転生少年と月の目モドキ   作:琴介

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 という事で今回、目からビームが出ます。
 ビームって良いよね!


第十四話:目からビーム、一度は撃ってみたかった

『あの水柱は異相体のようですね……。それぞれにジュエルシードの反応があります』

『フェイト、アルフ……』

「今日は来ないって聞いたけど、この為だったのね……」

 

 何もこんな日にジュエルシードを強制発動しなくても良いのに。

 これはアレだね。あの海に残りのジュエルシードが全部ありました、ってパターンのやつだね。

 ……もしそうだったら、あそこに何個あるのかが問題かな。

 フェイトたちは昨日一つ封印したって聞いたから、今は六個のジュエルシードを持ってる。なのはたちは、……五個のジュエルシードを持ってる事になるのかな?

 次元震が起きた時のやつは多分、クロノ君がアースラに転移する時にでも回収して行ったはずだ。それなら合計は十個になるよね。

 ジュエルシードは全部で二十一個だから残りは、……あれえ?

 

「……モニターの水柱と未回収の数が合わない?」

 

 おかしい。何でモニターには九本だけしか映ってないのよ。あと一本は何処に……。

 

『いえ、数は合ってます。三日前になのはさんが新たに一つ封印してますから。なので、残るジュエルシードは九個。水柱の数とは一致してますよ』

 

 あらそうなの? なら納得いくけど、……これはよろしくない。

 

「もしかしなくてもフェイト、かなりピンチだなあ……」

『ええ。もしかしなくてもフェイトさん、かなりのピンチですね』

 

 クロノ君が介入する気配もまだ無いし、フェイトの自滅を待つ気だよね……。

 

『もう、そんな悠長な事言ってる場合じゃないよ! フェイトが、フェイトが~……!』

 

 アリシアが俺の服を引っ張ってモニターを指さした。

 モニターを見るとフェイトが一本の水柱に追われながら、海面を突きでた四本の背が高い岩礁の間を縫って飛ぶ姿が目に入った。

 

『……ッ!』

 

 フェイトが速度を上げ、岩礁を抜けたと同時に追って来た水柱へと飛ぶ方向を変えた。

 

『Scythe Form.』

『――ッ、ああっ!?』

 

 変形したバルディッシュを振りかぶって切りかかったが弾かれ、

 

『くっ……!』

 

 弾いた水柱と、その陰から出て来た二本目の水柱がフェイトに突進し海に叩きつけた。

 

『フェイト、フェイト! ――ッ!?』

 

 それを見て助けに向かおうとしたアルフを別の水柱が攫った。

 

『アルフ! ――うああッ!』

 

 フェイトが海中から飛び出しアルフに手を伸ばしたが、横から来た水柱がそれを弾いた。

 

『……はあ、はあ、――ッ!』

 

 態勢を立て直しもう一度アルフの元に飛ぼうとしたフェイトに、左右から二本の水柱が襲った。

 

『……!?』

『やらせるかぁ――ッ!』

 

 フェイトの目前、迫る二本をアルフのチェーンバインドが拘束した。

 

『……!』

 

 それを機にフェイトが拘束された水柱の間を抜け、

 

『――フォトン、ランサー――ッ!』

 

 展開した魔力弾を、アルフを捕らえる水柱へと放った。そして、放たれた魔力弾は水柱へと直撃しアルフが解放された。

 

『アルフ!』

 

 フェイトがアルフの腕を掴んで上空に避難した。

 そんな様子を見て思う。

 ……水柱の数が減った?

 モニターの中、フェイトとアルフが見下ろす水柱は七本しか映ってない、……と思ったら今、八本目が伸びていた。あ、九本目も伸びた。コレは……。

 

「セラフ、何個か暴走の仕方が微妙なジュエルシードがあるよね」

『はい。フェイトさんの流した魔力で満足に暴走しなかったんでしょう。先ほどから何回か収まったり暴走したりを繰り返してますね。……もしかしたら、以前の次元震のように何か起きるかもしれません』

『ええっ!? じゃあ早く助けに行こうよ!!』

「だね。セラフ、セットアップ」

 

 そう言うと、服が瞬時にバリアジャケットに変わった。

 

「よっし! 早速二人の所に、――おお?」

 

 モニターの上端に、何かが光ったのを見た。

 ……ああ、なるほどね。

 やっぱり来てくれるよね。

 

『どうしたの、秋介?』

「いやあ、ちょっとね。――セラフ、いつでも転移できるように準備よろしく」

『既にバッチリです』

「おお、流石だね!」

『え、……何で!? 今すぐ行かないの!? 早く行かないと、フェイトとアルフが……!』

 

 アリシアの言うお通り、モニターには満身創痍のフェイトとそれを支えるアルフが映っている。

 

「大丈夫だから。落ち着け。……ほら、モニターの上の方を見てみ」

 

 俺なんかより、ずっとこの状況にピッタリな子が居るから。

 

『――あっ』

 

 アリシアがモニターを見ると、フェイトの背後、曇天の隙間から桜色の光が見えた。

 

『ふふ、流石ですね。きっと反対を押し切って来たんでしょね』

「だろうね」

 

 そして光が消えたあと、隙間から降りて来たのは、

 

『あの子、この前の……』

「そう。――なのはならフェイトを助けてくれるよ、絶対にね」

 

 白のバリアジャケットに身を包んだなのはだった。

 モニターの中、

 

『フェイトちゃん!』

『……ッ!?』

 

 突然現れたなのはにフェイトは驚いている。

 

『またアンタ、フェイトの邪魔を……!』

『違う! 僕たちは戦いに来たんじゃない!』

 

 アルフが拳を構えた時、間に人の姿のユーノが降り立った。

 

『ユーノくんの言う通りだよ。私たちは手伝いに来たんだ』

『どうして……!』

 

 フェイトがなのはバルディッシュを向けたが、

 

『今言う事じゃないかもしれないけど、……初めて会った時に助けてくれてありがとう』

 

 それでもなのはは気にせず続ける。

 

『――今度はわたしが、フェイトちゃんを助ける番!』

 

 だから、となのはが言うとレイジングハートからフェイトへと桜色の光が伸びた。

 

『きっちり二人ではんぶんこ、だよ』

 

 フェイトが桜色の光に包まれ、

 

『あ……』

『Charging.』

 

 バルディッシュが答えた。

 

『Charging completed!』

『手伝って、一緒にジュエルシードを封印しよう!』

 

 レイジングハートの声を聞いて、なのははフェイトから離れた。

 

『ユーノくん、アルフさん! お願い!』

『分かった!』

 

 ユーノは水柱の方へと向かったが、

 

『……フェイト』

 

 アルフはフェイトの隣を動かない。

 

『アルフ。行ってあげて』

『でも……』

『今回は仕方がないよ。母さんの為だもん』

『……わかったよ』

 

 行ってくる、とアルフが緑のチェーンバインドで水柱を拘束するユーノの所に飛んで行った。

 ユーノとアルフ、緑と燈の鎖が九本の水柱を拘束した。

 それを見たなのはがレイジングハートを構えた。

 

『ユーノくんとアルフさんが止めてくれてる今の内に、二人でせーので、一気に封印!』

『Cannon Mode.』

 

 レイジングハートが変形した。

 

『ディバインバスター、フルパワー。一発で封印いけるよね?』

『Of course Master.』

 

 桜色の魔力を収束させるなのはから離れた所で、

 

『やろう、バルディッシュ』

『Glaive Form set up』

 

 フェイトは形を変えたバルディッシュを見て、もう一度なのはを見た。

 

『……ッ!』

 

 そして、バルディッシュを構えた。

 

『せぇーのっ!!』

 

 なのはのかけ声と共に、

 

『サンダー――』

 

 ユーノとアルフが拘束する水柱に金色の雷が走り、

 

『ディバイン――』

 

 レイジングハートの先に桜色の魔力光が煌き、

 

『……っ!』

『……ッ!』

 

 二人の魔法を察知してユーノとアルフがその場を離れ、

 

『レイジ――ッ!』

『バスター――ッ!』

 

 桜の砲撃と金の雷撃、二色の魔法が水柱へと撃ち込まれた。

 なのはとフェイトの一撃で水柱は消え、魔法の影響か曇天だった空が晴れ始めた。

 

「うわあ、なにあの威力……」

 

 モニターがほとんど桜色に染まってたよ。しかも周りにあった岩礁まで全部なくなってるし……。偶に金色が走ってたけど、海も空も見えないほど見事に桜色一色だったね。

 

『ふふ。今のが、いずれマスターに飛んで来る時があるんでしょうね……!』

「そうならないように気を付けます……」

 

 でももしそうなったら、その時には今より威力が上がってるような気がするのは俺だけかな?

 

『大丈夫ですよ、マスター。私もそう思いますから』

『そうだね。私もそんな気がする』

 

 アリシアまで乗ってきちゃったよ。

 どうしよう、もしスターライトブレイカー並みになったら……。

 ……いや、それはもうスターライトブレイカーなんじゃ……?

 と言う事はアレか? ディバインバスターがスターライトブレイカーって事は一体、スターライトブレイカーは何ブレイカーになっちゃうの? はっ、まさか――。

 

「次元の壁ブレイカー――ッ!?」

 

 その内簡単に壁抜きとかやるだろうし、いずれは次元の壁でさえも抜く可能性が……!

 

『マスター……。そんな事を言ってないでモニターを見てください。割と危ない状況です』

「え……?」

 

 危ない状況ってなに? ジュエルシードはさっき、二人の一撃で封印したでしょ。

 モニターを見ると晴れ出した空の隙間から光が差し込む中、二人の魔法少女が向き合っていた。

 

『――フェイトちゃん』

『…………』

 

 フェイトは呼ばれても、無言のままなのはを見てるけど……。

 

『別に、フェイトたちがこの前みたいに戦うって感じはしないよ?』

「確かに。アリシアの言う通り二人は大丈夫っぽいけど……」

 

 セラフが危ないって言うくらいならやっぱり、ジュエルシードの事か。

 ……ならさっきので、全部のジュエルシードを封印しきれなかった……?

 あの威力で? と思うけど可能性が無い訳じゃない。何個か微妙な感じのモノがあったし、二人の魔法が直撃する直前に暴走が収まって封印を逃れたって可能性も……。

 それなら割と所か、かなり危ない。今の二人はかなりの魔力を消費してるし、いくらアルフとユーノが居ても対応できるか分からない。

 

「このまま綺麗に終われば良いけど……」

『どゆこと……?』

『見ていれば分かりますよ』

 

 何が? と思ったのか、アリシアがモニターを見た。それにつられて俺も見る。

 モニターの中、なのはとフェイトが向き合っていた。

 

『わたしね、フェイトちゃんと魔法の事とか好きな物とか、楽しかった事や悲しかった事をお話したい』

『――どうして? どうしてそこまで私の事を構うの? 今は協力できたけど、私と貴方は敵同士なんだよ……?』

 

 なのはの言葉を遮って、フェイトが聞き返した。

 

『ううん。わたしはそうは思わないよ』

 

 それに対してなのはが首を横に振り、

 

『ちゃんとお話をすれば、喧嘩しても友達になれるって知ってるから。……だから、フェイトちゃんとお話をして、色々な事を伝え合いたい』

 

 左手を胸に当てた。

 

『友達に、なりたいんだ』

『……ッ!』

 

 フェイトはなのはの言葉を聞いて、目を見開いて驚いている。

 その時、二人の間に青い光の柱が現れた。

 

『うそっ……!』

『そんなっ……!』

 

 スウッ、と光の柱は消えていきあとには、――八個のジュエルシードが浮かんでいた。

 ……一個だけ残ったのか!

 惜しい、けど今はそんな事を言ってる暇じゃない。

 

『秋介、ジュエルシードが一個足りないよ!?』

「分かってる、――セラフッ!」

 

 俺が叫んだ瞬間二人の下、海面で一つの青い光が見えた。

 

『――転移魔法発動します!』

『待って私も行く!』

 

 俺の足元に魔法陣が展開され光に包まれる瞬間、

 

『フェイト――ッ!!』

『なのは――ッ!!』

 

 アルフとユーノ、二人の叫び声が聞こえた。

 

 

 ~転移中……~

 

 

 光が晴れるなり、目の前に水柱があった。

 ……中々なタイミングだね、セラフ!?

 転移したら攻撃が当たる直前とか、結構ひどくない!? なのはとフェイトは何処に!?

 周りを見ると、

 

「え……?」

 

 背後でなのはとフェイトが、信じられない物を見たような顔で俺を見ていた。

 するとその手前で、

 

『うわぁあああっ――!? 前、前!』

 

 俺のバリアジャケットの裾を握って、迫りくる水柱を指さして大慌てするアリシアが居た。

 

『来ますよ、マスター!』

「まったく! 良い舞台だよ、セラフ――!!」

 

 こんな危機的状況、二人に格好つけたくなっちゃうじゃないか!

 だから右腕に〈風王結界(インビシブル・エア)〉を纏わせ、

 

「――風王鉄槌(ストライク・エア)――ッ!」

 

 水柱に向け右腕を突き出し一気に風を解放した。

 ドパンッ、と言う音と共に目前の水柱が破裂したのを見て、

 

「とりあえず避難……!」

「きゃっ!?」

「わっ!?」

 

 後ろで唖然としているなのはとフェイトを両脇に抱えて飛び、その場を離れる。

 

『マスター! 先程の水柱が封印されたジュエルシードを取り込みました!』

「うそん、マジで!?」

『マジだよ!? さっきよりでっかくなった、――って何か飛んできたよ!?』

 

 アリシアが叫んだ直後、頭上から影が落ちた。

 上を見ると、

 

「ちょっ――!?」

『あわぁあああっ!?』

 

 大きい水の玉が落ちて来た。

 

『いえ、アレは海水弾ですね。魔力で圧縮されてるようですし、かなりしょっぱそうですね!』

 

 何を呑気な事を言ってるんだ、うちのデバイスは……!

 

「圧縮って、――まさか!」

 

 魔力で視力を一時的に上げて海水弾を見ると……。

 

「――あの中、魚が泳いでるんですけど!?」

「「『急にどうしたの!?』」」

 

 おおうまさか、アリシアだけじゃなくてなのはとフェイトからもツッコミが入るとは思わなかった……。

 

『マスターも似たような事を言ってるじゃないですか。それに、久しぶりに余裕過ぎますって』

「ごめんな、――さいっ!」

 

 謝るのと同時に急停止して、体を捻って後ろを向き〈風王鉄槌〉をブースターにして海水弾の陰から出る。

 瞬間、

 

『あうっ!? ……ひははんは~!』

 

 背中から、アリシアのそんな声が聞こえた。

 ……この状況でよじ登って来るとは……。

 さっきまでは裾の方を握ってたのに、気付いたら背中まで来てるよ。アリシアすげえ。てか、そんな事してるから舌噛むんだよ。……あっ。

 

「舌噛まないように気を付けて……!」

 

 なのはとフェイトに注意するの忘れてた。

 

『遅いよう!!』

 

 アリシアのツッコミだけって事は、二人は大丈夫だったみたいね。流石、普段から空を飛んでるだけある。

 

『もっと早く行ってよ! お陰で舌噛んじゃった~!』

『まあまあ、アリシアさん。今は止めておきましょう。今のマスターは、――呑気な事を言う余裕はあっても謝る気は無いみたいですからね!』

『何でそんなこと言うのかなあ!? ちゃんと謝る気はあるからね!?』

 

 後回しになるけどね! などと言っていた直後、さっきまで飛んでいた場所に海水弾が大きな水しぶきを上げて着水した。

 その衝撃で起きた高波を避ける為に飛ぶ高度を上げ、

 

「あー、危なかった。これで一先ず安心、――出来ないですね!?」

 

 一息つけるかと思ったら、二本の氷柱がこちらを海に叩きつけようと海面から伸びて来た。

 ……数が戻ってる!

 二本の水柱の奥を見ると、そこには七本の水柱が伸びていた。

 ああもう、せっかく二人が協力して封印したのに、振り出しに戻っちゃったよ!?

 

『マスター。今はこの場を切り抜けるのが先決です!』

「だよね!」

 

 セラフの言う通り、今は目の前の水柱をなんとかしないとね。でも、どうやってあの二本を……。

 両手は二人を抱えて塞がってるし、アリシアはでバリアジャケットに掴まるので忙しい。リニスは此処に居ないし、この場合は、……アレがあるじゃないですか! 前から試したくて、今の今まで忘れてたアレ。

 右目に大量の魔力を集中させ、

 

「――梵天よ、地を覆え(ブラフマーストラ)――ッ!」

 

 光炎の光――ビームのようなものを、此方に迫る水柱に撃ち込んだ。

 ビームが直撃し水柱を穿った。

 

『ちゃんと掴まってなよ、アリシア!』

 

 飛ぶ速度を上げ、穿たれた部分を抜ける。

 ……ついに俺の目からビームが……!

 まさか此処で使えるとは思わなかったね!

 

『忘れてましたからね』

『なに今の凄い! もう一回やって、もう一回!!』

『やかましい』

 

 穿たれた穴から飛び出し、

 

「セラフ、転移……!」

『わかりました!』

 

 その勢いのまま前方に展開された魔法陣に突っ込む。

 そして、

 

「うわっ!?」

「なんだい!?」

 

 ユーノとアルフの目の前に飛び出した。

 二人の驚いた顔を見て思う。

 ……あ、成功した。

 思い付きでやってみたけど、特に転移先を指定しなくても頭に浮かべれば行けるんだね。これは新しい発見……!

 

「あ、ヤッホー、お二人さん。元気?」

「「…………」」

 

 あ、ダメだ。口あんぐり状態で反応が無い。

 

『ねえ、セラフ。フェレットと狼を餌に使ったら水柱釣れるかな?』

『どうでしょうね。元が海ですから、雑食でしょうし釣れるんじゃないですかね?』

『どうしよう。思ってたよりちゃんとした意見を言われた』

 

 てっきりいつもみたいに『マスター……』か『余裕ですね』のどっちかだと……。

 

『秋介だけじゃなくて、セラフも余裕あるよね』

『マスターのデバイスですからね!』

『あー……』

『…………』

 

 よし。冗談は此処まで! 別にアリシアの視線が背中に刺さるからとかじゃないよう?

 それよりも……。

 

『アリシアさんや。そろそろ背中から降りてくれません?』

『や』

 

 ギュッ、と背後霊よろしく離れてくれない。

 また舌噛んでも知らないよ?

 

「秋介、くん……?」

「秋介……」

 

 右からなのは、左からフェイトの声が聞こえた。

 

「……ああ、ごめん」

 

 抱えていた二人を離す。

 

「怪我とかしてない、二人共?」

「あ、うん。助けてくれてありがとう……」

「大丈夫だよ、秋介。助けてくれてありがとう」

「ふふん。良いよ、別に」

 

 なのはとフェイトに大きな怪我が無くて良かった。

 ……もし二人に怪我でもさせたら士郎さんが、……ああ多分、プレシアさんも同じタイプなんだろうなあ。

 ………………。

 うわぁ……。考えるのは止めよう。晴れてるのに雷に撃たれるなんて事態は遠慮したい。

 本当に怪我とかしてなくて良かった……、と考えてたら、

 

「えっと、ホントに秋介くん、……だよね?」

 

 なのはが俺の顔を覗いた。

 

「ん、そうですよ? 正真正銘、なのはが知ってる秋介さんですよ」

「なら、どうして今までだ、――みゃッ!?」

 

 なのはのほっぺを両手で挟んで言葉を遮る。

 

「とりあえずジュエルシードを止めるのが先だって。俺の事はまたあとで」

 

 そう言ってなのはのほっぺから手を離す。

 

「……うん、わかった。ちゃんと、あとで聞かせてね?」

「あいよ。……さて、フェイトも何かある?」

「ううん。私もあとで良いよ。今はそれよりも……」

「だね。――そこで未だに動かないフェレットと狼を戻そうか」

「「え……?」」

 

 そっち? って顔で二人に見られた。

 

「おーい。ユーノ、アルフー。いい加減その口閉じないと、――水柱釣りの餌にしちゃうよ?」

「こ、怖い事言わないでくれ!」

「しゅ、秋介。アンタ、何て事を言いだすんだい!」

 

 お、戻って来た。

 

「冗談だって。二人が呆然としてるから、こうでも言わないと戻ってこないかな、って」

「君は、……いや、聞くのは後回しだね。今はジュエルシードを封印するのが優先だ。早くしないと、融合して手がつけられない事に……」

「なってるみたいだよ、アレ」

 

 アルフが指さす先、一本の水柱を中心に八本の水柱が集まっていた。

 

「なッ!?」

「おー、合体した」

 

 これはまさかの人型に変身か……! ちぇ、なんだぁ……。

 

『なんか大きい柱になったね』

『ですね。周りにも大小様々な水柱も居ますけど、……中々に地味な合体でしたね』

『まったくだ』

 

 俺のこの期待した気持ち。思いっきりぶつけてやろうと、そう決意した。

 

「くっ、一体どうやって封印すれば……。僕とそこの彼女じゃそこまでの火力が出ないし……」

「……そうだね。アンタと私の魔法はサポート系がほとんどだ。封印魔法が使えたとしても、あれじゃ近づけないよ」

「わたしは、……さっきので魔力をほとんど使っちゃったよ。フェイトちゃんは?」

「私も同じ。貴方にもらった魔力もさっきの一撃で使っちゃった」

 

 どうしたものか……、と四人は考え込んでしまった。

 ……いや、考えてる暇ないって。

 あっち見てみ? 何本か子機っぽい水柱がこっちに向かってるよ?

 

『さっきみたいにビーム!』

『えー……?』

 

 もう、アリシアってばそんなに見たいの? 仕方ないなあ……!

 

『うれしそうですね、マスター』

 

 はっはっは、そんな事ないよう!

 

「皆、逃げて!」

 

 なのはが水柱に気付いて叫んだ。

 

「「「……ッ!」」」

 

 同時に三本の水柱が勢いよく海面から伸びて来た。

 ……まとめて吹っ飛ばせるかね?

 さっきよりも多めに魔力を右目に集中させて、

 

「梵天よ、……?」

 

 撃とうとしたらふと、頭上に魔力を感じた。

 見上げるとそこには二つの魔法陣が展開していた。

 ……なら俺は真ん中の水柱を撃ちますかね!

 もう一度右目に魔力を溜めて、

 

「梵天よ、地を覆え――ッ!」

 

 水柱を撃ち抜いた。

 それと同時に淡い黄色の砲撃が左、青の砲撃が右の水柱を撃ち抜いた。

 

『イエーイ!』

『ふふ、良いタイミングで来てくれましたね』

 

 セラフの言う通りよ。

 フッ、と背の低い執務官が降りて来た。

 

「クロノくん……」

「なんだか今、失礼な事を考えられたような気がするが、……まあ良い。

 この際、君から話を聞くのは後回しだ。――そっちの貴女も同じだ。この場においてはジュエルシードの封印に協力して貰う」

 

 クロノ君が見た先、見慣れた猫耳尻尾のお姉さんが降りて来た。

 

「リニス……」

「構いません。アレを放っておいたらどうなるか分かりませんからね」

 

 そう答えてリニスは俺の左に並び、

 

「では、私が異相体の動きを止めます。封印は秋介に任せました」

「何か秘策があると言う事か、……なら、封印は君に任せよう」

 

 クロノ君もそう言って俺の右に並んだ。

 

「任された! ……えっ?」

 

  ……俺がやるの?




 今更だけどこの時点でのスキル。

「女神の寵愛EX」「神授の智慧EX」「対魔力A」「魔力放出A++」「直感A」「気配遮断B+」「情報抹消D++」「騎乗A+」「人間観察C」「縮地B」「千里眼C++」「魔力放出(炎)A++」
「中国武術C+」「気配感知D++」「魔術A+」「呪術A+」「高速神言A」「射撃C+++」
「啓示C」「宗和の心得B」「無窮の武練E++」「支援砲撃B++」「道具作成C+」
「陣地作成B+」「コレクターB」「矢避けの加護C」

 あ、次回はあの聖剣をぶっぱなすよ!

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