※ご指摘を頂いたので詠唱の一部を修正しました。
作者のうっかりで一言抜けてすいません。
「ついにやって参りました! いつもより起きる時間が早くてテンションが高い秋介さんと!」
『そのマスターの愛機で次元世界一のデバイス、ムーンセル・オートマトンこと私セラフがお送りする!』
聖剣をぶっぱなした次の日の早朝、五時三十分。うちの地下室でアリシアの眠るカプセルの前に立ち、
「『――アリシア・テスタロッサ復活のお時間です!』」
イエーイ、とフワフワ浮くセラフとハイタッチしてバリアジャケット姿に変身する。
『イエーイ! ついにお姉ちゃんの復活だよー!』
待っててね、フェイト! と俺の横にテンション高めなアリシア、
「朝早くから元気ね、坊やは」
「すいません、プレシア。こんな時間に起こしてしまって……」
少し離れた所で腰に手を当てて俺を見るプレシアさんと、アリシアの服を抱えるリニスが居る。
「良いのよ、別に。私としてはアリシアと早く会えるのだから」
「それはそうですが、……もし体が辛くなったらすぐに言ってくださいよ? いくら若返って病が消えたとは言え、元は病人だったんですからね!」
「へ、平気よ! さっき改めてセラフに見てもらって分かったけど私、昔のアリシアが生きてた頃くらいに若返ったんだから!」
「それでもです!」
「うっ……」
分かったわよ……、とリニスの一喝にプレシアさんがシュンとした。
二人のそんな会話を聞いて思う。
……まったく、なのはとフェイトのお陰でこんな時間に起きる事になっちゃったじゃないの。
昨日の夜九時くらいだったかな? 今日の準備を終わらせてお風呂に入ろうとしたら、なのはから電話が、フェイトから通信が来た。
内容は二人が戦う場所と時間が決まったという話だった。
場所は海鳴臨海公園の沖。そこに結界を張って戦闘訓練用の建物を置いて疑似的な戦場を作るらしい。
……でも普通、朝の六時に勝負開始とか設定しないよね……。
ラジオ体操じゃないんだからもっとゆっくりで良いのに。十時くらいとかさ。
それならお昼には終わるだろうから、皆でお昼でも食べながら色々お話しようぜ! 的な感じの流れに出来たのに……。
とまあそんな事は横に置いといて、
「じゃあ早速、なのはとフェイトの戦いが始まる前に、アリシアの復活を終わらせちゃおうかな!」
『『おー!』』
まずはアリシアの体をカプセルから出そう。
そう思ってカプセルに振り向こうとしたら、
「――ちょ、ちょっと待ちなさい、坊や!」
プレシアさんに止められた。
「どしたの、プレシアさん?」
「まだフェイトとアルフが来てないじゃない。それなのに坊やは始める気なの!?」
「そうですよ、秋介! あの子たちも揃わないと意味が無いじゃないですか!」
「いやいやいや。むしろあの二人が知らない事に意味がるんだって。お姉ちゃんのサプライズ計画的に」
言い出しっぺは俺だけどね!
「お姉ちゃんって、一体誰の事ですか……」
「まさか坊や、女の子だったの!?」
『ええっ!? マスターは女の子だったんですか!?』
「待って、何でそうなるの!?」
というかセラフさんまで何言ってるの!?
『エエッ!? シュウスケッテオンナノコダッタノ!?』
「やかましい」
『あうっ!』
凄い棒読みだったからアリシアの頭に手刀を落とす。
まったく。乗るならもっと上手に言いなさいよ。
『うぅ、セラフみたいにうまく言えなかった……。あ、でも今ので手刀落とされたから残り一発だね!』
次は避けるぞー! とアリシアが明後日の方向に向かって叫んだ。
……なんだ、覚えてたのか。
忘れてたら良かったのに。仕方ない、アリシアの期待に応えてもう一発落として……。
『マスター。手刀を構えるより先に、プレシアさんとリニスさんに事情を説明しましょうよ』
「え……?」
セラフに言われ二人を見ると、
「秋介……?」
「坊や、……寝ぼけてるのかしら?」
不思議そうな顔で俺を見ていた。
……むう、最後の最後でしくじったか。
せっかく今日まで黙ってたのに……。
「くっ、秋介さん一日の不覚……!」
『短いですね』
そりゃね、一生なんて大きく言えないって。人生、何処で何があるか分からんからね。
『……ふふ』
『何よ』
『いえ。マスターが言うと説得力があるな、と思いまして』
『…………』
まあそんな事より、
「プレシアさんにリニス、二人にちょっとサプライズがあります!」
「サプライズ、ですか……」
「一体何かしら?」
「すぐに分かるから。……セラフさん、アレよろしく!」
『ええ、勿論です!』
そう言ってセラフが二人の足元に魔法陣を展開した。
『ねえ、秋介。アレってなに?』
「見えないモノを見えるようにする魔法」
前にアリシアを初めて見た日、セラフが言ってたからね。『私の魔法でも見えるように出来ますけど』って。
……復活させてから実は幽霊として今まで傍に居たんです! って驚かすつもりだったのになー。
まあ別に良いんだけどね。遅かれ早かれ二人を驚かす事には違いないから。
「そういう事だから、今から二人になんて声をかけるか考えときなよ。……あ、ごめん。そんな時間無いっぽい」
ほら、プレシアさん見てみ? とアリシアを促す。
『……?』
アリシアがプレシアさんを見た瞬間、
「アリシアぁ――!」
とプレシアさんがもの凄い勢いで飛んで来た。
がしかし、セラフの魔法は単に〝見えるようにする〟だけだから、
「『あっ』」
そのままの勢いでアリシアの体を通り抜け、
「あぅう!?」
ゴン、と鈍い音を立てて後ろの、アリシアの体が入ったカプセルに激突した。
……うん。幽霊だから仕方ないよね!
でも今の痛そう……。顔から突っ込んだけど大丈夫かな?
『ママ、大丈夫……?』
「大丈夫ですか、プレシア……?」
心配したリニスが駆け寄った。
「だ、大丈夫よ……。一瞬意識が飛んだけど、特に問題ないわ」
フラフラとぶつけて赤くなったおでこをさすりながらプレシアさんが起き上がった。
『えっと、……もしかしてママ、私の事見えてる?』
「アリシア……。ええ、見えてるし、声も聞こえるわ。残念ながら触る事は出来ないけど」
久しぶりね、とプレシアさんが涙ぐんだ。
「これは一体どういう事ですか、秋介?」
「ん? どうって、セラフに頼んでアリシアの幽霊を見えるようにして貰っただけだよ?」
「幽霊……」
リニスがそう呟いて母娘を見た。
『あのね、ママ。フェイトとアルフに黙って始めようとしたのはね、私が二人にサプライズしたかったからなんだよ?』
「あら、そうだったの……。それなら坊やは責められないわね」
『それでね? ママにちょっと協力して欲しいんだけど……』
「何かしら……?」
アリシアとプレシアさんが、何やら相談をしていた。
「秋介は、……いつから知っていたのですか?」
「フェイトをうちに連れて来た次の日」
しかも朝起きたら俺の上で寝てたのよ? 寝言言いながら。
「……なるほど。お姉ちゃんと言ったのも納得がいきます。だからフェイトたちとお弁当を作った日、言い直したんですね」
「言い直した?」
はて、俺ってなにを言い直したっけ?
「鍋を見て、フェイトとアルフが驚いた時ですよ。お化けじゃなく幽霊だ、と」
「……ああー」
フェイトが真っ青になった時か。
……うーん、もう一回見たくなってきた。
セラフが確か写真とか映像を撮ってたはずだから、夜にでもみんなで一緒に見返すのも良いかも……。
「って、そんな事考えてる暇ないよね。セラフ、今何時?」
『五時四十五分ですね』
もうそんな時間なのか。なら急いだ方が良いね。
「さてさてアリシアにプレシアさん、感動の再会の所悪いけどそろそろ良いかな。続きはフェイトたちの戦いが終わったあとって事で」
遅れたりしてクロノにとやかく言われたくないからね。
「……ええ、ごめんなさい。アリシア、その話はまたあとでしましょう」
プレシアさんがリニスと一緒に少し離れた場所に移動した。
『うん、……よし。――秋介、私はいつでも良いよ!』
ペチンッ、とアリシアは両手で軽く自分のほっぺを叩いて気合を入れた。
「あいよ。じゃあ早速、アリシアの体をカプセルから出そうかな……」
でもこれ、どうやって開けるんだろう。……分からんね。仕方ない……。
「……プレシアさん。このカプセル壊して良い?」
「構わないけど、――アリシアの体を傷つけたら許さないわよ?」
バチバチッ、と紫の雷を鳴らしたプレシアさんに睨まれた。
「…………はい」
力加減には細心の注意を払おう、とそう思った。
……ついでだし、アレで壊そう。
カプセルから少し離れ、右手に魔力を集める。
『それって昨日の鏡だよね。どうするの?』
「こうするのさ、――そりゃっ!」
『投げた!?』
現れた鏡を掴み、フリスビーよろしく思いっきりカプセルに向かって飛ばす。
真っ直ぐにと飛ぶ鏡が激突し、カプセルの表面に亀裂が走ったと思った瞬間、砕けた。
「――よっし! やったね!」
『お見事です、マスター。綺麗に中心に当てましたね、カプセルの上半分が良い感じで砕けました!』
『……あの鏡ってあんな使い方して良いの?』
「気にしない、気にしない。戦いで相手を殴ったりするよりはマシだって」
『え、……殴るの? あの鏡で?』
「殴ります。あの鏡で」
その気になれば魔法だって防げちゃう凄い鏡です。
「あの鏡って確か……」
「ええ、昨日私が若返ったのを確認する時に使った鏡ね……」
「「…………」」
うん。二人の視線が刺さるから急いでアリシアの体を移動させよう。
砕けたカプセルに近づき、中からアリシアの体を抱え上げる。
……軽いな。
ま、当然か。長い間カプセルの中に居たからね。復活してもすぐには歩けないかも……。
「とりあえず此処に寝かせて、……っと」
砕けたカプセルの前、破片が転がってない所にアリシアの体を降ろす。
「それじゃあ始めるから、アリシアは体の傍に立って」
『ん、分かった!』
アリシアが自分の体の横に立つのを確認して、右手をかざす。
砕けたカプセルの中で液体にプカプカ浮いていた鏡が浮き上がり、俺の周りを回転しながら、円を描いて回りだした。
……さーて、ちょっとカッコつけてやろうかな!
思い鏡に魔力を込める。
すると地下室の様子は一変し、紫の薄い靄の中、幾つもの鳥居が揺らめいていた。
次に魔力で三枚のお札を生み出し、右手の人差し指と中指で挟むようにして持つ。
「――ここは我が国、神の国、水は潤い、実り豊かな中津国」
挟んだお札を前にばら撒くようにして離す。
離されたお札は床に落ちず、
「――国がうつほに水注ぎ、高間巡り、黄泉巡り」
詠唱に合わせて数を増やしていく。
増えたお札が俺を中心に回りだす。
「――巡り巡りて水天日光」
それと同時に鏡が頭上高くへと移動し、周りを回るお札から鏡へと光が伸びた。
「――我が照らす。豊葦原瑞穂国」
光が集まる鏡めがけて軽く飛び、両手で持って俺が立っていた所へと落とす。
鏡が落ちた所をめがけ、床に光が集まるような模様が浮かび上がった。
「――八尋の輪に輪をかけて、これぞ九重、天照らす……!」
ゆっくりと模様の中心へ着地し、
「――
真名を告げると同時に俺を中心に光が高く渦巻き、辺り一面を光で包んだ。
光が晴れアリシアの方を見ると、――寝かされたアリシアの体だけがあった。
「アリシアが、居な、い……?」
そして、プレシアさんのそんな言葉が響いた。
……やっべ、もしかして失敗した?
あれか? ぶっつけ本番でやったのがダメだ、……ん? 何か今、指が動いたような……。
眠るアリシアの体に近づき、
「そいや!」
「なんで!?」
頭に手刀を落とした瞬間、アリシアが飛び起きた。
……やるね、アリシア。
さっき叫んでた通り避けられたじゃない。
「復活してすぐにそれって酷いよ、秋介!」
「復活してすぐに起きない方が酷いと思うね、アリシア」
だってプレシアさん、一瞬だったけど俺が失敗したと思って顔が青ざめてましたよ?
「う、それはそうだけど、……ってあれ? 何か体が重くなってきた……」
何でー……、とアリシアがその場にヘナヘナと座り込んだ。
「そりゃ当り前だって。その体はずっとカプセルの中で液体に浸かってたんだから」
しかも一回死んでるからね、当然です。
「うぅ……。眠くもなってきたー。これからフェイトとアルフを驚かしに行くのにー……」
「そんなアリシアにコレを差し上げよう。秋介さんとセラフの特製回復薬だ……!」
そう言ってズボンのポケットから一つの小瓶を取り出し、アリシアに渡す。
「あ、ママが飲んだやつと同じだ」
「色と入れ物はね。コレを飲んで少しすればちゃんと歩けるようになる」
「ホント!?」
これでフェイトとアルフを驚かせる……! とアリシアは一気に回復薬を飲んだ。
「――ぷはぁ、まさかのリンゴ味!」
「そこが一番苦労しました……!」
飲みやすい方が良いだろうと思って頑張りました。寝るのが日付変わってからになったけどね!
「……ありがとう、秋介。――あっ」
「どうした、アリシ、――あぅぶ!?」
いきなり何かに突き飛ばされ、
「ガッ!?」
砕けたカプセルに頭から激突した。
「痛い……」
……コレ、意外と硬い……。
プレシアさんがさっき、一瞬意識が飛んだって言ってたけどそれも分かる気がする。
「だ、大丈夫ですか、秋介……!」
「何とか……」
駆け寄って来たリニスの手を借りて体を起こす。
さっきまで俺が立っていた所を見ると、
「アリシア、アリシア! 本当に、本当に良かった……!」
「うぅ、ママ苦しい~……」
プレシアさんがアリシアを抱きしめていた。
「――はっ、リニス! 急いでアリシアの服を持って来て! このままだと風邪を引いてしまうわ……!」
「落ち着いてください、プレシア! そう言うのでしたらまずアリシアを離してください!」
さっきから苦しんでます! とリニスが二人の所へと駆けて行った。
そんな光景を見て軽く伸びをする。
「んー、……ふう。とりあえず、こっちはこんな感じで良いかな」
あとはフェイトとアルフ、……ああ、しまった。
「今何時だ……」
『五時五十七分です。なのはさんとフェイトさん、お二人の戦いが始まるまで残り三分ですね』
ポフッ、とセラフが頭に乗っかった。
「あらヤダ、かなりギリギリじゃないですか……」
〈水天日光天照八野鎮石〉を解除して立ち上がり、バリアジャケットに付いたカプセルの破片を払う。
……別に壊さなくてもプレシアさんに頼めばよかった。
そうすればこんなに破片が散らばったり、中の液体で床が濡れなかったのに……。
カプセルの片づけとかは帰ってからにしよう、と決めてアリシアたちに近づき声をかける。
「おーい、悪いけど服着るの急いでくれる? もう六時になるからさ」
「分かった~、あとズボン履くだけだからちょっと待って、……んしょ、っと」
幽霊の時と同じく髪をツインテールに結い、青いワンピースを着たアリシアが立って灰色のズボンを履いた。
「よし。お姉ちゃんの準備完了だよ!」
「はいはい。それでプレシアさん、ちょっと辛いかもだけどアリシアを抱っこしてくれる?」
「ええ、それくらいならお安い御用だけど、……何故かしら?」
「このマントを着て姿を隠してもらおうかと」
〈
「それは確か、周りから見えなくなる宝具ですよね」
「そうよー」
これからフェイトたちの戦いを見に行くけど、リニスはともかく、プレシアさんとアリシアをそのまま連れてく訳にはいかないからね。
「なるほど。――さあいらっしゃい、アリシア!」
「ママ――ッ!」
「分かりましたから、遊んでないで早くしてください」
「「はい……」」
プレシアさんがアリシアを抱っこし、リニスが〈顔の無い王〉を二人に被せた。
「おお、消えた」
そして、
「――首だけアリシアちゃん!」
「セラフさん、転移よろしく~」
「無視された!?」
ニュッ、と現れたアリシアの顔を無視して、
「ちょっと坊や、その対応は酷いわよ!?」
「プレシアまで顔だけ出さないでください!」
「あう……」
さらにフードを取って現れたプレシアさんの顔にリニスが再びフードを被せた。
「まったく……。ではセラフ、転移の方をお願いします」
『はいはい、お任せを~』
リニスの言葉にセラフが答えると同時に魔法陣が展開し、視界が光に包まれた。
~転移中……~
「秋介さん、登・場!」
転移の光が晴れると同時にビシッ、とどこぞの仮面ヒーロー一号の変身ポーズをとる。
「「…………」」
あ、ユーノとアルフの視線が痛い……。
「……おはよ、お二人さん。待った?」
『無かった事にしましたね、マスター』
「ええ、無かったことにしましたね」
うるせえやい。
『――そうだ! あとであのポーズ一緒にやろうよ、ママ!』
『ええっ!? 本気なの、アリシア!?』
流石に恥ずかしいわ……、プレシアさんの呟きが聞こえた。
「……?」
アルフが俺の後ろを見た。
「どうした、アルフ?」
「んー、気のせいかな? 何か今、プレシアの声が聞こえた気がするんだよ」
それに匂いも……、とアルフが首を傾げた。
『『――!?』』
後ろで二人が慌てて口を塞いだような気がする。
……しまった。アルフが狼だって忘れてた……。
野生の勘は恐ろしい、と実感してたら、
「それは私ですよ、アルフ。此処に来る前、プレシアに会って来ましたから。声の方は聞き間違いでしょう」
リニスが上手く誤魔化してくれた。
「……それもそうだね。様子はどうだった? プレシア、フェイトの前だと無理して元気なフリするからさ。ちゃんと寝てたかい?」
「いえ、寝てはいなかったですね。部屋の掃除や洗濯をしていましたから叱っておきました」
『ちょ、ちょっと!? その事は言わないって言ったじゃない!』
え、リニスが言った事、ホントの事なの?
『ママ……。ちゃんと寝てないとダメだよ?』
『プレシアさん……。病人がやったら怒られる事を見事にやってたのか』
『し、仕方ないでしょう!? フェイトとアルフがいつ帰って来ても良いよう綺麗にしておきたかったのよ!』
やっぱり。この反応からしてホントの事だったか……。
「あー、プレシアならそうだよね……」
「ええ。ですから今頃、大人しくフェイトの事を心配して見てると思いますよ?」
フフ、なんて笑ってるリニスとアルフは横に置いておいて、
「なあユーノ、肝心のなのはとフェイトはどこよ?」
転移して来てから二人の姿が見えないんだけど。
「あの二人だったらもうやる気満々で位置についてるよ」
あそこに居るよ、とユーノが指さした先、海にそびえ立つビル群の中に向き合うなのはとフェイトが見えた。
……よく見たら俺たちが居るのもビルの屋上だったのね。
気付かなかった。それに……。
「二人が居る所から離れてるけど、巻き込まれたりしない?」
「流れ弾が飛んで来たら僕が防ぐよ。並大抵のモノだったら防ぐ自身はある」
『お二人の全力が並大抵のモノだったら良いですね』
「「…………」」
セラフさん、何故にそげん事言うと?
「……ユーノ。もし何かあったら全部クロノの所為にしよう」
『だったらそこじゃなくて、もっと離れた所から見れば良いだろう』
俺たちの頭上に大型の空間モニターが現れ、そこにはクロノが映っていた。
「何よ、自分だけ安全な所から高みの見物? それとも遅刻かしら?」
『戦闘開始時刻ギリギリにやって来た君に言われたくない』
「それは仕方ないって。俺にも色々やる事があったんだから」
眠り姫を起こしたりとかね! などと三人で話してたら、
『おはよう、秋介くん!』
『おはよう、秋介』
二つのモニターが現れた。
「おー、なのはにフェイト、おはよー」
朝から元気なー。秋介さんは徹夜からの眠り姫を起こす作業で既にお疲れですよ。
「二人共調子はどう?」
『バッチリ、だよ!』
『私も。……あ、昨日リニスが持って来てくれたうどん、美味しかったよ』
『え? それって秋介くんが作ったやつ?』
『うん』
『む~、フェイトちゃんだけずるい……』
私も食べたかったな、となのはがシュンとした。
……この二人、緊張感無いなー。
今から本気の勝負しようってのに、なんて仲が良い雰囲気何でしょうね。
「じゃあ全部終わったらうちにごはん食べに来れば良いよ」
眠り姫の要望通りシチューを昨日から仕込んでるからね。しかも多めに。だから数人増えても大丈夫よ。
「だから二人共、――全力で頑張りなよ? 俺はどっちも応援してるから」
『うん! じゃあ始めようか、フェイトちゃん!』
『負けないよ、絶対に』
なのはとフェイト、二人の魔法少女が距離を取り、
『わたしはフェイトちゃんとお話がしたいから』
『Standby ready.』
なのははレイジングハートを構え、
『私は母さんの願いを叶えてあげたいから』
『Get set.』
フェイトはバルディッシュを構え、
『わたしとフェイトちゃんの――』
『私と貴方の――』
それぞれが魔法陣を展開し、
『『――ジュエルシードを賭けた最初で最後の、本気の勝負!!』』
声を上げた直後、二人が激突した。
あと二話で無印編が終わる予定。