夕食の買出しに向かっている途中、昔出会った後輩前田永姫ちゃんと再会し色々話をするうちに一緒にスーパーに行くことになった
「ところで木下先輩は今日何にするんですか?」
「そうね、今日は洋食にしようかな」
そう言って店に並べられている商品見ているとパスタの麺が目に止まった
「ふむ……」
パスタの麺を手に取りつつ目線は魚介類が売れれているコーナーに向いて考える
「先輩決まりましたか?」
「うん、うちは今日はシーフードパスタにするわ」
「いいですね~、なら私はシーフードカレーにでもしようかな」
「あ、いいかもね♪シーフードは冷凍のミックス買ったほうが安く済むからそっちにしようか」
「そうですね」
「そういや永姫ちゃん自分で料理してるの?」
「はい、うち両親が共働きなもので私が良く作っているんです」
「へ~、うちと一緒だね」
「先輩もですか?」
「うん、まあ双子の弟がいるけどアイツ料理できないからさ;;」
「あはは♪そうなんですか?」
こんな風に楽しく会話をしながら買い物を済ませスーパーを出るとそこで永姫ちゃんとは別れ自宅に戻った
自宅に戻ると制服からラフな私服に着替えると早速買ってきたパスタと食材を調理し上手く出来上がった所に丁度秀吉が帰ってきた
「ただいまなのじゃ~、お♪いい匂いがしてくるのじゃ♪」
「丁度夕飯出来た所だから早く手を洗ってきて」
「わかったのじゃ♪」
テーブルに二人が揃うと手を合せ出来立てのパスタを食べ始めた
秀吉はこのシーフードパスタ大変気に入ったらしく何回もお代わりをしあっという間に平らげた
「ご馳走様でした♪」
「お粗末様でした♪」
夕飯が終わってしばらくして私は秀吉に今日の試召戦争の結果を聞いてみた
「秀吉、今日の試召戦争どうなったのよ?」
「うむ、かなりキツい戦いじゃったが何とかワシらFクラスが勝ったのじゃ」
「へ~凄いじゃない、良くFクラスの戦力であの格上のDクラスに勝てたわね?」
「クラス代表の雄二の作戦と姫路のおかげじゃな」
やはり姫路さんはFクラスに…、話は原作通りに進んでいるわけか
「しかし明久が派手にやっておったのう…。Dクラスの連中から逃げる為とは言え窓は割るわ消火器で周りを粉末だらけにしてその上スプリンクラーを作動させるわでえらいことになっておったのう」
「はあ…、その様子だと吉井君相変わらずのようね…」
余りの多くの出来事に思わず私は頭を抱えていた
「うん?姉上、明久とは面識があるのかの?」
「ええ、一年の時にちょっと、ね」
私がそう言うと秀吉が顔を近づけて
「一年の時何があったのじゃ!?教えるのじゃ!姉上!」
「わ、分かった!分かったから少し離れなさい…」
私がそう言うと大人しく離れたが目は「早く話せ」と物語っていた
「そうあれは一年の頃の話なんだけどね…」
私はあの頃を思い出しながら語り始めた
一年前
私は先生の頼みで次の授業で使う道具が保管されている準備室の鍵を借りるために職員室を訪れていた
「失礼します、あの先生に頼まれて準備室の鍵を借りに来たのですが?」
「ああ、あの鍵なら西村先生が持っているはずですよ?今職員室を出たばかりですから今から追い掛ければ間に合うと思いますよ?」
丁度職員室にいた福原先生がそう教えてくれた
「そうですか!福原先生ありがとうございました!」
そう言って会釈し職員室を出ると西村先生の姿を探した
するとまだ遠くに行ってなかったのかだいぶ近くに西村先生がいたので追いかけることにした
「西村せんせ~い」
そう言って先生まであともう少しという距離で
「逃がすかぁぁぁ!!!」
男の子の大きな声が鳴り響きガン!!と言う何かを弾いた音が聞こえ、な、なに?と思った瞬間ビシャと頭から何か冷たい感触に襲われた
「な、何?何があったの?」
ゆっくりと目を開いて自分自身を見てみると何故か頭から水を被っていたようだ。よく見ると少し離れた所にバケツが転がっていた
「な、なんで私濡れてるの?」
「あああ!!ご、ごめんな、イタダダダダdadada!!!!」
「吉井!!貴様と言う奴は俺だけでなく他の学生まで巻き込みおって!!」
声のするほうを見ると男子生徒が西村先生に頭蓋骨が割る勢いで頭を鷲掴みさせていた
さっき西村先生が吉井と言っていたので恐らくあの吉井明久君で間違いないだろう
「すまん、巻き込んでしまって。うん?お前は1-Aの木下優子か?」
「あ、はい。西村先生から準備室の鍵をお借りしようかと」
「そうだったのか。折角取りに来てくれたのにこの馬鹿のおかげで大変な目に合わせてしまったな」
西村先生はそう言うとさっきよりも強く吉井君の頭を鷲掴みグギギギと凄い音がしていた
「あ、あの先生?そろそろその辺にしておかないと本当に割れちゃいますよ?」
「ったくこの馬鹿が。木下、鍵は後で俺が持っていこう。だからお前は保健室に行って濡れた身体を乾かすように。後でお前のクラスメイトに替えの制服を持って行かせるよう頼んでおく」
「わ、わかりました」
先生にそう言われ保健室に向かう途中
「あ、あのそれじゃあ僕も次の授業があるのでこれでぇぇぇ!!!」
グギギギギギギ!!!!!
「貴様はたっぷりと灸を据えてからだぁぁぁぁ!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
断末魔の声が聞こえたが自業自得なので気にせず保健室に向かった
そんなことがあった次の日だった、「吉井明久、この者を観察処分者に処す」という知らせが舞い込んだのは
いつもの通り授業を受けお昼休みになった時クラスメイトに呼び止められた
「木下さん」
「うん?何か用かな?」
「うん、木下さんを呼んでくれって他のクラスの男子が来ているんだけど?」
そう言うクラスメイトが指差す先には昨日西村先生に鷲掴みされていた吉井君が来ていた
しかし来るタイミングが悪かった。観察処分者の情報が駆け回っていた頃だったのでクラスの皆が好奇な目で吉井君を見ていたのでこのまま行くと彼になにか良からぬ噂が立つのでは?と思いメモに一言「放課後屋上に」とだけ書き気づかれぬように吉井君に渡しそのまま自分の席に戻った
「ううう…流石に少し寒くなってきたわね」
放課後ホットの缶コーヒーを飲みながら待っていた。季節が秋から冬に変わり始めている頃なので風が少し冷たかった
それからしばらくするとハアハアと息を切らして吉井君が現れた
「ご、ごめん!!遅れちゃって」
「別にいいわよ、ほい」
缶コーヒーを吉井君に投げ渡した
「え?いいの?」
「放課後屋上に来るように指定したのは私なんだから気にしなくていいわよ。それで話って?」
「う、うん。あの昨日の事なんだけど」
「ああ、昨日のアレね」
「うん、本当にごめん!まさか木下さんがいるとは思わなかったから」
「誰も居なかったら西村先生にバケツを投げてびしょ濡れにしていい訳ないと思うけど?」
「うっ」と図星を突かれたのか黙り込む吉井君
「…はあ、別にただ単に西村先生が気に入らないからあんな事した訳じゃないんでしょ?」
「う、うん」
「なら何故あんなことをしたのかその理由を教えて貰いましょうか?被害者である私にはそれを知る権利位はあると思うけど?」
私がそう言うと吉井君は事の次第を話し始めた
吉井君の話によるとたまたま入ったファンシーショップで出会った小さい女の子がお姉さんを元気づけるためどうしても欲しがっている人形をプレゼントするための資金を工面するため持ち物検査で没収された物を取り戻しそれを売ってその資金に宛てたようだ
私が遭遇したのはその没収品を保管してあるロッカーの鍵を入手するためにやった事だったようだ
「…それで?何を売ってその人形を買う為の資金にした訳?」
「えーと、携帯ゲーム機、ゲームソフト、DVD、漫画、小説、トレーディングカードに…」
「……、貴方は学校をどんなところだと思っているの?」
なんか凄く頭が痛くなってきた…
「あ、でもギリギリ足りなかったから鉄人、じゃなかった西村先生の古本を売って何とかなったんだよね」
うん?西村先生の古本?
「…ねえ?一応聞くんだけどその古本…ちゃんと先生の許可貰ったの?」
「え?ううん。捨てる物かと思ってさ」
…ああ、なんか頭痛薬が欲しくなってきた
「なるほど…観察処分者になる訳ね」
「ええ?どうしてさ?僕はただあの子の為に」
…ブチ
「いいわけないでしょうが!!」
余りのバカさについつい大きな声を上げてしまった。いきなりのことだったのか呆然とする吉井君
「え、えーと木下さん?」
「あのね!保管されているロッカーから没収品を盗み出した上に先生の私物を売るなんてそれはもう窃盗なの窃盗!!西村先生がそのことを警察に伝えなかったから観察処分者程度で済んだのよ?そうじゃ無かったら最悪退学モノよ?」
「で、でもそうしないと人形が買えないし」
「でもそのお店の人にはしばらく待って貰えていたんでしょ?ならまだ時間があったということでしょ?」
「そ、それは…」
「なら友人達に事情を説明して融資を募るとか、お店の人に頼んで分割の支払い頼むとか方法は色々あったはずよ?違う?」
勢い余ってちょっと強い感じで喋ってしまった訳か見るとしゅんと黙って元気をなくしている吉井君がいるわけで
「あ…、おほん。と、とにかく行動を起こす前にまず考える事をしなさい、分かった?」
「う、うん。分かったよ、本当ごめんね木下さん。ホントごめん」
そう言って頭を深々と下げる吉井君
「で、でも!」
「?」
「見捨てずにその子為に何とかしてあげようとする吉井君のその思いは、その…嫌いじゃないわよ?(ニコッ)」
「え!(ドキ)」
「まあそう言うことだからもう二度とこんな事しちゃだめだからね?それじゃね」
そう言って何故か顔を真っ赤にさせている吉井君を置いて私は屋上を後にした
「と、まあこんなことがあってねって、なにブー垂れてるのよ?」
話終わり秀吉を見ると何故か頬を膨らませて拗ねていた
「ワシが知らない間にそんなことがあったなんて明久から何も聞かされておらんかったのじゃ。なんかワシだけ除け者扱いされた気分じゃ」
「しょ、しょうがないじゃない。あの時は吉井君がアンタと同じクラスなんて知らなかったんだからさ、ねえ~機嫌直してよ?」
「べ、べつにワシは怒ってないのじゃ」
「怒ってるじゃない」
「怒ってないのじゃ!」
「怒ってる!」
「怒ってない!」
「怒ってる!」
とまあこんな感じのいつも通りの姉弟なのでした