魔法少女リリカルなのは Vivid Wing stars   作:ライジングスカイ

2 / 26
misson:2 集う者たち

「名前くらいは聞いたことあるやろ、機動六課」

ソファに座って待機していたアンジュにはやてはそう持ちかけた

「え、ええ、広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティの起こした大規模テロ、JS事件を解決した奇跡の部隊、八神司令が以前率いていた部隊ですよね?」

戸惑いながらもはやての言葉に応じるアンジュ

「せや、正確には古代遺物管理部機動六課、過去に一度試験運用された幻の部隊」

「しかしなぜ………私なんかにその話を………」

戸惑うアンジュの様子にはやてとアインハルトは顔を合わせ笑った

「本格運用が決まったんよ、危険度の高い古代遺失物、もしくはそれに準ずる可能性のある事件の初動捜査、及び可能なら解決を任務とする、陸戦魔導師中心の特殊部隊」

「以前から何度もそういった話はあったんですが八神司令が………」

そう言って隣に座るはやてをみるアインハルトの視線はなぜか冷たい

「あ、あははは、まあその話はひとまず置いといてやな」

苦笑いしながらアンジュに向き直るはやて

「アンジュ・マーキュリー陸士、私達はあなたに六課に来てもらいたいって思ってる」

「え、でも私は………私なんかでいいんでしょうか………」

はやての言葉に戸惑うアンジュ

そんな彼女の様子を見てアインハルトが少し考えるようなしぐさを見せたかと思うと

「私とヴィヴィオさんも六課への配属が決まっています」

アインハルトのその言葉にアンジュが驚き目を見開いて彼女を見た

「アンジュさんは格闘型のようですし、私達でよければスキルアップのお手伝いもできると思います」

その言葉を聞いたアンジュは真剣な表情で考え始めた

「お邪魔だったかな?」

するとヴィヴィオがディエチを伴ってやってきた

「試験のほうだけど、デバイスの故障が事故じゃない以上、残念だけど今回は失格」

「ですよね………」

うつむくアンジュにディエチは封筒を差し出した

「なんだけど、実力的には申し分ないし今見た感じだと何度受けても同じ結果になっちゃう可能性が高いから、コレ追試の申込書と、紹介状、それからこれは私とヴィヴィオから」

ポケットから別に白い封筒を取り出すディエチ

それを見て首をかしげるアンジュ

「あの………これって」

「さっきも言った通り、今のままだと何度やっても最終的にデバイスが壊れて終了、このままだと同じことの繰り返しだから」

「本局技術部のマリエル・アテンザ技官に頼んで試験用にデバイスをチューンして貰ってきて、それからもう一度試験を受けてもらうことになるから、それ、マリエル技官に渡す紹介状ね、私のほうでもメールしておいたから」

「そんなっ!わざわざ………」

「平気だよ、マリエル技官は優しい人だから」

そう答えるヴィヴィオの後ろから小さなウサギのぬいぐるみがひょっこり顔を出した

「この子もマリエル技官が作ってくれたの」

「あっ!」

そのウサギに見覚えがあったアンジュは思わず声に出てしまう

「この子はヴィヴィオの愛機でセイクリッドハート、皆クリスって呼ぶね」

ディエチのその言葉にアンジュは彼女を見る

傍に寄ってきたクリスを優しくなでる姿を見ていてハッとなり

「あー!思い出した!」

大声を上げ立ち上がった、そのため周囲にいた人々が一斉に彼女達のほうを見る

アンジュは顔を真っ赤にして座るとディエチに声をかけた

「あの、勘違いでなければ、ディエチ陸尉もインターミドルで………」

「ん?ああインターミドル?うん、セコンドやってたよ、妹がコーチやっててその手伝い」

「ご覧になったことが?」

2人の会話を聞いていたアインハルトがアンジュに尋ねる

「あ、はい、テレビでですけど………それをみて私ヴィヴィオさんに憧れて………」

「あぁ、アクセルスマッシュ使ってたもんね」

「わっ!?見てたんですか!?すいませんパクッちゃって」

「別に構わないから顔上げなよ」

言われたとおりにしていたアンジュだったが視線はずっとヴィヴィオを向いていた

 

礼を告げてヴィヴィオ達と別れるとアンジュは一人廊下を進む

「(あこがれの人と一緒に働ける………)」

彼女の心は既に決まっていた

そんな背中を見て安心した様子のヴィヴィオ達

「アインハルト、ナイスフォローや」

「いえ、最終的に決めるのは彼女ですから」

「あの調子なら大丈夫だと思うよ」

はやて、アインハルト、ディエチが話しているとヴィヴィオがはやてに声をかけた

「それで八神司令、ほかのフォワード候補ってどうなってるんですか?」

「アインハルトの部下になる二人はリインが迎えに行ってるよ」

そう言ってはやてはヴィヴィオにある画面を見せた

「ヴィヴィオもよぉ知ってる子達や」

その画面を見たヴィヴィオの瞳が輝いた

「せやヴィヴィオ、ファビア貸してくれてありがとな、副官おらんと大変やったろ」

「平気です、元々私今日はオフだったんで」

「ああ、そう言えばクロは今ヴィヴィオさんの補佐官をしているんでしたね」

 

ある陸士部隊の訓練施設

「彼が………」

次元航行部隊の青い制服に身を包んだブロンドの女性

ヴィヴィオの副官であるファビア・クロゼルグ執務官補がフォワード候補の視察に来ていた

青い髪の少年が試供の杖型デバイスを構えたくさんのターゲットを見据えていた

「………ハァっ!」

掛け声とともに大量の水が現れ渦を巻きながらターゲットを次々と撃破していく

「水の魔法………珍しい魔法を使うんですね」

「彼が独学で組み上げたそうですよ、自分の資質に合わせて」

ファビアのつぶやきを聞いて彼の隣にいた案内役の局員が答えた

「しかし流石は八神中将だ、ロイスに目をつけるとはお目が高い」

自慢げに笑う局員とは裏腹にファビアは訝しげな表情を浮かべていた

「(確かに優れた才能………けれどあの眼は)」

「おーいロイス!」

ファビアが考え込んでいると訓練が終わったらしいロイスに案内の局員が声をかけた

「こちらにいるファビア捜査官がお前にいい話を持ってきたぞ」

「いい話………?」

 

機動六課フォワード候補

ロイス・ローレンス二等陸士

 

次元港のベンチで待つ女性………リインフォースⅡとその隣で丸くなる子猫………もとい、豹型デバイスのアスティオン

本来はアインハルトの愛機なのだが今回リインが会うのはアインハルトの隊に所属する予定のフォワード候補ということで同伴していた

少女のような姿だったリインも今では多少あどけなさが残るも立派な女性に成長していた

「失礼します、リインフォースⅡ二等空尉でしょうか?」

ふと、リインに話しかける茶色い髪の青年

「あ、はい、お待ちしておりました、えっと、本日お会いするのは二人とお伺いしておりますが」

リインが立ち上がり青年の周囲を見回していると

「もう、置いてかないでよカレル!」

人込みをかき分けやってきたのはカレルと呼ばれた青年によく似た雰囲気の少女だった

「あ、申し遅れました」

その一言でふたりは姿勢を正しリインに敬礼した

「次元航行部隊所属、カレル・ハラオウン陸士」

「同じく次元航行部隊所属、リエラ・ハラオウン陸士です」

「ご苦労様です、お二人の事は、クロノ提督やフェイトさんからよく聞いてるです」

敬礼を返したリインは二人に明るく声をかけた

「いえ、こちらこそ、八神司令や皆さんには父さんもフェイト姉もお世話になりっぱなしで」

「ふふっ、そんなことないですよ、どちらかというとこっちがお世話になってる身ですし」

「とんでもない!お父さん達のほうだって」

カレルとリエラ、この二人は以前六課立ち上げに協力してくれたクロノ・ハラオウン提督の子、そのクロノ提督は今回の新六課設立にもいろいろ協力してくれている

 

機動六課フォワード候補

カレル・ハラオウン三等陸士

リエラ・ハラオウン三等陸士

 

「ただいま」

夜遅くにナカジマ家に帰宅したディエチは玄関をくぐりリビングへ向かう

「お帰りッスディエチ」

そんな彼女を赤い髪の女性、ナカジマ家の末娘、ウェンディ・ナカジマが出迎えた

「みんな御飯食べた?」

「まだッスけど今ギンガが作ってくれてるッス、ディエチは?」

「あたしもまだ、ウェンディもおなかすいてるでしょ、手伝ってくるね」

そう言ってディエチが上着を脱ぎながらリビングに行くとソファに座って新聞を読むゲンヤ・ナカジマの姿があった

「ただいまお父さん」

「おう、お帰りディエチ、大変だったろ?お前もこっち来て座んな」

「でも、晩御飯の支度手伝わなくちゃ」

「気にするな、今日も忙しかったんだろう、お前は座って待っていればいい」

そう言って彼女の後ろに現れたのは右目を閉じた小柄な女性、チンク・ナカジマだった

火照った顔で首にタオルをかけパジャマを着ているところを見るとお風呂上がりのようだ

「じゃあ………お言葉に甘えちゃおうかな、ごめんね、最近家の事全然手伝えなくて」

「気にすんなよ、八神の新部隊設立を手伝ってるんだろ、配属も決まったってんだってな」

「うん、リインさんと一緒に部隊長補佐、交替部隊の指揮とか輸送隊の護衛が主な任務なんだって」

「そいつはすげえな、俺も鼻が高ぇや」

「でも、本格的に部隊が動き出したらこっちにはめったに帰れなくなるし」

そう呟くディエチの肩にゲンヤが手を置いた

「自分で選んだ道だろう、だったら俺達のことなんか気にしないで、やりたいようにやんな」

「ありがとう………お父さん」

ディエチは顔を赤くしながらゲンヤの言葉に笑顔を見せる

 

一方ヴィヴィオは一人帰り途を歩いていた

「うん、わかった、じゃあ」

通信を切ってクリスに声をかけるヴィヴィオ

「ママが御馳走作ってくれてるって、急いで帰ろっか」

ヴィヴィオの言葉にクリスも手を挙げて答える

 

アインハルトはティオを返してもらうため八神家を訪れていた

「お疲れさまでした、ティオもお疲れ」

リインからティオを受け取るとその頭を撫でるアインハルト

撫でられたティオは嬉しそうに声を上げる

「それでは私はこれで」

「あ、待ってくださいアインハルト、よかったらこのまま晩御飯食べていかないですか?」

リインの誘いにアインハルトは戸惑う

「しかし………」

「部隊のこととかいろいろ相談したいですし、それに今日は家族が誰もいないからはやてちゃんも寂しがってるです」

「こらリイン聞こえとるでー!誰が寂しがっとるってー?えー?」

リインの言葉を聞いてか奥の方からはやての抗議の声が上がる

その様子を見てアインハルトも思わず小さく笑った

「そういうことでしたらお言葉に甘えさせてもらいましょうか」

 

「あの人と一緒に働ける………」

今日のことを自室で思い出していたアンジュ

拳を握りしめると天窓から見える月を眺めた

「機動六課………行ってみようかな」




おまけ(アインハルト・ストラトス)
アインハルトの主な経歴
Stヒルデ魔法学院中等科卒業後、院生として2年間勉強を続ける
その後管理局に入局、古代ベルカ継承者ということもあり昇進は早かった
警邏などの仕事の際は眼鏡を着用、目が悪いわけではなくむしろ保護のためにかけている

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。