魔法少女リリカルなのは Vivid Wing stars   作:ライジングスカイ

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misson:12 ひと時の休息

朝の訓練を終え疲れ切った隊員達

「はい、じゃあ今日の訓練はここまで」

「「「「ありがとうございました~」」」」

疲弊したフォワード陣が何とか返事を返す

「でね、隊長たちとも相談したんだけど、そろそろみんなのデバイスリミッター、一段解除して新しい訓練に入ろうと思うの」

コロナの言葉にフォワード達から歓喜の声が上がる

「で、隊長たちは今日、いろいろ忙しくて手が離せないし、せっかくだから今日は一日休んで、明日からの訓練に備えようってことで」

リオの提案にフォワードたちの表情が輝いた

 

「とはいえ」

「実際何しようか悩むよね」

隊舎のロビーで集まっていたフォワードたちだったがふと、私服姿のディエチの姿を見つける

「ディエチさん?ディエチさんも今日はお休みですか?」

「うん、それでちょっと実家に顔出してこようと思って、みんなは」

ディエチの問いかけに全員困ったように肩を落とすと

「僕達やロイスさんは別世界の出身ですし」

「私が育った施設も、ここからだとちょっと遠いですし」

「そうなんだ、だったら町に行って遊んできたらいいんじゃないかな?前の六課でもそうしたらしいし………っと、いけない、じゃあ私はこれで」

時計を見て慌ただしく出て行ったディエチを見送りアンジュ達は互いに見合った

「そう………だね、じゃあみんなで遊びに行く?」

「だな、隊舎でただ無駄に時間を過ごすのももったいないし」

 

一方同じ頃

「ヴィヴィオ~!」

本局の一角で一人立っていたヴィヴィオの下にリオと女の子がやってくる

女の子のほうが勢いよくヴィヴィオに飛び着いた

「お久しぶりです!ヴィヴィオ!」

「久しぶり!イクスも元気にしてた?」

「ええ、それで私に頼みたいことと言うのは………」

イクスの問いかけにヴィヴィオは真剣な表情になった

「イクスなら何か知ってるんじゃないかと思って」

 

久しぶりに実家へと戻ったディエチはギンガ、チンクと共に休日を過ごしていた

「元気そうだな、ディエチ、で、メールにあった頼みというのは」

 

「再生兵器ですか」

イクスと共に無限書庫にやってきたヴィヴィオ

「私たちの仕事はまず、その正体を突き止めること、運がよければ犯人の目的なんかも見えてくる、で、イクスなら何か心当たりあるんじゃないかっていうのと、あとはちょっと個人的な用事で」

検索魔法で呼び出したいくつかの本をチェックしながらイクスに笑いかけるヴィヴィオ

 

「それで、リニスのマスターだった、プレシア・テスタロッサの周辺関係を調べてみてほしいの、プロジェクトF関連を特に」

「なるほど、話はわかったが、八神中将がいらっしゃるんだ、本局の捜査部に頼むこともできただろう?」

お茶を飲んだチンクがディエチに問いかける

しかしディエチは全く意に介していない様子で

「今回はまだまだ調べないといけないことだらけで、そっちには別の捜査を頼んでるの、それに、私たちにとってチンク姉は頼りになるお姉ちゃんだし」

「やれやれ、知らない間に物の頼み方がうまくなったな」

そんなディエチの言葉に苦笑いしながらもチンクは

「いいだろう、可愛い妹の頼みを無下にはできないからな、姉が捜査指揮を執る、近いうちにそちらの隊舎に出向くことになるな」

「チンク姉には捜査協力にあたって、六課からデバイスを一機プレゼントすることになるよ」

「デバイスを?それはありがたいが………」

「受け取っておきなさいよ」

戸惑うチンクにギンガが声をかける

「あって困るものでもないし、実力や階級を考えると持ってない方が不思議なんだから」

「そうそうチンク姉!地上本部に異動になったお父さんの代わりに108の部隊長やる話もあったんでしょう?」

「断ったけどね、代わりに部隊長になったおかげで私は毎日忙しいものよ」

肩を鳴らしながらため息を零すギンガ

「108は父上がずっと守り続けた部隊だ、父上が築き上げてきたものを守るのは私の役目ではない、そう思っただけのこと」

チンクのその言葉にギンガとディエチが笑顔を見せる

「じゃあ、詳しいデータはひとまずギンガのブリッツキャリバーに送っとくね」

そう言ってディエチが待機状態のカノンを取り出す

 

「とりあえずこのくらいでしょうか?」

いくつかの書籍を抱えながらイクスがヴィヴィオの下にやってくる

「先史ベルカの再生兵器はこれで全部?結構少ないね」

「元々再生兵器はそのすべてが禁忌兵器、現代でも使用できるものとなると限られますから………あれ?」

ふと、抱えていた本がなくなっていることに気付いたイクスが首をかしげていると

「これは動物だけかぁ、こっちのは逆に動物が無理なんだよね………じゃあこっちの」

「全部同時!?」

少ないといえイクスが持っていた10冊近い本をすべて同時に調べるヴィヴィオを見て驚いた

「人造魔導師技術が使われている可能性が高い………となるとこれかな」

やがてヴィヴィオは一冊の本を手にとった

その表紙には古代ベルカ語で霊魂兵器と書かれていた

「なるほど、霊魂兵器………ですか」

 

「リニスはその霊魂兵器にされとる可能性が高いんやな」

「この資料によると霊魂兵器は遺伝子情報をもとに肉体を生成、そのために必要な器が」

「人造魔導師………先史ベルカでもそんな感じやったんか?」

はやての問いかけに答えたのは

「いえ、当時は甲冑とかを素体にしていたみたいです、実際に使われたことはほとんどないんですけど」

画面に割り込むようにして映ったイクスだった

「プレシアはそれを使おうとは思わなかったんやろか?」

「再生兵器のほとんどは戦闘を目的に作られたもので、完全によみがえるわけではないみたいです、霊魂兵器も肉体を生成する時に精神操作によって自我が封じ込められるみたいで、ほとんど人形です」

「もっとも、死者へ対する冒涜だとする声も多く、古代ベルカの時点で既に忌み嫌われた技術ではあるんですが」

 

「ただいまぁッス」

「おかえりウェンディ」

エプロン姿のディエチが疲れた様子で帰ったウェンディを出迎えた

「ディエチお久しぶりッス、もう来てたんッスね」

「まあね、お昼ごはん出来てるよ、久しぶりにお姉ちゃんが腕によりをかけたから」

鼻歌交じりにリビングに向かうディエチ

「姉達も手伝おうとしたんだが」

「台所追い出されちゃった」

「あ、ギンガ、チンク姉もただいまッス」

「おかえりウェンディ」

「まずは着替えて来たらどうだ?」

チンクに言われ自分の服装を見直すウェンディ

出勤した時のスーツのままだった

 

アンジュが勢いよく拳を振り下ろす

円形の的にぶつかったそれは勢いよく倒れ込む

ここはミッド市内のゲームセンター

アンジュがやっていたのはいわゆるパンチングマシーンと言うゲームだった

画面にハイスコアの文字が表示され周囲から拍手が沸き起こる

アンジュは照れながらも礼で返した

 

「流石だな」

少し離れたところで見ていたロイスがこちらにやってきたアンジュにそういいながらジュースを投げて渡した

件のパンチングゲームには今カレルが挑戦している

「恥ずかしかった………」

真っ赤になりながらジュースを受け取りロイスの隣に座るアンジュ

「あれでも本気じゃないんだろ?恥じる必要はないさ、いっそ本気でやればよかったのに」

「そうなんですけど~、って言うか本気でやったら壊しちゃいますよ」

そんなアンジュを見て笑うロイス、そんなロイスを見てアンジュが目を見開いた

「どうした?僕の顔に何かついてるか?」

「いえ………ただ、ロイス、なんだか変わりましたね」

「そうか?」

「ええ、よく笑うようになりました」

アンジュのその言葉にロイスは再び笑みを零した

「そうかもしれないな………ま、一番変わったのは君だと思うけどね」

ロイスの言葉にアンジュは困ったように肩を落とした

「これは特別ですよ~、ていうか本当なんなんでしょうこれ」

色の変わった自分の瞳の事が気になり頭を抱えるアンジュ

「だめだぁ、アンジュさんの記録に届かない」

「そろそろ調査結果出てるんじゃないか?メールで聞いてみればいいじゃないか」

ロイスが問いかけるのと同時に項垂れた状態でカレルが帰ってきた、リエラも一緒だ

「わたしヴィヴィオさんのアドレス知らないです」

アンジュのその言葉に全員の視線が集中する

「オイオイ、同じ隊の隊長だぞ」

「憧れの人だったんだよね」

「あの………いざ聞こうってなると緊張しちゃって」

「あの、ちなみにアンジュさん誰のアドレスだったらわかるの?」

リエラの問いかけにアンジュは顔を真っ赤にして蹲りながら

「リオ副隊長と、アルトさん………後部隊長とリインさん」

「「少なっ!」っていうか向こうから教えてくれそうな人ばっかり」

「僕はそれに加えてヴィヴィオ隊長とアインハルト隊長、コロナ副隊長、ユミナ先生、ディエチさん………で全部だな」

額に手を当てつつ指折り数えるロイス

 

昼食後のナカジマ家のソファではディエチが眠っていた

「よっぽど疲れていたのね」

「前例があるとはいえ新設の部隊、しかも責任者の補佐となれば苦労も多いだろうからな」

安心しきった様子で眠るディエチをみて静かに笑いあう3人

「さて、あたしも部屋で少し休むッス」

「じゃあ私たちはディエチの持ってきたデータの検証をしましょう」

「起こさないようにしなくてはな」

 

ヴィヴィオからの報告が終わり自室で仕事をしていたはやて、すると

「遅くなりました、私もクリスも問題なしです、ティオはアインハルトが迎えに来ました」

クリスを抱えたリインが部屋へと入ってきた

「お帰り、メンテナンスチェックご苦労様や………あ、もうこんな時間か」

リインに声をかけつつはやてがふと時計を見るといつのまにか時間がたっていたことに気付いた

「はい、はやてちゃん、シュベルトクロイツと夜天の書、どっちも問題なしです」

そう言ってリインは自身と共にメンテナンスに出していたはやてのデバイスを差し出す

「おおきにな、古代遺失物狩りに目立った動きはないし、静かなもんや」

「ですね、このまま何もないといいんですが」

リインのその言葉にはやては立ち上がり窓の外を見上げた

「嵐の前の静けさでないことを祈ろうか」

 

烏の使い魔である女性が一人歩いていると背後に気配を感じ振り返った

が、そこにいた人物を見て安堵の息を漏らした

「心配無用、次は前のようにはいきませんよ………マスター」

マスターと呼ばれた小さな少女は光のない瞳で彼女を見つめていた




おまけ(ラグナ・グランセニック)
兄との和解を果たしたのち自身も局入りを目指す
入局後はバックスとして活動、警邏業務などに専念する傍ら、兄の背中を追って狙撃手としての訓練を受ける
失明した左目には現在コンタクト型のデバイスを入れ視力を補っている
仕事のサポートが主だが武器としての使用もできるらしい
兄同様魔力値に関しては平均以下だが狙撃に関しては兄譲りの高い腕前を持つ
目標としては兄の背中を守れるようになりたい
また、兄の運転でよく乗せてもらった縁でバイクの操縦ができ自身の愛車を持ち込んでいる

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