二回戦は久保の敗北というまさかの結果にAクラスに動揺が広がっていた
「学年次席の久保が負けるなんて……。もしかしたら俺達ヤバイんじゃ……」
「観察処分者が勝つなんて、そんなの事あっていいのか……」
「まさかこのまま負ける、なんて事ない……よね?」
目の前で起きたことを受け入れない者、不安を抱く者と動揺は様々であった
「やっぱり皆かなり動揺してるみたいだね。……まあボクもその一人なんだけどね」
クラスの皆と同様に不安の色を隠せない愛子が隣の優子を見ると皆とは違い冷静にこの状況を見ていた
そしてパン!!と手を鳴らし皆の視線を集めた
「はい! 起こってしまった事を今更嘆いても始まらないわ。それに今回の敗戦はある意味仕方なかったと思う」
「仕方なかった? どういう事?」
「まず第一に操作性の熟練度。こちらはCクラス戦で操作性を磨けたけれど毎日教師の雑用で召喚獣の操作性を飛躍的に上げた向こうとでは差がありすぎた事。もう一つは……、その……、なんというか個人の相性の問題?」
「個人の相性?」
「え、え~と、その、一方的な愛情故に? みたいな?」
「「???」」
「と、とにかく! この敗戦は相手の力を甘く見ていた私にも責任があるわ。ごめんなさい。でもこれで私達が負けた訳じゃないわ! 次の戦いこそが重要だしね」
「どういう事? 優子」
「恐らくだけど二回戦までの戦い、坂本君は勝負を捨てて私達が持ってる選択権を消費させることが目的だったと思う。勝てれば儲けもの程度にね」
「そして今、坂本君の読み通りに事は動いていると……。次はどう出ると読んでいるんだい? 木下さん」
勝利に湧くFクラスを横目で見ながら久保君が尋ねてきた
「恐らく次に出てきそうなのは、一人目は皆も知ってる姫路さん。彼女は事実上Fクラスの最高戦力な訳だしね。そしてもう一人は土屋君、彼は殆どの教科は私達の足元にも及ばないけどただ一つだけ保健体育に関しては私達と同じもしくはそれ以上の点数の持ってるわ」
「へえ~、噂には聞いていたけどそんなに凄いんだムッツリーニ君。でもボクには及ばないと思うけどな。なんせボクは実践派だからさ」
「……召喚獣対決に実践も何もないでしょうが。後あまり自信過剰になっちゃダメよ?見たでしょう?二回戦の戦いを」
「……そうだね。うん、分かった。相手を甘く見ず対等それかそれ以上と考えて当たるよ」
「ええ、お願いよ。あ、それと女の子が実践とかあまり言わないの。勘違いして変なのが来たりとかしたらどうするのよ? 分かった?」
「えへへ。ごめんなさい、気をつけるよお母さん♪」
「お母さん言うな」
そう言って愛子の頭を軽く叩く優子。こんな二人のやりとりに笑いが起こり周りの空気が穏やかなものに変わり最初にあった悲愴感のようなものはもうなかった