ご立派なアインズ様   作:みなみZ

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作者からのバレンタインのチョコやで ニッコリ




(っ)後編(前)

ナザリック地下大墳墓の第六階層であるジャングル。

双子の守護者アウラとマーレの二人が守護する階層にはある施設がある。

ローマの円形闘技場(コロッセウム)を真似て作られた施設―――その名は円形劇場(アンフィテアトルム)と呼ばれていた。

直径188メートル、短径156メートルの楕円形で、高さは48メートルの大きさを誇り、ナザリック地下代墳墓でも随一の大きさを誇る施設である。

その客席には普段、物言わぬ動像(ゴーレム)達がいるのだが、今はそのゴーレムはデミウルゴスの指示により、一時的に移動されていた。

そして動像(ゴーレム)達が移動した為に、開いた客席にはナザリック地下大墳墓の多くのNPCの姿があった。

 

 

「ふわぁぁ!こりゃ皆さん勢ぞろいっすね!」

 

「そうね。ナザリックの第八階層の者達や、一部の例外を除いた、殆どのNPCが集まってるわね」

 

円形劇場(アンフィテアトルム)に続々と集まるNPC(同僚)達の姿を見渡し、戦闘メイド(プレアデス)の一人である、ルプスレギナ・ベータは感嘆の声を上げる。

それに対して、同じく戦闘メイド(プレアデス)の一人である、ソリュシャン・イプシロンは同意の声を上げた。

 

「ユリ姉さん。今回第八階層の人たちは来ていないのかしら?」

 

「ええ。今回殆どのNPCが集合しているけど、今回の集合には第八階層の者は来ていないわ」

 

「残念…」

 

ナーベラル・ガンマの問いに応えるユリ・アルファ。その返答を聞き、シズ・デルタは一切表情を変えなかった。しかし、親しいものには直ぐにわかるほど、気落ちしたのがわかった。

ユリはシズの頭を撫でながら、話す。

 

「仕方がないわ。あの子はナザリックの転移門の管理の一手を担ってる。ある意味ナザリックで一番重大な任務に就いてるあの子が来れるのは難しいものよ」

 

ユリの言葉にシズはこくりと頷く。

それに追随するようにルプスレギナは唇を尖らせながら話した。

 

「でも確かにあの子にはもう、暫く会ってないっすねー。チーム・プレイアデス(七姉妹)はいつその姿を現すのかっすね」

 

ユリとルプスレギナの語ったあの子。それはチーム・プレアデス(六連星)―――いや、チーム・プレイアデス(七姉妹)の末妹である。

彼女達姉妹の末の妹であり、プレイアデス(七姉妹)の真のリーダーである末妹は、第八階層、桜花聖域の領域守護者であり、ナザリックの転移門の管理の一手を担っている。そして第八階層はアインズの許可無しには立ち寄れない階層である。

ナザリック地下大墳墓の最大戦力が集結する第八階層の主力の一つとして活躍する末妹を誇りに思うのと同時に、中々会えない末の妹に会いたいと思ってしまったのだ。

 

「まあ、今日は久しぶりにプレアデス(六連星)が揃ったっすっから、良しとするっすか!」

 

「そうだねー。私達プレアデス(六連星)が揃うなんて、あの王都の件以来だしね」

 

エントマ・ヴァシリッサ・ゼータが仮面の蟲を被っている為に、表情は変わらないが怒気を露にしながら応える。

デミウルゴス主催の王都を舞台とした、一大作戦―――ゲヘナの時に、イビルアイに声を奪われ、殺される一歩手前まで追い詰められたのを思い出したようだ。

 

「落ち着きなさい。エントマ。アインズ様はあの女の声を貴女にあげる事を約束してくださったわ。ならばその時が来るのは確実。あとはその時を待つだけだわ。…ああ願わくは、あの女を拷問する際は、私を使ってほしいものだわ。少しずつ少しずつ、跡形もなく溶かしてあげるわ」

 

「同感ね。ソリュシャン。あの何かとアインズ様に群がる、鬱陶しい大蚊(ガガンボ)を焼くならば私の雷撃を存分に使ってあげるわ。焼き加減はウェルダン限定だけどね」

 

「あの小娘をどうにかするなら、私が一番手だからね!あの小娘を骨も残さず、食べるんだから。食べ尽くすんだから!」

 

「んじゃ私が、皆にフルコース並みに攻められまくって、瀕死になったそいつを回復させるっす!そんで、また皆で満漢全席っす!うぷぷ!流石は姉妹!コンビネーション抜群っすね!」

 

あははは!と笑い声すら聞こえる。まるで主婦の井戸端会議のような乗りで物騒極まりない会話をする似た者姉妹。

楽しそうに拷問内容を語る妹達を見て、ドン引きするユリは思った。やっぱり僕の癒しはシズだけだと。

 

改めて癒しの大切さを感じるユリであったが、視界にある人物が入ると、大きく目を見開いた。

 

「ペス…」

 

ユリの視線の先には一般メイドを誘導する、女性の体に犬の頭を持つ、メイド長―――ペストーニャ・S・ワンコの姿があった。

 

一般メイドの指揮をとるメイド長たるペストーニャが、一般メイドを誘導するのは何らおかしい事はない。

しかし、ゲヘナの作戦で、捕獲した子供達の助命をアルベドの姉であるニグレドと共に行ったのだ。

それがアルベドの怒りに触れ、ペストーニャとニグレドの2人は今現在も謹慎処分を受けているはずだ。

 

謹慎中のペストーニャも呼び出される事態。

 

(これは…ナザリックにとって、大事な話のようだね…)

 

妹達を見ると、その事に気付いたようだ。皆、一様に真面目な顔つきに戻っていた。

ナザリック地下大墳墓に関する事には、何処までも真面目になれる妹達に、ユリは長姉として頼もしさを思える。

 

「さぁ。私達も席に就くわよ」

 

長姉の声に妹達は了解の声をあげ、チーム・プレアデス(六連星)のメンバーは仲良く席に並んで座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、此度の急な召集命令。どのような用件なのか…皆様は想像がつきますか?」

 

「あたしもわかんないよ。しかもアインズ様からの召集命令じゃなくて、デミウルゴスからでしょ?もう訳わかんない」

 

「シカモ、一般メイド達マデ、第六階層ニ呼ビダストハ…相当ナ事ダナ」

 

「そうでありんす。一般メイド達を転送させるのは骨が折れるでありんすよ」

 

「マーレのリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力でゲートを開いたんだから、頑張ったのはマーレじゃん!何自分が頑張ったような言い方してんのよ」

 

「ああん!?マーレの気持ちを代弁してやったでありんすぇ!文句あるかチビスケ!」

 

「全然そんな感じがしなかったわよ!この偽乳!!」

 

「お、お姉ちゃん…シャルティアさん…僕は別にそこまで……って聞いてないよぉ…」

 

「……」

 

ある客席にはナザリック地下大墳墓のNPC達の頂点ともいえる守護者達と執事の姿があった。

 

第一~三階層『墳墓』の守護者シャルティア・ブラッドフォールン。

第五階層『氷河』の守護者コキュートス。

第六階層『ジャングル』の守護者アウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレ。

至高の四十一人の生活を支える最高責任者である執事セバス・チャン。

そしてナザリックの全NPCの頂点に立つ階層守護者統括のアルベド。

 

第四階層守護者ガルガンチュア・第七階層守護者デミウルゴス・第八階層守護者ヴィクティムを除いた、ナザリック地下大墳墓のNPC達の頂点の者達である。

 

守護者統括のアルベドは先ほどのセバスの問いに返答をしなかったが、彼女にはデミウルゴスが集合命令を下した理由を察していた。

 

(どう考えても…あのアインズ様の件ね)

 

アルベドは心中で舌打ちをしたい気分になる。

どう考えてもこのタイミングでのデミウルゴスの召集は、アインズが子作りをできるようになった事としかアルベドは考えられなかった。

 

(私がアインズ様と添い遂げるまではシャルティアにだけには、この件は知られたくなかったというのに…!!)

 

召集をかけたデミウルゴスに大して殺意すら湧き上がりそうになる。

アインズと添い遂げ、アインズの正妃となり、御子を授かる。これがアルベドのプランである。

しかしそれを成し遂げるには、シャルティアというお邪魔虫がいるのだ。

アルベド同様、アインズの正妃を狙うシャルティアはアルベドの大望の大いなる壁である。

ゆえに、アインズが子作りできるようになった今、シャルティアよりも早く、アインズとの既成事実を作っておきたかったのだ。その既成事実を持って、アインズに迫り、正妃の座を手に入れようと思っていたのに。

だからこそ、アインズに襲い掛かり、己が純潔を捧げようとしたのだ。

 

(それなのに…アインズ様ったら…あっちも至高だなんて…流石は至高の御方)

 

あの時主から与えられた快楽を思い出し、アルベドは頬を赤らめる。そして下着も濡れた。

アインズのご立派様も見事だが、あっちのテクも見事だ。

あの一瞬でアルベドの性感帯を見事なまでに刺激しまくり、サキュバスである己を絶頂へと導く珍腕―――正しく至高の御方と相応しい存在だ。

 

(私がアインズ様と結ばれたら、毎夜あの快楽が私を包んで………くふぅ―――!た、たまんねえぇぇなぁ!おい!おい!おいぃぃぃい!!)

 

主から受けた刺激と、これからの自分に訪れるだろう捲る捲る快楽の日々を思い浮かべ、アルベドは頬を紅潮させながら大口を開き、己の腕で自分を抱きしめながら、くねくねと体を身悶えていた。何処に出しても恥ずかしくないと太鼓判を押せるまでの見事なヒドインである。

 

「……アルベドハ、ドウシテシマッタトイウノダ?」

 

「……失礼ながら、理解不能かと思います」

 

そんなヒドインであるアルベドに、守護者達の視線は得体の知れない何かを見るような目で、未だ身悶えるアルベドを見つめた。シャルティアとアウラ達すらいつもの喧嘩を止め、生暖かい視線を送る。

そんな生暖かい視線に気付く事無くアルベドは「アインズ様…ご立派すぎますわぁ」何て事を呟きながら身悶えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら集まっていただいたようですね」

 

円形劇場(アンフィテアトルム)の中央で、呼び出したNPC達の姿を見渡しながら、満足そうにデミウルゴスは頷いた。

第八階層のNPC達、五大最悪のNPC達、グラント、紅蓮、幽閉されている設定の為、動けないニグレド等、その他一部のNPCを除き、ナザリックの殆どのNPCが勢ぞろいしていた。

 

「皆さん、急な召集だったにも関わらず、集まってもらった事を、感謝します」

 

勢ぞろいするNPC(同僚)達を見ながら、デミウルゴスは手元のマイクを使い、己の声を円形劇場(アンフィテアトルム)中に響かせた。

 

「おぉ!デミウルゴス。貴方が気にすることはありません。守護者であり、今現在我が創造主たる、アインズ様からナザリックの運営権利を一時的に引き受けている貴方の言葉を無視できる存在が、ナザリックに居るはずがありません!

そして今現在、私はこのようにNPC(同胞)が勢ぞろいする様を見れ、改めてナザリックの偉大さを感じる事ができた…おぉ!何たる至極な事か!?このパンドラズ・アクター、感嘆の念を抑え切れません」

 

デミウルゴスの言葉に反応したのは、自分達の主人たるアインズが創造したNPC―――宝物殿領域守護者たるパンドラズ・アクターである。

大仰な振る舞いで、自らの感動を露にするパンドラズ・アクター。オーバーアクションな身振り手振りをしながら彼は己の創造主がかつて定めた設定に従い、彼は演技を続ける。彼の行いに全てのNPC達の視線が集中する。誰も彼もが彼から目を逸らせない。それが良い意味なのか、悪い意味なのかはわからないが、確かに彼は俳優(アクター)だった。それもとびきり優秀な。

 

「ありがとう。パンドラズ・アクター。アインズ様に創造された君の言葉はとても嬉しいものだよ。さて、早速だが、今回私が君達を招集した訳を話したい」

 

その言葉に、今までパンドラズ・アクターに向かっていた視線が一気に、デミウルゴスへと戻る。

ナザリックの未来に関する大事な話。一言一句聞き漏らすことは決してできない。全てのNPC達がデミウルゴスの言葉に注目した。

 

「アインズ様はこの度、新たな力の覚醒をなされました。その力を制御する為に、アインズ様は今、お一人でナザリックの外で儀式を行っております」

 

デミウルゴスから語られた言葉は正しく天国と地獄であった。

歓喜の声と悲鳴の絶叫が同時に、円形劇場(アンフィテアトルム)を包み込む。

 

「デミウルゴス!!アインズ様ハ今ナザリックノ外ニ、オ一人デイラッシャルノカ!?」

 

「ええ。そう言いました」

 

「何をそんな落ち着いているの!?今すぐにでもアインズ様の下へ近衛を送らなちゃ!いいえ!今すぐわたしが行くわ!」

 

いつもの間違いだらけの廓言葉すら忘れたシャルティアは、客席から立ち上がり、転移門(ゲート)を直ぐさま発動させようとした。シャルティアの言葉に同意するように、その他の守護者達も席から立ち上がり、シャルティアが転移門(ゲート)を発動するのを待った。転移門(ゲート)が発動したら、即飛び込むつもりだ。戦闘メイド(プレアデス)達もその時を待っている。

 

「シャルティア。それは許しません」

 

「あ!?」

 

凄むシャルティアに一歩も引かず、デミウルゴスは己の宝石の両目を光らせながら言葉を発する。

 

「私はアインズ様にナザリックの全運営権利を一時的に授かっています。その私の命令(・・)です。決して誰もアインズ様の下へと行ってはなりません」

 

「―――っ」

 

その言葉にシャルティア達は動きを止める。

デミウルゴスはアインズからナザリックの全運営権利を譲り受けている。そして今ナザリックにはアインズの存在はいない。つまりは―――今現在デミウルゴスの言葉はある意味、アインズの言葉と同等という意味を持つ。

その事に気付いたNPC達は動きを止めた。

 

「デミウルゴス。オ前ハ、アインズ様がオ一人デ行動スルノヲ常ニ危惧シテイタハズ…ソレガナゼ、今回アインズ様ガ、オ一人デ行動スルノヲ許シタノカ?」

 

コキュートスの疑問はもっともだ。その疑問はNPC全員の総意といっても良い。

デミウルゴスはアインズが一人でナザリックの外で行動するのを快く思っていない。それは全NPC達が思っている事だろうが、デミウルゴスはその筆頭といえるかもしれない。

かつて、シャルティアが世界級(ワールド)アイテムで洗脳され、反旗を翻したのは記憶に新しい。常に世界級(ワールド)アイテムを身に纏い、世界級(ワールド)アイテムの影響を受けないアインズだが、この世界はまだ未知なる部分が多い。何があるかわからない時があるのだ。

一人でシャルティアと決戦を行うと宣言したアインズに、叱責され己の命を奪われようと、アインズの身の安全を最優先しようとしたのがデミウルゴスである。

そのデミウルゴスがアインズがナザリックの外で一人で儀式を行う事を許した。

NPC達はデミウルゴスの真理を知りたかった。

 

「アインズ様のお言葉です…そして、今回アインズ様が行っている儀式はそれだけの価値(・・)があるといえる」

 

儀式はアインズが新たに覚醒した力を制御する為のもの。それにはそれだけの価値があるというのか。

 

「デミウルゴス…アインズ様が新たに覚醒された力とは何なのですか?」

 

「セバス。それは今から言わせてもらおう」

 

眼鏡を指で押し上げながらデミウルゴスは告げる。

NPC(同胞)達を歓喜の渦へと導くことを確信している言葉を告げるのだ。

 

「アインズ様が新たに目覚めた力―――それはご自身の御子を作られるお力です」

 

絶句。

デミウルゴスの言葉がマイクを通じて円形劇場(アンフィテアトルム)に響いた時、NPC達は誰一人として―――否、アルベドと一部の一般メイド以外、瞬時にその言葉を理解することができなかった。

 

「わ、我が創造主は…み…御子をお作りできるようになったと言うのですか?」

 

埴輪の顔に信じられないという意思を込めた、パンドラズ・アクターの言葉にデミウルゴスは力強く頷き肯定する。

 

「ええ。そうです。アインズ様は御子を――御世継ぎをお作りできるようになったのです」

 

次の瞬間―――円形劇場(アンフィテアトルム)は揺れた。NPC達の歓喜の歓声により円形劇場(アンフィテアトルム)の巨体を揺らしたのだ。

第六階層に生息するシモベ達は何事があったかと一斉にその視線を揺れる円形劇場(アンフィテアトルム)へと向けた程であった。

ちなみにアインズのペットであるハムスケは、馬鹿でかいヒマワリ?の種を食べながら「今日はあの建物から人の気配が多いでござるなぁ…」なんて呟いていた。

 

「アインズ様に御世継ぎが―――!ああ、歓喜のあまりにいっちゃうでありんすぇ…」

 

「オオオオオオ!!爺ハ!爺ハ!嬉シュウゴザイマス!!若ヨ!爺ノ肩車ハイツデモ空イテオリマスゾォォ!!」

 

「アインズ様に御世継ぎ…!!」

 

「あわ…あわわわわわわ…す、凄いです…!!」

 

「これは…確かにナザリックの未来を左右する出来事ですな…」

 

「素晴らしいことです!!…わん」

 

「ふむ…児童書を作らねばならんな…」

 

「アインズ様の御世継…!!これは直ぐにでも、乳母をご用意しなくては…!で、できたら僕が…」

 

「すごいっす――!所で、誰がお世継ぎを産むっすか?大穴でいつも一緒にいるナーちゃんっすか?」

 

「ルプー。お願いだからやめて…私、ただでさえアインズ様といる時間が多くて肩身が狭いんだから…」

 

「おぉ!私の創造主!アインズ様!貴方様はアンデッドの身でありながら、更なる高みへと至った!!嗚呼、このパンドラズ・アクター。貴方様に創造された事を誇り…に…」

 

NPC(同僚)達の歓喜の叫びは止まる事をしらない。

周囲の者達と、喜びを共にし、ハイタッチや抱きついたりし、喜びを露にしている。

その中で、一人。冷静な者がいた。守護者統括たるアルベドであった。

 

「アルベド。貴女は知っていたようですね?」

 

「ええ。アインズ様が力の覚醒をされた時、偶々居合わせたのよ」

 

デミウルゴスの質問にアルベドは肯定する。

そしてあの時を思い出したアルベドは頬を染めながら言った。ちなみに下着はかなりやばい事になっていた。

 

「アインズ様のアレは……それはもう、見事なまでのご立派様だったわ…!」

 

 

アインズ様のはご立派様……!!

 

ごくりと誰も彼もが唾を飲み込む。

 

NPC達にとってアインズは、最後まで残ってくれた慈悲深き最後の至高の存在。もはやNPC達にとってアインズは神に等しい存在――否、神なのである。

その神の超トップシークレットにも等しいアレの情報。しかもご立派様という情報…!

NPC達は顔を赤く火照りが止まらない。中には情報の大きさと素晴らしさのあまり、失神してしまう者もいた。

 

「デミウルゴス。安心してちょうだい」

 

アルベドは席を立ち上がりながら、声を張り出した。

これ以上、デミウルゴスに余計な事を言わせてはならない。自分のペースにしなくてはならない。

ナザリック随一の叡智を誇るアルベドはそう判断したのだ。

 

「アインズ様の御世継は私が。正妃たるこの、ワ・タ・シが責任を持って産んでみせますわ!!」

 

「ちょっと待てやぁ!ごらぁ!?」

 

アルベドの正妃+出産宣言には異議ありを唱えた人物が居た。

それはアルベドにとっては予定調和である。自分がこの宣言をした時、必ずこの人物から異議が出るのは、火を見るより明らかだったのだから。

 

「あら?何か…問題があって?シャルティア?」

 

異議を申し立てたのは、守護者最強。鮮血の戦乙女の異名を持つ少女―――シャルティア・ブラッドフォールンその人である!

 

「問題があって?…ですって?問題しかねぇだろうがぁ!」

 

シャルティアは青筋を立て、席から立ち上がる。そして怒声を張り上げた。

守護者最強たるシャルティアが醸し出す怒気。それは戦闘職ではないNPC達を―――否、戦闘職であるNPC達ですら震えさせる程であった。

 

しかしその怒気を向けられたアルベドはその怒気をそよ風のように受け流していた。

 

「何か問題があって?貴女とはいつぞや話したと思うけど。ナザリックの支配者にして、至高なる存在のアインズ様には正妃が必要だって貴女も言っていたでしょ?」

 

「確かにそうでありんすねぇ。でもそれが何で正妃がアンタになってるんだよぉ!?この賞味期限切れの大口ゴリラがぁ!」

 

「あぁ!?誰が賞味期限切れですってぇ!?この腐れヤツメウナギがぁ!?てめぇの貧相なモノでアインズ様のご立派様が満足できると思ってんのかよぉ!?あぁん!?」

 

あっという間に先ほどまでの余裕が剥ぎ取られるアルベド。

シャルティアを威嚇するように、腰から生えた黒翼が大きく広がる。

また、アルベドの艶めかしい肢体から紫のオーラがにじみ出る。ちなみにアルベドはこんなエフェクトが出るスキルは持っていない。つまりは謎だ。

 

それに対抗するように、シャルティアの幼い体からも深紅のオーラが体からにじみ出る。これもやっぱりシャルティアにはこんなスキルはない。物凄く謎だ。

 

二人はお互いに謎のオーラを出しながら、額と額がくっつくまで至近距離へと近づき、睨み合う。

とても人様には見せられない顔芸を披露する二人。実にヒドインである。

 

 

「こっちはよぉ。何で、てめえがアインズ様の正妃になってるんだって聞いてんだよぉ!?」

 

「あらぁ。ナザリックのNPC達の頂点の一角たる守護者が、そんな事もわからないなんて、守護者統括として今後が不安になって来るわぁ。

いいか!?このナザリック地下大墳墓でアインズ様と最も、多く接してるのはこのアルベドよ!最も多くの時間をアインズ様と接しているこの私こそ、アインズ様の正妃として相応しい存在なのよぉ!」

 

「馬ッ鹿言ってんじゃねえよ! 第一アインズ様と最も接している時間が多いって言ったら、ナーベラルになるんじゃねえかよ!? 手前の判断基準だと、ナーベラルが正妃にって事になるぞ!? コラァ!?」

 

そして二人は弾かれた様にある人物を見つめた。

視線の先にあったのは、戦闘メイド(プレアデス)の一人である、ナーベラル・ガンマであった。

普段、冒険者ナーベとして、アダマンタイト冒険者、漆黒のモモンの相棒として活躍するナーベラル。

その圧倒的な美貌から、他の冒険者達から、美姫として名高いナーベラル。だが、今はその美貌は蒼ざめ、ダラダラと汗が止まらなくなっていた。

自身を貫く、守護者最強と守護者統括という圧倒的強者二名の視線。

ナーベラルは心の奥底から思った。頼むからナザリックの頂点たる貴女達の戦いに巻き込まないでくれと。

 

「いえ…事はそう単純なものではないのですよ。アルベド、シャルティア」

 

死すら覚悟するナーベラルを救ったのはデミウルゴスであった。

デミウルゴスの言葉に、二人は視線をナーベラルからデミウルゴスへと移す。

ナーベラルはデミウルゴスにかなり感謝の念を抱いた。

 

「事はそう単純ではない…ですって?それはどういう意味かしら?デミウルゴス」

 

「ふむ…。シャルティア。吸血鬼(ヴァンパイア)タイプのアンデッドである貴女にお聞きしますが、骸骨(スケルトン)タイプのアンデッドはどの種族と子を成すと思いますか?」

 

そりゃ勿論、吸血鬼(ヴァンパイア)タイプと…。と、言おうとしたシャルティアは口を噤んだ。

骸骨(スケルトン)吸血鬼(ヴァンパイア)が子を成した等、聞いたことがない。

というか、骸骨(スケルトン)が子供を成した等聞いたことがないことに気付いたのだ。

 

「気付いたようですね。そうです。骸骨(スケルトン)が子供を成した等、古今東西ありえない話なのです」

 

「で、でもアインズ様は骸骨(スケルトン)タイプのアンデッドでも、此度子供を作れるようになったでありんすよね?」

 

「そうです。しかしそれはアインズ様だからこそ、成し遂げられた偉業なのです。遥か過去から遥か未来まで。骸骨(スケルトン)が子を成せるというのは、アインズ様、唯一人だけだと私は断言できると確信しています」

 

 

アインズ・ウール・ゴウン。

ナザリック地下大墳墓の支配者にして、至高の四十一人の頂点。

耽美なる白磁の顔に何よりも慈悲深い方。

至高の四十一人を纏め上げ、あらゆる面でその叡智は計り知れぬ智謀の王。

そして現世に顕現した死そのもの―――正しく真の死の支配者(オーバーロード)

その死の支配者(オーバーロード)が遂には真逆の存在――生に手を伸ばしたのだ。

 

NPC達は至高の主人(アインズ)が前人未踏の新たな領域へと足を踏み入れたのを知った。

もはや、NPC達の胸中は深い畏敬のみに覆い尽くされていた。

 

アインズ様は何処までも何処までも飛翔し続ける方。それが我等が神―――。

 

 

アインズが子供を作れる可能性があるのは、偉業でも何でもなく、ただチ○コ型の世界級(ワールド)アイテムのマーラ様を装着しただけなのだが、そんな事情を知らないNPC達は流石は、至高なる存在のアインズ様…。と、主人に対する畏敬を益々深めていた。

 

「今回、アインズ様は前人未踏たる領域へと手を伸ばした…だからこそ、まだアインズ様も理解していないのですよ…己が手にした力を」

 

「アインズ様が…理解していないとは?」

 

ある意味アインズへの不敬とも取れる言葉に、セバスは眼光を光らせながらデミウルゴスへと真意を問う。

 

「ええ。アインズ様は私にこう仰られました…子供ができるとはまだ確定していない。と」

 

デミウルゴスの言葉にNPC達は小さな悲鳴を上げる。アインズの世継ぎが誕生するかもしれないという希望が、無くなるかもしれないと理解したからだ。

 

「アインズ様もまだ理解していない事。それはご自身が本当に子供を成せるか…また、成せるとしたら相手はどの種族ならなせるかを」

 

アルベドはデミウルゴスの言いたい事を察し、歯を噛み締めた。つまりはデミウルゴスが言いたい事とは…!!

 

「ゆえに、私は――第七階層守護者たるデミウルゴスは此処に集う女性NPC達――貴女方へと提案を致します。貴女方全員によるアインズ様への夜伽を…!!」

 

静寂。

デミウルゴスの言葉を聞いた全NPC達は何ら反応できなかった。

何故ならば、脳が理解できないのだ。今デミウルゴスは何と言った――?

 

「デデデデ、デミウルゴス…あ、あんた今何て、い、言ったの…?」

 

リザード村を制圧する際に、ザリュースとクルシュの睦事を見た事を切欠に、少しずつ性教育を受けていたアウラは、顔を林檎のように真っ赤にしながら問いかける。

それを指摘する事無く、デミウルゴスは己の眼鏡を押し上げながらもう一度先ほどの提案を繰り返した。

 

「もう一度言いましょう。貴女方女性NPC達にアインズ様への夜伽を提案したのです」

 

爆発。

次の瞬間―――円形劇場(アンフィテアトルム)は爆発したかのように揺れた。NPC達の歓喜と羞恥と忠義やら何やら入り混じった様々な悲鳴や歓声により円形劇場(アンフィテアトルム)の巨体を揺らしまくったのだ。

第六階層に生息するシモベ達はすわ地震か!?と一斉にその視線を爆発したかのように揺れる円形劇場(アンフィテアトルム)へと向けた程であった。

ちなみにアインズのペットであるハムスケは、頭を抱えながら「殿――!?地震でござるかー!?」何て叫んでいた。

 

 

様々な歓声と悲鳴が鳴り止まない円形劇場(アンフィテアトルム)

そんな中、シャルティアはワナワナと震えていた。

 

「ふふふ、ふざけるなでありんす!アインズ様の御子はわたしとアルベドで産むでありんすよ!」

 

今現在、アルベドといがみ合っている状況ではない。

シャルティアはそう判断した。このままでは、他のNPCまでもがアインズの寵愛を受けることになる。

もはや、第一后はどちらか何て争っている場合ではないと気付いたのだ。

 

「シャルティア。貴女はそう言いますが…誓えますか?貴女方がアインズ様の御子を必ず産めると貴女の創造者たる――ペロロンチーノ様に」

 

その名前を聞いた瞬間、アルベドは俯いた。シャルティアがどんな判断を下すかを瞬時に理解したからだ。

 

 

ペロロンチーノ様。

シャルティアの脳裏に浮ぶは自らの創造者の姿。

四枚の翼を雄雄しく広げ、空を自由自在に駆け抜けた空の王。太陽を射殺した英雄の名を冠する武器――ゲイ・ボウを携えた『爆撃の翼王』

ペロロンチーノはアインズの親友であった。

いつもシャルティアの住居たる第二階層死蝋玄室にて、シャルティアの前で、ペロロンチーノは熱くえろげに付いてアインズに語っていた。シャルティアから見ても、ペロロンチーノは非常にアインズを慕っていたのは一目瞭然であった。

誓えるのだろうか?ペロロンチーノ様にわたしは誓えるのか?ペロロンチーノ様がお慕いしていたアインズ様の御子を産めると。必ず産んでみせると今誓えるのだろうか。

 

出来ない。身を引き裂かれそうになるほど、口惜しいがそれは出来ない。

今の状況では――シャルティア・ブラッドフォールンは己が創造者に(アインズ)の御子を産むという誓いを立てる事はできなかった。

 

誓いを立てることができずに、うな垂れるシャルティア。

そんなシャルティアを守護者達はいたわる様に見つめた。それはデミウルゴスもであった。

 

「――酷な事を言って申し訳ない。しかし理解して欲しかったのです。貴女とアルベドだけがアインズ様のご寵愛を受け、それで御世継ぎが生まれなかった場合、どうなるかという事を」

 

「ど、どうなるっていうんですか?」

 

「アインズ様は以前言っておられました。アルベドやシャルティアの事を、親友の娘のようなものであって、寵愛を授けるには複雑すぎると。つまりはそれはその他のNPC達にも言えます。

アインズ様は積極的に貴女方に寵愛を授けようとはしないでしょう。そして、もしアルベドやシャルティアが寵愛を受けても世継ぎを授かる事ができなければ――」

 

 

 

「アインズ様は外で御世継ぎを作ろうとするでしょう」

 

 

 

 

 

 

噴火。

次の瞬間―――円形劇場(アンフィテアトルム)は噴火したかのように揺れた。NPC達の悲痛な叫び――悲鳴により円形劇場(アンフィテアトルム)の巨体を揺らしまくったのだ。

第六階層に生息するシモベ達はすわ、地下の第七階層の溶岩が噴火するか!?と一斉にその視線を噴火したかのように揺れる円形劇場(アンフィテアトルム)へと向けた程であった。

ちなみにアインズのペットであるハムスケは、ひっくり返ってその柔らそうなお腹を見せながら「殿――!?噴火でござるかー!?助けてくだされー!?」何て叫んでいた。

 

 

悲鳴が木霊する円形劇場(アンフィテアトルム)

そんな中席を立ち上がる者が二人いた。それは、先ほどまでうな垂れていた、アルベドとシャルティア・ブラッドフォールンであった。

 

「…急にどうしたの?二人とも?」

 

「いえ。何、ちょっと極簡単な用ができたでありんす。」

 

「あら?奇遇ね。シャルティア。私も極々簡単な用件が今出来た所よ」

 

「……用ってなにさ?」

 

簡単な用と言いながら、二人の目は決して笑っていない。物凄く嫌な予感がしたアウラは恐る恐る、二人に問いかけた。

 

「なーに。本当に簡単な用件でありんす。ちょっと外の世界の全生命体のメス共を殺し尽すだけの話しでありんすから」

 

「あら?益々奇遇ね。シャルティア。私の用件もまったく同じよ。私達にとっては、簡単なことだけど。世界の隅から隅まで殺しつくさなくちゃいけないから、少し手がかかるわね。ナザリック総出で殺しつくしましょう」

 

まさかの世界全生命体のメスを殺す宣言。

さすがにこれには聞いていた回りの守護者も呆気にとられた。

いや、自分達の主人であるアインズに命じられたならば喜んで皆殺しにしよう。

だが、まさか嫉妬で――しかも未だ起こっていない事態に嫉妬し、全生命体の女を殺そうと本気で考えるとは…。

しかも守護者であるシャルティアはともかく、守護者統括たるアルベドからの提案でそのような事案になるとは。

 

 

「アルベド。シャルティア。アインズ様の許可無しでそのような事はできませんよ」

 

デミウルゴスの言葉に、当の二人は不満タラタラといった態度で舌打ちをし、席に座った。

 

ナザリック地下大墳墓以外の世界の全生命の存続が危うく途絶えてしまう所だった。

世界はこうして今日も無事?に回り続けれる事に感謝しなくはいけないかもしれない。

 

 

ナザリックの支配者たる至高の存在のアインズが、己が世継ぎの子をナザリックの外で作る。

アインズの御子であれば、NPC達は忠義を尽くせる。しかし、アインズの相手が外の下賎な存在であった時。自分達は忠義を心の奥底から誓えるだろうか?

今現在、至高の御方々がお作りになられたナザリック地下大墳墓の、第六階層にナザリックの外から来た薄汚い連中が闊歩するのも嫌悪感を抱くというのに。いかに、主人(アインズ)の尊過ぎる血を受け継ぐとは言え、ナザリックの後継者が薄汚い血を引くというのを受け入れるのだろうか?

 

いや、自分達の忠誠心ならば、アインズがそれを望むならば受け入れれる。

しかし――。

 

「私達はアインズ様が望むならば、それを受け入れれるでしょう。しかし、私はアインズ様の御子は、私達ナザリックの同胞の血を受け継ぐ者であってほしい。私は…そう思うのです」

 

デミウルゴスの血を吐くような思い。

しかし、それは全NPC達の総意でもあった。

このナザリック地下大墳墓の後継者――至高の存在の世継ぎは、自分達ナザリックの血を受け継ぐ者であってほしい。それは紛れも無く、ナザリック地下大墳墓の全NPC達の総意であった。

 

 

「ゆえに、夜伽です!皆さんには何としてでもアインズ様の御世継ぎを産んでいただきたいのです!」

 

その言葉に再び歓喜の歓声が鳴り響く。さっきから円形劇場(アンフィテアトルム)には歓声だったり、悲鳴だったり、響きまくりである。

 

「ペストーニャ!」

 

「は、はい!…わん」

 

「一般メイドの数は四十一人。そして一日ずつ、交互にアインズ様当番として、お傍付きをしていますね。そのお傍付きの仕事内容に夜伽を…アインズ様からのご寵愛を加えます。異論はありませんね?」

 

四十一人の一般メイド達から歓喜の叫びが発せられる。

アインズ様当番。それは四十一日に一度訪れる、アインズの側近く侍って、仕事の一切を手伝う仕事である。

至高の存在に仕えるのが最大の幸福である彼女達にとってそれは、砂糖の上から蜜を垂らしたような存在であった。

しかし、この度そのアインズ様当番にアインズからのご寵愛が加えられたのだ…!

これはもはや、砂糖の上から蜜どころか、砂糖の上に埋蔵金以上である…!

一般メイド達の脳裏には至高の存在であるアインズから寵愛を受ける自分を――そしてもしかしたら、アインズの御子を授かる所が浮かび上がる。一部の一般メイドはあまりの幸福に鼻血を垂らしながら失神している。その顔は満面なる笑みを浮かべていた。

本当にありがとうございます。もう、いつ死んでもいいです。

これが一般メイド達の嘘偽りない今の気持ちであった。

 

「え!?えーと!?にゃん!?

そ、それは!?うっきー!?

か、か、かしこまりました!?わんだふる!?」

 

あまりの展開に付いていけないペストーニャは語尾を間違いまくりであった。

 

「ユリ!」

 

「え!?あ、はい!」

 

「貴女方戦闘メイド(プレアデス)は姉妹でありますが、全員種族が違う…。つまりはアインズ様の御子を授かる機会が多くなると心得なさい。まして、ナーベラルは冒険者モモンとしてのアインズ様の相棒である。ある意味、貴女方が一番、今後のナザリックの未来を担っていると言っても過言ではありません…!貴女達姉妹の内、誰かは確実にアインズ様の御子を産んでいただきます…!」

 

デミウルゴスの(アインズ)の子供を産め発言。このセクハラ上等過ぎる発言。

 

その言葉にユリ・アルファは、ぽろっと首から頭が外れ。

ルプスレギナ・ベータは、帽子から犬耳を。そして臀部から尻尾が出て。

ナーベラル・ガンマは、埴輪顔を晒して。

シズ・デルタは、ぷしゅーと煙を出しながらフリーズして。

ソリュシャン・イプシロンは、ぽんっと体からザックが飛び出て。

エントマ・ヴァシリッサ・ゼータは、何処からともなく飛んできた虫達に連れられ、何処かへ飛んで行こうとしていた。

 

「そそそそそ、それは、いや、アインズ様からの、ごごごご寵愛だなんて…僕は…!?」

 

アインズからの御寵愛+御子を産んでもらう発言に、ユリもペスのようにうろたえてしまう。

あまりのうろたえぶりに、首に戻した頭はいつもと真逆の方を向いていた。

駄目だ!しっかりしろ!長姉としての威厳を見せなくちゃ駄目だ!ああ、でも駄目だ。アインズ様からの御寵愛だなんて、落ち着けるはずがない!

 

「落ち着いてください。ユリお姉様。まずは紅茶を飲んで落ち着きましょう。紅茶はとても気分を落ち着かせてくれますわ。おほほほほ」

 

てんぱりまくる長姉に救いの手を差し出したのは、まさかのルプスレギナであった。

優雅な微笑み。落ち着き溢れた優雅な動作でルプスレギナは紅茶を淹れる。

お前本当にルプスレギナかよ。周囲のNPC達は激しく疑問に思った。

彼女は手元の紅茶をユリに勧めるように、持ち上げる。

ていうか、その紅茶セットは何処から持ってきたのだろうか?

 

「ルプー!?てんぱりすぎて、逆に落ち着いてしまうなんて…我が姉ながら何て凄い人…!ていうかキャラ変わりすぎよね」

 

ソリュシャンは飛び出たザックを再び体に詰め込みながら、ルプスレギナのあまりの変わり様に戦慄していた。

 

「まぁ。ソリュシャンったら。私はいつも落ち着いているわ。所で、どうでしょう?アインズ様のご夜伽の件――。アインズ様に、私達姉妹全員同時にお相手していただくというのは?」

 

もはや何時ものお前は何処に行ったんだ状態の、ルプスレギナのぶっとんだ提案に周囲は驚愕と戦慄をした。

7P!?…いや。末の妹も加えたとしたら、8Pだと…!?

 

「なななな、何を言っているのですか!?」

 

「正直、私達は誰も殿方と肌を重ねた者はいないはずですわ。そんな私達では、アインズ様とのご夜伽の際、何か不敬な事をしてしまうかもしれない…そんな時他の姉妹が助けるのです!これは私達姉妹でしかできないことですわぁ!!」

 

ルプスレギナは両手を広げながら、キラキラと煌めく瞳で宣言した。

それは当然、戦闘メイド(プレアデス)だけではなく、この場に集うNPC達もその宣言を聞いていたのである。

 

 

 

「「ぐ…ぐぬぬぬぬぬぬ!!」」

 

その宣言をアルベドとシャルティアは断腸の思いで聞いていた。

 

まずい…このままではまずすぎる…!!

 

自分達は異性にとって魅力的な存在だというのは強く認識している。

至高の存在にそうあれ。と作られたのだ。何ら自分に不安はない。

 

だが、それはその他のNPC達にも言える事なのだ。

 

幾ら自分達が魅力的でも、同じように魅力的な戦闘メイド(プレアデス)が6人…いや、もしかしたら7人がかりでこられたら、勝ち目は薄い。このままではアインズの気持ちは戦闘メイド(プレアデス)に向かってしまうかもしれない。それは許されない。

 

アルベトとシャルティアはお互いに手を組むか?と同時に考え、同時にそれは無理だと判断した。

自分達が手を組んで、いざアインズの寵愛を!に、なった時ただお互いとも、アインズを貪る光景しか思い浮かばなかったのである。というか、事に及んだら、むしろ邪魔だと思ってしまう可能性が高い。

 

どうすれば…どうすればいい…!?

 

その時、アルベドに天啓が閃いた。

 

そう――向こうが姉妹()で来るならばこちらも姉妹()だ!!

 

 

「ふふふ。おーっほっほっほ!!勝負あったわねぇ!シャルティア!!」

 

「な、何がでありんすか!?」

 

突然のアルベドの勝利宣言にシャルティアは牙をむきながら、怒鳴った。

そんなシャルティアにアルベドは勝者の余裕を見せながら微笑む。

 

「ふふふ。シャルティア。悲しいわね。一人っ子というのは。姉妹というのは素晴らしいものだわ。私達は至高の方々から作られた同志だけど、その中でも最も相性がいいのは、至高の方々から肉親と設定されたもの…そう思わない?戦闘メイド(プレアデス)はそれを体現していると言ってもいいわ。そして私にも姉妹は居るのよ…!」

 

シャルティアは目を見開く。

そうだ。自分には姉妹はいない。シャルティア・ブラッドフォールンは一人っ子であれ。と、創造者たるペロロンチーノに作られている。

だが、目の前のアルベドは違う。アルベドは、ニグレド・ルベドとの三姉妹であれ。と、創造者たるタブラ・スマラグディナに作られている。

 

つまりは…!?

 

戦闘メイド(プレアデス)が七姉妹で来るというのならば、私達は三姉妹で挑むというものよ…!!

姉さんは100レベルではないけど、最高位に近いレベルの情報収集に特化した魔法詠唱者(マジック・キャスター)。私は全NPC中最高の防御力を誇る戦士。そしてナザリック最強の個のルベド…!!私達姉妹に敵はないわ…!!」

 

ルベドはどんな反応かわからないけど、姉さんはいつも、私の子供私の子供って喚いているから、ある意味丁度いいわ…!

 

アルベドは本当に姉妹かよ、と思われる事を呟いた。

 

これで勝算は見えてきた。

相手は七人でこちらは三人。まだ不利なのは否めないが、それでも一人の時よりも遥かにマシである。

見ていなさい…チーム・プレイアデス(七姉妹)。貴女方の相手はナザリック最強の個でありながら、最強の群である私達、三姉妹が相手をするわ…!!

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのー。ア、アルベドさんはアインズ様から最も御寵愛を受けたいって、事ですよね?な、何か間違った方向に、進んでませんか?」

 

「…その通りだと思います。御寵愛を受けるのですから、魅力を競うべきかと思うのですが、何やら途中から戦闘力の競いと交じり合っていると思われますな」

 

「全ク、困ッタモノダ。チナミニ、プレイアデスト、アルベド達三姉妹ガ戦ッタ場合、勝ツノハアルベド達ダト私ハ思ウ」

 

「あ…あはははは。そ、そうですか。えっと、で、でもあれですよね?ル、ルベドさんはともかく、ニグレドさんって、第五層の氷結牢獄に投獄されてるんですよね…?」

 

「その通りでございますな。ゆえに、アインズ様のご寵愛を授かるのは少々難しいかと…そもそも、失礼ながら、ニグレドがアインズ様の嗜好に合うかという疑問もありますが…」

 

「あ…あはははは。ニ、ニグレドさん。ひ、皮膚が無いですからねぇ」

 

「シカシ、ナザリック随一ノ叡智ヲ誇リ、アノ、デミウルゴストモ並ブ程ノ聡明サヲ持ツ、アルベドガ何故コウナッテ、シマッタト云ウノダ…?」

 

「私見でございますが…失礼ながらアルベド様は、アインズ様が関わると…それも恋愛関連になりますと、ひどく暴走する気があると思います。それが今回は最大級で暴走しているのかと…」

 

 

あー。なるほど。

執事の言葉に、男性守護者の二人は深く頷いた。

そして暴走とは何かの切っ掛けで落ち着くものだ。何かあれば聡明なアルベドは戻ってくれるだろう。というか、守護者統括たるアルベドがこのままでは、守護者の身としては非常に困るものだ。

守護者二人と執事は同時に溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 




ごりっぱさま『ナニ?ワシが出ていないではないかだと?ワシを出せーだと?
グワッハッハッハァー!中々良い事をいうではないか!
ワシの威光を見たいならば、女神転生4 FINALを買うといい!ワシの威光を存分に見せ付けてやるわ!友達にもしっかりと伝えておけよ!

ナニ?後編(前)で終わらないのかよ。つまんないぞー。だと?ふーむ。そいつは素直にすまん。実は前編・中編・後編とする予定だったのだが、作ってるうちに文字数が多くなってしまったので、急遽、後編(前)として出したのだ。
後編(前)は犠牲になったのだ……作者の都合と早く投稿しなくちゃ……との都合で犠牲にな……』

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