魔法少女リリカルなのは Vivid Wing stars   作:ライジングスカイ

13 / 26
misson:13 聖騎士と霊王

機動六課、本日の訓練も無事終わり隊員達は隊舎への道を仲良く歩いていた

「新しい訓練にもだいぶ慣れてきましたね」

「君はいいよ変化が少ないから、僕なんかはピーキーだから大変だよ」

アンジュがカイザーの2人のほうを見ると

「そう言えば、見た目に変化がないのって………あれ?リエラさんどうしたんですか?」

「ふぇ?ああ、ごめんなさい、ちょっと疲れちゃって」

額に手を当て歩いていたリエラにアンジュが声をかける

リエラは慌ててアンジュに向きなおった

「アイギスのセカンドモードは集中力を使うからな、しょうがないさ」

「カレルはいいよね、見た目はかなり変わるけど今までのスタイルの延長線だもの」

肩を落としながら恨めしそうにカレルを見るリエラ

ふと、隊舎に近くにきたときクラクションが鳴り響く

「カレルー!早く行くよー!」

ヴィヴィオが車の運転席からこちらを見ていた、助手席にはファビアの姿もある

「あっ!そうか!今行きます!」

ヴィヴィオに呼ばれ慌てて向かうカレル

アンジュとロイスは首をかしげていたが

「ヴィヴィオさん、これから他の執務官の人に会うらしくて、前から同行をお願いしていたんです」

「そう言えば、カレルさんも執務官志望でしたね」

リエラの言葉で思い出したかのようにアンジュが呟く

「現役の執務官から話を聞くまたとない機会だからな」

「カレル、ずっと今日の事楽しみにしてたんですよ」

 

約束の場所へと向かう道中、後部座席に座るカレルは緊張した様子だった

「ヴィクトーリア執務官って、ヴィヴィオさんと同じ競技選手だったんですよね」

「そだよ、元インターミドルの上位選手、大丈夫、ヴィクターさん優しい人だから」

 

アンジュとロイスはリオと共にロビーにいた

「アンジュの眼の事、ヴィヴィオと無限書庫でいろいろ調べてみたの、そしたら………」

リオは一冊の本をアンジュに差出した

「これは………」

「聖王オリヴィエや覇王イングヴァルトと同じ古代ベルカの戦乱を戦った人物、聖騎士アレキサンドラ・マーキュリー」

リオの差し出した古い本には聖騎士と呼ばれた人物の事が書かれた

「でも、そんな名前の人私聞いたことないです」

戸惑うアンジュ、だが同じ姓をもつことから考えてもこの人物がアンジュの先祖であることはほぼ間違いない

リオが表紙をめくるとそこに描かれていた女性はアンジュと同じ面影

そして今のアンジュと同じ鮮やかな銀色の瞳をしていた

 

「アインハルトさんはその聖騎士って人の事何か知らないの?」

コロナと共に警ら作業をしていたアインハルトは彼女の問いかけに首を横に振った

「聖騎士はシュトゥラや聖王家とは縁遠い人物で表の歴史に出ることもほとんどないので、彼女の故郷はもともと貧しい国で、彼女はそれを支えるために望まぬ戦いに身を投じていた、それだけは存じています、オリヴィエもクラウスも直接彼女にあったことはありませんでしたがその武勇だけは耳にしたことがありました」

 

「この本によると、戦いが終わり平穏な日々が訪れることを望んでいた聖騎士はある国が始動させた禁忌兵器を止めようとして命を落としたって」

リオの話を聞き俯くアンジュの肩にロイスが手を置いた

「君と同じだ、優しい人物だったんだな、聖騎士は」

「………はい」

照れながらもロイスの言葉に頷くアンジュ

 

椅子に座り優雅に紅茶を飲んでいるのは黒い制服に身を包んだ女性だった

扉がノックされるとカップを置きそちらを見た

「どうぞ」

「ヴィクター、ヴィヴィちゃん達来たよ~」

「お久しぶりです、ヴィクターさん」

「ありがとう、ジーク」

本局の制服に身を包んだ黒髪の女性、ジークリンデ・エレミアに連れられ部屋にやってくるヴィヴィオとファビア

「久しぶりね、ヴィヴィ、ファビアも」

「お久しぶりです、これ、よかったら」

そう言ってヴィヴィオが持っていた菓子箱を差し出す

「まあ素敵、でしたらお茶でも飲みながらお話しましょう、ここだと狭いからもう少し広い場所で」

 

全員が座れる広い場所に移動するとヴィヴィオが持ってきたシュークリームとジークが淹れた紅茶が全員に渡った

「そちらは?」

「き、機動六課フォワード、カイザー03、カレル・ハラオウンです、お会いできて光栄です」

緊張しつつ自己紹介するカレルにヴィクトーリアは微笑んだ

「初めまして、ヴィクトーリア・ダールグリュンよ、ヴィヴィと同じ元競技選手で今は執務官をしているわ、こっちが私の副官で」

「ジークリンデ・エレミア執務官補、まあ長いからジークでええよ、みんなそう呼ぶし」

そう言って局員証を見せるジーク

 

「逃走ルートの調査と言っても、もうだいぶ経ってるでしょう、今から調査して間に合うのかしら?」

「おっしゃる通りで」

ヴィクターの言葉に肩を落とすヴィヴィオ

「まあ、やらないよりはましと言ったところね、他の事件での逃走経路は分かっているのかしら?」

紅茶を飲みつつ尋ねるヴィクター

「一通りの事件資料をもとにおおよそですけど割り出してあります、詳しいデータはファビアに持ってきてもらっていますけど」

そう言ってデータの一部を映し出すヴィヴィオ

「ならここからさらに絞り込んで調査するのが仕事と言ったところかしら」

「はい、現状だとどうしても後手に回ってしまって、潜伏先を突き止めることが出来れば………」

ヴィヴィオの言葉を聞きながらカップを置くヴィクター

「いいわ、引き受けましょう、捜査主任はエドガーでその補佐にジークをつけます、陸士隊の担当者はどなた?」

「108隊のチンク・ナカジマ二等陸尉です、連絡先は………クリス、お願い」

クリスから連絡先のデータを受け取るとヴィクターは立ち上がった

「少し外させてもらってもかまわないかしら、捜査方針を確認したいから」

「それなら私も一緒に、元々こちらで頼んだ調査ですから」

ヴィヴィオの言葉にヴィクターは静かに頷いた

 

シュークリームを一口食べるとジークとファビアがうっとりとした表情になった

「これおいしいわぁ、魔女っ子もそう思うやろ」

ジークの言葉に頷くファビア

「はぁ~ほっぺた落ちてまいそう、このシュークリームのためやったらいくらでも頑張れる気がするわぁ」

シュークリームに夢中になるジークを見て彼女と同様ヴィクターの補佐官をしている男性、エドガーが咳払いをした

「それよりジーク様、捜査内容の確認を」

「っと、せやったな、あんまりおいしいから夢中になってもうた」

一度フォークを置いて資料に目を通すジーク

「うちらの仕事は追跡調査ってことでええんやな、えっと………」

資料を読み終えたジークはカレルのほうを見る

「カレル君やったな、追跡対象の資料とかある?顔のわかるやつ」

「グラディウスが撮った記録映像なら」

カレルからリニスの映像を受け取るとエドガーと共にまじまじと見つめた

「これが………他の捜査官にも覚えてもらっといた方がええよな」

「では持ち歩きやすいサイズで現像してきます」

「おおきに」

エドガーと入れ替わりにヴィヴィオとヴィクターがやってきた

「打ち合わせは終わったんか?」

「ええ、大体の方針は決まったわ、先方もだいぶ話のわかる方でした、後はどこかに合同捜査本部を敷くことが出来れば」

「その辺はもうリオに頼んであります、決まったらこちらから連絡いたしますね」

 

そのリオはアンジュを引き連れ聖王教会で責任者の騎士カリム、シスターシャッハとの打ち合わせを終えたところだった

「「ありがとうございました」」

騎士カリムとの話し合いを終え礼をするリオとアンジュ

「どういたしまして、少し中庭でお茶して言ったらどうかしら?ディードが会いたがっていたわよ、もうすぐ帰ってくると思うから」

「えへへ、じゃあお言葉に甘えさせてもらいますね」

騎士カリムとリオのやり取りを見ていたアンジュは首をかしげる

「リオ副隊長ってここにはよく来るんですか?」

「「「え?」」」

アンジュのその言葉にリオだけでなくカリムやシャッハも目を見開いた

「あ、ああ~!そう言えば言ってなかったね、あたしはもともとここの所属だから、騎士カリムとは上司と部下の関係」

「………え?ってことはリオ副隊長って」

「現役のシスター」

「騎士団の分隊長をしています、今は出向中で代理に任せてありますが」

驚くアンジュの言葉をカリムとシャッハが繋ぐ

 

「外部出向とは聞いていたけどまさか聖王教会の人だったなんて」

「ま、リオが教会入ったのは魔法戦競技を引退してからだから知らないのも無理ないか」

水色のショートヘアのシスター、セインの案内で中庭に向かうアンジュ

すると正面から黄色いリボンにブラウンのロングヘアーが印象的なシスターがこちらに向かって走ってくるのが見えた

「おー、ディードお帰り、首都への出張どうだった?」

「そ、それより、シスターリオが帰ってきてると」

「六課の用事で来ただけだけどね、今騎士カリムと話してる」

疲れた様子のディードを見て苦笑するセイン

「中庭で待ってなよ、リオもあとから来るから」

「ではそうします、そちらは………」

アンジュに気付き声をかけようとするディード

だが首元に下げられたペンダントが点滅したのでそちらを優先する

「失礼します………あ、オットー、何かあったの?………うん、わかった」

「あの、シスターセイン」

「あ、セインでいいよ」

緊張しながらも声をかけたアンジュにいつも通りの砕けた態度で返すセイン

「ではセインさん、こちらの方は?」

「ん?ディードって言ってね、ここのシスターでリオの選手時代のコーチ、今はリオの剣術の師匠兼教育係」

 

一方リオは騎士カリムから預言者の著書に関する話を聞いていた

「これが最新の預言を書きだしたもの」

カリムから受け取った紙にリオが簡単にではあるが目を通して見る

「気になる文面がいくつかあって………」

「亡者の王、光の騎士、禁忌の力………気になるのはこの三つですね」

「そう、そのうち2つは大体の解釈が出来てる」

真剣な表情で指折り数える騎士カリム

「光の騎士に関しては、聖騎士の末裔のアンジュが関係している可能性が」

「そう、だからあの子も連れてきてもらったの」

そのアンジュは現在中庭でセインやディードと楽しく話している最中だった

「そして2つ目は亡者の王、これはイクスに聞いてわかったの、古代ベルカ、聖王戦争時代に、力による支配を目論んだ、歴史上最悪の王」

「破壊と殺戮を好み、武力をもって近隣諸国を一方的にねじふせた独裁者」

カリムの言葉に続くようにシャッハが重苦しい表情で口を開いた

「【霊王】グレゴール・ヴォクスター」




おまけ(ギンガ・ナカジマ)
ヴィヴィオたちの中等部卒業の直後
所属していた陸士108隊の隊長であり父であるゲンヤ・ナカジマが地上本部の捜査官長となった
その時点ですでに一等陸尉となっていた彼女はチンクの推薦で父の後任として部隊長に着任
同時に三等陸佐に昇進、父親譲りの手腕で隊を引っ張っていく
部隊長となって以降色々あるのか以前にもましてたくさん食べるようになった
体重が増えないのが幸いだがさすがに恥ずかしくなってきたらしい
それでも食べることをやめないのは部隊長という職に立つうえで苦労が絶えないからだろうとは周囲の談

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。