もう直ぐ無印編に入る、……多分。
転生して二年が経った。なんか急に時間が飛んだ気がするけど、そんな事はどうでもいい。
セラフやリニスとの特訓が実を結び、俺の魔力量がAAまで上がった。セラフが言うには、ゆっくりしても原作が始まる頃にはSランクに到達するそうだ。
魔力量が増えた事で宝具の真名解放をしても魔力切れしなくなったし、おまけで貰った「神授の智慧EX」のお陰でスキルも収得できた。いや、収得したと言うより、いつの間にか収得していた、かな?
……確か転生して半年くらいだっけ。
~回想~
日課の訓練を終えて夕飯の準備をしようとしたら、
『マスター。忘れていると思うので言いますが、スキルの方は放っておいていいんですか?』
セラフが頭に乗って来た。
「スキル? ……あっ」
『思い出しましたか?』
「うん……」
自分でもビックリだよ。まさか忘れてるとは……。
その内に、って思ってたら半年も経っちゃったよ。一度も確認してないや。
「今の俺って、何のスキルを持ってるんですかね……?」
『確認しますか』
「見れるの?」
『はい。スキルランクは現状のランクで表示しますね』
そう言ってセラフは空間モニターを映し出した。
「あ、思ってたより多い……」
モニターには、
『「女神の寵愛EX」「神授の智慧EX」「対魔力A」「魔力放出B+」「直感C」「気配遮断E+」「情報抹消E++」「騎乗E+」「人間観察E」「縮地E+」』
と書かれていた。
「俺、何もしてないよね? なのに何でこんなにスキル収得してるのよ……」
「対魔力」は心当たりがある。「直感」は勘が影響して、「縮地」は鍛えてるからか?
「うーん……。いつの間に……」
『「魔力放出」は、マスターが初めて宝具を使用した時、「気配遮断」はなのはさんと桃子さんの会話を外から覗いていた時、「情報抹消」はマスターが誘拐された時に収得されたようです』
「え、そんな前からあったのか……」
……あれ、でも「情報抹消」が誘拐の時なら……。
「何でセラフは二人に暗示魔法をかけたの……?」
『それはですね。あの時の「情報抹消」は収得直後で、ブーストされていたとはいえランクはE+でした。効果が発動したとして一日、もって二日で効果が消えます。
なので私が似通った暗示魔法をかけました』
「あー……。ありがとうございます」
セラフってやっぱ凄いね。でも、それならそうと次の日にでも教えてくれれば良かったのに。
ま、それは俺が忘れてたのが悪いんだけどねー。
『いえいえ。それよりも今はスキルの事ですよ』
「ですね……」
スキルのランクは確か俺の成長に合わせて上がるみたいな事が手紙に書いてあった気がする。
……それに、新しいスキルって……。
セラフの話を聞いて分かったけど、俺が何かしらの行動をしたり、状況になった時にスキルを収得してる。
「思ったより簡単に他のスキルも収得できそう?」
『ええ。マスターが意識して鍛えるなり何なりすれば新しいスキルも収得できますし、ランクの方もマスターの成長と合わせて上がっていきますからね』
「要は頑張り次第って事か……」
『はい。と言う事で、――明日からの特訓はメニューが増えます!』
「おう! …………え?」
マジで?
~回想終わり~
あれから順調にスキルのランクも上がり、新しいスキルも収得できた。これで原作が始まっても、自分の身は自分で守れるようになった。
……まあ、何もないのが一番だけどね!
とまあ現実逃避の前置きはこの辺にして、そろそろ本題に入ろう。
「よし。帰るか……」
現在、俺は私立聖祥大付属小学校の入学式にやって来たのだが……。
……めんどくさくなってきた。
ある日、なのはに「秋介くんはどこの小学校に行くの?」と聞かれ焦った。
だって俺の両親、事故死した事になってるのよ? 最悪セラフに頼んで身元偽造したリニスに親代わりを頼もうかと思ったが、タイミングよく次の日に入学の案内が送られてきた。
イザナミさんが元から仕組んでいたのだろう。さすが神様、抜かりがないね。今更だけど……。
『マスター、ここまで来てそれはダメでしょう』
「ダメですよ、秋介」
「えー」
昨日までは楽しみだったんだよ? でも当日になってめんどくさくなるとか、よくあるよね!
まあ一応、リニスには親代わりで来てもらい受付やらを頼んだ。
……一人で受付なんて、そんな嫌な目立ち方はしたくないからね。
「それでは、私はこの辺りで帰ります。後は一人で大丈夫ですか?」
「大丈夫よー。後は長話聞いて教室に行くだけだし、先生の指示に従えば問題ないよ」
「わかりました。何かあったら念話で呼んでくださいね」
では、と言ってリニスは帰っていった。
「さてと、長い戦いが始まるな……!」
そう。俺がこれから赴くは体育館。数多の生徒たちを眠りへと誘う睡魔を生み出す魔境。
「あ、新入生の皆さんは此方に座ってくださいね」
「あっ、はい」
とりあえず、誘導の先生に言われて席に着く。
~絶賛睡魔と戦闘中!~
『マスター、終わりましたよ』
「はえ……?」
おっと寝てたか。仕方ないよね、あんな長い話を聞かされたら。何せ俺は二回目ですし。一回目はうろ覚えだけど……。
しかし、周りをみて思う。
……ピッカピッカの一年生、てか?
友達百人はいらないけど、せめて数人はほしいよねー。
『皆さん行っちゃいましたよ?』
「マジで?」
しまった。さっさと教室に行かねば……。
体育館を出て、校舎に入る。クラス分けが張り出された廊下へと向かった。
「さて、俺のクラスは……。えぇ……」
『よかったですね。知っている方が一緒で』
よくないよ。何で一緒になった……。
クラス分けを見ると、知っている名前が書いてあった。
高町・なのは、アリサ・バニングス、月村・すずかの三人の名前が。
「あの三人と一緒とか、……絶対めんどくさい」
勘弁してくれ……、と思う。なのははともかく、バニングスと月村が一緒だと誘拐事件での事が気付かれるかもしれない。
『とりあえず、中に入ったらどうですか』
「そだね……」
教室に入った瞬間、
「あんた、さっきからなんなのよ!」
「そっちが悪いんだよ、人の物勝手に使って!」
「あたしとすずかは親友だから大丈夫だって、言ってるでしょ!?」
「それでも、ちゃんと言わなきゃダメだよ!!」
なのはとバニングスが取っ組み合いの喧嘩をしていた。
「何やってんのよ、あの二人は……」
月村も間に挟まれてアタフタしてるじゃん。というか、何があった。
『無視していいかな』
『いや、止めに行きましょうよ。……ほら、なのはさんの見事なビンタが入りますよ?』
パチンッ、と音が聞こえ、
「なにすんのよ!」
「そっちが聞かないからだよ!」
「「む~」」
また二人が取っ組み合いになった。
「はあ……」
まったく、入学初日から……。周りのクラスメイト見てみろ。全員、ちょっと引いてるぞ。
……頭痛くなりそう。
原作とは内容が違うけど、ちゃんとこのイベントはあるのね。
それによく見たらそこ俺の席じゃん。どの道止めるしかないとか……。
「仕方ないなあ、もう」
俺はゆっくりと服や髪の毛を引っ張り合う二人に近づき、
「そいや!」
「にゃ!?」
「あう!?」
スパンッ、と二人の頭に手刀を落とす。
「初日から何やってんの。周りの迷惑も考えなさいな」
「う~、……あ、秋介くん……?」
「何よ、あんた、――ッ!?」
「えっ――!」
なのはとバニングス頭を押さえ、月村は俺の顔をみて驚いていた。
「何で喧嘩してんのか知らんが、……そこ、俺の席なんだけど」
「……あ、ごめんね」
「……むう」
「……アリサちゃん」
「うん……」
そう言って三人はどいてくれた。
机の横に鞄を掛け、座る。そして……、
「おやすみ」
机に突っ伏した。
「寝ちゃダメだよ!?」
「なんなのよ、あんた……!」
「この人……」
『喧嘩の矛先を自分に向けることでお二人の喧嘩を止めるなんて、……流石ですね、マスター!』
『え?』
……もしかしてそうなっちゃった……?
面倒な事になる前に逃げ――。
「――秋介くん!」
られなかったか―……。
「……なのは」
「一緒のクラスだよ! これからよろしくなの!」
さっきまで喧嘩してた人とは思えないですねー。あと、
「またなのなの言い出したか……」
最近言わなくなったと思ったけど、どうやら時たま今でもなのなの言ってるみたいだな……。
「い、言ってないよ!」
「はいはい。言ってない、言ってない」
「もう!」
バカにしてー! とポカポカ叩いて来るが、痛くない。
「あー、もうちょっと右……」
「わたしはマッサージ屋さんじゃないの――!」
と言いつつも、右にずらして叩いてくれるなのはってばいい子……!
「わかった、わかったから。もう叩かなくていい。……それで、何で二人は喧嘩してたのさ?」
「うっ」
ピタッ、と手を止めるなのはと、
「あ、あたしは悪くないわよ!?」
「……」
急に話を振られて慌てるバニングスと俺をじっと見つめる月村。
……もしかして気づかれたか……?
誘拐事件の時の事を? と思うが今は置いておこう。バニングスの方は微妙な反応だし。
「どっちが悪いかじゃなくて、何で喧嘩してたのかを聞いてるんだけど」
「……この子が人の物を勝手に使ったりしてたから」
「……だから、すずかとあたしは親友だって言ってるでしょ!」
「それでもだよ!」
「「む~」」
と二人は向き合ってしまった。
「はあ……。それで、本当なの?」
「え、あ、はい……」
考え事に夢中だったのか、月村は気のない返事をした。
「そうか。じゃあ、二人とも悪いな」
「「えっ?」」
「どうして……?」
「まず、なのはだけど……。ちゃんと話を聞かないとダメだ。相手が悪くても、先に手を出すのは止めときな。変な誤解されるから」
「……ごめんなさい」
「俺じゃなくてそっちの二人に謝りなさいな。……それで、二人の方はだけど……」
「なによ……」
「…………」
「そっちの喧嘩してた方も手を出すのは良くないし、見てた方も止めなきゃ。
いくら二人が親友だとしても、親しき仲にも礼儀あり、だ。ちゃんと一言声をかけないと誤解されるよ? 今日みたいな初対面の人ばかりだと特にね」
「わかったわよ……」
「ごめんなさい……」
「俺じゃなくって、向うにね。――はいじゃあ、三人は向き合って……」
「「「ごめんなさい!」」」
うんうん。これで一件落着だね。
『今のマスター、先生と言うか、……お父さんみたいでしたね』
『やめてくれ……!』
と念話しているとチャイムが鳴った。
「ほれ、席にお戻りよ」
「うん。後でね、秋介くん」
「……ふん」
「それじゃあ……」
三者三様の反応で自分の席に戻っていった。
……やっと解放された。
『お疲れ様です』
『ホント疲れた……』
しばらくして、茶髪を束ね、青いジャージ姿の女の人がやって来た。どうやらこのクラスの担任らしい。
一通りの連絡事項を終え、恒例の自己紹介タイムがやって来たのだが……、
「じゃあ、誰から始めようかなー。あいうえお順じゃ普通すぎて面白みが無いのよねー」
いや普通で良いじゃん。何で自己紹介に面白さを求めてるのさ。
「うーん……。――戸田君、君に決めた!」
「はい!? なんで!?」
よりにもよって俺かよ!?
「男の子なんだからとやかく言わないでさっさとやりなさい。あ、名前だけ言うのはダメよ?」
周りを見てみると、全員、ホッ、と安心していた。そりゃね、自己紹介の一番手とか嫌だよねー……。
なのはは頑張れ、と目で応援してくるし、バニングスはちょっと睨んでくるし、月村はジッ、と俺を見てるし……。もうヤダ。
『マスター、こう考えるんです。一番に自己紹介するということはつまり、――残りの時間、高みの見物で余裕ですよ……!』
『……それだ!』
流石セラフ、良い考え方だ! さっさと終わらせよう。
俺は立ち上がり、
「戸田・秋介です。特技は家事全般、好きな物は料理とファンタジー系のゲームが好きです」
「普通ね。ツマラナイワー」
「当り前でしょう!? 子供に何を期待した!?」
「んー、好きな相手にコクるついでに世界征服宣言したりとか?」
「それどこの馬鹿だよ!?」
そんな奴この世界にはいないよ!? むしろいてほしくない!!
「あー、はいはい。終わったんだから早く座って。じゃあ、次は、……出席番号一番、葵君からね」
そう言って出席番号順の自己紹介に変わった。
……なんなんだよ、結局あいうえお順になってる……。
その後、自己紹介は順調に進みお昼を知らせるチャイムが鳴った。
「はい。今日はここまで! 本格的な勉強は明日からなので、皆、ちゃんと準備してくるのよ? ……解散!」
そう言って担任は教室を後にした。
「あー、お腹減った、……ん?」
今日のお昼なんだっけ、と考えているとなのはがやって来た。
「秋介くん! 一緒に帰ろう!」
「おう、なのは。帰るか」
「うん!」
鞄をもって席を立ち、教室を出ようとすると……、
「あの、……戸田君? ちょっといい……?」
月村に声をかけられた。後ろにはバニングスも居る。
……やっぱバレたか……?
今日会ってからずっと見られてたから、……まさかとは思ったけど。
「……今日じゃないとダメ?」
「うん」
「……はあ。ごめん、なのは。先に帰ってて」
「……校門で待ってるの」
「わかった」
そう言ってなのはを見送る。
「……とりあえず、屋上行くか」
「……うん」
俺は月村とバニングスの二人と屋上へ向かった。
~屋上へ~
屋上に俺達以外誰も居ないのを確認する。
『セラフ。一応人除けよろしく』
『わかりました』
これで、万が一にでも俺達の話を聞かれる事はないだろう。
「それで、俺に用って?」
「……戸田君って、ファンタジーが好きなんだよね」
「そうですが?」
「じゃあ、吸血鬼って、……居ると思う?」
「すずか……」
月村は両の手を強く握りしめ震えており、バニングスはそんな彼女を支えるように隣に立つ。
……バレてますね。
『なあセラフ。この二人、俺の事ちゃんと思い出してるよね』
『ですね。マスターの「情報抹消」の効果は切れてますし、私のかけた暗示魔法も弱まっていたはずですから。
彼女が吸血鬼という事もあり、マスターに会って暗示魔法が解けた、と言う感じじゃないでしょうか。隣の彼女は言われて気付いた、と言う所でしょう』
『マジかー。そんな御伽話みたいな事があるなんて……』
『マスターがそれを言いますか』
ですよねー。俺もセラフも、リスだって言われて見ればファンタジーの塊だ。
しかし今現在、目の前で月村が目に涙を溜めて俺を見ている。
自分の最も知られたくない秘密を、知っているかもしれない相手に直接聞くのは……、
……かなり怖いだろうねぇ……。
月村の様子を見ただけで分かる。どれだけの覚悟で俺に話しかけて来たのかを。
だから、
「吸血鬼ねえ……。居てほしいし、会ってもみたい」
「怖いと、思わないの……?」
こんな頑張る月村の顔を見たら、……嘘はつきたくないよね。
「――むしろ好きだからね、そういうファンタジーっぽいの」
「――ぅっ!」
言った瞬間、月村は涙を溢れさせ、泣いた。
「やっぱり、あの時の、……うぅっ」
「まあね。あの後大丈夫だった?」
「――はい、……ありがとう、ございま、した。助けて、……くれて」
「あ、あたしからも、ありがとうございました!」
「いいよ、気にしなくて」
「グスッ、……はい」
「とりあえず涙拭きな」
はい、とハンカチを渡す。
「ありがとう……」
そう言って月村すずかは涙を拭いた。
『よかったですね、ハンカチ持ってきて』
『いつぞやのなのはに感謝だな』
昔、公園でいきなり泣かれた経験を踏まえて、ハンカチを持ち歩くようにして良かった。
「じゃあ、改めて。戸田・秋介です。秋介でいいよ、よろしくー」
「あ、……月村・すずかです。私もすずかで、良いよ……?」
「あたしはアリサ・バニングスよ。アリサでいいわ」
「おう、よろしく。すずかにアリサ」
「うん!」
「……ふ、ふん!」
笑顔になったすずかと照れるアリサ。
『女の子は笑顔が一番ですね、マスター』
『まったくだな』
泣き顔もいい時はあるけど、やっぱ女の子は笑顔じゃないとね。
「ねえ、秋介君は、……魔法使いなの?」
「そうよ。私もそれ聞きたかった!」
「あー、それは、……いつか話すよ。だから今は誰にも話さないでくれないかな」
最低でもあと二年は待ってほしいね。
『結構ひどいですね』
『うるせえ』
だって、話したらこの二人ついてきそうだし、それにもう怖い思いさせたくない。
「むー、何よそれ。……まあいいわ。いつかちゃんと話しなさいよ!」
「……私もそれでいいよ。その代り、私のお願いも聞いて?」
「俺に出来ることなら……」
そう言うと、すずかは俺の右手を取り、
「――私と、お友達になってください」
笑顔で言われた。
「それくらいなら、喜んで」
「すずか、ずるいわよ! ……あたしとも友達になりなさい!」
「なりなさいって……。まあ、いいや。俺で良いなら」
よろしく、と空いている左手を出す。
「……よろしく」
アリサ顔を背け、手を握ってくれた。
……ほほう。これはこれは。
『照れてますね。耳まで真っ赤です』
そんな恥ずかしがらなくても……。
「アリサは可愛いなー」
「……なっ!?」
『マスター、セリフと心の中が逆ですよ』
なんだと!? やっちま――。
「――痛い!?」
右手が、右手がぁあああ!?
急にすずかの手を握る力が強くなった。
……これが吸血鬼の力か!?
「……ねえ、秋介君。……私は?」
「え、可愛いと思うけど……?」
「――ありがとう……!」
いや、自分で聞いといて赤くならないでよ……。
「……とりあえず二人とも。手を離して――」
ほしい、と言おうとしたら扉が勢いよく開き、
「――ここに居たの! 遅いから心配し、た、……秋介くん!?」
中からなのはが現れた。
『セラフさんや。何でなのはが来たん? 人除けを頼んだよね』
『私の所為じゃないですからね? 確かに人除けは発動していますし、なのはさんの実力ではないかと』
『マジでか……』
まだ魔法にも出会ってないのに人除けの魔法を無視するとか、……主人公補正すげぇ。
と言うかそんなこと言ってる場合じゃない。
……オワタな、コレ。
現状、俺の右手を握るすずかと左手を握るアリサ。二人は顔を真っ赤にしている。
『……マスター』
『言うな、セラフ』
わかってる。この後どうなるかくらいな。
「ごめん、なのは。ちょっと話が長引いて、――ガフッ!?」
俺の横腹になのはが突き刺さった。
バカな!? さっきまで入口に居たはず……!?
「――秋介くんは渡さないの……!」
「いや、俺はなのはの物じゃ――」
「ダメよ! 秋介はあたしの友達なのよ、離れなさい!」
「わたしの方が先に友達だもん!」
「そんな事関係ないよ。ね、秋介君……?」
すずかさんヤメテ。俺の腕がヤバイ。ミシッ、て聞こえた気がしたんだけど!?
『セラフ!?』
『頑張ってください!』
一言で念話を切られた。
……ええ、助けてくれないの……。
「もう、ヤダあ……」
泣きたくなってきた……。
「は・な・れ・な・さ・い・よ!」
「い・や・な・の!」
俺に抱き着くなのはをアリサが引き剥がそうとするが、頑固として離れようとしない。
「すずか! あんたもいつまで秋介にくっついてるのよ。手伝いなさい!」
「わかったよ、アリサちゃん!」
二人は一緒になのはを掴み、そして、
「「せーの、――ハイ!」」
「にゃ~!?」
なのはを釣り上げた。
流石は親友コンビ。息の合った動きですね。なのはもこれはたまらず手を離した。
なのはが起き上がり、二人と対峙する。
バチバチッ、と火花が散ったように見えた。
そんな三人を見て思う。
「あ、焼き芋食べたいな……」
三人の髪色と火花っぽいので頭に浮かんだ。
この時期にサツマイモあるかな……、と考えてたらセラフから念話が来た。
『マスターって、こういう状況でもやっぱり余裕ですね』
『まあね』
『それで、彼女達を止めなくてもよろしいのですか?』
『いいんじゃない? 喧嘩するほど仲が良いって言うし、……ほら』
見ると、何故か三人娘が握手をして仲直りをしていた。
……一体何があったのか。
女の子って不思議だね。さっきまで喧嘩してたのに、いつの間にか仲良くなってる。
『……やはりこうなりますよね。流石マスターです』
『え、俺何もしてないよ……?』
『まあ、知らなくてもいいと思いますよ』
『……まあ、いいや』
何があったかは気になるが、知らなくてもいいなら気にしても仕方ない。
リニスがお昼を用意して待っているだろうから早く帰えりたい。
「おーい。俺もう帰るぞー?」
そう言うと、三人は此方を振り向き、
「待ってよ~、わたしも一緒に帰る!」
「あ、待ちなさい。ずるいわよ、なのは! あたしも一緒に帰るんだから!」
「アリサちゃんもなのはちゃんも待ってよー……」
もう呼び捨てする仲になっているとは……。
……女の子って解らない……。
俺は三人娘と共に校門へ向かった。
~やっと帰れる……~
「また明日ね、秋介、なのは!」
「それじゃあね、秋介君、なのはちゃん」
「うん、バイバイ! アリサちゃん、すずかちゃん!」
「おう、また明日なー」
校門を出て坂を下りた所で、アリサ、すずかと別れた。
アリサの執事――鮫島さんが迎えに来ていて、二人は一緒に帰っていった。
……高級車で下校か。羨ましいなー。
そんな事を思いながら俺はなのはと二人で帰った。
高町家が見えた辺りでなのはは、
「ねえ、秋介くん」
「ん?」
「わたしね、気付いたの。ちゃんとお話をすれば、喧嘩してもお友達になれるって」
「そりゃよかった」
「秋介くんが教えてくれたんだよ? だからアリサちゃんやすずかちゃんとお友達になれたの。
だからね、――ありがとう、秋介くん! また明日なの!」
そう言って、自分の家へと走っていった。
「……そりゃどうも」
なのはよ、不意打ち過ぎる。
『顔が赤いですよ、マスター』
『夕日の所為だ』
『まだ昼過ぎです』
『……仕方ないじゃん』
『あれは反則ですよね』
本当だよ。どこで覚えたんだか……。
『でも嬉しかったでしょう?』
『当たりまえよ』
あんな事言われて嬉しいに決まってる。
「……早く帰ろう」
『そうですね』
遅くなっちゃったし、リニスも心配しているだろうから急いで帰るとしますかね。
入学時のスキルは、
「女神の寵愛EX」「神授の智慧EX」「対魔力A」「魔力放出A+」「直感B」「気配遮断D++」「情報抹消D+」「騎乗C+」「人間観察D」「縮地C」「千里眼D+」「魔力放出(炎)B++」
「中国武術E+++」「気配感知E」
てな感じです。
まあ、普段は「女神の寵愛EX」「神授の智慧EX」以外OFFにしてるんですがね。