完成された美貌を持つ妹は、いつだってサスケと神を愛していた。
おそらくその奥底にあるのは果てない自己愛。
神は自分の生まれる要因であり、サスケはIFの自分と考えているようで、いつだってミコは自分の為に行動していた。
はっきり、ミコは忍としての才能がまったくない。
今だって忍は違うプロセスで忍術もどきを扱う。
「あら、イタチなんか悩み事?」
「……ミコと俺は正反対だなと。」
「まぁ、女の子だしね。一緒じゃ大変よ。」
「あいつはちょっと、凶…血の気が多いですしね。」
色んな事を暗躍しているのだろうが、生憎掴めない。煙は確かに見えているのだが、肝心の火が見当たらない。
修行に出てからというものの、元々嫌なものは離しておくという感じが、嫌いなものは排除するという思考に変わっているようだ。ミオヤ様の方針なのだろうか?たしかにあの人もかなり血の気は多い。俺達人間と比べても意味は無いだろうが。
……いや、ミコは昔から何一つ変わってなんかいないな。あいつが大きくなってどういうことをするのかという選択肢の予想がこちら側もあちら側も増えただけできっと変わっていない。
ミコは昔から自分が住みやすい場所を作っているだけだ。
まるで俺か前やった事を知っているかの様に、そうなるであろう物をこと如く潰したり潰してもらったりしている。
忍の才能がめっきり無いくせに、他人から愛される才能がある、俺とは真逆の子。
帰りはいつになるのだろうか?
「あの二人が居ないと寂しいものね。」
「はい。ちゃんと歯磨きしてるでしょうか?めんどくさがってやってなかったり。」
「大丈夫よ。」
「修行ばかりしていないでしょうか?もどかしい。ついて行きたかった。」
「もう、ほらお兄ちゃん。明日も休みだからって心配してたらだめよ?心配はまた明日。おやすみなさい。」
・・
次の日、起きて修行でもしようかと思ったら、父上に禁止されてしまった。たまには休めと。
休みの日はこれまで、何をしていただろうか?
……修行ばかりしていたな。サスケの方も修行。ミコは……ミコは家に篭っているから分からないな。
「母さん、ミコは休日何をしていたかわかります?」
「ミコ?うーん。自室にこもるか神社に行くかしてたわよ。篭ってる時はお父さんの辞書とかを借りて何か考え事もしてたし、金髪の赫映って女の子とかサクラちゃんと出かけたりね。あとは何もせずに寝っ転がってたり。あぁ、幼い子達にお話を聞かせたりしてたかしら?どうしたの?」
「父上に、休みの日ぐらい休めと言われてしまって。」「あら、でも偶には体を動かしたいわよね?デスクワークだもの。」
「まぁ。」
「もう!イタチったら敬語で。ミコみたいにママって甘えてほしいんだから。サスケと一緒で恥ずかしいのかしら?」
「いや、流石に21になった男がママだなんて。」
それだけは、それだけは勘弁してください母さん。
これ以上母さんの近くに居ると甘えてきなさいと迫られそうでとりあえず逃げてきた。
池の鯉が餌をよこせと言わんばかりに荒れ狂っているなか、父上が申し訳なさそうに池の鯉に話している。
「すまないが、お前たちの言葉はわからないんだ。人語で話してくれると助かるんだが。」
それはそれで怖いです。父上。
父上は前とは打って変わり、家の中では母さんの尻に敷かれている。
「……イタチ、お前なら」
「俺もわかりませんよ。」
「そうか。」
「お腹が減っているのでは?」
「む、そうか?」
「催促してますよ。」
それからは散歩をして昼寝して気がつけばもう夜。
せっかくの休日なのに、二人が居ないのは本当に寂しいもの。
本当に何もない一日だったな。