転生少年と月の目モドキ   作:琴介

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 ついにあの子が登場します。
 早いかな? まあ良いよね!


第七話:公園って絶対何か住んでるよね

 なのはが魔法少女になった夜から数日が経ったある日の学校帰り。

 

「――はっ! 角麩を買い忘れた……!」

 

 俺はスーパーで夕飯の買い出し中だ。

 急いで売り場にむかったが、残念なことに角麩は売り切れていた。

 

「くっ、リニスの為に今日はすき焼きにしようと思ったのに。仕方ない、豆腐屋まで行くか……」

 

 他の食材の会計を済ませ、買い物袋を〈王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)〉にしまい商店街に向かうことにした。

 

「角麩がないと、リニス落ち込みそうだよねー……」

『どうでしょうね……。今のリニスさんは色々とパンクしそうですから気付かないと思います』

「それは、……ありそうね。真面目過ぎなんだよ、リニスは。……はあ」

 

 どうにかして元気付けたいよ。何か良い方法ないかな? うーん……。

 

『マスターはリニスさんが言う〝以前の主の願い〟は予想がつているのでしょう?』

「一応はね。でも、確証が無いんよ。下手に動いて変な事になったら嫌だし……」

 

 イザナミさんに聞いた話だと、原作と違った出来事が起きるらしい。

 リニスが消えてない時点でかなり違うが、それを除いても何か原作と違うような気がする。

 この前のリニスの反応からして、アリシア・テスタロッサが死亡しているのは間違いないだろう。気になるのはフェイト・テスタロッサとプレシア・テスタロッサの関係だ。

 俺としては原作みたいな関係じゃないと良いんだけど……。

 ……今の段階で判断は難しい。

 リニスが話してくれるのを待つしかないね……。

 

「それに、ジュエルシードの方はなのはに任せても大丈夫だよね」

 

 なんだか原作よりも成長が早い気がするし、ユーノ君との魔法の訓練も順調みたいだからね。

 現状、二十一個あるジュエルシードの内、俺たちが三個、なのはたちが四個。セラフによると残りの十四個のある内の二つは、すでに第三者が封印、所持してるらしい。

 ……間違いなくフェイト・テスタロッサだろうね。

 なのはと出会ってもらう為にも、ここで俺たちは出張らない方がいいな。

 

『この期に及んでなのはさんに丸投げは酷いですよ、マスター。もういっその事、正体明かして手助けしましょうよ。彼女も喜んでくれますよ、絶対』

「えー、もうちょっと俺の正体明かすの引っ張りたいんだけど……。その方が面白い反応見れそうじゃん?」

『……今の言質取りましたからね? いずれマスターはなのはさんに砲撃される……!』

「ごめんなさいそれだけはやめてくださいお願いします」

 

 そんな事されたらディバインバスターが飛んで来るじゃないですかヤダー。俺まだ死にたくないよ……。

 

『防げるくせに何言ってるんですか』

「精神的に死にそうなの。それでなのはが泣いてみ? 理由は知らずとも恭也さんが殺りに来る」

 

 もしかしたら士郎さんも来るかもしれない。そうなったら桃子さん、助けてくれるかな……。

 最悪魔法で……、と考えながら商店街までの近道をしたら、

 

「………………うわぁ」

『これはまた……。ここまで来ると運命ですね、マスター!』

 

 ……二度あることは三度ある、か……。

 金髪少女――フェイト・テスタロッサと、燈髪お姉さん――アルフが、そこには居た。

 なんとなく、ホントなんとなく近道だから公園を通り抜けようとしたら遭遇してしまった。

 なのは、アリサ、すずかの三人と出会った思い出の場所。この公園、絶対出会いの神様住んでるよね!?

 よし、見なかったことにしよう。今は角麩を買うのが最優先だからね!

 回れ右をして離れようとしたら、

 

「そこの人、動かないでください」

 

 テスタロッサに絡まれた。

 ……何で!? 俺何もしてな――。

 

『マスター、ズボンのポケットにジュエルシードが入ったままです』

『……マジか』

 

 セラフに言われズボンのポケットを探ると、そこにはひし形のつるつるしたモノがあった。

 ……あ、忘れてた。

 このジュエルシード、なのはが魔法少女になった夜のだ。拾ってポケットに入れたままだったのか……。

 

『……でもバリアジャケットのポケットに入れたのに何で?』

『マスターの場合、服とバリアジャケットを置換しているので物質的なモノはそのままなんです』

 

 あー、なるほどね。……なんだ、勝手にセラフに回収されてるわけじゃないのか。

 うう、まさかこんな事で絡まれるとは思わなかった。何とか切り抜けないと……。

 

「さっきから黙ってないで、何とか言ったらどうだい?」

 

 いつの間にかアルフが背後に回って拳を構えていた。

 

「そのポケットに隠しているものを渡してください。出来るだけ穏便に済ませたいですから」

 

 目の前のテスタロッサも、黒い斧を俺に向けていた。

 ……いつの間にバルディッシュを……。

 セットアップはしてないようなので、本当に穏便に済ませたいのだろう。

 

「ならその物騒なモノを降ろしてくんない? 逃げたりしないから」

「……わかりました。アルフもこっちに来て」

 

 そう言ってテスタロッサはバルディッシュを降ろし、後ろのアルフを呼んだ。

 

「…わかった。フェイトがそう言うなら従うよ」

 

 渋々、と言った感じでアルフがテスタロッサの横に立った。

 

「貴方の要求には答えました。今度は私の要求に答えてください」

「良いけど、その前に聞かせてよ。何でコレを集めてるのか」

 

 ポケットからジュエルシードを取り出して見せる。

 まあ、答えてくれないと思うけど、一応聞いておかないとね。

 

「……貴方には関係ありません。早くソレを渡してください」

 

 やっぱ話してくれないよね。逃げても追っかけてくるだろうし、リニスに助けを、……ダメだな。何を気にしてるのか知らんが、テスタロッサに会うのが気まずそうだし……。

 

『このまま、はいどうぞ、って渡すのはちょっと気が進まないかな。リニスの事もあるし』

『そうですね。どうしまします?』

 

 隙を見て転移魔法かな……?

 

「あんた、一体何者だい? ただのガキんちょにしか見えないけど……」

 

 そう言って、アルフが再び拳を構えた。

 

「ジュエルシードを持ってるって事は魔導師なんだろう? ――まさか、管理局か!」

「――ッ!?」

 

 アルフの言葉を聞いてテスタロッサが一歩飛び退のき、

 

「バルディッシュ、セットアップッ!」

『set up』

 

 バリアジャケットを身に纏い、臨戦態勢になった。

 ……いや、えぇー……?

 ちょっとアルフさん、変なこと言わないでよ。あとテスタロッサ、こんな人目のある所でセットアップは止めよう? 人に見られたら大変でしょうが。

 

『セラフ、人除けよろしく……』

『もう張ってあります。それよりも、今は目の前のお二人をどうするかですよ』

 

 だよね。何とか誤解を解かないと……。

 

「いや、俺は管理局の魔導師じゃないよ? ただの、……魔法使いだよ?」

『何故疑問形……。しかも魔導師と魔法使いは同じようなモノです』

 

 むう、そうだった。じゃあ何て言えばいいの……。

 

「どっちも同じじゃないか!」

 

 いきなりアルフが距離を詰め、拳を俺の顔めがけて突き出してきた。

 

「おう――ッ!?」

 

 すんでの所で躱し、横へ逃れる。

 

「――と、と。いきなり殴りかかるのは良くな、――はいッ!?」

 

 ジャラッ、と言う音と同時に体が燈色の鎖に捕まった。

 ……バインドですかい!?

 テスタロッサさん! 見てないで止めてよ、貴女の使い魔でしょ!?

 バッ、とテスタロッサの方を見ると、

 

「フォトン――」

 

 バルディッシュを掲げ周囲に金色の魔力弾を複数展開し、

 

「ランサー――ッ!」

 

 撃ち放って来た。

 おいおいおい、マジですか! もしかしてホントに俺の事管理局の魔導師だと思ってる!?

 

「ああ、もう! セラフ、セットアップッ!」

 

 バリアジャケットに身を包むと同時にバインドを砕き、

 

「――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)――ッ!!」

 

 光でできた七枚の花弁を展開し防ぐ。

 

「「――ッ!?」」

 

 俺がテスタロッサの攻撃を防いだのを見て、二人は驚愕って感じだ。

 

「危ねぇ、もう少しで直撃する所だった……」

『お見事です、マスター。これも特訓の成果ですね!』

「はっはっは、ありがとうセラフさん! でも今はそれどころじゃありませんよ!?」

 

 なんか二人共さっきより警戒して構えてるんですけど!

 

『無理もないですよ。バインドで動きを止めたはずの相手がそれを砕き、なおかつ攻撃を防いだんですから』

「えー、それくらい誰でも出来るでしょ」

『……マスターは一度、自分のデタラメさに気付いた方がいいですね』

 

 次元世界一のスペックを持つセラフにデタラメなんて言われるとは思は無かった。

 ……あ、今更だけど常時発動の宝具があったね……。

 あれ? でもそれなら……。

 

「何で俺、バインドを受けたの?」

 

 確か、〈破却宣言(キャッサー・デ・ロジェスティラ)〉があったはず……。

 あの宝具なら所持してるだけである一定以下の魔法を常時無効か出来る。

 元は魔術だったけど、この世界ではちゃんと魔法を無効化できるのはリニスとの訓練で確認した。なのに何故?

 

『一応、一部の宝具は私の方でも制御出来るので、普段はOFFにしています。日常的に魔法を無効化していたら、何処で管理局に目を付けられるか分かりませんからね。

 ちなみに、先ほど〈破却宣言〉を発動しなかったのは今のマスターなら平気かな、と』

「なるほどなるほど……。はは、でもそれなら生身と同じだから俺危なくない!?」

『いえ。マスターには数多くのスキルがありますので、いい感じに普段でもデタラメですね』

「………………」

『マスター?』

「……いや、何でもない。何でもないよう」

 

 普段、戦闘とかほとんど無いからスキルがある実感薄かったんだよなあ……。

 

「何ごちゃごちゃ言ってんだい!」

「うをっと――!?」

 

 不意打ち気味に撃ち込まれたアルフの拳を躱した先、

 

「はァ――ッ!!」

 

 テスタロッサがバルディッシュで切りかかって来た。

 

「ああもう……ッ!」

 

 ガキンッ、とバルディッシュを〈紅蓮の聖女(ラ・ピュセル)〉で受け止める。

 交差する〈紅蓮の聖女〉とバルディッシュを挟んでテスタロッサを見る。

 

「話も聞かないで切りかかるのは良くないと思うんですけど!?」

「……ッ!」

 

 テスタロッサは俺の頭上に四つの魔力弾を展開した。

 

「シュート――ッ!」

「またかっ!」

 

 降ってくる魔力弾を後ろに飛ぶことで躱す。

 ……誘導弾!?

 が、躱したはずの魔力弾が地面に当たる直前、直角に曲がり追って来た。

 

『shoot――ッ!』

 

 セラフが四つの魔力弾を展開し、迫りくる魔力弾へ打ち込む。

 直後、爆発が起こった。

 それにまぎれて空へと飛びあがる。

 

「ありがと、セラフ!」

『向うは割と本気で来ますよ!』

「やっぱり!?」

 

 と思ったら、爆発で上がった煙の中から、

 

「ハアッ……!」

『Arc Saber』

 

 二つの光刃が回転しながら飛んできた。

 

「――ッ!」

 

 左から飛んで来る光刃は体を捻って躱し、右の光刃は〈紅蓮の聖女〉で切り落とす。

 

「貰った――ッ!」

「何にもやらん!」

 

 横から来たアルフの拳を左手で受け止め、

 

「ほい、っと!」

 

 その勢いを借りて下に居るであろうテスタロッサめがけて投げる。

 

「しまっ!?」

「アルフ! ――きゃっ!」

 

 アルフはテスタロッサと激突して公園に落ちていく。

 そんな二人を追って俺も公園に降りる。

 ……これで大人しくして――。

 

「――くれない!?」

 

 降りる途中、先に落ちて行くテスタロッサが俺にバルディッシュを掲げた。

 

「轟け、轟雷!」

『Thunder Smasher』

 

 雷撃を纏った砲撃が飛んできた。

 ……あ、コレ直撃コースだわ。

 なので、

 

「うお、――とっ!」

 

 〈紅蓮の聖女〉に炎をのせた魔力を纏わせ、一気に振り切った。

 ……疑似真名解放、てね!

 ホントに真名解放すると危ないからね。「魔力放出(炎)」のお陰でそれっぽく使えるのが良いね!

 剣先が砲撃と触れた瞬間、さっきよりも大きな爆発が起きた。

 上がった煙をかき分け、公園に降りる。

 ……おおう。周りが見えん……。

 炎を纏わせたのが悪かったかね? こんなに見えなくなるとは思わなかった。

 

「おーい。お二人さ――ッ!?」

 

 大声を出したらテスタロッサが飛んできた。

 

『当り前です!』

『ごめんなさい!!』

 

 そうこう言ってる内にテスタロッサが目の前に来た。

 

「ハッ――ッ!!」

「うおっ!?」

 

 ガキンッ、とバルディッシュを〈紅蓮の聖女〉で受け止める。

 再び〈紅蓮の聖女〉とバルディッシュを挟んでテスタロッサを見る。

 

「いい加減大人しくしてくれません!? 」

「管理局に邪魔される訳にはいかない……!」

「だから俺は管理局の魔導師じゃないって、……言ってるでしょうが!!」

「――あッ!?」

 

 バルディッシュを上へ弾き飛ばすと、その反動でテスタロッサは尻餅を着き、

 

「フェイト! ――くッ!?」

 

 それを見て飛びかかって来たアルフをバインドで拘束する。

 

「アルフ!」

 

 そんなアルフにテスタロッサが駆け寄るのを横目に、足元に落ちていたバルディッシュを拾う。

 まさか戦闘になるとは思わなかったが、これで二人も話を聞いてくれるかね……?

 思い二人を見ると、

 

「フェイト! 私の事はいいから早く逃げるんだ!」

「出来ないよ! アルフまで居なくなったら私……」

 

 今なお絶賛勘違い中である。

 

『この場面だけを見るとマスターが悪役ですよね』

「……うん。俺も思った」

 

 これじゃまるで俺が悪いみたいじゃない。むしろ俺は被害者ですよ? 今の戦闘は正当防衛です!

 

『とりあえずお二人の誤解を解きましょうよ。いつまでも帰らないとリニスさんが迎えに来ますよ?』

 

 それもそうだよね。じゃあ、さっそく、

 

「そいや!」

「あうっ!?」

「あいたっ!?」

 

 両手でテスタロッサとアルフ、それぞれの頭に手刀を落とし、ついでにバインドも解く。

 

「いきなり何を、――うっ!?」

 

 また魔力弾を展開しようとするテスタロッサを二発目の手刀で抑える。

 テスタロッサは両手で頭を抑えながらしゃがむ。

 

「まったく。最初から違うって言ってるのにさぁ。俺の事を管理局の魔導師だって、勝手に勘違いして襲ってきたそっちが悪いんだからね?」

「え、違うの……?」

「違います。一応魔導師だけど、管理局とは何にも関係ないよ。ジュエルシードを持ってたのは知り合いの手伝いで封印したから、……あ、デバイス返すよ」

「バルディッシュ! ……ありがとう」

「それで、そっちのお姉さんから何か言う事は?」

「うっ、……勘違いして悪かった」

「あいあい。謝ってくれればいいよ」

 

 さて、誤解も解けたことだし、早く商店街に――。

 

「――待って!」

「何……?」

 

 行こうと思ったらテスタロッサに手を掴まれ止められた。

 

「あ、いや、その、……ジュエルシードを、渡してください」

 

 どうしよう。振り出しに戻った気がする。

 

「……はあ。あのね、さっきも言ったけどコレは知り合いの物なの。だから勝手には渡せない」

「お願いします。私たちにはどうしても必要なんです」

 

 この頑固さと言うかなんと言うか、……どうしたものかねえ。

 

『マスター、急がないとお豆腐屋さんしまっちゃいますよ』

 

 わかってる。だけどこのまま無視して行くのもかわいそうじゃない。こんなに必死に頼まれるとさ。

 でもなあ、ここでジェルシード渡して帰ったら、リニスに何て説明しようかだし……。

 しかし急がないと角麩が買えなくなってしまう。むう、一体どうすれば、……あ、そうだ!

 

『いっその事、二人をリニスに会せばよくね?』

『マスターって、意外と大胆ですよね』

 

 偶には良いよね。今日の所は角麩無しのすき焼きかな……。

 

「とりあえず、逃げないから手離して」

「あ、……ごめんなさい」

 

 ボッ、と顔を赤くしてテスタロッサは手を離した。

 アルフはアルフでテスタロッサを心配そうに見つめて、……無いやん。

 

「お姉さんどしたの……」

「え、アルフ……?」

「ごめん、フェイト。アタシもう限界だよ……」

 

 クゥ~、とアルフのお腹から聞こえた。

 

「……これ食べる?」

 

 先程スーパーで買ったソーセージを〈王の財宝〉から取り出し渡す。

 

「良いのかい!? アンタ善い奴だね、さっきは急に襲って悪かったよ!」

 

 受け取るや否や、勢いよくソーセージを完食した。

 

「えっと……。アルフがごめんなさい」

「お腹すきすぎちゃってさ、ホント助かったよ」

 

 ペコリ、と頭を下げるテスタロッサと、あははー、と頭に手を当たるアルフ。

 

「いいよ、別に。それよりもお姉さん、ちょっとこっち来て」

「……? 何だい?」

 

 警戒心が解けたのか、アルフがテスタロッサの隣に立った。

 

「じゃ、二人は動かないでね。――セラフ、うちの玄関に転移!」

『はい、わかりました。――転移魔法発動です!』

「「ええっ!?」」

 

 瞬時に足元に魔法陣が展開し、視界が光に包まれた。




 次回は皆ですき焼きを食べます。

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