普通のセリフは「」
デバイスのセリフ・念話・通信は『』
宝具は〈〉
「……知らない天井だ」
気がつくと、見覚えのない天井が目の前に広がっていた。
……まあ、お約束だよな。嫌いじゃないけどね!
それと、なんか意識が無いはずなのに豪い騒がしかったのは気のせいだよね。そうに違いない。
顔を動かして見ると、どうやら俺はベッドで寝ているようだ。
「まぶしいなあ、もう……。って、おお!? 低っ!」
顔を直撃してくる光から逃げようと起き上がってみたら、今までよりかなり視線が低くなっていた。
自分の体を見てみると、手足が小さく短くなっている。
……まるで子供のようだ。
いや、ようだ、じゃなくて子供なのか……。
「ん?」
枕元に一通の手紙と、青く光るものがあった。
……イザナミさんかな。
とりあえず、青いのは置いておき手紙を読むことしよう。
『おはようございます。これを読んでいるということは無事に転生できたみたいですね。
早速ですが、説明に入りたいと思います。貴方が転生したのは原作開始から四年ほど前です。年齢は五歳。親は事故で他界した事になっています』
なんで五歳なのよ。ご近所付き合い大丈夫か?
『ちなみに、五歳にした理由は、――反応が面白そうだったからです!』
「酷くない!?」
『だって、指定が無かったじゃないですか』
ちょっと待って。なんでツッコミの返しが手紙に書いてあんの……。
『今、なんでツッコミの返しが、みたいなこと考えましたね。私、神様ですよ?』
……気にしたら負けだな。
『話を戻しますよ。貴方の現在の総魔力量はEです。ですが、鍛えれば原作が始まる頃にはSにはなっているはずなので、頑張ってくださいね。くれぐれも、無理はし過ぎないで下さいよ?
それと、貴方のデバイスは手紙と一緒に置いておきますので、後で確認してください。色々と奮発しましたので期待してください!
あと、勝手ながらもおまけで「女神の寵愛EX」と「神授の智慧EX」を付け加えておきました』
マジかイザナミさん。そのスキルっておまけで付けるレベルじゃない気がするんですが。
……しかも両方EXとか……。
『前者は貴方の身体能力が向上します。後者の方は私と夫、子供たちが協議の結果、色々と改良してしまい名前通りのスキルではなくなってしまいました。
効果を簡潔に言ってしまえば”好きなスキルが再現・収得が可能”です。収得した各スキルのランクはEですが、貴方の成長と合わせてランクが上がります。
あと、魅了系などの貴方にデメリットとなるスキルは対象外となっています。その分、他のスキルが使用時にブーストされます。事後承諾ですみません』
改良って……。どちらかと言うと魔改造では? と思う。ありがたいけど。
それに魅了系が無いのは嬉しい。間違えて収得とか嫌だからね。
……しっかしねぇ。英霊特有のスキルまで使えるとはなぁ……。
「皇帝特権」みたいなチートスキルまで収得可能は凄いけど、宝の持ち腐れになりそうだしな……。
「……どのスキルを収得するかはその内で良いよね」
とりあえず今は手紙を読むのが先だ。
『収得したスキルのランクはAまたはEXまで上がります。特典の宝具と合わせて此方も頑張ってください。
ちなみに、全てのスキル(あ、先程書き忘れましたが宝具もです)はON/OFF機能を付けました。必要に応じて切り替えてくださいね。
以上で説明の方は終わりますが、最後に一言。貴方の新しい人生に、幸いがありますように――』
最後まで読み終えると、手紙は光になって消はじめる。
……ありがとうございます、イザナミさん。
手紙が消えるのを見届け、頭を下げる。
「……よし! じゃあデバイスの確認と行こうかね!」
気分を入れ替え、枕元に置いたままのデバイスを手に取る。
しかしこの形、どっかで見たような……。
全体的に青色で、ルービックキューブのような正方形、しかし、一部が欠けているため、そこから薄い桜色の球体が埋まっているのが見える。
……まんまムーンセルじゃないですか。
その見た目は、Fate/EXTRA ccc ver.のムーンセルを小さくしたものだった。
しかもこれ、ペンダントになってるよ。イザナミさんが気を利かせてくれたのか。
持ち運びも楽だね! と思っていると、
『――問います。あなたが私の、マスターですね――?』
少女の声で、どこかで聞いた事のあるようなセリフが聞こえた。
そして、そのセリフを聞いて俺は安心した。
……日本語でよかったー。
インテリジェントデバイスは英語でしゃべるイメージがあった。
俺、英語の成績悪かったし、不安だったけど取り越し苦労だったみたいだ。
『……あれ? セリフ選び間違えちゃいましたかね……』
おっと、なんか落ち込んでる……?
「いやー、かわいい声だったから、つい」
『もう……!』
うれしいですよ! と桜色の球体を淡く光らせながら、ミニムーンセル(仮)が照れたように見えた。
「あー、ごめんごめん。で、さっきの質問だけど俺がマスターだよ。よろしく」
『はい。よろしくお願いしますね。――では、さっそくですがマスター認証を始めましょうか』
ミニムーンセル(仮)は球体を淡く点滅させながら、手元から浮かび上がる。
『まず、個体名称を教えてください。あと、出来れば愛称もお願いします』
「んー、……じゃ、個体名称は〝ムーンセル・オートマトン〟 愛称は〝セラフ〟で」
『――はい。登録完了しました。セットアップをお願いします。バリアジャケットを設定しますので、頭の中にイメージしてください』
「よっし! ――ムーンセル・オートマトン、セットアップ――ッ!」
『初セットアップ、行きます!』
体が、薄い青みを含む白い光に包まれる。
「うおっ!」
反射的に目を瞑り、開くと服が変わっていた。
『いかがですか?』
「すげぇ……!」
体を見回し、バリアジャケットの確認をする。
襟元を着物のように仕立てた白いジャケットに、黒いズボン。フード付きの、黒地に白いラインの入った外套を纏っていて、首からセラフを下げている。
『マスター。どこか直すようなところありますか?』
「特にない、……あ、外套の裾もう少し短くならない? 膝上くらいまで」
言うと、裾の部分が薄っすらと光に包まれ、収まると短くなっていた。
『これくらいですかね』
「おー、ちょうどいい」
バリアジャケットもいい感じにできたし〝アレ〟を試してみようかな?
「なあ、魔法ってどうやって使うの?」
『イメージしてください。バリアジャケットと同じ感覚で良いですよ』
あれか、常にイメージするのは最強の自分だ、的な?
まあ、それはともかくやってみようじゃないか。
剣を持つ構えをとり、イメージする。
リンカーコアが活性化し、手に魔力が集っていくのが分かる。
Fateにおける代表的な宝具。彼の騎士王が持つ星の聖剣。
――〈
「おお……!」
構えた手に光が集まり一本の聖剣が現れる。
「よっしゃ――!」
……なんか軽くね!?
軽く素振りをしてみるが重さをあまり感じない。
『一応、私の方でもサポートとして軽量化をしていますが……。いかがでしょうか……?』
「マジで? 道理で軽いと思った。ありがとう、セラフ」
胸元のセラフを軽くなでる。
……意外と触り心地良いな……。
『――マスター……っ!』
ふ、照れてんじゃねえよ、コイツ~。ここか、ここが良いんか?
一瞬、俺のデバイス感情豊か過ぎね? と思ったが、すぐにどうでもよくなった。
だってその方が楽しいじゃない。これから一人暮らしだし、話し相手がいるのは嬉しい。
「……なんか疲れてきた……。これってどうすればいいの……」
『魔力の流れを止めてください。それで魔法は消えるはずです』
言われた通りにすると、〈約束された勝利の剣〉は光になって消えた。
『宝具は真名開放しなければ、大した魔力消費はありませんが……。今のマスターは魔力量が少ないので仕方がないことかと』
「まあ、それは鍛えればいいことだし……。あ、俺の魔法――宝具って非殺傷設定に出来るよね?」
『もちろんです。そのあたりのサポートも私の役目ですから!』
よかった。これなら安心して戦える。いや別に、戦いたいわけじゃないけどね。
これから先、原作に関わることになるし自分の身は自分で守りたい。
「そういえば、……セラフって武器にはなれないの?」
レイジングハートやバルディッシュは宝石型から杖や斧とかに変わっていた。
だけどセラフはセットアップ後も変わらずにペンダントのままだ。
『なれますよ? 武器タイプからアクセサリータイプなど色々』
「そっか。なら、セラフ用の魔法も考えないとだねー」
『ありがとうございます、マスター!』
楽しみが多くて困っちゃうな!
特に、オリジナルの魔法とか覚えたいじゃん。スターライトブレイカーみたいなやつを。
……いや、あそこまではいらないかなあ……。
うーん……。ま、明日でいいか。
「とりあえず、家の中の探検をしようじゃないか」
これから住む家だ。色々と把握しとかないとな。
「でもその前に、バリアジャケットは解除したいけど、……と。おお、出来た……!」
『よくわかりましたね。バリアジャケットの解除方法』
「なんとなく、宝具と同じような感じがしたから、試しに魔力を止めたら消えた」
『……マスターって、結構感覚で実行するタイプなんですね』
「まあね。理屈とか細かいことは、……苦手じゃないけどめんどくさいからね!」
特に覚える系がね!
『胸を張って言えることじゃないと思いますが……。マスターのそういう性格は好きですよ』
「はは、ありがと」
急に好きとか、……やめてよ恥ずかしい。
セラフはデバイスとはいえ、少女の声だ。生前、告白をしたこともされたこともない。
そんな俺にいきなりの好きは、……照れる。
まあ、そんなことは置いておいて、
「一通り終わったし、――改めて、これからよろしく、セラフ」
『はい! こちらこそよろしくお願いします、マスター!』
その時、俺のお腹が、クゥ~、と鳴った。
「……とりあえず、何か食べよ……」
『そうですね』
とりあえず寝室を出て、階段を下りる。
~結構この家広いのね……~
「これはまた立派な。……ん?」
階段を降りてすぐのリビングに入ると、一流コーディネーターがデザインしたと言わんばかりのオシャレな家具が配置されていた。
だが、そんなものより気になったものがある。
「おおっ、揃いにそろってる……!」
それは、キッチンだ。
大きな冷蔵庫はもちろん、炊飯器や電子レンジといったお馴染みのものから、ガスとIHを合わせたコンロに備え付けの大きいオーブントースター、それに加え、
「石窯付きとか、……イザナミさんグッジョブ!」
これでピザが焼ける! それに色々活用できそうだ。
『うれしそうですね、マスター』
「ふっふっふ、とりあえず昼飯作るか!」
冷蔵庫には食材が入っていたし、調味料も一通りそろっている。
あとは何を作るか、だ。
「軽く焼き飯でも作るか……」
前世で両親がよくお昼に作ってくれたものだ。
ごはんに卵、母さんはウインナーで父さんが鶏肉、ねぎ入れてフライパンで炒めるだけの簡単な料理。
……親の味、ってね。
「……て、ごはんないやん。……しかたない、炊くか……」
とりあえずお米をといでタイマーをセット。
「お米はこれでいいとして、炊けるまで時間があるなー……。散歩にでも行くか」
『散歩、ですか。――でしたら少々お待ちください。今調べますので……。
――完了しました。この街――海鳴市一体をスキャンして地形を把握しました。道案内はお任せください!』
「一瞬だったね!?」
セラフの高性能ぶりに秋介さんもビックリである。
『私、こう見えて次元世界一ですから!』
なにこのデバイス、頼もしすぎる……!
次は長くなる、……かも。