転生少年と月の目モドキ   作:琴介

33 / 34
 いやもう戦闘描写って苦手……。
 枕の下に置いて寝たら語彙力が身につく辞書とかないかなあ。ないか。
 そんな夢を見る今日この頃だったり。
 
 てなわけで難産だった戦闘回ですが、どうぞ……!

 
 ※一部、ご指摘を戴いたので追加しています。
  作者の落ち度で説明不足になってしまって申し訳ありません。


第二十九話:筆記より実技の方が得意だったりします

 青空の下、草原に立つ俺の頭上に一つの大きな空間モニターが開いた。

 そこに映るのはエイミィさんだ。

 

『とまあ、そんな感じで、秋介くんの筆記試験の結果は問題ないよー。バッチリ合格ライン。あと残ってるのは実戦訓練だけ。それが最終試験になるから、最後まで気を抜かずガンバロー!』

「おー!」

 

 そう。今日この日。待ちに待った訳ではないけどなのはとフェイトがやる気満々で準備していた嘱託魔導師認定試験の当日だ。

 試験会場は管理局本局。

 まずは筆記試験が、次に実技試験が行われる。その結果によって後日、認定書の交付時に面接があり、それをパスする事で晴れて嘱託魔導師になれるのだが、

 ……どうしてこうなっちゃったかなあ。

 現状、俺は本局ではなく管理局の保有する、とある無人世界にいる。

 そうなった原因は先の二人。つまり、受験番号一番と二番だ。

 どうも本来の実践訓練に使用するはずだったシミュレーションルームが、その一番と二番の連続した最終試験によって限界を迎えたらしい。

 

『すみません。大急ぎで修理と調整を進めているのですが、まだシミュレーションルームの状態は芳しくなくって……』

『ごめんなさい』

『大丈夫大丈夫。むしろ二人のお陰で上に修理費やら改良費を申請する理由が出来たし、まあ、わたしとしては全然オッケーだよー』

 

 そんなやり取りが、エイミィさんの向うから聞こえてきた。

 

「なのはもフェイトも、どうしてあんなに張り切っちゃったのか。シミュレーションルームが耐えられないって相当だよね……」

『それはマスターに良い所を見せたかったからでしょう。いわゆる乙女心というモノです』

「そういうもんか」

『そういうもんです』

 

 まあ、その乙女心のお陰で徹夜の体に鞭打つ事になった本局のメンテナンススタッフさんたちは涙目だったが、今度翠屋のシュークリームを差し入れるという事でもう一、二徹は頑張れるそうだ。大丈夫かなそれ。

 

『美味しいと評判のなのはちゃんの所のシュークリーム……。それが食べられるのならこのマリエル・アテンザ、シミュレーションルームの修理が終わるまで一睡もしませんとも!』

『それで貴女に倒れられでもしたら私の責任になるのよ。お願いだからちゃんと寝てちょうだい、マリー』

 

 と、画面の中。エイミィさんの背後で頭を抱えたのは、リンディさんと横に並ぶメガネの女の人だ。それにしても、と彼女は続けて、

 

『まさかシミュレーションルームがダメになるとは思わなかったけど。流石ね、リンディの推薦に納得だわ』

『だから言ったでしょう、レティ? あの子たちは凄いわよ、って。AAAクラスの魔導師なんてそうそうお目にかかれないんだから、シミュレーションルームの一つや二つ安いものよ』

『AAA+クラスの息子を持つ貴女に言われても説得力無いわー』

 

 言って、二人が笑い合う。その光景を見て思うのは、

 ……あれがミッド版ママ友か……!

 確か二人は同僚で、同じ提督という立場だとか。加えて子持ちという共通点もあるので、まあ、レティさんとこの子とはいずれ出会う機会が来るだろう。ところで、

 

「試験官はどちら様で?」

「僕だよ」

 

 背後からの声に振り向くと、青の魔法陣から一つの影が現れた。

 執務官の制服に、カード型のデバイスを手にするその姿は、

 

「何だクロノじゃん」

「そうあからさまにガッカリされると流石に傷つくんだがな。……まあいい。

 僕が君の試験相手を務める理由は、先の二人と同じだ。正確に君のランク測定を行った訳ではなくあくまで推定だが、……AAAクラスの相手をできる試験官は中々空いていなくてね」

「……え? 俺ってあの二人と同レベル扱いされてる?」

『むぅ。それってどういう意味なの』

 

 と、なのはが映るモニターが現れた。

 ぷくぃ、と頬を膨らませる姿はとてもつつきたくなるけど今は我慢。あとでのお楽しみだ。

 

『わたしたちと同じは嫌?』

「そういう事じゃなくって、俺がAAAクラスとか過大評価でしょう、って意味で」

 

 総魔力量にはそこそこ自信はあるけど戦闘技術に関してはなあ……。凄いのも俺じゃなくてセラフや宝具とかですし。一体何を根拠に俺をAAAクラスと推定したのか。

 

「君の元使い魔」

「ちょっとリニスさん――」

 

 どんな話をしたんですか、あなた。推定でクラスがAAAになるなんて相当な誇張があったに違いない。

 

「まさか。そんな事は無かったよ。今まで彼女が見てきた君と、なのはやフェイトたちとの模擬戦の映像を見た上での総合的な判断だ」

「えー、でも……」

『私も。秋介がAAAクラスなのは妥当な評価だと思うよ? 模擬戦じゃ一本も取れた事ないし』

『そうだよ! わたしもまだ模擬戦で一回も秋介くんに勝った事ないんだから』

「……むぅ」

 

 フェイトとなのはにそこまで言われたら納得するしかないか。

 

「納得したならそろそろ始めよう」

 

 そう言って、クロノがセットアップする。

 

「でもクロノ、……大丈夫? なのはとフェイトからの連投でしょ」

「問題ない。むしろ先の試験のお陰で体が温まっているからね。――二人との時より本気で相手をしよう」

 

 ……それってもう試験通り越して模擬戦になるんじゃなかろうか。 

 と、心の中で思うだけにしておく。今のクロノに何を言っても無駄だろうな、とも。モニターの向うでエイミィさんが、

 

『ワオ! クロノくんの魔力がどんどん上がっていく……! これは現役執務官の勝ちが濃厚か!?』

 

 それどこに向かっての実況なんだろう。

 直後に何故かタイミングよくリニスからイラスト付きの応援メッセージがモニターで来たが、手が滑ったので手刀で砕いておく。確か今日はプレシアさんと二人で引っ越しの準備に追われている筈なのできっと気のせいだ。

 

『おや。意外とマスターもやる気になってます?』

「まあね」

 

 いくらこれが試験で勝ち負けは関係ないとしても、戦うからには負けたくない。というより、

 

「なのはとフェイトの前だから良い恰好したいじゃん?」

『そういうもんですか』

「そういうもんなの」

 

 あー、男心、とセラフが納得した所でセットアップ。するとクロノが、

 

「準備はいいか?」

「もちろん。いつでもオッケー」

 

 じゃあ、

 

「試験開始だ!」

 

 

 ~そういえばクロノと戦うのは初めてだわ~

 

 

 開始一発目はシューターによる撃ち合いになった。

 次に直射型砲撃のぶっ放しで、そこから再度、誘導制御型の射撃戦へと展開していく。ここまでは先の二人と同じ流れだ。

 なのはは、ここから更に収束砲撃へと発展させていった。

 フェイトは、クロノの一瞬の隙を突いて背後からの奇襲へと繋げた。

 ならば俺はどうするか。

 ……二人の間を取って遠距離やりながらの近接戦闘……!

 無茶苦茶だな! と思うが、これは試験だ。先の二人と同じより違う事をやった方が試験管の印象に残るというもの。エイミィさんから聞いた事前説明によると〝宝具〟の使用は禁止でなく、むしろバンバン使っていいと言われたので、

 ……一丁派手にやりますか!

 クロノ相手に遠慮はしない。向うが本気で来るというのならこちらも相応の迎撃をするまでだ。

 イメージするのはかつての時代、自らを第六天魔王と名乗った一人の戦国大名。その姿を思い浮かべながら彼女の〝宝具〟を発現する。

 魔力による形成。周囲に展開するのは三千丁の火縄銃だ。それら全てをクロノへと向け、

 

「見開いて驚きなよクロノ! ――これが魔王の三千世界(さんだんうち)だ……ッ!」

「メチャクチャだな! 三段と言いながら一斉に撃っては意味がないだろう!?」

 

 クロノが、集中砲火の中を飛んで来る。自分への致命傷となりえる一撃をシールドで防ぎ、回避しながらデバイスを振って、

 

「第一に、それは質量兵器じゃないのか!? 次元世界では使用は禁止されているんだぞ! だというのに君って奴は試験の最中に……!」

「はっはっはっ。――そんなマジ顔で殴り掛かって来ないでよね!? これ〝宝具〟! 魔力で現界してるから一応魔法扱いになるんですよ!? ね! セラフさん!」

『まあ広義で見ればそうなりますね』

 

 ともあれ試験官に先の二人より強い印象を残したに違いない。こっちの様子を見ているだろうリンディさんやらレティさん、他諸々もきっと驚いている筈なのでよしとしよう。した。

 今、俺は火縄の銃床で防御を行っており、打ち込まれるクロノの一撃を弾いていく。そして隙を見つけては射撃し、その都度火縄を持ち替える。

 何度目かの攻防をこなしながらステップを踏む。

 身体を落としてクロノの下へと入り込み、指で火縄を回して、

 

「……とっ!」

 

 打撃した。

 ガードに対してだが、床尾での一撃が入った。そのまま魔力で強化した膂力で一気に振り抜く。しかし、

 

「っ、バインドか……!」

 

 こちらの右腕を、光が捕らえた。

 青の鎖。腕の動きを制限するように現れたそれは、一瞬の拘束と、直後に硝子の砕けるような音とともに散った。

 ……今回はちゃんと発動したな!

 〈破却宣言(キャッサー・デ・ロジェスティラ)〉。またの名を〈魔術万能攻略書(ルナ・ブレイクマニュアル)〉。

 ただ保有するだけで一定以下のあらゆる魔術を打ち破る事のできる自動発動型の宝具だ。

 ON/OFF可能な自動発動型宝具の中で最も汎用性があるんじゃないかと思うこれは、ちゃんと魔法相手にも発動してくれて安心する。だが、

 

「俺を捕まえたかったらユーノレベルのバインド使いなよ……!」

『ええ、その通り。最近なのはさんたちがユーノさんのバインド講座を受けているので、クロノさんも参加してみてはどうでしょうか……!』

 

 何それ怖い。というかいつの間にそんな教室を持ったの、ユーノ。俺も参加したいなあ。

 

「ああ、それも一つの手だ」

 

 だけど、とクロノがS2Uを押し込んできた。すると先が俺の肩に接触し、

 

「今はこの一瞬で十分だ……!」

 

 ……しまった!

 

「ブレイクインパルスッ!」

 

 直撃した。

 

 

 ~――――~

 

 

 ……超痛え――!

 と、肩から上半身にかけて衝撃が抜けて行くのを感じながら、次のクロノの動きを見た。

 S2Uを上に、詠唱とともに振り下ろす動きだ。そして現れた青の鎖が再度こちらを捕らえようと飛んで来る。

 

「二度ネタかクロノ……!」

「ああ、そうだ! 例え一瞬でも君の動きを止められるのなら、使う価値はある! そして――」

 

 続いたのは言葉でなく、光だった。そして再度、硝子の砕けるような音が鳴るのを聞いて、

 ……バインドは囮か!

 クロノの手元、こちらに向けられたS2Uの先に青の色があった。

 魔力の収束だ。

 バインドからの収束砲撃。この流れはつい最近見た覚えがある。それは、

 

「なのはとの試験の応用だよ……!」

『にゃっ、わたしの所為で秋介くんが――』

『だ、大丈夫! どう見てもさっきの砲撃より威力低いからアレ! 秋介なら平気だよ!』

 

 ちょっと二人の幻聴そういう問題じゃないからね?

 ともあれその光を前に、対してこちらが取る行動は、

 

「呪層・黒天洞……!」

 

 神鏡を、前面に現界させる事で防御とした。放たれた砲撃を受け、それを流しながら、

 

『あの鏡はまさか……!』

『知っているのかい、ユーノ!?』

『ああ! あれは宝具の一つだ! 神鏡〈水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこうあまてらすやのしずいし)〉、能力としては特殊結界による無限の魔力供給と、魂や生命力の活性化。

 つまり、――その通り、主に打撃武器や盾として使用されるそうだ……!』

『つまり、と、その通り、が繋がってないよ……!? というか、ソレ鏡の使い方じゃないだろ!?』

 

 俺としてはアルフの幻聴に激しく同意だけど実際にその使い方をしているのでノーコメント。

 いやあ、便利だな黒天洞! これで若干の魔力回復まで出来るんだからこの宝具は非の打ち所がない。

 

『あっ』

「アリシアやかましい」

『私だけ幻聴扱いじゃないの酷くない!? まだ何も言ってないよう!』

 

 あーはいはい、幻聴幻聴。

 

「これで終わりじゃないんだろう、秋介!?」

「当然……!」

 

 そんな期待されたら応えずにはいられないね! とテンション上がった自分にちょっと反省だが、まあ、やり過ぎないように気を付けよう。

 いくら無人世界といってもここは管理局保有の世界だ。必要以上に傷つけたりしないよう、細心の注意を払いながら、

 

「痺れる覚悟はオッケー?」

 

 右手を振り、魔力を雷霆(らいてい)へと変換していく。やがてそれは円環を成し、大気中の魔力素を取り込んで更に増大へと進んだ。

 そして、かつて一人の科学者が神々より奪った権能を今ここに再臨させる。

 準備は出来た。後は放つだけ。

 ……非殺傷設定はちゃんと機能してるな!

 最終確認終了。これで安心してぶち込める。ならば、

 

「フェイト以上の雷撃を約束しよう……! さあ、ご覧あれ! ――人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)――」

 

 放つなり、クロノが動きを作った。

 右手の平を前に。重ねてシールドを展開した。それを一瞬の時間稼ぎとして、

 

「ぐ」

 

 という声を上げ、クロノが左に吹っ飛んだ。

 ……うわ。やるねえ!

 光が見えた。青の色。散る魔力光を目で追えば、それは右の方へと広がっていく。

 何をしたのか。それは、

 

『収束させた魔力を、回避の為に自分へと撃ち込んだんですね……!?』

 

 と、セラフが言った直後。不意に、こちらの周囲に青の色が光った。

 いつの間に、と思うが、すぐに答えが出た。向うでは既に、クロノがデバイスを構え直しているが、

 ……あの時の詠唱か……!

 加えて、

 ……フェイトとの試験でもやってたなあ!

 あの試験では死角からの奇襲に備えての設置だったようで、ものの見事にフェイトはそれに引っ掛かっていた。その様子をモニター越しに見ていて、

 

「そういえばなのはとの試験じゃ使ってなかったよね、クロノ?」

「いや、仕掛けてはいたんだが彼女の砲撃にまとめて吹き飛ばされた」

「……あー」

 

 試験前の休憩時間に驚愕的事実が判明したが、まあ、よくある。

 ともあれバインドをカモフラージュとして、その下で設置型の誘爆フォトンスフィアを仕掛けられるとはしてやられた。

 

「絶対後で罠の看破が甘いとかツッコまれる……!」

『言ってる場合ですか、爆発しますよ』

「――あっ。やべ」

 

 思いっきり吹っ飛ばされた。

 

 

 ~この威力、加減してないな!?~

 

 

 想定以上の爆発にちょいと内心驚きながらも、次の動きへと移った。

 転がる身を立て直し、新たに詠唱を行うクロノへと踏み込めば、

 

「……!」

 

 行った。

 まず一歩目で、飛んで来るシューターを眼前で回避する。

 そして二歩目で更に距離を縮め、魔力を成形し一刀を作成。刃を上に、それを肩の高さに構え、

 

「――――」

 

 三歩。それでようやくクロノへ至った。

 ……まだまだだな!

 理想は一歩での到達だ。『縮地』は極めればワープ的な次元跳躍も可能らしいが、ものは試しとも言うし、いつかはそれで次元世界を渡ってみるのもいいかもしれない。あ、でもそれだと無断渡航やらなんやらで管理局に追われちゃう? なら、

 ……正式な許可か、相応の理由があれば行ける……!

 その為にもまずは嘱託魔導師になる事が前提だ。局からの仕事を受ければその機会も増えるだろうし、多少の事ならクロノに頼めば許可は貰えるだろう。多分。

 ゆえにちょっとした目的の為に、ひいてはこれから先の未来の為に必要になる〝嘱託魔導師〟という肩書を得るべく構えた一刀を振るう。

 

「……は」

 

 『縮地』と合わせて行う攻撃といったらやっぱりアレだね。宝具じゃないし、技術的なモノであるから再現は出来ないけど、雰囲気だけでも味わいたいと思うのは男心だ。

 ……三段といっておきながら高速で一突きしても、前科があるから問題ないよね……!

 その内、スキルの一つとして習得できないかな、と思うが、その辺りどうなんだろう。今度セラフに聞いてみようか、多分だけど知っている気がするし。ともあれ、

 

「無明――」

 

 と、突き込もうとした時だ。

 空から女の人の声が響いた。

 

『そこまで! 試験はここまでとし、双方、戦闘を停止なさい!』

 

 こちらが突き込んだ一刀は、クロノの首横を通過している。対して向うが振るったデバイスは、こちらの胸元に突き付けられていて、

 

「……お」

 

 見れば俺の首元、青の光を放つ刃があった。

 更に視線を動かせば同様の刃が俺とクロノを囲むように展開されている。これは、

 

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト。どうだ? 君が以前、フェイトとの模擬戦で披露したという刀剣の複数展開、それ真似てみた」

『んー、八十点といったところでしょうか。マスターのアレは宝具ですし比較すれば威力は劣っていますが、数で押すというならこれで十分かと。私としてはもう二割ほど数を増やす事をおススメしますね。より派手になりますよ……!』

「いや、クロノは別に派手さを求めてないでしょう」

「まさかセラフの採点が入るとは思わなかったな……」

 

 そう言って、気を抜いたクロノがバリアジャケットを解除した。それを見て俺も同じく解除するが、

 ……ちょっとやり過ぎちゃったかなあ……。

 辺りを見れば、所々の地面が抉れている。中にはクレーターのようになっているものもあった。

 頭上からは何やら騒がしくする声が聞こえてくる。

 モニターの中、笑顔のリンディさんの隣でレティさんが口を横に開いているけど何かあったんだろうか。エイミィさんの引き攣った声も聞こえるし、なのはたちに関して言えば、

 

『……おおう流石』

『ビリビリだね……』

『悔しいなあ』

『アリシアはともかく、なのはとフェイトは憧れても真似するのは止めてね?』

『というか何かあったのかい?』

 

 わからん。アルフはいつも通りで安心するね。

 

「さて、それじゃあそろそろ戻ろうか。試験の結果は追って連絡するが、まあ、君も含め全員大丈夫だろう」

 

 しかし、とクロノが苦笑を作った。

 

「レティ提督からストップが掛かるとは……。少しやり過ぎたな」

「本気で来たクロノが悪い」

「相応の反撃をしたのは君じゃないか。君だって最後の方、結構本気だっただろ?」

「……まあ」

 

 それを言われると返す言葉がない。

 

『どっちもどっちという事ですね』

「そういう事だ。……じゃあ、戻るぞ」

「あいよー」

 

 

 ~本局へ転移中~

 

 

 結論から言って戻ったらレティさんに二人揃って説教された。

 どうも〈人類神話・雷電降臨〉を撃った直後に一瞬だけど次元震が観測されちゃったらしい。クロノは焚きつけた原因として、俺は威力を鑑みずぶっ放した事を主に怒られたが、

 

「あれでもかなり威力落として撃ったんだけどなあ。本気でぶっ放したら時空断裂とか起こしかねないし」

 

 提督二人と執務官が顔を手で覆って背を向けた。

 ともあれなんとかこれで全員が試験を終了し、嘱託魔導師としての認定を受けた。そして後日、認定書を受け取る際の面接ではリンディさんに、

 

「惜しいわねえ。……もういっそこのまま正式に入局してくれないかしら。実習先にアースラを選んでもらえれば私たちもサポートできるし、クロノと合わせてAAAクラスが四人。うーん、魅力的だわー。

 ――どう? ちょっと入っていかない?」

「はいはい、将来有望な子が欲しいのは十二分に分かるけど無理強いはダメよー。そんな飲みに誘うような感じで勧誘しないの。ほら、まだ仕事残ってるんでしょう? 速く戻らないとエイミィに怒られるわよ」

 

 そう言って、レティさんが連行して行った。するとマリーさんがやって来て、

 

「ただいま戻りましたー。いやあ、やっとシミュレーションルームの復旧と改修が終わりましたぁ。って、あれ? レティ提督はどこに? リンディ提督を仕事に連行して行った? あー、じゃあ報告は後回しですねー。

 おお? 秋介くん、何ですかこれ。え、差し入れの翠屋のシュークリームですか!? あ、ありがとうございます! いやはや、寝る間も惜しんで頑張った甲斐がありました……!

 そうだ皆さん、よかったらリニューアルしたシミュレーションルーム使ってみませんか? 以前と比べても頑丈になっていますから!」

 

 結果としてマリーさんを含めたメンテナンススタッフが再度徹夜するはめになったが、何はともあれ無事に俺たち三人はこの日から時空管理局認定魔導師として、正式に嘱託職員として非常勤勤務を開始した。




 ようやっと次で念願のA’s編に入れそう。
 ここまで長かった。そしてまた長くなりそうなそんな予感がひしひしと……。

 あ、次回はA’s編のプロローグ的な話になります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。