転生少年と月の目モドキ   作:琴介

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 英霊を出さないんですか? と質問を頂いたので、此処でお答えします。

 ……特に考えて無かった。
 作者としては登場しても良いと思う。なんらかのカタチで……。
 もし登場するとしても本編とは関係ない所になるかなぁ、って感じですね。

 それでは今回、あの聖剣をぶっぱなすよう!


第十五話:見送ってからの先回りは驚かれる

「マジで……?」

 

 合体して大きくなった水柱の封印を俺に丸投げしたよね、この猫耳尻尾のお姉さんと執務官は。

 

「酷い、酷いわ! いくら何でも俺一人にアレを押し付けるなんて酷過ぎる。うぅ……!」

『マスター、口元笑ってるのが丸見えです。泣いたフリをするならもっとこう、――貴方たちは何て事を、……それでも人間ですかッ! 的な感じで言わないと』

「あ、それだと私は使い魔なのでカウントされませんね」

「くそうっ! リニスが乗って来るとは思わなかった上に、セラフの演技力が予想以上……!」

 

 ガクッ、とその場に項垂れる。

 

「空中で器用な事をするな、君は。……ついでに言うと僕は人間だが、カウントはしないでくれ」

 

 まさかのクロノ君まで乗って来た。

 

「いや別に、今の冗談だから真に受けなくて良いよ……?」

 

 そんな真面目な顔で言われると何かやりきれない。もっと楽しく行こうよ。

 ほらご覧? 空から海水が降って来たよ。何で俺たち空に浮いてるのにその上から海水が降って来るんだろうね、ははっ!

 

「――あ、やっべ」

 

 さっきと比べて小ぶりの海水弾が雨のように降って来た。

 ……今日は良く降られる日だなあ。

 さっきはデカいのが降って来て今は小さいの。この調子なら今度は槍でも降ってきそうだね!

 

『あわぁああああ――ッ!?』

『――アリシア、耳元で叫ばないで。キーンとするじゃない』

『そんな事言ってる場合じゃないよ!?』

 

 はいはい、分かってますよー。

 

「セラフ、全部撃ち落とせるよね?」

『勿論です、マスター』

 

 セラフの言葉と共に、俺たちの頭上に三枚の大型魔法陣が展開した。

 

「シューター、Go!」

『shoot――ッ!』

 

 俺の合図と同時に三枚の魔法陣から、薄い青みを含んだ白――月白色の魔力光が勢いよく伸び降って来る海水弾を迎撃した。

 

「うーん、冷たい。しかもしょっぱいわー」

 

 迎撃された海水弾が本当に雨になって降って来た。

 

「呑気な事を言ってる暇はないですよ、秋介。見てください、異相体が動きました!」

 

 リニスに促された先、水柱が何やら揺れているのが見えた。

 

「だったらまた攻撃される前に封印しよう。……なのはとフェイトたちは此処で――」

「待たないよ。わたしも、秋介くんと一緒に行く」

「私も。秋介と一緒に行かせて」

「なら僕は彼女と一緒に援護に回るよ」

「ああ、まだバインドで縛るくらいの魔力は残ってる。任せな、秋介!」

 

 なのはとフェイト、ユーノとアルフが並んだ。

 ……これは一発でドカンと封印した方が良いかな。

 ただでさえ皆、魔力を消耗して疲れてるはず。あまり無茶はさせたくないね。

 

『アリシア』

『なに? 私はいつでも準備オッケーだよ!』

 

 グッ、と親指が立ったアリシアの左手が顔の横に見えた。

 

『また舌噛んでも知らんよ』

『……大丈夫。気を付けるから』

 

 グッ、と立っていたアリシアの親指がシュン、と下がった。

 

『それにフェイトがまだ頑張るみたいだからね。お姉ちゃんの私が後ろで見てるのは、……カッコ悪いでしょ?』

 

 人の背中に引っ付いてるのはカッコ悪くないんですかね、と思ったけど言わないことにしよう。

 

『……落ちないように気を付けるのよ』

『アイアイッサー!』

 

 よし! それじゃあ早速封印に――。

 

「秋介くん、あのお姉さんとはどんな関係なの?」

 

 行こうかと思ったら、なのはがいつの間にか前に居た。

 ……何でこのタイミングで聞くのかしらね、この子は……!

 話はあとって言ったのに……。

 

「あのお姉さんって、……よく一緒にお出掛けしてたお姉さんだよね?」

「……前も言ったけど、なのはも知ってるから。ちなみにアリサとすずかも知ってる」

「でも見た事ないお姉さんなの」

「あの姿はね。あのお姉さんが何て呼ばれてるか、良く聞いてみ?」

「……?」

 

 俺の促した先をなのはが見ると、

 

「私とそちらの執務官とで先行して周りの異相体を止めます。フェイトはなのはさんと一緒に他の異相体を引き付けてください」

「分かったよ、リニス。あの子と一緒に行けば良いんだよね。秋介の為に頑張るよ」

「大丈夫だって。私がしっかりと援護するからさ!」

「ではくれぐれも無理はしないでくださいね、二人共」

 

 フェイトとアルフを心配するリニスが居た。

 

「えっ」

「どうしたんだい、なのは……?」

 

 固まったなのはを見てユーノが声をかけたけど……。

 

「えぇえええ!?」

 

 それに気付かずなのはが驚きの声を上げた。

 

「どうしたんだ、一体……?」

「さ、さあ? 急になのはがあの人見て……」

「私、ですか……」

「リニス、あの子に何かしたの?」

「いえ、特に思い当たる節はありませんけど……」

「本当かい?」

 

 本当です、と返すリニスを見て思う。

 ……あ、リニスってば気付いてないのか。

 いつもは俺が気付かないでセラフかリニスに言われるのに、今回は俺が言う番だね!

 

「リニス、リニスー。普段なのはたちと会う自分を思い出して」

「――ああ、そう言う事ですか。そうですね。それなら、なのはさんの反応にも納得がいきますね」

 

 すいません、とリニスがなのはに軽く頭を下げた。

 

「私はリニス。フェイトの元家庭教師で、今は秋介の使い魔をしています。改めてよろしくお願いしますね」

「は、はい! 高町なのはです!」

 

 よろしくお願いします! となのはがレイジングハートを胸に抱えてお辞儀した。

 

『私はアリシア・テスタロッサ! フェイトのお姉ちゃんで幽霊やってるよ!』

『いや聞こえてな――』

「幽霊なの!?」

「『――えええっ!?』」

 

 アリシアまで驚くなよ。てか、

 ……ウソでしょ!? もしかしてアリシアの声が聞こえまして!?

 

「な、なのは? 急に幽霊なんて、どした……?」

「秋介くんの方からなにか、聞こえた気がしたの。気のせいかな」

 

 マジですか。

 

「き、気のせいだって。もし幽霊なんてモノが居たら、――水柱の群れの中に投げ込んで来るから任せろ!」

『しゅ、秋介!? ウソだよね……? 私をあんな所に投げないよね?』

『……多分』

『お姉ちゃんピンチ――ッ!』

 

 どうしよ~!? と背中で慌ててる気配のアリシアがちょっと面白い。見えないけど多分、駄々っ子よろしく両手を振ってると思う。だってジタバタする両足が見えるもん。

 

『大丈夫、アリシア。――三割くらいしか思ってないから』

『どっちが!? 三割って、本気と冗談のどっちの事!? ねえ!!』

 

 勿論、本気の方に決まってるよー。

 

『マスター。流石にアリシアさんを投げ込んでも、向うは反応しませんよ?』

 

 ……ちぇ。 

 

『何か今、残念がられた気がする……! はっ、わかった冗談の方だね! 残りの七割は本気だったね!?』

「――よーし。じゃあ早速、封印に行こうかな!」

『誤魔化さないでよ!?』

 

 大丈夫だって。流石に投げ込んだりしないから。

 

『はっはっは、……ちゃんと掴まっててよね!』

 

 そう言って揺らめく水柱の群れに向かって飛ぶ。

 

『あうっ』

 

 いきなり俺が動いた所為でアリシアが振り落とされそうになった。

 

『……とお。ふ、乗り切った……!』

 

 私の舌は無事だよ! とアリシアが言ってくるが今は無視しよう。

 

「「「「あっ」」」」

「秋介!?」

「急だな、君は……!」

 

 おお。流石だね、クロノ君。俺が急に動いても反応するなんて。

 

「君はどうやってアレを封印するつもりだ?」

「コレを使って封印するつもり」

 

 右手に光が集まり一振りの剣が現れ、それを握ってクロノ君に見せる。

 

「……そんな事が出来るような魔力は感じられないが、本当に大丈夫なのか? 僕にはただの剣にしか見えない」

「大丈夫だって。鞘付きでも、あの程度の水柱は簡単に吹っ飛ばせるから」

「……わかった。なら周りの異相体は僕に任せてくれ。君の邪魔はさせない」

 

 クロノ君が水柱の元へ先行し、それを見送ると、

 

「秋介! 急に飛び出さないでください!」

 

 リニスがなのはとフェイトたちを引き連れて来た。

 

「いやー、そろそろ封印しないと不味いかなーって」

『そですね。そろそろ封印しないとかなり不味い状況になりますね』

 

 え、ホントに?

 

『聞きたいですか?』

「遠慮します……」

 

 あのまま放っておいたらどうなってたのよ……。

 ……次元震起きてこの辺りもろとも無くなってたりして。

 はは、流石にそんな事は無いよねー……。

 チラッ、とセラフを見ると、

 

『――ふふ』

 

 淡く点滅していた。

 どうしよう。今の反応からして本当に不味い状況になってた可能性が……。

 セラフの事だから事前に教えてくれるだろうけど、そうなったら色々危ないね。

 ……次からはちゃんとしよう。

 危機的状況でふざけるのは良くない事だよね。うん。

 

「秋介くん?」

「どうかしたの?」

「いやね、ちょっと自分の行動に反省してただけ。それよりも、セラフ」

『はいはい。お任せを』

 

 セラフが言うとなのはとフェイト、

 

「これって……」

「秋介……」

「私もかい?」

「僕も良いのかな……」

 

 加えてアルフとユーノにセラフから月白色の光が伸び、その光が四人を包んだ。

 

「その、……大丈夫なのかな? なのはや彼女はともかく、僕たちにまで渡して」

「そうだよ、秋介。アンタの方こそ無茶してるんじゃないかい?」

「大丈夫。これくらいの魔力なら封印に支障は無いよ。それよりユーノ、俺の事は秋介で良いから」

 

 一応、前に自然公園で会ってるからね。

 

「分かった。じゃあ秋介、さっそくだけどどうやって封印するか聞かせてくれ」

 

 順応早くて助かるね。あとでクロノ君にも言おう。君って呼ばれても俺は卵じゃないからね。

 

『余裕ですね』

『ふ、……ちゃんと真面目にやるから大丈夫』

『ホントに?』

『本当に』

 

 ちょっとゆっくりし過ぎたし、さっさと終わらせよう。

 

「今から水柱の懐に飛び込んで思いっきりコレをぶっぱなす。以上!」

『分かりやすいですね』

「ええ。なら私はバインドで異相体の動きを封じます。アルフ、一緒に来てください」

「あいよ! 任せな、リニス!」

「では、秋介。あとは任せました」

 

 そう言ってリニスとアルフが水柱の元へと回り込んでいった。

 

「じゃあ、わたしは飛び回って引き付けるよ! 一緒に行こう、フェイトちゃん!」

「でも……」

 

 なのはの言葉にフェイトは戸惑って俺を見た。

 

「――行ってきな、フェイト。一緒に行って、ちょっと二人で俺の道開けてきくれる?」

「一緒に、行こう?」

「……うん。行ってくるね、秋介」

 

 そう言ってフェイトが先に速度を上げ、

 

「あ、待ってよ~!」

 

 なのはがそれを追いかけて行った。

 

「なら、二人の事は僕が援護するよ。秋介も気を付けて」

 

 続いてユーノが二人を追って行った。

 さて、それじゃあ俺も急ごうかな……!

 速度を上げると、

 

『ねえ、秋介』

「何?」

『私思ったんだけど、――あそこまで転移して行った方が早いんじゃないの?』

 

 さっきみたいに、とアリシアが言い出した。

 ……うわあ、忘れてた。

 

『秋介?』

「流石お姉ちゃん……!」

『え? えへへ~。もうどうしたの急に……!』

 

 伊達に幽霊やってるワケじゃないね! 特に関係ないけど。

 

「セラ――」

『もう準備できてますよ?』

 

 目の前に魔法陣が現れた。

 

「……もしかして気づいてた?」

『はい』

 

 ……言ってよ……。

 そう思った瞬間、魔法陣に突っ込み光に包まれた。

 

 

 ~まあ良いや~

 

 

 光を抜けると、目の前に水柱があった。

 

「おお、すげえ……」

 

 これって一番デカいやつだよね? セラフってば、中々良い所に出してくれたじゃない。

 

『だねー、……って、何か細いヤツ伸びて来たよ!?』

「はいは、……おっ」

 

 足元の海面から伸びて来た水柱を切ろうとしたら、

 

「――君は何をぼうっと突っ立てるんだ!」

 

 クロノ君の声と共に青の魔力弾が細い水柱を撃ち抜いた。

 

「あら執務官、意外と苦戦中?」

 

 見ると、バリアジャケットが所々ボロボロになっていた。

 

「当り前だ! こんな大物、一人で抑えられる訳ないだろう!」

 

 と、降りて来たクロノ君と並んで立ち、

 

「さっきなのはとフェイトたちが此処に飛んで行ったから、少しは楽になるんじゃない?」

 

 再び伸びて来た水柱を見て、右手に握る剣を構える。

 

「……その彼女たちより先に君が居るのは気になるが、今はそれ所じゃない」

「ならとりあえず、周りを片づけようか」

「ああ……」

 

 クロノ君もデバイス――S2Uを構えた。

 

「周りの細かいヤツを片づけたら、思いっきりコレをぶっぱなす。だから巻き込まれないように避難してよ、執務官?」

「分かった。それと、僕の名前は執務官じゃない。クロノ・ハラオウンだ。あとで君からは色々と話を聞かせてもらう」

「じゃあ、クロノ。俺の名前は君じゃない。戸田・秋介。秋介で良いよ。あと、話をするのは色々と全部終わってからね」

 

 周りに伸びる水柱を見据える。 

 

「あ、魔力渡そうか?」

「結構だ。何者か分からない奴からもらって、何かあっては嫌だからな」

「酷いなあ。ユーノは貰ってくれたのに」

「あのフェレット擬きめ……。いや、まあ良い。それよりも、君一人だと周りの異相体を片づけるのにどれくらいだ?」

「え? あー……」

 

 どうなんだろう。ざっと見ても百本以上は居るよね。

 ……宝具で一掃しても良いけど、あまり此処で魔力使いたくないし……。

 一本一本切ってたら結構時間かかりそう。三分くらいかな?

 

『二分ほどですね』

 

 セラフが俺の代わりに答えた。

 

「…………」

 

 ヤメテ、クロノ。そんな顔で見ないで。今は目の前の水柱に集中しよう?

 

『水柱にすうちゅうしよう、……くぅ、言えなかった……!』

『水柱に集中しよう、――私は言えましたよ、マスター!』

『やかましい』

 

 アリシアとセラフったら、この状況で余裕だね。

 

『『え?』』

 

 ……はい、すみません……。

 俺は人の事言えないですよね。

 

「君は……」

「はい、はい! 前を見る! 突っ込んで来たよう!」

 

 クロノの前の水柱たちが一斉に襲い掛かって来た。

 

「しゃがめ、クロノ!」

「――ッ!」

 

 俺が叫ぶとすぐにクロノが体を倒した。

 後ろを振り向くと同時に構える剣に風を纏わせ、

 

「――風王鉄槌(ストライク・エア)――ッ!」

 

 切り払いながら風を解放した。

 

『マスター!』

『後ろからも来たよ!』

「分かって――」

 

 セラフとアリシアの声を聞いて後ろを見ると、

 

『Blaze Cannon』

 

 俺の下から青の砲撃が飛んで水柱を迎撃した。

 

「……やるね、クロノ」

「これくらい当然だ」

 

 砲撃の出所を見るとクロノがS2Uを水柱の方に向けていた。

 クロノが立ち上がり、互いに背中を預けるように並ぶ。

 

「……あのさ、クロノ」

「なんだ」

「あまり時間をかけると不味い状況になるっぽいんだよ」

「だからなんだ」

「俺一人で二分なら、二人ならもっと早く片づけて、封印して終われると思うんですけど?」

「……良いだろう。なら、そっち側は任せた――!」

「じゃあ、そっちはよろしく――!」

 

 ダッ、とお互いに目の前の水柱めがけて翔る。

 

「は――ッ!」

 

 翔けた先、まずは目の前の水柱二本をまとめて切り払う。

 

『奥から来るよ!』

『あいよ!』

 

 崩れる二本より一回り大きさの水柱が突進して来た。

 それを、剣に魔力を纏わせ上段から振り下ろし一刀両断する。

 両断された水柱が俺の両側を通過し崩れ、

 

「――ッ!」

 

 その陰から左右二本ずつの細い水柱が現れた。

 剣を横に一閃して切り払おうとしたら、淡い黄色の鎖が水柱をまとめて拘束した。

 

「大丈夫ですか、秋介!」

「はぁあああ――ッ!」

 

 声の方を見ようとしたらアルフが拘束された水柱を殴り、その衝撃で水柱は崩れた。

 ……えぇ、アレって殴っても倒せるんだ。

 まあ、それはそれとして……。

 

「リニス、アルフ! 俺は良いから向うのクロノを手伝って!」

「分かりました。行きますよ、アルフ!」

「……ちっ、仕方ない。わかったよ」

 

 二人がクロノの方に向かい、それを追おうとした水柱を回り込み剣で切り裂く。

 

「セラフ。リニスとアルフが来てくれたけど、ちょっと急いだ方がよさそう?」

 

 向かって来る水柱を切り伏せながら聞く。

 

『はい。これ以上、時間をかけると次元震が起きますね。それも、――この辺り一面どころか、街の方まで巻き込みます』

 

 簡単に消えますね、とセラフが付け加えた。

 

「……今のままだと、際どい感じかな。切っても切っても、少ししたら復活するし……」

 

 やっぱり宝具使ってまとめて片づけた方が良いか……?

 右手に握る剣に魔力を流し込もうとしたら、

 

『大丈夫です。――ほら、頼りになるご友人たちが到着しましたよ』

 

 背後から魔力を感じた。

 

『秋介避けてぇ――ッ!?』

 

 アリシアが俺の頭を掴んで振り向かせた直後、桜色の砲撃が飛んで来るのが見えた。

 

「うおっとぉ!?」

 

 空中を蹴るようにして横に飛び躱す。

 桜色の砲撃はさっきまで俺が居た所を通って、その先に伸びていた複数の水柱をまとめて、……消し去った。

 ……崩れるんじゃなくて、消えた……。

 

『もう少しでしたね』

 

 ホントだよ。アリシアが居なかったら水柱もろとも消される所だった。まったく誰だ、あんな火力の砲撃飛ばしてきた子は。……いやまあ、分かってるけども。

 砲撃が飛んできた方を見ると、

 

「あれ、……えぇえええ!? 何で秋介くんがもういるの!?」

「――ああ、間に合わなかった……。でも、何とか無事みたいだね。良かった……」

「秋介……」

 

 俺を見つけて驚くなのはとその横で、ホッ、と胸を撫で下ろすユーノとフェイトが居た。

 ……間に合わなかったって、ユーノは気付いてくれてたんだね……。

 ありがとう。でも、今は良いや。とりあえず、

 

「おーい、なのはー。もう一回今の撃ってー。出来ればフェイトも一緒にー」

 

 二人に頼んでこの辺の水柱を一掃して貰おう。

 

「え、でも……」

「本当に、良いの……?」

 

 どうしよう、となのはとフェイトが顔を見合わせた。

 ……仲良いね、お二人さん。

 でも、それは終わってからにしてほしいかな。

 

『此処は私に任せてください』

「え?」

 

 何を? と聞く前にセラフが、

 

『――なのはさん、フェイトさん。お二人の思いを魔法に乗せて、マスターに向けて撃ってください!』

 

 とんでもない事を言い放った。

 

「「――ッ!」」

「マジで!?」

 

 ちょっと待って、それはダメだと思うんですけど!?

 

『大丈夫です! マスターは必ずお二人の思いを受け止めてくれますよ……!』

 

 大丈夫じゃないから待ってぇ! もしかしてセラフさん、楽しんでません!?

 

「――わかったの! いける、フェイトちゃん?」

「――大丈夫。思いっきりいくよ、秋介!」

「今は来ないで!?」

『今は、ですか。ふふ……ッ!』

『あとなら良いのか~』

「やかましい……!」

 

 言葉の綾です!

 ってか、そんな事言ってる場合じゃないわね!?

 

「ディバイン――」

「サンダー――」

 

 桜と金、二色の魔力光が煌くのが見えた。

 ……あ、何かヤバそう。

 思ってたよりデカいのが飛んできそうな気配。

 

『先ほど渡した魔力で、最初に封印した時よりもかなり強力になってますね』

『――逃げよう、秋介。私が危ない気がする』

 

 ああ。それには同意、――ってちょっと待った!

 

「ユーノ、後ろ!」

「――ッ!?」

 

 三人の後ろ、太いのが二、細いのが三本の水柱が海面から飛び出してきた。

 

「くっ、――ッ!?」

 

 ユーノが振り向き、緑のチェーンバインドで水柱を拘束するが、勢いに引かれてバランスを崩した。

 

「……!?」

「……ッ!」

「二人は砲撃に集中!」

 

 動こうとした二人を止め、瞬間的に魔力を足裏で爆発させて三人を襲う水柱へと一気に近付く。

 

「――ッ!」

 

 スパン、と水柱をまとめて横に一閃する。

 ……これで……!

 

「なのは、フェイト!」

 

 叫ぶと二人がハッ、としてデカい水柱の方見て、

 

「バスター――ッ!」

「スマッシャー――ッ!」

 

 二色の砲撃が放たれた。

 直後、デカい水柱の根元で大きな爆発が起きた。

 ……すげえ。生だと迫力あるわー。

 フェイトったらさっきと技変わってるし、モニターで見たより凄かったね!

 

『マスター、今の一撃で巨大水柱の根元に穴が開きました!』

「あいよ!」

 

 なのはとフェイトの間を通って大きく穿たれた穴へと向かう。

 

「「「秋介(くん)!?」」」

「今から封印するから、巻き込まれないように避難しときなよ……!」

 

 そう三人に叫んで穴の中に急行する。

 

「セラフ、リニスたちに連絡!」

『済んでます!』

 

 流石ね、セラフさん。仕事が早くて助かるよ!

 穴に入り込み、急停止する。

 

『秋介、あそこ!』

 

 アリシアが指さした先、頭上に九個のジュエルシードが見えた。

 外の皆は、……ちゃんと避難したみたいね。なら……。

 

「……今更だけど、一発で封印いけるよね?」

『ホント今更だね!?』

 

 いやあなんか、急に心配になっちゃった……。

 

『ふふ。この程度の水柱、どこぞの大海嘯を蒸発させるより簡単ですよ……!』

「なら安心したッ!」

 

 剣の握り部分を両手で持ち下段に構え、一気に魔力を流し込む。

 すると剣を中心に風が渦巻き、黄金の光が放出される。

 ……海相手なら、こっちの聖剣が良いよね……!

 鞘付きでも十分、九個まとめて封印できる。

 

約束された(エクス)――」

 

 頭上のジュエルシードへと、

 

「――勝利の剣(カリバー)――ッ!」

 

 一気に構えた聖剣を振り抜いた。

 瞬間、黄金の光が放たれジュエルシードを飲み込んだ。




「わし、参上!」
「最初に言っておきます。私はかーなーり、強いです!」
「セリフ、逆の方が良くない? 使う武器的に」
「こふッ!?」
「是非もないネ!」

 という事でなんらかのカタチ。

 ……ごめんなさい、冗談です。
 彼女たちや他の英霊には何処かでチラッとだけでも登場すると思います。

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