川崎沙希の距離感   作:満福太郎

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6.折本かおりは宣言する

大学生活が始まってもうすぐ1ヶ月。

あたしとあいつの仲はまったく進展していない。

大学で姿を見かけることもなく、

部屋からは生活をしている気配を感じない。

会うのは大学に通う20分くらい。

あいつ気配消すのうますぎ。

特に何も変わらず日々が過ぎていく。

いや、変わったことが1つあった。

 

折本「ね~沙希~?この雑誌見てよ!ちょー可愛いんだけど!」ケラケラ

 

こいつが部屋に入り浸るようになった。

 

沙希「折本。いいかげん帰りなさいよ。あたし寝たいんだけど。」

 

折本「え~?部屋帰るのめんどいからここで寝ていいでしょ?」

 

沙希「あんた部屋上じゃん。ほら帰れ。」

 

折本「絶対嫌!」

 

沙希「あんた何がしたいの?あたしと居ても楽しくないでしょ?」

 

折本「恋敵の動向は常にチェックしとかないとね~。」

 

沙希「またそういうこという…。」

 

折本「っていうか沙希。さいきん比企谷とどうなん?あたしあいつ全然見ないんだけど。」

 

沙希「別に。特に変わりないっての。あたしもあんまり見ないし。」

 

折本「でも一緒には通ってるんでしょ?」

 

沙希「まぁ一応…。前よりは会話がはずむようにはなったかな。」

 

折本「ほぉ~!少しは前に進んでるってことね。」ケラケラ

 

沙希「お願いだから変なチャチャだけはやめてよね。」

 

折本「さて、どうかな~?あたしも地味に狙ってるからねー。」ケラケラ

 

沙希「…別にいいよ。絶対負けないし。」

 

折本「お?今回はえらく自信満々じゃん!」

 

沙希「うるさい!絶対負けないからね!おやすみ!」

 

って感じで比企谷より先に折本と急接近してしまった。

あいつ今何してるんだろ。

もうすぐGWだけどどっか遊びに誘ってみようかな?

あいつ部屋から出なさそうだし嫌がるかな?

あーなんかいい案ないかなー…。

 

 

~~~

 

折本「で?恋敵に相談ってどうよ?」クスクス

 

沙希「し、仕方ないじゃん!あたしもどうすればいいかまったくわかんないんだから!」

 

折本「なりふり構っていらんないって?」

 

沙希「…利用できるもんは全部利用させてもらう。」

 

折本「友達を利用ってあんた!」ケラケラ

 

沙希「いや。友達じゃないし。」

 

折本「あんたってほんとひどいよね。」

 

沙希「で?なんかGW使ったいい案ない?」

 

折本「ん~?やっぱりデートじゃない?」

 

沙希「…どんなとこに行けばいいの?」

 

折本「そこから!?そんなのいっぱいあるじゃん!」

 

沙希「い、いいから教えてよ!」

 

折本「買い物でしょー?映画でしょー?カラオケとかー。遊園地とか!」

 

沙希「遊園地…。いいかも。」

 

折本「でも絶対比企谷来ないよねー!」ケラケラ

 

沙希「そうだよねー…。」

 

折本「でもさ。誘わないと絶対実現できないよ?」

 

沙希「…うん。わかってる。」

 

折本「ダメ元でもさ。可能性は0じゃないんだから。」

 

沙希「…知ってる。」

 

折本「逃げてばっかりじゃ手に入るものも手に入らないよ?」

 

沙希「あんたってさ・・・。たまにいいこと言うよね。たまに。」

 

折本「たまにとか言うなっての!」

 

折本「でも遊園地…。ふむ…。」

 

沙希「折本?」

 

折本「ははーん。」ニヤリ

 

沙希「うわ…。すっごい悪い顔。」

 

折本「感謝しなさいよ沙希!あたしに任せて頂戴!」

 

沙希「え?な、何を?」

 

折本「そ・の・か・わ・り!あたしの条件も飲んでもらうからね!」

 

折本は不吉な笑みを浮かべて部屋に帰っていった。

なんか嫌な予感がする。

 

沙希「ホントに大丈夫なの…?」

 

 

~~~

 

GW初日。あたしは普段はしないような小奇麗な格好で部屋の前にたたずむ。

あたしの手には遊園地のチケットが握られている。

そう。比企谷と遊園地に行くことが現実となったのだ。

朝から何着も服を着替えて髪型をととのえて今回の初デート?に臨む。

時間はじっくりとかけたつもりだがいまいち自信がない。

こんな格好普段しないからね。似合ってなかったらどうしよう…。

 

八幡「お。早いな。準備できてるなら呼んでくれたらよかったのに。」

 

沙希「お、おはよう比企谷!」

 

八幡「ん?お前が俺を名前で呼ぶの珍しくねぇか?いや。初めて?」

 

沙希「き、気のせいだって!ご、ごめんねわざわざ休みなのに。」

 

八幡「いや。どうせやることなかったし…。」

 

今から楽しい楽しい遊園地デートが待ってる!

と言いたいところだけど…。

 

折本「二人ともおっはよー!」

 

八幡「おう。じゃあ揃ったし行くか。」

 

こいつ(邪魔者)がいる。

なんでこんなことになったかというと。

 

~~~

 

折本「沙希!遊園地決まったよ!」

 

沙希「え?何の話し?」

 

折本「比企谷とデートしたいって言ってたじゃん!」

 

沙希「いや言ったけども…。」

 

折本「はいチケット!」

 

沙希「あ、あんたこれどうしたの?」

 

折本「バイト先の店長にもらった!」

 

沙希「でも比企谷誘ってないけど…。」

 

折本「それも大丈夫!比企谷来るって!」

 

沙希「へっ!?く、来るの!?あいつが!?」

 

折本「うん!ちゃんと言っといたから!」

 

沙希「あ、あんたどうやったのよ?」

 

折本「まあまあ!じゃあ明日8時にアパート前ね!」

 

沙希「う、うん…。って明日!?」

 

折本「そうだけど?」

 

沙希「急すぎるって!あたし何も準備してない!」

 

折本「そんなのいらないって!」ケラケラ

 

沙希「っていうかあんたも来るの!?」

 

折本「当たり前じゃん。」

 

沙希「ちょ、ちょっと待って!二人で行かせてくれるんじゃないの!?」

 

折本「やだよ。二人だけ楽しい思いするのなんて許さないから。」

 

折本「あたしも連れて行く。これが沙希に飲んでもらう条件。」

 

沙希「うぅー…。」

 

折本「飲めないならこの話は終わり。」

 

沙希「…わかった。飲む。」

 

折本「オッケー!じゃあまた明日!」

 

~~~

 

って感じで遊園地行きが決まった。

折本がいるけどせっかく貰ったチャンスだ。

この機会に少しでも距離を縮めないと。

 

沙希「ねぇあんたほんとにどうやって誘い出したのよ?」ボソボソ

 

折本「ん?あぁ。来てくれなかったら昔告白してきたこと皆にバラすって言った。」ボソボソ

 

沙希「お、脅しじゃない!?」ボソボソ

 

折本「いいじゃなのよ。ほら比企谷の隣に行ってきなさい!」ドンッ

 

沙希「うわっ!」

 

八幡「ん?」

 

沙希「あ、あの…」

 

 

折本(あーあー。仲良さそうに喋っちゃって。妬けちゃうねー。

ねぇ沙希?あたしは比企谷に本当はこう言ったんだ。

来てくれなかったら昔告白してきたこと”沙希”にバラすって。

恥ずかしくてバラされたくなかったのか、それとも沙希にはバラされたくなかったのか。

さぁ。どっちなんだろね。なんかヤバいすごいモヤモヤする。

あの時素直に告白受けるべきだったかな。)

 

 

~~~

 

沙希「じゃあまたね!」

 

八幡「お疲れ。」

 

折本「んじゃねー。」

 

別れの挨拶を交わすと各々部屋に戻っていく。

あたしはベッドに倒れ込む。

すっっっごい楽しかった!

あたしは今日の事を思い返しながら布団を転がりまわる。

いっぱいあいつと話せて乗り物にもいっぱい乗って。

あたしはこの上ない幸福感で満たされている。

 

沙希「はー…。今回確実にあいつと仲良くなれた気がする…。」

 

沙希「もういっそのこと告白しちゃおうかなー…。」

 

沙希「…。いやいやいや!絶対まだ早い!焦るな!落ち着け!」

 

沙希「初恋なんだ。もっと大事にいかないと…。」

 

沙希「さてと…。1つ確認しとかないと。」

 

~~~

 

折本「なに?」

 

あたしは折本の部屋を訪ねる。

こいつの部屋を訪ねるのはこれが初めてだ。

むすっとした表情の折本。いつもの笑顔はない。

 

沙希「中入れてよ。」

 

折本「…入って。」

 

汚い部屋。だと思い込んでいた。

意外にも綺麗にされており、普段の折本からは想像できない部屋だった。

 

折本「まさか沙希があたしの部屋に来るとは思ってなかったよ。」

 

沙希「ねぇあんたなんで今日そんなに機嫌悪いの?」

 

折本「あんたらが仲良さそうだったから。」

 

沙希「嘘でしょ。」

 

折本「なんでそう言えんの?」

 

沙希「勘。」

 

折本「勘って。バカみたい。」クスクス

 

沙希「あたし何か悪いことした?」

 

折本「沙希。あたしはたぶん比企谷に惹かれてる。」

 

沙希「…うん。」

 

折本「でもあたしは過去にあいつを振ったから強く攻められない。」

 

沙希「…うん。」

 

折本「でも、もし沙希が振られたり諦めたりしたら…。」

 

折本「そん時は比企谷あたしが貰うから。」

 

沙希「諦めるつもりないし振られるつもりもない。」

 

折本「知ってる。たぶん沙希なら大丈夫よ。」

 

沙希「なんでそんなこと言えるのよ。」

 

折本「勘。」クスクス

 

沙希「あんたくやしくない訳?あたしに取られるの。」

 

折本「くやしいけどあたしは1度自分の手で終わらせてるからね。」

 

折本「だから次は沙希の番。それが終わるまであたしは手を出さない。」

 

沙希「クリスマス。」

 

折本「ん?」

 

沙希「今年のクリスマスにあたし比企谷に告白する。」

 

折本「うん。」

 

沙希「それまでは比企谷との距離を縮めることに専念する。」

 

折本「うん。」

 

沙希「もしクリスマスにあたしが告白できなかったら次はかおりの番だから。」

 

かおり「わかった。期待しないで待ってる。」クスクス

 

かおり「それと、名前呼んでくれてありがと。」ニコッ

 

沙希「まぁライバルだから敬意を表してってことで…。」

 

かおり「なにそれウケる。」クスクス

 

今年のクリスマスあたしは告白する。

かおりには悪いけれどこのチャンスは必ずものにする。

あたしの初恋。あたしの青春。

あと半年程しかないけれど、最後は笑顔で終わらせられたらいいな。

 

つづく

 


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