川崎沙希の距離感   作:満福太郎

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5.川崎沙希は決意する

なんなの?この状況。

自分の置かれている状況が全然理解できないんだけど。

隣の部屋には好きな人がいて。

真上の階には好きな人の中学の同級生?

その同級生の目が笑ってなかった気がして…。

 

沙希「あー!なんなのよもうっ!」

 

ピンポーン。

 

チャイムが鳴る。嫌な予感しかしない。

出たくない。なんとなく出たらいけない気がする。

 

ピンポーン。

 

再びチャイムがなる。

もうどうにでもなれ。あたしはヤケになりドアを開ける。

 

沙希「…はい。」

 

折本「やっ!」

 

まぁそうだろう。この人だとは思ってた。

思ってたけど行動するの早いなこの人。

たぶん。いや、間違いなく苦手なタイプだ。

三浦のチャラチャラした感じと相模の軽い感じが合わさったような印象。

 

沙希「…なんすか?」

 

折本「うっわ!いきなり無愛想でウケる!」ケラケラ

 

沙希「…どうも失礼。何か用?」イラッ

 

折本「そんなに睨まなくてもいいじゃん。ちょっとお話ししたいなって思って!」

 

うざい。前言撤回。苦手なタイプじゃない。

こいつ嫌いなタイプ。マジうざい。

 

沙希「…いいよ。入って。」

 

折本「お邪魔しまーす!」ニコニコ

 

沙希「座ってて。コーヒー入れるから。」

 

折本「ありがと。へー?綺麗な部屋だね!」

 

こいつ何しに来たの?

部屋の感想言う為に来たの?

なんだろう。品定めされてるみたいですごくイライラする。

 

沙希「ありがとう。はいどうぞ。」

 

折本「ありがと!あちち…。」

 

沙希「で?話しって?」

 

さっさと話し終わらせて帰って欲しい。

これ以上こいつと居たくない。

 

折本「んー。川崎さんって比企谷のこと好きなの?」

 

ストレートすぎるでしょ。

もっとなんかこうオブラートに包めよって感じ。

 

沙希「なんでそう思うの?」

 

折本「ん?なんか比企谷と居る時の川崎さんって女の顔してたから。」

 

なによ女の顔って。

その言い方なんかいやらしいんだけど。

 

沙希「別にどっちでもいいでしょ?折本さんに何か関係ある?」

 

折本「別に関係はないけど気になるんだよねー。ほらあたし比企谷に昔告られたことあるから!」ケラケラ

 

ドクン!心臓が高鳴ったのがわかった。

 

沙希「は…?えっ?あいつに…?」

 

やばい動揺してるのがバレる。

落ち着けあたし。

 

折本「そうそう!まぁ中学の時だけどね!あ、もちろん振ったけど。」ケラケラ

 

ああ。こいつこれが言いたかったのか。

道理で比企谷に折本の話しをした時言葉を濁す訳だ。

 

沙希「へ、へー…。そうなんだ…。でも振ったんだったら別にもういいんじゃないの?」

 

折本「そうなんだけどねー。意外にいい男になってたから気になっちゃって。」ニコニコ

 

あぁ。そうか。こいつはあたしにケンカ売ってるんだ。

久しくそういう相手が居なかったからこの感覚忘れてた。

 

沙希「はぁ…。あんたケンカ売ってるの?どうせあたしが好きなのわかってて言ってるんでしょ?」

 

折本「そうだよ?一応ちょっかいかけていいのか確認しにきてあげたんじゃん!」ケラケラ

 

沙希「好きにすれば?今さらあんたが出てきたところであいつが揺らぐとも思えないし。」

 

折本「ホントにいいんだ?昔好きだった女と一緒の大学で内心浮かれてるかもよ?」クスクス

 

沙希「だから好きにすればって言ってるじゃん!!」

 

つい声を荒げてしまう。

 

折本「……。」

 

沙希「……。」

 

折本「…いいよ。じゃあ戦争だ。」ニコッ

 

沙希「は?」

 

折本「自信あるんでしょ?あたしに取られない自信。」クスクス

 

沙希「それは…」

 

折本「さぞかし経験豊富なんでしょね!」

 

沙希「うるさい…」

 

折本「あんな冴えない男落とすなんて訳ないって?」

 

沙希「うるさい。」

 

折本「あたしも本気出さないとヤバいかなー。」クスクス

 

沙希「だからうるさいっての!!」

 

折本「そ、そんなにムキにならなくてもいいじゃない。」

 

沙希「初恋なんだから邪魔しないでよ~!うわあぁぁん!」

 

折本「…は?」

 

~~~

 

みっともない姿を見られてしまった。

敵に涙を見せるなんて…。

そもそも泣いたのなんていつ以来だろう。

 

折本「…落ち着いた?」

 

沙希「…ごめん。」

 

折本「今頃初恋とかちょーウケる。」クスクス

 

沙希「…。」

 

折本「冗談よ。」

 

沙希「え?」

 

折本「比企谷のこと!取ったりしないから安心して。」クスッ

 

沙希「…どういうことよ。」ジロッ

 

折本「ちょっとからかっただけじゃん!本気にしちゃうんだから。」クスクス

 

沙希「なっ…!?」

 

折本「でも川崎さんとお話ししたかったのはホント。」

 

折本「なんか動揺してたからちょっと意地悪したくなっちゃって。」ケラケラ

 

沙希「…人が悪いわね。」

 

折本「いやー。でも初恋とは!ほんとウケる!」ケラケラ

 

沙希「…殴るよ。」ジロッ

 

折本「うわ…こわっ!ねぇ川崎さんあたしと友達になってよ!」

 

沙希「嫌。」

 

折本「即答!?あたしその為に訪ねてきたんだけど!」

 

沙希「嫌。帰れ。」

 

折本「いいじゃん!せっかく同じアパート同じ大学で同年代なんだからさー。」

 

沙希「あんたとは仲良くなれそうにないから。」

 

折本「ひどっ!もっとオブラートに包もうよー。」

 

沙希「お前が言うな。とにかくもう帰って!」

 

折本「はーい…。まぁまた来るからね!」ケラケラ

 

沙希「もう来るなー!!!」

 

バタン!あいつを部屋から追い出しその場にへたれこむ。

 

沙希「勘弁してよー…。」

 

落ち込んでるのも束の間。

ガチャッ。追い出したはずの折本が戻ってくる。

 

折本「あ。あんまり川崎さんがモタモタしてたらホントに比企谷取っちゃうかもだからそのつもりで!」ケラケラ

 

バタン…。それだけ言うと折本は帰って言った。

 

沙希「まじで勘弁してよ…。」

 

あたしはベッドに倒れ込む。

疲れた。大学にじゃない。折本かおりに疲れた。

なんなのよあいつ…。

 

比企谷…あいつのことが好きだったんだ。

今どんな気持ちなんだろう。

折本の言う通り浮かれているんだろうか?

なんだろう。すっごいくやしい。

あたしの知らない比企谷を知っている折本のせい?

それとも浮かれているかもしれない比企谷のせい?

いいや違う。

あたしは折本の問いかけから逃げた。

勝負すれば負けると思ったから泣いて逃げた。

それがくやしいんだ。

 

半端な覚悟じゃダメだ。

自分に自信を持たないとダメだ。

胸を張ってあいつが好きだと言えるくらい強くならないと。

 

沙希「見てなさいよ折本かおり。あたしが弱い女じゃないところ見せてやるんだから!」

 

決意新たに波乱の生活がまた始まる。

 

つづく

 


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