クラスの皆には何と言って説得すればいいか悩みながら重い足取りで教室にたどり着くと愛子がこちらに駆け寄ってきた
「もう!どこ行ってたの優子? 折角お昼一緒に食べようと探してたの、……どうかした? 何かあったの?」
「……へっ? な、何って?」
「何か凄く悩んでますって顔してたからさ」
「…うん、顔に物凄く出てた」
振り返ると代表がお弁当を持って立っていた。どうやら代表もお昼を一緒にしようと思っていたようでこちらを探していたのだろう
しかしそんなにも悩んでたの顔に出ていたのか、気を付けないと……
「…優子、困っているなら話して欲しい。 力になれるなら私手伝うから」
「そうだよ! 遠慮なんて無しだよ? 優子」
「代表……、愛子……。 うん、悪いけどちょっと相談に乗ってもらえる?」
嬉しいことを言ってくれる友人達の好意に私は甘えることにした
「なるほどね。 しっかし弟君の想いを守る為に自分から戦争を仕掛けるってのは如何にも優子らしいね♪」
「(コクコク)」
「な! 如何にもってどういうことよ!」
「それだけ優子がブラコンだって事だよ♪」
「私のどこがブラコンだって言うのよ!!」
「……………」
「……………」
「な、なによ? 二人ともそんな「はあ?何言ってるの?コイツ」みたいな目は!!」
「別に~♪ ねえ~代表?」
「…うん。 何でもない」
「と、とにかくそんなことはどうでもいいとして! クラスの皆には何て言って説得したらいいと思う?」
私がそう尋ねると代表の口からとんでもない回答が帰ってきた
「…優子が思った事をそのまま話せばいいと思う。 弟を助けるために力を貸して欲しいって」
「ちょ、ちょっと待ってよ代表!?それじゃあダメよ! ……一個人の我侭の為だけに戦争するなんて絶対認められるはずがないわ」
今になって我ながらなんて無謀なことしたのかと思う。 戦争はクラス全員で行うものであって個人でどうこう出来るものではない
そう思って俯いていると
「いいんじゃない? 我侭言っても」
愛子までとんでもないことを言い出した
「あ、愛子まで何言ってるのよ!? そんなのダメに」
「まあまあそう言わずに言ってみたら?大丈夫♪……優子が思っていることにはならないから。 ボクを信じてくれないかな?」
そう言う愛子の顔は普段の愛子とは別人に見えるくらい真剣な顔になっていた
「愛子……、うん、分かった。 どんな事言われるか分からないけど言ってみる私の気持ちを」
そうしてその日の授業が終了しホームルームが終わった後クラスの皆に無理を言って残ってもらった
そこで私はCクラスに戦争を仕掛けること、またその理由を包み隠さず皆に話した
学園長先生の要請だからと誤魔化すことも出来たがそれではクラスの皆を騙すみたいでいやだったからだ
言い終わると私は目を瞑った。この後来るであろう非難や罵声に備えるために……
しかし
私に掛けてきた言葉は
「いいよ、力を貸すよ木下さん。 木下さんには一年の時から助けてもらってるし♪」
「そうね、木下さんにはいつも我侭聞いてもらってるしね♪」
「今度はこっちが木下さんの我侭聞く番だね♪」
「水臭いよ木下さん♪」
などと暖かい言葉だった
「え? な、なんで? だってこれは私一人の我侭で皆に迷惑かけるのに…、なんで」
「それは優子の人徳あっての物だよ」
「愛子……」
愛子は私の近くに来ると耳元でこう言った
「優子は「先生に受けのいい優等生」のつもりで皆と接していたのかもしれないけどちゃんと「木下優子」だったんだよ? だって「先生に受けのいい優等生」なら先生の目に届く範囲だけで「優等生」を演じれば良かったけど優子はそうしなかった。 一年の時からいつもクラスの誰かを助けてたよね。 皆そういう優子の姿をちゃんとみてたからなんだよ?」
ま、まずい。こう言われてなんか凄く嬉しすぎて泣きそう……
「協力してくれる皆のためにも絶対に負けられないね♪優子♪」
「……ええ!!」
こうしてAクラスを一枚岩の結束に纏めることができCクラスとの戦争の準備が整った