、5分後に現場到着予定」

銃を抱えながらバリアジャケット姿のディエチが通信で報告していた

「了解や、くれぐれも気ぃつけてな、相手は手当たり次第に古代遺失物狙ってる様なやつや」

「了解」

通信を終えたディエチは前線メンバーを見回す

「そう言うわけだから、私も協力するけど、くれぐれも気をつけて」

「「「「はい」」」」

「うん、いい返事だ、それじゃ、任務内容の確認をしようか」

ディエチが視線を向けた先にはアインハルトがいた

彼女はディエチの視線に対し頷いて答えると今回の任務の説明を始める

 

転倒したトラックから火の手が上がっていた

ローブをかぶった人影がトラックの荷台から這い上がってくる

「目標確保」

トラックの荷台から取り出したジュエルシードを見つめる古代遺失物狩り

ローブの隙間から殺気のこもった冷たい視線がジュエルシードを見つめていた

次の瞬間、古代遺失物狩りの上空に一台のヘリがやってくる

アンジュ達が現場に到着したのだ

いよいよ初任務が幕を開けた




おまけ(リオ・ウェズリー)
Stヒルデ魔法学院卒業後教会騎士団に入団
騎士団の仕事をしながら通える範囲の学校に通い学士資格を習得
卒業直前に管理局の嘱託魔導師試験に合格
このころからバリアジャケットの色が紺を基調としたものに変わっている
時折ヴィヴィオやアインハルトの仕事を手伝っている
お祝いとしてディードからヘアバンドをもらい今でも愛用している
また、移動手段としてバイクを重宝しており自身の愛車を持ち込んでいる
教会にいた頃は休みの日にディードと二人でよくドライブに出かけたらしい

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